広瀬正・小説全集・1 マイナス・ゼロ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 1273
レビュー : 204
  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087463248

作品紹介・あらすじ

1945年の東京。空襲のさなか、浜田少年は息絶えようとする隣人の「先生」から奇妙な頼まれごとをする。18年後の今日、ここに来てほしい、というのだ。そして約束の日、約束の場所で彼が目にした不思議な機械-それは「先生」が密かに開発したタイムマシンだった。時を超え「昭和」の東京を旅する浜田が見たものは?失われた風景が鮮やかに甦る、早世の天才が遺したタイムトラベル小説の金字塔。

感想・レビュー・書評

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  • 長い長い時間旅行でした。
    タイムトラベルものが気になってきたのなら、おすすめです。ぜひ読んでみてくださいね。
    SF初心者でも、じゅうぶんに楽しめますよ。

    主人公の俊夫が戦時中の少年時代、空襲のさなか、息絶えようとする隣人の「先生」から、18年後の今日、ここに来てほしいという奇妙な頼まれごとをされました。その約束の日、俊夫が目にしたのは不思議な機械タイムマシン……と中から出てきた見覚えのある少女でした。
    俊夫は、そのタイムマシンを使ってひとり時を越え、31年前の昭和7年の東京にたどり着きます。ここで、とあるアクシデントによりタイムマシンを失った彼は、長い長い過去の時間を過ごすことになってしまいます。
    だけど、この気が遠くなりそうな過去からの道のりに、俊夫は悲観的になるのかと言えば決してそうではありません。彼は飄々と生きていきます。その間に恋もするし(あれ、未来においてきた少女は?)、永遠の別れも経験します。商売にも手を出しました。さらには戦地で戦うことにもなります。
    なかでも居候させてもらっているカシラ夫妻の気っぷのよさと人情味溢れるやりとりには、SFを読んでいることを暫し忘れてしまうほどです。
    つまりタイムトラベル先の「昭和」の東京を、存分に味わうことが出来るのです。

    プラス・ゼロからプラス18。そしてマイナス31、ゼロと時間は流れ、マイナスゼロとなったとき。
    この結末には、心躍ってしまいました。かなりの驚きと全てがカチリとはまり込んだ充足感に満たされます。
    所々に現れるさらりと見逃してしまうくらいのちょっとした謎も、ちゃんと最後には解決されていてスカッとします。分厚い本だったけれど、最後まで頑張って読んで良かったと思える一冊でした。

  • タイムトラベル、タイムパラドックスもの。
    ちょっとしたミスや小道具が、結末で色々噛み合って爽快感があった。人物が行ったり来たりでそういうことか!と思うことばかり。
    17歳の少女なのに急に夫婦っぽくなってしまったりタバコ好きだったり昭和感も残っているけれど、やはりSF好きの人の中では名作と呼ばれるだけあります。タイムトラベルとは別の要素で、昭和初期の下町の庶民の家族の雰囲気が生き生きと伝わってくることも大きな魅力。

  • 素晴らしい.
    タイムマシンものの秀作と思う。
    50年経ても、古さを感じない。映画化、ドラマ化は何故されないのか不思議。

  • タイムトラベルものの傑作という話を聞いて読んでみたのだけれど、そう言われるだけのことはある。
    初出が1965年と50年以上前に連載された小説にも関わらず、仕掛けと描写の巧さ、エンターテインメント性が全く色褪せていない。実に鮮やか。

    本筋とは関係ない(むしろこっちが本筋か?)昭和初期の描写も読んでいて面白い。
    当然自分は昭和初期など経験したことなど無いはずなのに、なぜか妙にノスタルジックな気分になった。

    最後の仕掛けを認められるかどうかで結構評価が変わるのかも。

  • タイムマシンものの古典的名作として
    色褪せない作品だと思った。

    今なおいろんな作品が作り続けられている
    タイムマシンネタだけど、
    キーとなるネタや王道的展開がおおよそ
    カバーされていて、後世の作品の
    スタンダードになっていると感じた。

    過去の自分との遭遇、
    行ったまま戻ってこれない、
    過去に行って大儲けを企む、
    タイムパラドックスの問題、などなど。

    タイムマシンネタが好きなら必読の作品。

  •  私がSF少年になったころ、もう広瀬正は故人だった。SF少年になって少ししたら河出書房新社から広瀬正小説全集なるものが刊行され始めた(多分それは新装再刊だったと思う)。和田誠のクールなイラストの表紙で、コンパクトで小綺麗な造本だった。この小説全集、推理小説などあって、これはSF作家なのか、と純粋なるSF少年は胡散臭く思ったものだが。
     しかし『マイナス・ゼロ』とは何だかカッコいい題名だ。『タウ・ゼロ』を連想するじゃないか。何かすごいハードSFじゃないか。いやいや、時間SFであって、そんなカッコいい話じゃないんです。

     タイム・マシンが手にはいったら、ヒトラーの悪行を止めに……行かないだろう。自分の過去にコミットしたくなるのが関の山。それが人情だろうか。だから、タイム・マシンもののひとつの定石が自己の過去と関わる話である。ハインラインの『夏への扉』なんかが典型で、何とも甘酸っぱいノスタルジーと因果のパラドックスのパズルが組み合わさって独特の魅力を発する。広瀬正の『マイナス・ゼロ』も同工で、同じくハインラインの「輪廻の蛇」ばりの見事な時間の織物を織ってみせるのだが、しかしその独創性はいわば昭和を主人公にしたことだ。
     ゼロはゼロでプラスもマイナスもないのが数学だから、『マイナス・ゼロ』はおかしい。物語は「プラス・ゼロ」と記された章から始まる。昭和20年がそのゼロである。主人公・俊夫の隣家の先生は戦火に巻かれて死ぬ間際、18年後にその場に戻ってくるように俊夫に頼む。「プラス18」、昭和38年、先生宅に訪れた俊夫の前に現れるタイム・マシン。そのタイム・マシンで、俊夫は誤って「マイナス31」、昭和7年に戻ってしまうばかりかタイム・マシンを失ってしまう。そこで、俊夫のタイム・トラベルは「マイナス31」から自分の足で未来へと戻っていくものとなる、「昭和」を道連れとして。

     SFなんてと思う人にも是非読んでいただきたいのは、設定はどうあれこれが苦境に陥った俊夫という普通の人間の物語だからだ。過去に戻ってたどり直すのだからすべてがもう決まっていることなのに、戦争が起こるとか大雑把なことしかわからず、自分の身の回りで何が起こるかわからないという、もつれた時間の糸を解きほぐすかのようなこのハラハラ感。正直、私は読み出したらやめられなくなってしまった(休日でよかった)。
     少年時代に読んだときは自分の属する時代から引きはがされて生きねばならぬ俊夫の悲劇に心が痛んだ。いまは、それはまったく悲劇に思えない。どこであれ真摯に生きていくことに不幸はないのだ。

  • 十数年ぶりの再読です。日本のタイムトラベルSFといったらこれ。ブクログレビュー平均4点超えも当然です。

    タイムパラドックスを扱ったアクロバティックでロジカルな物語が楽しめます。かといって全編がっちがちなSFというわけではなくて、むしろ物語の大部分が昭和初期の庶民の生活が描けれた「普通小説」なんですね。でもそのパートがめっぽう読ませるのです。なんと人々が生き生きとしていることか。このノスタルジーこそ本作が愛される理由でしょう。

    そして最後は次々と伏線が回収されて、主人公の数奇な人生が「愛の物語」として見事に着地します。素晴らしい!

  • 「サマータイムマシン・ブルース」で有名な劇団「ヨーロッパ企画」の方々がSF小説ならこの本がおもしろいって言っていたので、読みました。
    たしかにおもしろい!
    よくこんなにややこしい話が思いつくなぁと感心。
    頭のなかだけで理解できず、時間の流れと人物関係図を書き出しました。笑
    いろんな人が出てくる中で、どんどん関係が見えてくるのが面白く、終盤はほんとに止まりませんでした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「時間の流れと人物関係図を」
      素晴しいね。
      広瀬正の作品は、どれも職人芸です。ジックリ楽しみましょう!
      「時間の流れと人物関係図を」
      素晴しいね。
      広瀬正の作品は、どれも職人芸です。ジックリ楽しみましょう!
      2012/12/21
  • いや,展開は王道だからわかるから,いいんだけどさ,圧倒的なリーダビリティ.読みやすさが段違い.久々に500ページ3時間気が付いたら読破だよ.
    広瀬正,あさってみてもいいかもしんない.

  • 戦時の日本と、タイムトラベルいうイメージのギャップ、その中心であるタイムマシンの存在がうまく解決されていて、ノスタルジーな昭和の世界と二度楽しめるのが醍醐味。
    その昭和初期の国内が穏やかだった時代から、文化的な激変を辿っていくので、自然パラドックスも大掛かりになる。ラストシーンに至るまで実に感慨深い。

    この作品が最初に出版されたのは1965年と古いが、今見ても新鮮みのある大胆な設定で、むしろ新しささえ感じられるのは凄い。

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