ベーコン (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 859
感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464443

作品紹介・あらすじ

初めてだった。男から、そんな目で見つめられたのは-。家族を置いて家を出た母が死んだ。葬式で母の恋人と出会った「私」は、男の視線につき動かされ、彼の家へ通い始める。男が作ったベーコンを食べたとき、強い衝動に襲われ…表題作ほか、人の心の奥にひそむ濃密な愛と官能を、食べることに絡めて描いた短編集。単行本未収録の「トナカイサラミ」を含む、胸にせまる10の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 食べ物がタイトルとなった短編が10篇。
    婚姻外の男女の関係がたくさん出てきた。全て明確な終わり方をするわけではないので、着地点がよくわからず不思議な感覚になった。

  • ミートパイとか、カツサンドとか。
    煮こごりとか。

    ご飯をテーマにした話なんだけど。


    私が今まで読んできたご飯の話は、どれもほんわかしているものが多かったけれど。
    この本は、どれもなんだかディープ。

    題目と共にある判子がとても可愛い。

    “何かを食べたい、ということは、
    誰かを抱きたい、ということだ。”

  • 面白い短編集でした。
    特にトナカイサラミが好きでした。

  • 思っていたよりずっと官能的‥食べるも愛するも本能で、理屈はいらないのだと思う。
    あと、男と女はタイミングが全て。

  • ベーコン、ほうとう、煮こごり、水餃子などの食べ物をモチーフに、10歳の少女から60過ぎの老人までそれぞれの、多くは不倫関係にある男女の、人生の断片を描いた短編集。
    日曜にだけやってくる男を待つ女(ほうとう)、会社で倒れた後、体調は戻ったのに出社できなくなった男(クリスマスのミートパイ)、謎の老人の死を巡り右往左往する女たち(煮こごり)…。
    「煮こごり」の中に『針の先ほどの空白のようなもの。それが何なのかは謎だった。自分がこうまで焦がれるのはそのせいとも思えたし、あるいは焦がれるということは、相手の中にそのような空白を図らずも見つけてしまうということなのかもしれない』という件りがあるけれど、不倫を取り巻く人間模様の、空白感、空虚さ、曖昧さ、不確定さ、あるいは大人の割り切り、みたいなものが全編を漂う。
    普通の主婦が見知らぬ青年と関係してしまう「アイリッシュ・シチュー」の艶かしさったら何とも言えないけれど、しかしこうも不倫の話が続くと最後は少々ぐったりではありました。。。

  • はっきりとした感情が書かれず、ゆらゆらしているのにしっかり胸に突き刺さる、寂しく苦しい恋愛の短編集。
    救いがあるような無いような、なんとも言えない切なさが残った。
    井上荒野さんの作品は何冊か読んでいるけれど、この読後感がたまらない。
    静かに燃えている感じ。

    料理のタイトルが並ぶ短編集。
    普通ではない歪な恋愛を描いているのに、知らない世界なのにどこか共感してしまう不思議。
    江國香織に似ている気がする。
    どれも面白かった。

  • 料理の描写が秀逸。後味は悪い。

  • どれも不穏な味わいの短編。
    食べ物がおいしそうだったり苦そうだったり。
    カツサンドとか煮こごりとか、食べるときに思い出しそう。

  • どうしても煮こごりとゆで卵のキーマカレーがよかった。終わり方もどっちもすき。煮こごりみたいな事はさすがにもう少し踏み込んでいるからないけれど、有り得なくはないのよね。結局すべては嘘かもしれない。まあしんでも解らないかもしれないのは間違いないな。



    ただ、たぶん、変わらないということ、続くということに突然、立ちすくむような気分に襲われ、…


    それを方便とは思わなかったけれど、靖司が離婚することはないだろう、と柚衣はあきらめていた。今できないことは何年経ったってできない。


    …自分が「日陰の女」になったような気持ちになる。
    もっとも靖司に言わせれば、柚衣のことを「隠している」つもりはないのだそうだ。妻に柚衣のことを明かさないのは、「彼女をよけいに傷つけたくない」からで、妻にもほかの誰にでも、聞かれれば話す。でも聞かれなければ、自分からは話さない。男っていうのはそういうもんだ、と言う。


    靖司が完全に自分のものになったなんて夢みたい、と。


    恋人とは半年前に会った。それは偶然の出会いだったが、私たちはお互い魅かれ合い、いっそう魅かれ合うための時間を重ねてきた。

  • 食べ物が美味しそう、不穏な感じがよい

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著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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