- Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087464061
感想・レビュー・書評
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作家をしている男性が、高校卒業から3日後の一日のことを思い出す。
友達の駆け落ち騒動を手助けする朝から始まり、翌朝小学校時代の初恋の女性と一緒に母校を散歩して思い出話をするところまで。
怒涛の一日。
時代背景はベトナム戦争中の青森県。米軍基地の若者とのトラブルとか、結構生々しくてこわかった。
都会生まれの人は「こんなに街中でどっか行くたび知り合いに会うか?」と不思議かもしれないですね。これは田舎あるあるで、人が集まる場所というのが自ずと限られてくるから、どこに行っても誰かに会ったりする。
同級生や先生がみんな愉快な人たちで、初恋の女性と話せたことへの主人公の気持ちも、すごく良かった。好きな人と話せると嬉しいんだよね。単純な話だけど、良いことを思い出させてもらった。
私は大相撲が好きなので、青森県といえば力士を多く輩出する地なのです。
主人公が運動神経が良くて背が高いというだけで、知り合いの兄貴から「力士になれ!明日親方呼んでやる!」と勝手に話進められてしまうところが、青森ならでは?という感じで面白かったな。その兄貴があまりにしつこくて、前向きで、強引で…。昔の人って、こういう押しの強さがあったんだろうなぁ。
喧嘩や暴力シーンは苦手なので、早送り再生のようにセリフだけ追って読み飛ばした。
それを差し引いても、総じておもしろかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
春というのは不思議だ。
何かが終わり、何かが始まる季節。
厳しい冬の寒さに耐え、
待ちに待った季節の到来。
それなのに来てみると
どこかぼんやりした感情にとらわれる。
冬の間に引き締めていた
心と身体はすっかり緩み、
すべてがどうでもよくなる。
朝も昼もたえずけだるい眠気が襲い、
世界の輪郭はにじむ。
そんな怠惰な日々、覚悟なくやり過ごす毎日。
そんなときに限って、
その後の人生を変える一日が襲い掛かる。
目まぐるしく様々なことが起きり、
他の日と同じ一日とは思えないくらい濃さ。
あとから振り返ると、すべてを決めた日。
あの日だったと思い起こす日。
予告なく突然やって来る。
ロマンチックなタイトルとは逆に、
描かれるのは若気の至りそのものの一日。
特に少年が青年に変わる春の日は、
青臭さ生臭さのフルコース。
性の目覚め、喧嘩、スポーツ、仲間、
食欲、暴力、理不尽な大人たち。
その中に一輪咲く可憐な少女が輝く。
掃き溜めにいるからこそ、
鶴はより白く神々しく感じられる。
男の中に淀む灰汁をぜんぶを吹き飛ばし、
少女が現れ、そして去る。
自分を変える日が、まだ僕にも来るだろうか。
高校生はその日を意識せず日々を生きるけれど、
僕はその日が来るのを祈りながら、
準備を続けようじゃないか。
来てほしいと願うだけでなく、
自分で引っ張り込むんだ。 -
スマートフォンも携帯電話もなかった時代。
高校卒業直後の人生のターニングポイントとなった一日のお話。こんなにも激しく濃厚な一日がジェットコースターのように繰り広げられる。
エピローグの「いまの自分が本当の自分なのか、本当の自分の夢の中の自分なのか誰にも分かりはしない」に激しく揺すぶられた。
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好きな作家。冒頭のインタビューの場面で「微苦笑」という言葉が何度か出てきて(思い違いかもしれないけれど)ああ、この言葉を使う人だったかと思い出した。微苦笑の言葉の中に、青春の甘酸っぱさ、ほろ苦さが含まれているような気がするのだ。それにしてもなぜ主人公はこんあ大切な思い出をインタビューで答えてしまうのだろう。作家だからか。
物語で語られるのは、インタビューで話したことではなく卒業して3日目のことで東京に出ることになったきっかけになった1日のできごと。自伝的要素が強いようだが、1日で起きた出来事にしては多すぎる。時間の密度が濃すぎる。思ったより狭い空間での出来事なのかもしれない。肩を壊し野球をやめなければいけない状況になっても自暴自棄にならず違う分野のことを試していることが意外で、主人公はなぜだかわからないが自分を信じている人だったのだろう。 -
さわやかだ。兎にも角にもさわやか。こんなに濃ゆい一日があるなんて。最後の展開もびっくり。
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以前読んだ雨鱒の川がとても素敵な話だったので、また川上さんの本を読んでみた。私自身も上京した身なので、東京に対する思いには共感できるところがあった。
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青春の24時間は、長い。とても、濃密な時間。
その濃密な時間を、最初はとっ散らかすような感じで、混沌とさせ、
そして、丁寧に一つずつ、すっきり最後は、さわやかにまとめあげられた
気持ちの良い本です。
時には、ちょっとキュンとして、さわやかなこんな本もよい。 -
あの1日がなければ違った人生になっていたことだけは確かだ・・・
自分には,とてもたくさんありそうだ・・・ -
でも川上