はるがいったら (集英社文庫)

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  • 集英社
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レビュー : 251
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087463934

感想・レビュー・書評

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  • なんとみずみずしい作品だろう。飛鳥井さんのいままでの印象が
    がらりと変わった。しかもこの作品がデビュー作だなんて。
    迷っていた文庫を二冊購入。
    こんな気持ちにまたなれるかもしれないと思いながら。

  • この人の小説を読んでいて、いつも思うのは、「あるある!」「わかる!」と素直に共感できることだ。

    さらに、よくその微妙な心の動きを、こんな言葉で表すことができるよな……という関心と尊敬。時には、その「あるある」が自分に向けられているような時もあり、自分の欠点に目がいくこともあり、反省したり。
    とにかく作家の洞察力・人間観察力には目を見張るものがある。

    完璧主義の社会人2年目の姉と年老いた飼い犬の介護を一人で背負う高3の弟の姉弟を中心に、それぞれが抱える人間関係を描くドラマだ。彼らの問題は大なり小なりシリアスなものだけれど、この作者ならではの空気感が心地よいので、暗い話でも読みやすいのだ。

    人を表面的にしか判断できないのは、作中の人物だけではないだろうし、私自身もそうだ。実際に話してみたら、案外いいやつだった、ということはあることだろう。私も一皮むけねば、と思うに至る作品だった。

  • 久しぶりの飛鳥井さん。
    こちらは第18回小説すばる新人賞受賞作なんですね。
    毎回感じる「わかるよわかる」というこの感じ。わかるからこそチクッと胸が痛いところもあれば、なんだか懐かしく思えるところもあって、改めて好きだなあと思いました。

    物語の中心は、完璧主義な姉と病弱な弟、そして老犬ハル。
    描かれているのは何気ない日常なんですが、飛鳥井さんの瑞々しい感性でもって切り取られた世界は、何だかかけがえのない大切な日々に映ります。
    写真を見ても、小説を読んでも感じることですが、「ああ、この人には世界がこんな風に見えているんだな」という感動がこみ上げてきます。

    登場人物でいえば、私は園が好きです。
    美人だし完璧そうなのに、誰よりも不器用なところが愛おしい。
    園と恭司、実は鏡に映したようにそっくりですよね。
    恭司も随分残酷なことをするものだ、と思うんですが、きっと悪意のない愛情表現なんですよね。それがまた悔しい。
    まるで状況は違うのに、気付けば園に感情移入している自分がいました。

    一方で、園が嫌い!という女性の気持ちもわからないではない。
    見るからに高嶺の花な園には、羨ましさ半分、妬ましさ半分というところでしょうか。
    「たとえ何があっても、相手を傷つけていいという理由にはならない」と心から理解するためには、実はそれなりに精神を成熟させる必要がある、と気づいたのは大人になってからです。

    園も好きですが、行の若々しさ満載の物語も爽やかさ満載で胸がきゅっと締め付けられます。
    行となっちゃんみたいな友情も、すごく素敵。
    それに、行と忍の家族関係も。
    いい時期に、いい人たちと関係を築けたんだね、と読んでいて微笑ましい気持ちです。

    なかなか人の感情というのはシンプルではないから、複雑な想いもたくさん重ねるけど、それでも大切な人がいる日々というのは、それだけで随分愛おしいものだと、この本が教えてくれました。

  •  はるがいったら。
     ひらがなで書くととても柔らかい印象で、でもだからこそ言葉自体のもつ意味もふわっとした感じになって。
     そんなこんなで読む前は輪郭を掴みきれてなかったタイトルだけど、読了後にはすとんと胸に嵌まってきた。
     園と行の姉弟が主人公だけど、物語の中心にいるのは老犬・ハル。
     大きな事件が起こるわけではないけれど、日常の中にあるふとした瞬間の幸せ、自分が何者であるのかという問い―それぞれにとってはとても大切なものたちが積み重なって、ひとつの物語を形成していく。
     日常を描くのが巧い作家さんだと思った。

  • 最近ハマっている飛鳥井千砂さん。美人で何事にも妥協しない完璧主義の姉・園と、冷静で大人っぽくて普通な高校生の弟・行を中心としたお話。題名の『はるがいったら』の『はる』は春に2人が拾った犬、ハルのことだった。
    起承転結があるお話ではない、ごくごく普通な日常のお話なのにすごく好きな空気感だった。特に、行のような真っ直ぐで優しい青年の考え方が好きなんだよなぁ。真面目だけど、決してつまんないやつではない、魅力的な青年。老犬のハルを介護するとことか、自分の犬だから当たり前っていうその当たり前のことを当たり前に出来ることが凄いいいんだよね。好きだなぁ。
    姉の園は綺麗だしさっぱりしていて好きだったから、変な女に嫉妬されても負けないでほしいし、恭司との関係が凄く悲しいなと思った。恭司、なんで園に手を出したんだ!とね。ただ、園が恭司に別れを告げたのはよかった。つらいけど、絶対に園には幸せになって欲しいから別れを告げて大正解!がんばれ園!!!

  • 読みやすい作品。私はどっちかっていうと行くんに似た考え方しかできないから行くんに親近感がわいた。めぐみさんの気持ちがわかるなーって思ったり… あと、以外とお隣さん好きだなーって… ただあんまり印象には残らないかな?って感じた作品。

  • 完璧主義の姉・園と病気がちな弟・行。両親の離婚で別々に暮らしてるけど、仲の良い姉弟。
    行の入院で老犬ハルを園が預かることになって… 幼なじみの恭介、職場の同僚、受験を控えた同級生、生みの母親と再婚相手の母親、ちょっと面倒な(?)人間関係を描いた話。

  • 老犬ハルとともに、何でもない毎日を綴ったお話。

    完璧すぎる完璧主義者の姉園の完璧加減には、
    ほんと引いちゃうくらい。
    立てた予定通りならないと、それ用のコーディネート
    じゃなくなるから、とか。
    それが映画→買い物でも・・・。
    食べ物から何から、すべて完璧にしているのに、
    なぜ、不毛な恋に走っていたんだろ?
    性格的に許せないはずなのにね。

    弟の行は複雑な家庭環境の中気遣いもできて
    ほんとにいい子。
    なのに、何にも感動できない。
    小さなころに姉とともに公園で拾った犬の
    「ハル」の介護をしながら高校に通う。

    この話を読んでいる時、積水ハウスの
    犬とともに成長していく子どものCMが思い浮かぶ。
    あんな感じのほんわりした雰囲気。
    読み終わってからも、あのCMを観ると
    このお話を思い出します。
    あのCM好きなんです。


    やがて「ハル」が天国に逝く時がくるけど、
    誰も泣かなかった。
    みんな、ハルの死とともに成長したんだな、
    って思います。

    動物が死んでしまうお話は、私弱くて、
    途中「はるがいったら」のタイトルは
    老犬のハルが死んでしまうことにも
    かかってるんだ、って思った時、
    きっと最後泣けてくるだろうと思ってたけど、
    ハルが、モヤモヤしたいろいろのものたちを
    一緒に持って行ってくれた感があって、
    最後はなんだか気分もスッキリ読み終われました。

    以前読んだ「タイニータイニー・ハッピー」
    もそうだけど、すごく大きな事件が起きるわけ
    でもなく、ぼんやりとしたした話が進む中で、
    どちらも、最後は明るい気分になれます。

    この作家さんのお話の雰囲気がとてもいい。
    疲れている時とか、この人のお話で
    また癒されたいな。

  • 園と行姉弟とハルのお話。

    完璧主義な園。なのに恭ちゃんとは…。
    諦めてる?行。

    ハルが亡くなった時の小川くんと忍、
    園を憎んでる恵。
    ちょっとまとまりが…。

  • 姉弟の話、犬の話、家族の話、恋愛の話、成長の話、切ない話、悲しい話、幸せな話…。
    この本にはいろんな要素が含まれてるんじゃないかなって私は思いました。
    たぶん姉弟が犬の介護をしながらそれぞれの出来事を通して成長する話ってまとめられるんだろうけど、私的にはそれだけじゃないっていうようななんか不思議な感じがしました。

    読了感はすっきりした感じと妙な脱力感がありました。
    ハッピーエンドってわけじゃないけど、嫌な終わり方だなっていう感じもありませんでした。
    内容も取り立てて面白いってわけじゃないんだけど、でもなんか印象に残っちゃうような本でした。
    私自身の性格が園のようなとこがあったり、行のようなとこがあったりするなって思ったからかもしれないです。
    でもそんなもんかって思うことも、嫌なとこに目がいくことがあるっていうのも、たぶん誰しもが少なからずある性格ですよね。この2人は極端かもしれませんが。
    このなんか印象に残っちゃう感じが私はすごく好きです。

    あと、後から気付いたんですが、表紙のイラストがいくえみ綾です。
    最初に表紙を見た時からいくえみの絵に似てるなあとは思ってたんですが、やっぱりいくえみでした!
    私はいくえみ綾の絵がすごい好きなんで気付いた時嬉しかったです。
    なんとなくだけどいくえみ綾の漫画と飛鳥井千砂の小説の世界観も似てるような気がします。

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著者プロフィール

飛鳥井 千砂(あすかい ちさ)
1979年生まれの小説家。北海道生まれ、愛知県稲沢市育ち、神奈川県在住。
2005年『はるがいったら』で第18回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2011年刊行の文庫『タイニー・タイニー・ハッピー』が20万部のベストセラーとなる。他の代表作に『アシンメトリー』『君は素知らぬ顔で』『UNTITLED』『鏡よ、鏡』『女の子は、明日も。』『そのバケツでは水がくめない』など。

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