上海にて (集英社文庫)

  • 集英社 (2008年10月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784087463644

作品紹介・あらすじ

共産革命直前の上海を活写した傑作紀行エッセイ
日本の敗色濃い1945年、上海へ渡った青年・堀田善衞。崩壊していく東洋の魔都で、彼は何を見て何を考えたのか? 『堀田善衛上海日記』と対をなす紀行エッセイの名作。(解説/大江健三郎)

感想・レビュー・書評

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  • 上海の魔力に引き寄せられ終戦前後の2年弱を現地で過ごした27歳堀田青年の強烈な体験と、その10年後文学者代表団のメンバーとして上海に訪問した際の去来する思い。日中国交正常化前、文革前の1959年の著。
    国民党共産党列強各国が入り乱れる混乱とカオスの中、著者は加害者日本と被害者中国の間の矛盾や理不尽に義憤し奔走し踏み込み歴史に立ち会っていく。
    中国と対比することで日本の姿在り方も鮮明になってくる。中国人は戦争終結を「惨勝」と表現して現実に対峙し、日本人は惨敗を「終戦」と表現して現実から目をそらそうとした。中国は独立してその後アメリカの対抗勢力となり日本はアメリカに従属した。
    近代以降の中国の混乱と様々な悲劇はあらためて読むと目を覆いたくなるばかりだが、あの広大な国土と多民族、独自の民族性と歴史、そして極度の不平等社会であった状況を考えると終戦前後のタイミングで共産主義国家が誕生したのは必然であったのかなとも思う。また、列強各国(日本も含む)に何もかも蹂躙されつくした中国が西欧主導の民主主義を受け入れることはあり得なかったことはこの本を読むとよく分かる。ただこの後、経済の大失敗そして文化大革命へと大混乱と悲劇は当分の間続くのではあるが。最後の下りでも著者は毛沢東と共産党中国をかなり好意的に評しているが、文革、天安門事件等々を経た中共をどう見るだろうか?
    とは言え、巨大な化け物と化した現代中国とこの本に書かれている誕生間もない中華人民共和国との隔世感が大きすぎて、あまり繋がりがなく感じてしまうのも事実。しかしこういう時代と歴史があったことも事実で、今後の日中関係を模索するについても必要な知識ではあると思う。
    あらためて中国と共産党の近代史に大いに興味を持った。
    ノーベル賞作家大江健三郎による解説も秀逸。
    しかしながら、我々にとって中国という国は感情的に遥か遠いものになってしまっている。日中の血の通った交流などというものはいつになったら実現できるだろうか。

  • <目次>
    はじめに
    上海にて
    惨勝・解放・基本建設
    解説ー大江健三郎

    1959/7筑摩書房より単行本刊行
    1969/11筑摩業書版再刊
    1995/11ちくま学芸文庫刊行
    2008/10/25集英社文庫第1刷
    2020/1/15第4刷

    堀田善衛1918(大正7)-1998
    1945/3上海赴任、1946/12末帰任
    1957に上海再訪した際、赴任時代の記憶や
    現在思うことなど記したエッセイ。
    戦後混乱期の歴史資料でもある。

  • 著者といえばフランシスコ・デ・ゴヤ、位のイメージしかなかったので、戦後1年以上(捕虜ではなく)中国で暮らしていた一面を知れたのは収穫だった。

    1959年に訪中しているが、その時には既に大躍進政策は始まっていた。その危うさは感じられなかったのだろうか。結果論から安易に非難してはいけないのだが。

    大吉堂にて購入。

  • 2018年4月8日紹介されました!

  • 研ぎ澄まされた観察眼と筆致に背筋が伸びる。

  • 戦後日本の最良の知識人(少々古い表現ですね!)である著者の実体験をベースに書かれたエッセイ。エッセイとはいっても、歴史と時代状況を踏まえて、物事の本質に迫ろうとする堀田善衞の姿勢には感服する。とは言え、あくまでも文学者の視点からの批評であり、経済、政治のトータルな視点からの中国理解は、別の本できちんと学ばねばならないだろう。

  • ちびちび

  • 2010年8月15日第12回ブッククラブ : (感想)難しかった/ブッククラブがあるから読んだ/作家に主義・主張がなく見たものをそのままに書いているのがいい/傍観者的/教科書ではわからない終戦前後の混乱・混戦ぶりが伺える/戦争は単純に二者あるいは三者対立しているわけではないとわかる/ユーモアのある作家 (後記)見たままに綴られているので、戦中戦後の市井の様子がそのまま伝わってくる点で高評だった。作家の教養や幅広い視野に好感が持たれた。国や国民性についても話し合えた。

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