淋しいのはお前だけじゃな

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 423
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087462777

感想・レビュー・書評

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  •  歌人・枡野浩一氏が雑誌「ワコール・ニュース」(よく判らないのだけど、業界誌か何かだろうか?)に1996年から3年ほど連載していたという、自身の半生を綴った短文(ショート・ストーリー)集。まあ、「まえがき」にも書かれている通り、枡野浩一氏の「短い短い自伝ストーリー」の集まりと言ったほうがいいのかな。それにしても書名がインパクトある。
     高校生のころ、文学部でのほろ苦い思い出。仕事をし始めたばかりのころの苦悩。そして仕事をやめて新たな道を歩み始めてから…。そんな枡野氏の人生の断片的ストーリーが35編、それぞれ短歌を添えて収録されている。短歌はオリジナル作品もあるが別の歌集からの再録もあり、各ストーリーの内容に合うものを選んでいるらしい。
     オシャレな生活とは縁遠くて、人付き合いも不器用で、大した恋愛経験もなくて、そんな無様な自分をもてあましているような短歌。枡野氏の短歌の特徴はまさにそれではないかと思っている(ま、とは言っても広告代理店に勤めたり、一般人からすると十分オシャレな生活をしているような気もするんだけど)。

    《感染はあの冬の日のそれっきり潜伏期間九年の恋》
     
     なんだか身につまされるような、恥ずかしくなるような、切ないような短歌が僕は個人的にとても好きだ。

     収録されているストーリーの一編一編は本当にとても短くて、一つの話は3ページくらいしかない(しかも字も大きい)のですぐ読めちゃうのだが、その短い文字数で情景がまるで目に浮かぶように鮮明に描写されているのは、さすが歌人だと思う。心なしか文章のリズムもテンポがあって、「音」を重視する短歌の手法がここで活かされているのかも知れない。そして自身の無様な青春をこうして赤裸々に描いてしまう枡野氏の姿勢にも驚いた。
     若いころの日々なんて、後から思い出せば輝いているのかも知れないが、リアルタイムで生きている身からすればそれこそ辛いことや悲しいことばっかりだ。とかく美化されがちなそんな日々を枡野氏は短歌とショートストーリーで語りつくしてしまう。

     また本書ではトモフスキーことオオキトモユキ氏のイラストも重要な読みどころである。ペンギン君のなんだか切ない物語も必見。これが本文の雰囲気と相まってなんとも言えず独特な空間を本の中に創り出しているのである。最後のページのペンギン君の表情はとても印象的だ。

    《今夜どしゃぶりは屋根など突きぬけて俺の背中ではじけるべきだ》

     本書のタイトル、言葉が中途半端なところで切れているのは何故か引っかかっていたのだが、内容を読めば何となく納得。読者がそれぞれで言葉の続きを解釈すればよいのではないか。「お前」というのが誰なのかも自分なりに考えればいいのではないだろうか。

     枡野氏自身が「まえがき」書いてある通り、掲載されている雑誌の読者層を考えて、内容も女性向けに書いたらしい。なので枡野氏の世界にふれる入門編としては最適だし、もともとのファンもより深く枡野氏の短歌を知る上で必読だろう。

    《永遠の愛を誓うよ 永遠もあと半年で終わりらしいし》

     そう、淋しいのはお前だけじゃな…かった。そして俺だけでもなかったのだ。

  • 3年間「ワコール・ニュース」で連載されていた、現代短歌(みじかうた)をまとめた単行本を文庫化された本。女性の読む雑誌に載っていたこともあり、恋愛経験を多く書こうと試みたとまえがきに書かれています。短歌とその短歌が詠まれたきっかけとなった出来事がまとめられています。(2012.1.4)

  • うまいの一言!

  • みじかうた。
    まさにそんな世界にいる枡野さんのエッセイ?です。
    なんだか波乱万丈な人らしい。
    もっときちんとした人だと思っていたのでいろいろびっくり。

    そして、彼のことを知らなすぎて、よく意味がわからんかった冷や汗
    短歌の裏にある問題。
    そんなこと 知らなくても いいじゃないか ステキだと 感じることが 大切なのさ。

  • 枡野さんの本4冊目?かな。

    歌のエピソードが分かって面白いです。
    切なくなったり共感したり。

    挿絵も素敵で、恋のエピソードを中心に集めたこの本にぴったりだと思いました。

  • 枡野浩一による自身の短歌解説集。
    この人の短歌は何でこんなにストレートで真っ直ぐに心に届くんだろう。

  • 2008年3月。

  • 1時間くらいで全部読めました!
    気楽に本を読みたい気分だったので、まさにうってつけでした!
    内容もおもしろかったです。
    妙に恋愛に冷めているように装っていたり、めちゃ鈍臭かったり、傘をよくなくしたり、ネガティブなのかポジティブなのかよくわからない性格・・・自分の日記を読んでいるようでした
    結婚したくない(なかった?)理由も全く同じやし

    文章が簡潔にまとめられていて、とても読みやすい本でした!
    飛行機や新幹線のなかで暇をつぶす時にオススメの1冊です。

  • すんごい読みさすさ。
    この人の人生が垣間見えてくるような優しい短歌ばっかだったな。

    今回のお気に入り。

    これはもういらないものだ だけどまだ捨てずにとっておこうと思う

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著者プロフィール

一九六八年東京都生まれ。歌人。雑誌ライター、広告会社のコピーライターなどを経て一九九七年、短歌絵本を二冊同時刊行し歌人デビュー。短歌代表作は高校国語教科書に掲載された。短歌小説『ショートソング』、アンソロジー『ドラえもん短歌』、入門書『かんたん短歌の作り方』、『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』など著書多数。目黒雅也や内田かずひろの絵と組み、絵本・児童小説も手がけている。

「2023年 『おやすみ短歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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