失われた町 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464986

作品紹介・あらすじ

ある日、突然にひとつの町から住民が消失した-三十年ごとに起きるといわれる、町の「消滅」。不可解なこの現象は、悲しみを察知してさらにその範囲を広げていく。そのため、人々は悲しむことを禁じられ、失われた町の痕跡は国家によって抹消されていった…。残された者たちは何を想って「今」を生きるのか。消滅という理不尽な悲劇の中でも、決して失われることのない希望を描く傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 発売当時、単行本を読んでから
    数年ぶりに再読

    ある日、町から人々が消えた。
    「消失」現象が定期的に起こる世界
    家族や友人を失った人たちと、消失に対抗すべく活動する「管理局」に属する者達の日々

    消失の現象自体、消失に関する管理局の人間たちの持つ能力、キーアイテムで出てくる古奏器とその再魂(調律)、
    同一性障害の治療として人が
    本体、別体に分離する現象、など

    三崎さんが1アイデアで短編一作
    いけるような要素(テーマとしてはすでに扱っている)が散りばめられていて濃い。

    数章にわたって、立ち位置の違う人物達の視点で消失に触れ、繋がっていく。
    描かれてない消失を経験した人達もいるのだろうけど、次の別の消失に向けて希望を繋げていく線(人のつながり)が描かれている。

    悲しみがあり、全体的に静かな話かと思いきや章によって動きがあり、別の話を読んでいるような気分になる。

    今のコロナの状況と照らし合わせることも出来る(死ではなく、二度と会えなくなること)だけど、亡くなった親族や突然引っ越して誰もいなくなった友の家とか、今ここから見える場所、建物にある思い出のことを考える。

    前に読んだ時より、沁みた。

    追記:
    読んでいる最中に「ニセモノの妻」を購入
    「失われた町」の中にも妻の本体、別体と生活する夫が出てきたりする。
    「古奏器」は別の話に出てくる職人を思い起こす。

  • 主人公達にとって
    作者にとって
    「町」とは何なのか。
    考え続けても分からないまま読み進めたけど
    何かすごく大切なものなんだろうかな。

    カタカナが多いシーンは苦手だったけど

    ファンタジー強すぎる作品なのに
    現実みたいに捉えられた。
    市川拓司さん並みに有り得ないファンタジーなのに。

  • 前提がぶっ飛んでるわけで。思いっきりファンタジーの世界なら割とすっと受け入れられるのに、現代の世界観に似ているのに、なんかちょっと違う!みたいな時に感じる違和感はモヤモヤしてたまらん。
    でもそのモヤモヤが次第に癖になってくるというか。クラブでテクノをかける時にはじわーっと音程をずらしてくんだとかなんとか言ってた気がするけど、そういう感覚だろうか。

  • 「町の消滅」という現象が何か現実世界での、自然災害かなにかの比喩なのかと考えながら読んでいました。読み進めていくうちに、それは魔法のようなもので、本作品はファンタジー要素が強いことを徐々に感じました。

    自分自身がファンタジーが得意ではなく、どんな作品かも前情報を入れずに読んだので、途中で何度か読むのを止めてしまいそうになりました。ただ、話の展開とか、文章は感覚的に美しい感じがしました。

    それでも理解不能な町の消滅とか、その他の作中で起こる現象を、理屈で理解しようとすると異物を無理に飲み込むような感じがして、それは少し苦手だなと感じました。

  • 次男おすすめ。意味がわかんないながら圧倒的な現実感。まぁまぁおもろい。

  • ある日、突然にひとつの町から住民が消失した―三十年ごとに起きるといわれる、町の「消滅」。不可解なこの現象は、悲しみを察知してさらにその範囲を広げていく。そのため、人々は悲しむことを禁じられ、失われた町の痕跡は国家によって抹消されていった…。残された者たちは何を想って「今」を生きるのか。消滅という理不尽な悲劇の中でも、決して失われることのない希望を描く傑作長編。

  • やっと終わった
    三十年ごとに町が失われるという世界で
    生きる人々のお話でした
    そんな世界で、失われないように戦ってる人たちもいました
    「刻まれない明日」にも登場する人たちも本作に
    いました
    町が失われる他に、人が分離するっていう設定も
    気になりました

  • 独特の世界観だけれど、細かく設定されていて説得力がある。
    初めは理解できなくても後から繋がってくるので引き込まれる。
    消滅に直接立ち向かう人も、それを支える人も、意思がとても強い。
    その一方で、自分が失われると分かっているのに何もできない、月ヶ瀬など「失われる町」の住人や管理局職員のやるせなさはいかばかりかと思う。
    いつ自分の元にかえってきてくれるのか分からない人を、傷つきながらも待ち続ける茜や勇治の姿は切なかったが、それだけ人を信じて待てるのは素敵なことだと感じた。
    統監と中西さんが本体と別体の関係だったとは、最後まで驚かされた。

  • 再読。連作短編集のような長編。各章に素敵なタイトルがついていて主人公となる人がそれぞれの章で入れ替わる。登場する女性が幼い女の子から年を重ねた女性までみんな魅力的。三崎さん女性を描くのがうまいんだよなあ。人の力ではどうしようもない喪失に立ち向かっていく勇気と人のつながりに、時に涙し癒された。『となり町戦争』でワードしか出てこなかった世界が緻密にに構築されていて、この世界が『コロヨシ』にもしっかりとつながっている。

  • 不思議の不思議。
    読み始めて、どんどん読んでいける、引き込まれる。
    でも、はっきりとわからない。バラバラの話。
    特に私は最初に出た登場人物の名前を覚えないので不思議に輪がかかる。
    でも、最後にすべてが繋がる。そして一番最初の章を読み返す。
    すべてが納得! 不思議、そして面白い本。
    私は好きだ!

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著者プロフィール

1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2004年『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞しビュー。同作は18万部のヒットとなり直木賞にもノミネートされた。著書に『廃墟建築士』『刻まれない明日』『コロヨシ!!』『決起! コロヨシ!!2』など。

「2021年 『博多さっぱそうらん記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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