アジア新聞屋台村 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464153

感想・レビュー・書評

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  • 高野秀行さんは、「ワセダ三畳青春記」で描かれたボロくて狭くて楽しい早大近所のアパートで暮らしていた時期の99年から03年までの5年間、時々アジアの冒険を挟みながら、約5国のアジアの在日外国人のための商業新聞社の編集顧問の仕事もやっていた。新聞社と言いながらも実際ははちゃめちゃな社員と社長を有した、冒険的な編集だったのだが、これはその記録である。

    詳しくは読んでもらうとして、文庫本紹介に、これと「ワセダ三畳青春記」と「異国トーキョー漂流記」とが、姉妹編を成していて、自伝的青春物語であると紹介されていた。へー!そうなんだ。3冊ともなんかフィクションのような内容だけど、実際はバリバリのノンフィクションなのである。と思った所でひとつアイデアを思いついた。

    高野秀行さんを副主人公にして、映画を作れないか?

    絶対面白いと思うんだけどな!どこかのプロデューサーさん!原案権は主張しないから、作ってくれないでしょうか!!

    【高野秀行をテーマにした映画】
    普通の早大生から社会人になった青年が、その時々で幼なじみの〈高野秀行〉と交流する物語。

    高野秀行と幼馴染で共に成績優秀者で一緒に早稲田大学に入学した早大生の存在だけが創作。あとは全て事実で構成する。怪獣を追っていた時のメデイア巻き込んでの騒ぎも、アマゾン源流冒険も、ミャンマーアヘン王国潜入も、三畳一間のめちゃくちゃな下宿生活も、アジア新聞も、東京在住外国人から外国語を短期間で学んで翻訳本まで出した経緯や、次々と単行本を出している様子など「まるで創作のような話」が、全て「事実を元に」描かれる。そして、早大から真面目な会社に就職して長時間労働に苦しむ幼馴染は、最初こそは「コイツ、負け組だ」と優越感に浸っていたが「真面目に勉強して真面目に働いているオレはなんなのか」と悩み始めるのである。

    キャストは、真面目な早大生に伊藤健太郎、高野秀行に賀来賢人(「今日から俺は」の2人)を希望。

    • goya626さん
      「今日から俺は」は最高でしたね。ふむ、このキャスティングは意外といいかも。
      「今日から俺は」は最高でしたね。ふむ、このキャスティングは意外といいかも。
      2020/05/09
    • kuma0504さん
      いいでしょ!原案権は主張しないから、ホントに直ぐにでも作って欲しい!
      いいでしょ!原案権は主張しないから、ホントに直ぐにでも作って欲しい!
      2020/05/09
  • 私はかつて、新大久保でほぼ中国人だけの企業に勤めたことがある。その時は随分、なんじゃこりゃ!?な経験があったのでこの本もどこかで、そうだろう。と思って読み始めた。読み始めたら私がその会社で遭遇したことはまだ可愛い方で、著者の働いていたエイジアンはその何倍もなんじゃこりゃ!?で、斜め上を行きまくっててカオスだった(笑)読みながら私も何度、椅子から転げ落ちそうになったことか(笑)

    日本社会、ひいては日本企業で通じることはいっさい通じない、ルールも何もあったもんじゃない。なのに成り立つのだから、ひぇー!!!である(笑)
    だけど、読み進めていくうちにそこで働いている多国籍なメンバーが自分勝手というよりも、他人や会社のためではなく自分のために働いていたり、エイジアンを襲った危機にもグラつきもしない。そんな逞しい姿を読んだ時に、この姿こそ今のこのご時世で日本人が見習う姿ではないか!!!と強く共感した。
    そしてこの本に出てくる登場人物は1人1人、個性、キャラが立っているので読んでて本当に楽しくて面白かった。

  • 魅力的な人たちにたくさん出会える本。こんな生き方があるのか、こんな考え方があるのかと、普段凝り固まっていた頭が少し柔らかくなったように思う。自分の生き方は自分で決めていく。自分の好きなことを見失わないよう、もっと柔軟に生きていきたいと思った。

  • ひたすら無謀とも言える旅に出てしまう高野さんが5年に渡り関わったアジア新聞社でのエピソードを綴った本です。日本人の中だと異彩を放っている自由人である彼が、アジア人の坩堝である新聞社にいると急に常識人になってしまうのが面白く、恋愛に対してもフラグをボキボキ折まくる姿が可愛らしいです。やはり僕はこの人の文章が好きなんだな。

  • 高野秀行さんの著書、これが3作目。
    「ワセダ三畳青春期」がとてもおもしろかったので、それ以来良く読んでいる。
    今回は、主人公である著者が、ひょんなことから「エイジアン」という新聞社の編集顧問になってしまったというお話。
    劉さんという台湾人の社長を筆頭に、その新聞社には様々なアジア圏の国籍の方が働いているが、とにかく皆が皆ぶっ飛んでいる。日本人の感覚からしたらまともなことなど何一つ存在しない。
    序盤は次々と起こるハチャメチャストーリーが紹介されている。
    しかし、さすがのハチャメチャぶりに次第に不満を募らせる著者。そんな著者の葛藤と、まさかのラブストーリー的展開で読者を引き込む。
    終盤になり、改めてエイジアンという会社、そこで働く人たちの良さに気付くものの、もう自分の役目は終わったとばかりに、エイジアンを去っていき物語は終了。
    正直読み物として、この本の登場人物に触れるには最高に楽しい。しかし、いざ一緒に働くとなったら、とても私では著者のように楽しめる自信はない。良い意味で言えば個性的だが、悪く言えばただの非常識人だ。著者には感心しかない。
    しかし、そう感じてしまった自分がとても小さく感じたのもまた正直なところだった。私は本当に小さい世界でしか生きていない。なんと視野の狭い世界で生きているのかと。
    もっと視野を広げて、大きな心で物事を受け止め、許せることのできる人間になりたいものである。

  • 高野秀行のフィクションは、基本的に体験に基づくもので、取材して書いたものではないと思う。勿論このままではなく、色んな体験を合わせて一つの物語にしたのだろう。だからフィクションだけど語り手は高野秀行なのね。
    『またやぶけの夕焼け』は少年期の物語で、あれも良かったが、青春期の物語はほろ苦さと切なさがいい。朴さんとの恋愛未満の関係は、今どきの青春ものにはない上品な哀感がある。
    アジア人の魅力、日本人の特徴もよくわかって、若者に積極的に薦めたくなる。ろくに外国に行ったこともなければ、外国人と深く関わったこともない奴に限って、近隣アジア人を貶めるようなことを言う。そんなつまらない、嫌な大人になる前に、高野秀行を読むべし。世界が広がるよ。

  • おもしろかった。わたしはほとんどなじみのない、アジアの国や人のことを教えてもらえる感じで楽しい。高野さんの、仕事がすごく楽しそうだったり、いきづまったり、って様子で、「仕事」とか生き方についても考えさせられる感じ。自伝的エッセイなわけだけどいちおう、「小説」ということで、恋愛とかなんとなくキレイなまとまりみたいな小説ぽい部分もあったりして、そこがちょっと気恥ずかしかったんだけど(笑)。でも、読後感もなんだかさわやか。

  • 最高。なんか、泣ける。

    高野秀行氏と言えば、いつも無茶苦茶なことに自ら突っ込んだり時に巻き込まれたりして大変な思いをしつつ、それを面白さに変換しながら、やりたいことをやって、したたかに生きる人だ。
    簡単に言えば、自由で柔軟な人。読者は、そこに憧れるんだと思う。ほんとうは私だってこんなふうに生きてみたい、と。

    本書は、著者の自伝的一冊で、タカノ青年があるアジア系新聞社"エイジアン"で働くことになった数年の顛末を描いている。スタッフはほとんどがアジア系のメンバーで、著者以上に自由でしたたかで驚くほどいい加減である。そもそも読者にとって高野秀行氏こそがもっとも変で魅力的な生き物であるのだが、この新聞社には、彼を圧倒するパワーと奔放さを持ったさまざまな人々が集まっている。あのタカノ青年が、振り回されっぱなしである。エピソードのすべてが、日本の会社ではあり得ないもので、普通の日本人ならついていけないものばかりだ。だがそこにタカノ青年は魅力を感じ、新聞づくりに奔走する。

    タイトルの"アジア新聞屋台村"とは、この新聞社を指すもの。屋台村のように、それぞれの特色を活かしたさまざまの料理を提供する。ある料理が不評ならすぐにやめて別のものを出す。客が少なければ座席を減らすし、増えれば拡張する。自由で柔軟である。
    だからこそ発生してしまう、ヘンテコな状況を彼らはどう切り抜けるか?見事と言うほかない無茶苦茶さとしたたかさに、読者は爆笑しながら時に涙することになる。
    全六章プラスエピローグからなる本で、もう全編最高におもしろいのだが、とくに第六章の盛り上がりはグッとくる。エピソードの強さに目が行きがちだが、それを生かす著者の筆力があってこそである。渦中にはまり込んで右往左往したあと、それをちゃんと検証し直す冷静さがある。その冷静さこそが、"なんか泣ける"奇妙な味わいを生んでいると思う。

  • 高野秀行の自伝的小説である『ワセダ三畳青春記』や『異国トーキョー漂流記』が面白かったので、3作品目も読んだ。

    『ワセダ三畳青春記』では個人的な出来事、『異国トーキョー漂流記』では個人的な人との交流がテーマとなっていたが、この作品は組織における人との交流がテーマになっていると思う。
    作品のテーマが個人→組織へと規模が大きくなっているのだ。

    この作品を読んで、日本にエイジアンのような面白い組織があったことに驚く。
    一般的な日本の会社とは全く異なる組織だ。
    私は今まで一般的な日本の会社しか会社を想像できなかった。いい加減なシステムでも崩壊しない会社を想像できなかった。
    組織は意外と生命力に溢れてるのかもしれない。

  • おもしろかった!
    登場人物それぞれが、それぞれすぎて現実離れしてるけどそれが屋台村で価値観の違いが新鮮
    台湾の夫婦の話おもしろいね
    新聞読んでみたいな~と思った

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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