エンド・ゲーム 常野物語 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464320

作品紹介・あらすじ

『あれ』と呼んでいる謎の存在と闘い続けてきた拝島時子。『裏返さ』なければ、『裏返され』てしまう。『遠目』『つむじ足』など特殊な能力をもつ常野一族の中でも最強といわれた父は、遠い昔に失踪した。そして今、母が倒れた。ひとり残された時子は、絶縁していた一族と接触する。親切な言葉をかける老婦人は味方なのか?『洗濯屋』と呼ばれる男の正体は?緊迫感溢れる常野物語シリーズ第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • 常野物語の三作目。
    一作目の『光の帝国』では、
    不思議な力を持つ 様々な常野の人々が紹介された。
    二作目の『蒲公英草紙』は、記憶を「しまう」春田家の物語。
                                                                                                                                    
    そして、今回は拝島家の「裏返す」お話。
    母親・暎子が会社の慰安旅行に行った先で意識不明に。
    娘・時子は、助けを求めて、ある番号に電話をかける。
    それは父の失踪後十数年間、冷蔵庫に貼ってあったメモにあったもの。
    そうして出会うことになった、黒曜石のような目をした長身の男・火浦。
    自分は「洗濯屋」だと名乗る。
    「毎日ビクビクして苦しまずにすむよう、あんたたちを解放したい」
    そう語るこの青年は、どこか不気味で、不吉な かおりを漂わせる。
                                                                                                                                                                                                    
    この小説は全部で324ページ。(単行本の方)
    おどろおどろしい雰囲気に支配されながら、読み進めること320ページ。
    最後の4ページで急に景色が変わる。
    えっ?  なに、これ!? 
    そういえば、『光の帝国』で語られた拝島家の物語、
    タイトルは「オセロ・ゲーム」だった。

  • 常野物語シリーズ第3段。
    蒲公英草紙のような、ほんわかする読後感はなく、"で、どうなるんだろう?"というモヤモヤ感が残ったが、それが恩田ワールドだなのかもしれない。

    常野ゆかりの人たちのなかでも、特に強い力を持っている両親から、その力を受け継いだ(まだその力は開花しきっていないが)時子の前に、洗濯屋の火浦が現れる。
    時子も初めは火裏が敵なのか味方なのか計りかねていたが、いつの間にか二人は婚約していた。が、火裏の方は、時子とその両親を洗濯したことのアフターサービスとして結婚を決めたという。
    人の真意を探りながら生きるのは、怖いし寂しい。

    最後に時子の父が、裏返したり、裏返されたりすることが続いた結果、かなり均一化が進み、もはやそういうことをする必要がなくなってきたと言いながら、火裏と時子の子どもが生まれたら、新たなゲームプレイヤーになるかもしれないと言った台詞も意味深。

  • 恩田さんがあとがきで「「常野物語」のシリーズ三作目ということで非常に緊張した」と書かれていますが、他二作を相当意識されたのだと思います。特に「蒲公英草子」とは極端に世界観が異なります。「蒲公英」と対比させるかのように、現代・都会を舞台にし、登場人物を最小限に絞り、光のあたらない闇に蠢く世界を描いたのがこの作品だと思いました。

    思えば一作目の「光の帝國」で私が苦手と思ったのが〈オセロ・ゲーム〉でしたが、この作品はまさにその長編でした。「光の」でも 裏返す という表現がどうしても頭にイメージできないままでしたが、この作品ではさらに 包む・叩く・洗う などという抽象的な動詞が追加になってさらに混乱。シリーズ外の「失われた地図」で、撫でる・押し込める・縫う なんて表現が出てきてこちらも困惑しましたが、恩田さんのこの手の動詞が出てくる作品はなかなか頭の中でイメージするのが難しいです。

    一方で、この作品では「脳」という字が実に46ヶ所にも出てきます。「脳」と言っても色んなイメージが浮かびますが、「羊羹かパウンドケーキでも切り出したみたいに、綺麗な立方体の形に脳が取り出されていた」という感じのサラッとした表現が故に漂う不気味さにはゾッとするものがありました。

    動詞は抽象的なのに、名詞は物凄くリアル。実に巧みな構成だと改めて思いました。

  • 常野物語の第三作目。

    第一作目の「光の帝國」で、出てきたオセロ・ゲームの拝島家族の続編で、二作目の「蒲公英草子」より読みやすいが、内容が複雑すぎて、読後の納得感とか満足感というのが、本作においては感じられなかった。もちろん、これは私の理解力と想像力の低さであるが、いくつか登場人物の登場理由、常野と力の関係などわからないところをいくつか残し、いつのまにか結論に至って終わってしまったというのが、正直な感想。

    その一つに、本作では父・拝島肇の失踪理由、「裏返す」力の見え方の違いが過去の回想より明らかになるが、なぜこの力が必要となり常野一族に備わったのかが、わからないままであるということだ。

    「裏返す」力は、遠耳やしまう力、空を飛ぶ力、未来をわかる力等とは違い、「欲しい」力ではなく、「欲しくはない」力である。
    だからこそ、この力を消してしまう存在が必要だと思っていた。そのため、本作での「洗濯屋」の登場は、ストーリー展開として面白く感じた。

    「生命の歴史は、突然変異の歴史だ。ある生命体が隆盛を極めると、必ず新しい何かが出てきて次の地位を狙う。主役交代劇は唐突にやってくる。ある日突然、再び次のゲームが始まらないと誰が決められる?」とあるように、暎子は肇に裏返され「裏返す」力を突然手に入れた。洗濯屋は「裏返す」力を包むために備わった力。今後、暎子と高橋の子、時子と火浦に子が誕生した時、その子供達の持つ力は、今の火浦の力や時子の力とは異なる力を持ち、力が世代を超えて進化し、その進化に応じたゲームが繰り返されることを伝えている。

    私の予想に反したのは火浦の「あんたたちはある種の精神疾患に反応しているんだと思う。そして、俺は精神疾患-それを疾患と見なすか特質と見なすかは人によると思うが-は、古い生命体の一種なんじゃないかと思う」と、時子に説明をした時、母・暎子の高校同級生で脳外科医の高橋伸久が本当は力があったのではないかと予測したが、見事に外れた。

    もしかしたらこの続編が、発表されるかもしれないが、できれば、ソフトな常野一族との関わりをつけて欲しいと、ほんの少し考えてしまった。

  • 前2作とはまた違った雰囲気だったけど、話の展開のテンポもよくノンストップで読めた。シリーズは、続き、というより地続きの世界観を楽しむような連作なので、どれも違う時代、登場人物でたっぷり味わえた。
    エンド・ゲームはファンタジー慣れしてるとよみやすいのかも。

  • 常野物語は大好き。でも、3作品のなかでは1番微妙かも。続き読みたいなぁ。

  • 今までのような常野の話はあまりなかったけれど、拝島家の話です。
    続きが気になって一気に読んでしまう程引き込まれました。あとがきに常野物語はまだ続くと書かれていたので早く続きが読みたい(>_<)待ち切れない!

  • 常野物語の3作目
    特殊能力を持つ常野一族の家族の話
    その能力ゆえの苦しみや葛藤から逃れるために下した家族の決断。
    特殊能力者同士の派閥や対立も絡んで複雑な状況に追い込まれる。
    『洗濯屋』に記憶を書き換えられる家族。
    能力を消してしまえば、この状況から解放されると奔走した結果、ラストにどんでん返しが。

    最後はチョットしっくりきませんでしたが、全編通じて物語に引き込まれ楽しめました。

  •  光の帝国、蒲公英草紙 は、ほっこり、ウルっと、ゾクっとする。で最高に楽しめのに対して本作は終始「???」だった。
     世界観がまったく掴めない。
     章毎の時系列が前後してるのは良いとして、章内で更に時系列がバラバラで把握しにくい。
     能力面の表現を掘り下げすぎた結果、内面世界、象徴世界、心理世界などの濫用。ここらへんの表現があまりにも抽象化されてて、「比喩になってるのか、意味はあるのか」すらわからない。
     なんだったら記実子、亜希子、美耶子、篤あたりの「希望の続編」を早く読みたい。

  • 単行本既読。
    改めて読み返すと、ますます「常野一族」の全貌というか組織図が気になりました。と言っても、飽くまで共助のための緩い繋がりなんだと思いますが。
    在野に散って一族同士の婚姻を避けていた常野の人々。
    しかし、両親がその禁を犯して生まれた拝島時子には、無自覚ながらも強大な力があります。
    「裏返す」力。
    何を裏返し、裏返したらどうなるのか。それは明らかではありません。
    この孤独で空虚なゲームを終わらせるために現れた、「洗濯屋」の火浦。彼もまた、気がつけばゲーム・プレイヤーとして拝島家に迎え入れられました。
    本当に在るのか?という命題を、超常能力にも一族にも、そして世界に対しても問うような。<常野物語>の世界を広げてくれる一冊です。
    いつか第四作が書かれることを願います。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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