- Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087465174
感想・レビュー・書評
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よく知られている新撰組ものだが、土方、近藤、沖田など10数名の関係者の視点での40以上の短篇が重なって大きな物語となっている。主なメンバーは勿論だが、敵対する関係者も含めて、その心情がクールに描かれていて読み応えがある。関係者の繋がりがクリアになった。著者のデビュー作。松田哲夫さんの解説も良かった。
幕末物、特に新撰組関係は、もういいかなと思っていましたが、木内さんのデビュー作ということで手に取りました。土方歳三が主人公ですが、よく知られているメンバーでは沖田総司の人物像が印象的でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いやぁ、おもしろかった!
とにかく誰かにオススメしたくなります!!
500ページを超える分厚い本を手に取ったとき、おもしろそうだと思いながらも気後れしたのが、うそのよう。
読み始めたら、とにかく面白い。
芹沢鴨の一件が絡んでくるあたりから展開が加速して、山南敬助が追い詰められ脱走するところまでくると、本を閉じることができなくなる。
新撰組やその周りの人々、一人ひとりスポットライトをあてながら、彼らの目線でそれぞれの出来事が語られ、物語が紡がれていく。細かく語り手が変わることで見えている側面がくるりと変わって、ミステリーを読んでいるようでもある。
物事を表面的に見ていたり、良い面だけを見て満足していたり、欺いていたり、欺かれていたり。とにかく次が知りたくなって、目が離せない。
今まで新撰組に対して関心を持ったことは無かったように思う。
大河ドラマ「八重の桜」を見ていて、悲劇的な印象ばかりが残る戊辰戦争の中で、斉藤一を演じていた役者の鋭いまなざしと寂しげな瞳の中の光が妙に気になり、新撰組に興味を持った。
配役によるイメージや脚本での描かれ方、人物に対する解釈によって、歴史上の人物への理解はずいぶん違ったものになるのでは、と予想していたけれど、この本の中の斎藤一は当初のイメージが重なる部分が多かった。
土方さんの参謀ぶり、沖田さんの天真爛漫さ、永倉さんの正義感が強くまっすぐなところなど、それぞれが持つ魅力が存分に描かれ、新撰組は「ただ乱暴な人切り集団だったのでは?」という私の先入観をあっさりと覆してくれた。新撰組初心者にもキャラクターの造詣がわかりやすくて、助かる。
近藤勇は、「リーダーとしての統率力に秀でた人」というより単純で素朴で表裏のない人で、思っていたよりずいぶん表面的なものに囚われている人に映った。だからこそ、感情をストレートに表現できない土方さんにとって、全力で支える価値のある大切な人。そこに魅力を感じた人たちは彼だけではなかったようで。
土方さんは最初に登場したときの何者にもなれない焦燥感にじりじりする様子と中盤のぶれなさの対比が興味深い。許しがたい部分も持ち合わせ、多くの人たちから恐れられているのに、一本筋の通ったところが彼の本質を知る人を魅了し、信頼を得る。彼の信じるものは、頭でっかちな『学』ではなくて、経験と観察に裏打ちされた事実のみ。
ナイーブで優しい性格を素直に表せない人。正直、近くにいたら面倒くさい人だと思うけど、本で読むとすごくまっすぐな人。周りが立ち位置を変えるからよくない評価を受けているけれど、本当は彼が絶対的な立ち位置にいる。そのことを知っている人が彼について好意的に語るシーンがとてもいい。
ひょうひょうとしていて相手を油断させるほどでありながら、物事の本質をさりげなく見極めている沖田さん。
三谷さんの「新撰組!」を見ていないので、詳しくないんだけれど
山南さんは確か堺雅人さんが演じていたはず。う~ん、納得!
本書だと若干浅い感じも漂うし弱さも隠せないんだけど、堺さんの瞳の奥がすーっと深い感じにぴったりだったのではないかと思います。
こうやって書いてくるとずいぶん息苦しそうな話に思えるけど、時折ニヤリとさせる場面もあり飽きさせない。
ままならなさ。せつなさ。
『幕末の青嵐』というだけあって、いっときも留まっていられない時代の流れの中で、精一杯生きて、自分たちの存在を必死で肯定した青春群像劇なのである。
「俺は人物が並みだから、こんな仕事ばかりお鉢が回ってくる」と永倉はつい呟いた。傍らで聞いていた斎藤は(中略)独り言のように言った。「普通でいられる奴が、一番強い。・・・(中略)生き残るには、普通でいることだ」(P171)
彦五郎は、彼らの奔放な生き方に憧れながらも、自分の暮らしもまた豊潤だと信じている。・・(中略)・・・どこまで行っても手に入らぬと思い込んでいた美しいものは、存外、自分のすぐ近くにあるものだった。 それを知ったとき、今まで感じたことのない確かな幸福が、その人物のもとを訪れる。 (P255)
「でも存外、よかれと思ってしたことが仇になることもあるんです。人が違えば感じ方や考え方が違うのは当たり前で、相手のことを全部わかったような気になっちゃ間違いがおきます」(P313)
気持ちのうえではどこにも属さぬと決めていたが、俺にも存外甘い部分があるとみえる。(P418)
あの激動の中で自分を失いそうになりながら、精一杯生きた人たちの言葉には重みを感じる。
今まであまり手に取ることがなかった歴史系の小説が俄然気になりだしました!-
macamiさん、こんにちは!
私は歴史小説ビギナーなのですが、おもしろかったですよ!史実をなぞる以上に、人物たちの口には出さない思い...macamiさん、こんにちは!
私は歴史小説ビギナーなのですが、おもしろかったですよ!史実をなぞる以上に、人物たちの口には出さない思いがよかったなぁと。まず1人1人の人生があって、それを浮き上がらせながら歴史をたどるというのが私には合っていました。
人と人との関わりにスポットライトがあたるような大河ドラマが結構好きなんですよ。
よろしければ読んで感想を聞かせてくださいね。2013/08/21 -
nico314さん
こんにちは♫いつもお気に入り登録ありがとうございます!(^^)!
私もこの本すごく気になります!
時代小説はほとんど...nico314さん
こんにちは♫いつもお気に入り登録ありがとうございます!(^^)!
私もこの本すごく気になります!
時代小説はほとんど読まないのですが・・
新選組は歴史を習ったころからなぜか大好きで。
三谷さんの「新撰組」は欠かさず見てました。
山南さん、そうです!今は「10倍返し」の堺さんです。
新選組は好きだといいながら、山南さんの存在を知ったのは恥ずかしながらドラマを見てからですが・・堺さんの山南さん素敵でしたよ♫
新選組の1人1人のことが丁寧に描かれているみたいで、ぜひ読んでみたいですφ(..)メモメモ2013/08/25 -
nobo0803さん、こんにちは!
とてもおススメです!読まれたら、ぜひ感想を教えてください!!
もともと、みおつくしシリーズや...nobo0803さん、こんにちは!
とてもおススメです!読まれたら、ぜひ感想を教えてください!!
もともと、みおつくしシリーズや葉室鱗さんの本はとても好きで、注目していました。
でも、実在の人を描いた本はそれらと違って作者のの目線で
彼らを評価して、肉付けをしていると思うとちょっと怖い(←わかりますか?)ような 気がしていました。
私にはとてもすんなり受け入れられました。
noboさんも気に入ってくださったら嬉しいです。2013/08/25
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初の木内昇作品です。
資料に基づく安定したベースの上で展開する文章の巧みさにすっかり虜になってしまいました。
新選組の結成から最後までを描いた物語。
新選組隊士や幕府関係者の個人の目線で物語が展開していくのですが、それぞれの想いや周囲の人物に対する感情が鮮やかに描かれているため、彼らがどんどん身近な存在に感じられてきました。
あとがきで、木内さんは「描く時代に自然と同化してしまう、そういう巫女的な才能の持ち主であるようだ」と評されていますが、まさに新選組の面々が著者に憑依したかのように思えてくるのです。
登場人物1人1人がとても魅力的なのです!
怜悧の裏に情に厚い自分を隠している者。
天真爛漫に、感覚のままに生きている者。
学問や思想に重きを置き、その実現を目指す者。
同じ組織に属していても、不満を抱えたり、反発したりしつつ、それぞれの生き方を追い求めていった若者たちの姿に姿勢を正されることたびたびでした。
動乱の時代をもがきながら生きた若者たちによって語られる言葉だからこそ、読者の胸に迫るものが強かったのかもしれません。 -
ブクログお友達の魅力的なレビューが無かったら全く知らなかったし手に取ることもなかっただろう作品。出会えて良かった。
初めての著者、初めての新選組。
新選組に詳しくなかった私には、細かく視点が変わるスタイルも、時間軸通りに進んで行く流れも、とてもわかりやすくて良かった。
新選組という組織全体に対する印象は、読み終わってからもあまり変わらず、私の中で特に美化されたわけではない。
しかし個々の登場人物に関しては、これは著者の描いた架空の性格や行動であるのだと思いつつも、沖田、永倉、山南、土方、斎藤が良かった!
武田の狡猾さを描いたところでは、現代にもこういう人間いるよなあと思わず笑ってしまい、藤堂の最期では泣いた。
その藤堂の最期あたりから、彼らが怒涛の政変にのみ込まれていく様は、もう目が離せない。
その片時も目が離せない段階を電車内で読みつつ、今日は習い事へでかけた。
レッスンが始まるギリギリまで読んでいたから、周りの皆さんから「何読んでるの?」と声がかかる。
「新選組です。今鳥羽伏見の戦いなもんで」と私が答えると、誰しも「ああそりゃ佳境だ、大変だ」って反応になるのが面白かった。
本書を読みながら、色々調べまくり、書きまくり、私の中でやっとこの時代の点と点が繋がって線になった。
面白かった! -
各編ごとに有名無名の新撰組隊士が主人公になる短編集。
一人一人の人物描写がとても丁寧で今までになかった新撰組作品だった -
面白かった!!!
新選組本は何冊か読んできましたが、
その中でも特にお気に入りの一冊になりました!
まだ薬売りをしていた土方さんが、天然理心流と出会う所から、
やがて新選組として名を馳せ、はるか北の地にて果てるまで。
次々と視点(語り手)が変わる所が面白いですね。
同じ出来事でも、視点が変わればこんなにも違って見えるものなのか。
主人公にはついつい肩入れしてしまう傾向があるので、
彼らと敵対する人間からも描かれる物語は、とても新鮮でした。
人一倍情に厚いのに、絶対にそれを表に出さない不器用な土方さん。
子供のように明るく大らかで、でもどこか掴めない飄々とした沖田さん。
一匹狼で決して自分を失わない斎藤さん、博学で優しい山南さん。
皆が自分のイメージの中の隊士達そのままで、嬉しかったです。
特に土方さんの恰好良さは異常(笑)
山南さん切腹の場面や平助君の最期等は、涙なしには読めません。
女性作家さんだからか、危ういシーンもなく綺麗で爽やかな印象。
でも底流にはどっしりと芯の通った強さがあります。
新選組好きなら必読です!!! -
司馬さん以外の歴史小説を読んだのは初めてで、個人的にはこれは画期的なこと。読まず嫌いだっただけだが、司馬さんほど楽しめなかったらどうしようという贅沢な恐怖があったからだ。
母に薦められた『茗荷谷の猫』が面白かったので他の作品も…と思って出会ったのが本作品。本当はもう一つの無名隊士に焦点を当てた新選組モノのほうに興味を持ったのだが、司馬『燃えよ剣』の内容もすっかり忘れてしまったことだし、メインストリームから攻めることにした。
隊士及び関係者たちが、短い章ごとに代わる代わる主格となって語っていくスタイルで、とても読み易い。テンポも良い。悪役っぽい芹沢鴨や伊東甲子太郎も含めて、それぞれ頑張ってるな、という群像劇らしい感じになっていて、どの人物もきちんと印象に残る。(それは大河ドラマの『新撰組!』を見たあとだからかもしれないけど…。)
多摩時代からの仲間同士のつながりを重く描いているのも、大河ドラマにちょっと似てるかなあ。うろ覚えながら、『燃えよ剣』では流山で歳三と勇が袂を分かつシーンは、人と人とが同じ考えで同じ方向を向いて歩き続けて行くことはできないんだな…という思いで読んだ気がするが、大河も本作品もそういう描き方ではなかった。歳三の勇への思いと、勇の歳三への信頼と、それが通じ合って結果勇は官軍の元に行く。
大河がバーモント甘口、燃えよ剣がジャワカレー辛口とすれば、木内昇の本作品は、バーモント辛口かなあ(笑) -
今まで読んだ新選組の小説の中でも、最も感動した中の一冊になった。
新選組の隊士達が生きている、性格を感じる、一緒にその光景を見ていたような錯覚を覚えるくらい、文章が息づいていた。
余談だが、作家ごとに人物像に差異はあるのに、武田観柳斎がクソ野郎ということだけは統一見解なのがツボる。よっぽど嫌なやつだったんだろうな。 -
試衛館から函館五稜郭の戦い(回想)までを、複数の視点からえがく小説。語り手はほぼ全員幹部隊士だけど、小説としては珍しいなって人物もいる。
これまで新撰組を題材にした小説を何冊か読んでみて、それぞれ程度は違うけど題材の核になるようなものがあるかなとなんとなく勝手に思っている。青春、悲劇、志を遂げる…みたいな。この作品は、3つの中でほんとにちょっとだけ青春の要素が多い感じ。全体的に文章が柔らかくて爽やか。ただし山南さんの切腹、油小路の変など後半に行くにつれて涙なしでは読めないので注意。あと、斎藤一さんの人物像が私の好みだった。
ゲームなどの影響で新撰組が好きなのでついそちらに肩入れしてしまうけど、薩長が勝つ歴史がなかったら今のままの日本はないかもしれないし、立場が違えば正義も違うから難しい問題だね。今度は薩長関係の人物を主人公にした小説を読んでみようかなぁ。