- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087462777
作品紹介・あらすじ
振り向いてくれたけれども「がんばれ」はたぶん自分に言った言葉だ-。残業続きで恋人に会えない夏の日々、文芸部の美少女と何も起こらなかった高校時代、今も発熱し続ける叶わなかった夢…。短歌の背後にはいつも、淋しくて優しいストーリーがあった。日常の小さな感情を温かな筆致で描く、短い歌と短いストーリー。オオキトモユキの筆による、ユーモラスで少し悲しい絵物語も同時収録。
感想・レビュー・書評
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枡野さんは若い頃結構好きで、何冊か著作を読んだことがある。
その自らの作品や他者の作品に対する切なくなるほどの真面目さと、エッセイなどでのこちらが慌てるほどの正直さが好ましかった。
先日、ふと妙に淋しくなり、そしたら何故かタイトルだけ知っていたこの本が読みたくてたまらなくなり購入。
この本は枡野さんが‘歌人’となってのはじめての連載。
彼の短歌とその短歌が生まれた背景を描いたエッセイと、オオキトモユキさんの読むとちょっと淋しくなるパラパラ漫画のようなイラストで構成されている。
行間・文字間が広く、字も太字で読みやすくあっという間に読了出来る。
でも、そこにかかれた短歌とエッセイの相乗効果が素晴らしく、エッセイを読んだ後、最初に置かれている短歌をもう一度味わいたくなってしまう。
知っていた短歌は旧知の友人のように懐かしく、知らなかった短歌は新鮮な空気を取り込むように読んだ。
解説は長嶋有さん。
相変わらず的確かつユニークな解説。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初出96年、親本は03年刊行。
オオキトモユキ氏の挿絵がうら悲しくもユーモラス。
著者28歳〜31歳の時のエッセイ&短歌集。
全体的に恋とか愛の歌が多め。
「自転車を盗まれ〜」の歌はそこそこ嫌な出来事に凹んで下を向いてくさくさ歩いていたらなんか明るいな、とふと見上げたら綺麗なまんまるお月様がそこにあった時の情景が目に浮かぶ。素直にキレイだな、と思える自分にもホッとするしこのくらいの軽さで生きていたい。
「つきあって日が〜」も好きだな。ひねりが効いててそういうことか!と思うけど、娘の事を歌ったというヒントがないとなんのこっちゃではあるかな。
「今夜どしゃぶりは〜」の歌は憤り、悲しみ、無力感、そう言った感情全てを「どしゃぶり」という一語に全て凝縮させた、悼み歌。
時間をかけて読むと短歌って奥深い。
1刷
2021.5.2 -
私、勝手に本のタイトルの最後に「い」を入れちゃってたんですが、この「お前」とは枡野氏自身を指す事がこの本を読むと分かります。
枡野氏と言えば「ショートソング」で大ブレークした歌人であり作家ですが、この本には35首の歌が綴られて、ひとつひとつの短歌に、枡野氏の若い頃の思い出がエッセイとして綴られています。
彼、そーとー、繊細で暗い面がある人だな、と言う感想を持ちました。
私がいいな、と思った歌を紹介しますね。
感染はあの冬の日の それっきり潜伏期間九年の恋
枡野氏は、「叶わない夢は、永遠の片思いのように、そのまま心の隅で発熱し続ける」。そして、人には「叶ってほしくない夢」や、「思い続けたい恋」というものがあるのだと締めくくっています。年取ると、頷ける歌ではないでしょうか。
お次は、枡野氏が「結婚はしない」と言う話で意気投合していた女友達から、ある日、電話で・・
「永遠の愛なんて、やっぱりありえないと今でも思うけど、たとえ一瞬 でも『永遠に好きかもしれない』と思えたから、その一瞬の記憶があれば一生やっていける気がする」
と、別の男性と結婚する事を、打ち明けられたそうです。
要約すると、「永遠の愛は、一瞬の記憶の中に、永遠に存在する」ということらしい と。。まるで失恋したみたいな夜だったと、枡野氏は当時を振り返り、この歌を詠んだそう。。
永遠の愛を誓うよ 永遠もあと半年で終わりらしいし
最後は、枡野氏が人生で一番貧乏だった頃、自転車が盗まれた時に生まれた歌。
自転車を盗まれ徒歩で帰路につく 満月を見てキレイと思う
普段は自転車でどこでも移動していたそうですが、自転車を盗まれてから、夜道を歩いていた時にふと見上げた夜空に浮かんだ満月に、心を奪われたと言うシチュエーションでしょうか。その辺の説明は書かれていませんでした。
自転車に乗っていたら、満月の美しさにも気付かなかったかもしれませんし、この歌も世に出なかったかもしれませんね。 -
なぜか時々ふらふらと枡野さんの本を手
にとってしまう。
うすーく中毒性があるかも。 -
よくわからないものって好きなんだけどだいぶよくわかるみたいなものもすごいことだと思う
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うーん、なんとも。
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短歌がすきです。
31字の中で情景をいかに魅せるか、言葉を操るか、
発想力をみるのがすきです。
そう思うと、穂村弘の短歌くださいの方が私に強烈な印象を与えたな~。
あと文字がおっきくて薄いから、一瞬で読み終わっちまうぜ。それでも印象に残った歌はあるから、面白いんだけど、あっけないからこの評価。
2018.12.06 -
長嶋有さんの本に出てきた「お前だけじゃな」だ!
行間がすごーく空いていて、読みづらいかもと思ったけれど
短歌とエッセイに引き込まれると、気にならなくなった。
「クールさを競い合っても死体にはかなわないから生きてる僕ら」
何故だかわからないけど、はっとした。
ブルーと藤色で夜の世界が描けるんだなー。 -
『ショートソング』が気に入って数冊まとめて購入した枡野浩一の著書。『ワコール・ニュース』に連載していた『現代短歌(みじかうた)』の文庫化なのだそうです。自伝ストーリーの間に挟まれた短歌は、どデカイ字と広い行間がこれまで私が好んで読んできた本とは別もの。が、いくつか心を引きつけられる短歌がありました。特に“振り向いてくれたけれども「がんばれ」はたぶん自分に言った言葉だ”とか。「ガンバレ」という言葉は的確に使うのが難しいけれども、誰かを励まそうとするエネルギーに触れる。そのとき著者がいた情景が目に浮かんで、こちらも励まされたような気に。ちなみに30分かからずに読めちゃいます(笑)。