弁護側の証人 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464290

作品紹介・あらすじ

ヌードダンサーのミミイ・ローイこと漣子は八島財閥の御曹司・杉彦と恋に落ち、玉の輿に乗った。しかし幸福な新婚生活は長くは続かなかった。義父である当主・龍之助が何者かに殺害されたのだ。真犯人は誰なのか?弁護側が召喚した証人をめぐって、生死を賭けた法廷での闘いが始まる。「弁護側の証人」とは果たして何者なのか?日本ミステリー史に燦然と輝く、伝説の名作がいま甦る。

感想・レビュー・書評

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  • 見事に著者の思惑に引っかかりました。
    騙されたのに悔しさが全くない。
    むしろ、こんなすごいものが昭和30年代に書かれていたとは!という驚きの方が勝りました。

    私たちは書かれたものから、背景を読み取り理解していくと思うんですね。その時に自らの経験、情報を基に推測しながら読み解いていくと思うのです。
    この本はまさにそれを利用したトリックとも言えるのではないでしょうか。
    読者に与える情報を著者が上手くコントロールして、読者が見える景色をごまかします。
    そのテクニックがとにかくすごい。
    正解はAなのにBと思わせ、ストーリーが進むとCなのではないか?とまで思わせ混乱させる。
    単純な事件なのに、よくこんなにも遠回りさせるよなぁ。
    何もかもしてやられた感があるのです。

    ラスト、途中まで推測していた自分の推理がガラガラと音を立てて崩れていきます。(この絶望たるや……)
    が、崩壊と同時に素早く新たな推測を組み立てている自分がいました。

    ”とくに、この事件のような、一見単純と見える性質のやつは、見る者にしばしば大きな誤謬を植えつけるものでしてな”(抜粋)

    まさにその通り。事件自体はホントに単純なのです。
    語り方一つでこんなにも見え方が違ってくるとは!
    読者の視点の置き方がポイントになってきます。(それがラストまで分からないからすごいのです、このミステリは)

    ここまで素晴らしいと、騙されたほうも悔しさとか怒りとか全く出てこない!笑
    むしろ芸術性の高さに痺れます。

    こちらの書籍は一度絶版になったミステリとのことです。復刻するだけの価値は十分にある!
    巡りあえてよかった。
    稀書復刻とはこの本のことですね。

  • 東野圭吾や伊坂幸太郎そして、湊かなえがいない時代に本作が出版されている事が凄いと思う。

    ヌードダンサーのミミイ・ローイは八島財閥の杉彦と運命的な出会いを果たし恋に落ちる。

    22歳のミミイ・ローイは前職から杉彦達の家族から受け入れられない中、健気に若夫人をこなそうとする・・・

    そんな中、矢島財閥の当主の八島龍之助が何者かに殺される?


    犯人が死刑判決を受けたところから物語は始まる・・・




    何故この題名と思う人は是非お読みください!
    昭和の時代のミステリーとしては価値がある!
    尊属殺人という言葉が懐かしい!
    道尾秀介さんの解説も良です!

  • この本を読み終わった時、え?と頭の中が混乱しだしてつい最初の章とその次の章を読み返してしまいました。

    序盤で植え付けられたミスリードによって、裁判シーンから結末で大きな衝撃を受けると思います。
    少し時間をかけて2週目を半分くらい読んでみたのですが、その時はより主人公の世界に入り込んで読むことが出来ました。

    また、本編序盤で登場した、裁判で重要証拠物件として提出された、主人公がストリップ劇場の元同僚に宛てた手紙が登場した時は、少しの間読書を止めてその意味を考えてみました。
    しかし結局結末を読み終わるまで分かりませんでした。良い意味で悔しかったです。

    本作は古典とまでは言いませんが、かなり昔に書かれた小説のため、古い文体で少々読みづらいと思います。
    私もこの作品について完全に理解できたとは言い難いですが、とても良い読書体験が出来ました。

  • ここまで滑らかな叙述トリックが昭和30年代に作られていたことに驚愕。

  • 「東西ミステリーベスト100(1986年版)」の日本篇において、第40位に選ばれていた作品。
    同書による本作品の〔うんちく〕を抜粋すると、
    昭和三十三年、映画「情婦」を観た二十四歳の著者は憤慨した。「なんて低俗な題だろう!」と。原作はクリスティーの「検察側の証人」。しかし配給会社は「この題では犯人が割れてしまう」と考えて「情婦」と名づけたという。「よし、私はこの題でも犯人の割れないミステリーを書いてみせる」と決心して、「弁護側の証人」が生まれた。
    とあり、そのことも念頭に置いて読み進めました。
    その結果、「検察側の証人」とは異なるトリック(登場人物が仕掛けたわけではない)に見事騙され、第40位に選ばれたのも当然だなと感心しました。
    また、「この題でも犯人の割れないミステリーを書く」という決心を、高いレベルで達成した小泉喜美子さんに敬意を表したいと思います。
    不慮の事故により、51歳という若さで鬼籍に入られたのが残念でなりません。

  • しっかりと騙された。
    表現が回りくどいところもあり
    読みにくさを感じながらなんとか読了したが
    話の構成や叙述トリックはすばらしい。
    読み終わった後すぐに序章だけでも
    読み返したくなるし、道尾秀介さんの解説もすき。

  • 「王様のブランチ」で新川帆立さんが紹介していて、ミステリー作家がおすすめするミステリーってどんな?という興味で読みましたが...
    読み終わった瞬間「もう一回読もう」と思うくらい見事にハメられました。
    一気に読める長さだし、私のようにあまりミステリーを読まない人にも楽しめる小説だとおもいました。

  • ストリップダンサー、ミミイ・ローイこと漣子は、八島財閥の御曹司・杉彦と結婚し、玉の輿に乗った。

    杉彦の親、姉からは認められる結婚ではなく…

    杉彦の父・龍之助が何者かに殺害され、漣子が容疑者として、逮捕され、一審では死刑に…

    真犯人は⁇

    一審で死刑にも⁇ だが…
    捜査があまりにも杜撰で…
    これなら冤罪事件が多くて当たり前かと。
    ちゃんと裏付けとる捜査をしていれば、すぐに解決してる事件だったのに…

    弁護側の証人が、…だとは。
    よく証言台に立てたと。上層部からの圧力はかからなかったのだろうか…今なら無理だろう。
    よく立ったと思う、自らの将来を捨ててまで…
    人ひとりの生命がかかっていたわけだが…
    弁護士・清家と証人・緒方との間にどんなやり取りがあったのか⁇
    緒方の心境の動きを見たかった。

    結局、龍之助は漣子を認めていたなんて。
    やるせない…
    杉彦がもっと龍之助とちゃんと話をしていれば…
    何も問題はなかったのに。
    杉彦がもっと大人だったら…

    もっと計画的な殺人なのかと思ったが…

    入手困難になった、という帯に惹かれたが…
    現代に読むには、単純すぎて。

  • 道尾秀介さんの解説にプラス★です。
    怪しいと決めつけて読み始めたから、その分辛い評価になってしまいました。
    何も予備知識無く読んでみたかったですが、帯が無かったら手に取らなかったのも事実。
    最近、こっち系が多かったので、別ジャンルを読んでリセットしなければね。

  • 言い回しやたとえ話がまわりくどくて読みづらいなと思っていたら、最後の方の法廷で"あれ?"と…。
    騙されていたことに気づく!!
    そこを読んでから最初の方を読み返すと全てスッキリ!

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著者プロフィール

1934 - 1985。推理作家、翻訳家。1963年に『弁護側の証人』でデビュー後、多くの作品や翻訳を手がけたほか、ミステリーに関するエッセイなども。歌舞伎好きとしても知られ、論考を残している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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