新選組 幕末の青嵐 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
4.41
  • (254)
  • (146)
  • (60)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 1435
感想 : 181
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087465174

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 司馬遼太郎「新撰組血風録」がとても面白くて、新撰組にはまり、「燃えよ剣」を読んで、まだ読み足りなくて、ブクログの新撰組ものの中で、評価の高かったこちらを手に取りました。

    上記二作が、人物描写や人間関係においても、事実より、かなりフィクション寄り(実在しない人物も結構出てきます)に感じられたのに対し、こちらは、ドラマ性は減少するものの、より実在しそうな人間像を描いています。

    始めの方は、ちょっと地味なので、それほど興奮しませんでしたが、読むにつれて、引き込まれていきました。
    ある程度、新撰組の歴史と、メンバーの名前を知っている人向けかもしれません。

    そういう意味で、私の読んだ順は、自分にとっては正解だったと思います。

    特に面白かったのは、藤堂平助や、永倉新八、斉藤一、伊東甲子太郎の辺りでしょうか。もし現実にこういうことがあったのなら、すごいな、と感心します。

    「新撰組血風録」「燃えよ剣」と比較すると、かっこよさは、そこそこかもしれませんが、実在した人々の話だけに、大げさでなく、いくらか等身大な登場人物の「本当っぽいドラマ」に熱くなる書き味です。

    結局、実際の新撰組の存在が、歴史の大筋に関わりがあったのか、わからないくらいなのに、なぜこんなに惹かれるのか、不思議ですが。

  • そこにいたのは、どこにでもいる若者たち。

    新撰組の群像劇。それぞれの目から見た、新撰組の一連の流れが描かれている。土方、沖田、近藤、永倉、芹沢、井上、原田、藤堂、山南、斉藤、武田、伊東などメジャーどころだけじゃなくて、例えば土方の義理の兄である佐藤彦五郎や、浪士組を企画した側の清河八郎、幕府の山岡鉄太郎(後に江戸城無血開城に奔走する山岡鉄舟)とか間接的に新撰組に関わってくる人の視点もある。

    芹沢なんて大抵悪役だけど、芹沢視点だと、色々とくすぶっている不器用な乱暴者。お互いへの評価も面白い。創作だからできることではあるけれど、全面的に認めていたわけではなく、でも嫌いではなかったり、嫌いだと思っているのは自分の鏡だからだったり、親しく思っていたり、距離を感じていたり、そういうゼロと一の間の割り切れない気持ちが描かれているのがいい。歴史上の人物だって、現代の若者(であるわたしたち)と同様に、将来を思っていらだったりくすぶったり夢を見たりしていたのだと。

    だいたい、誰かが何か事件からひとつ自分の教訓(もしくは意志)を得る。しかし、次の登場人物はそれを否定する。たとえば、自分の力を使って役立ちたいと、そのためには清河についていこうと決意した山南が、清河に裏切られて消沈するのを、次の語り手の土方が冷ややかに評する。また、組織と個人の板挟みになった山岡が、学問や家柄や地位などに縛られない近藤たち新撰組を強いものと憧れを持てば、次の語り手である芹沢は、組織に属さず後ろ盾のない状態での自分の無力を嘆く。決して一枚岩でもなく、誰かの意志だけで好転しない、むしろ大きな世の中の流れに個人が飲み込まれていく様がよくわかる。だから、語り手がどんどん変わると、光の当たり方がどんどん変わって、次々と読まされてしまう。ただし、まったく知識なく読んだら何が起こったのかわかりにくいかもしれないが。

    惜しむらくは、それぞれのキャラクターに今までの下敷きが見えるところ。当たり前かもしれないけど、どこかで見た「新撰組」から外れていない。意外な人はいない。やはり司馬遼太郎の影響からは逃れられないのだろうか。

  • 新撰組モノの中でもかなりおもしろいという薦めもあって読み始めた。普段、新撰組モノは新撰組の成り立ちから終焉までを描いたり、一人の隊士に焦点をあてた物が多い。しかしこれは10ページ程度で、物語を語る主観者が入れ替わりながら話が進んでいく。知っている事件や物事も、見る視点が変わればこうもう変わってくるのかと、作者の書き分けのうまさに感心した。ひとりひとりがみんな主役になっていくことで、新撰組というものが色鮮やかに描かれていた。作者は男性だと思い込んでいたが、女性だというのにも驚かされた。

  • 初★歴史長編小説!
    そして私は日本史の知識どころか、新選組のこともよくわからない位だったので、読み進められるか不安だったけれど…

    読みやすい!登場人物の個性が楽しい!激動の時代展開!(前半は難しく感じたものの)
    すぐに引き込まれました。

    実に様々な隊士達の視点から物語が紡がれているのだけど、視点が変わる故の違和感、読みにくさはなく、むしろ面白い。男達それぞれが抱くその想い、その姿勢、その信念には本当に心を動かされました。(展開というより内面の描写が物語の主という印象)

    そして感情の描き方が素晴らしいです。
    ここまで登場人物の気持ちを生み出し、なり切る筆者の筆力に感服。とても自然だし…ホント、深いです。自分も一緒になっていろいろ考えさせられます。

    結末は切ないながらも爽やかな読後感で、
    良かった!

  • 新選組短編書籍の中で1番好き。文久〇年〇月…からプログラム式で始まるのではなく、ポイントとなる事柄に関わった隊士が語り手となってリレー形式で進んでいき、藩主やら縁人名がそこまで複雑に出てこないからとても読み易かったです。
    木内昇っていうからてっきりお年を召した男性かと思ってたらのぼりさんと読む女性作家さんなのですね。知らなかったー!!

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「男性かと思ってたら」
      こんな風に書いたら、フェミニストの方々から非難されそうですが、木内昇って男のようにビシっとした真っ直ぐさを感じます(...
      「男性かと思ってたら」
      こんな風に書いたら、フェミニストの方々から非難されそうですが、木内昇って男のようにビシっとした真っ直ぐさを感じます(決して女性が真っ直ぐじゃないと言ってる訳ではありませんので、お間違いなく)。。。
      2013/07/12
  • 「燃えよ剣」「新選組!」と並び、新選組のマイバイブルに追加。

  • 新撰組の小説初めて読みました。

    土方をはじめ、新撰組の様々な人たちが魅力的に書かれています。

    私は大河ドラマを見てから、新撰組が好きになりました。

    少し登場人物のイメージが違ってましたが、とてもおもしろかったです。

    山南さんが死ぬ場面など涙の場面もありました。

    ひとつひとつが短編なので、読みやすかったです。

    最後の章で土方、近藤、沖田の回想が印象的でした。

    新撰組のファンの人もそうでない人にも読んでほしい作品です。
    きっと好きになると思います。

  • この厚さの文庫を1日で読み切ったのは久しぶり…面白かった。視点が43回も変わるのに、いや変わるからこそ、大局がつかみやすいしそれぞれの動きの理由も納得出来る。こんな書き方の小説は初めて読んだ…かも。それぞれの人物に即して粗暴な言葉で語ったり、人物から離れて淡々と事件の顛末を語ったり、の地の文も読んでいて面白い。混乱しないようにそれを使えるのが、これぞ文才だなぁって感じがする。
    それにしても本文中、大いに和らげたとしても血なまぐさい場面はいくつもあったはずなのに、この爽やかというか切ないというか、妙な清々しさのある読後感は何ぞや。他の新撰組関係の本と描写の異なる部分は、それはどちらが正しいのかあるいはどちらも正しくないのか、分からないけれどそれぞれの著者の味わいが出て非常に面白い。山南の切腹前後と斎藤が会津に残る際の下り、個人的に白眉!そして解説に悉く言いたいこと言われてしまったわ…すっきり。(笑
    これは本当に買ってよかった!

  • 新選組の小説は初めて読んだ。
    土方をはじめ、隊士がみんな魅力的に描かれていて物語に入りやすかった。新選組の漫画やドラマを見た人は登場人物のイメージがしやすいと思う。
    解説にもあるように、語り手が変わっても物語はスムーズに繋がっているから読みやすい。時代背景や事件もわかりやすくて改めて歴史の勉強になった。
    歴史小説独特の文章だけど、隊士の心理描写を中心に物語が展開していくからサクサク読めた。内容は重いけど、青春小説のような清々しさを感じられると思うので若い人にも読んでもらいたい。

  • 多摩時代~歳三の死後までが書かれていますがなんといっても特徴は各章ごとに視点(語り手)が変わること。


    歳三や近藤さんはもちろん、芹沢や観柳斎などの隊士からの視点も描かれています。

    それから新選組隊士以外にも、佐藤彦五郎や山岡鉄太郎からも語られたり。


    土方さんファンとしては、それぞれの語り手から語られるさまざまな角度から見える歳三像が話が進むにつれどんどん形をなしてきて、

    やっぱり最後にはいとしく切なくなるのです。

     

    土方さんだけでなく、みんなの内面がすごくリアルに描かれていて引き込まれます。



    ものすごく淡々と描かれているのに熱いものをかんじます。

    読み終わりにぐわああああ・・・となりましたよ。

    最期の彦五郎さん語りの章はほんとに切ないです。



    またいい本に出会えました。

    そしてまた歳さまに惚れました。

全181件中 31 - 40件を表示

著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

木内昇の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有川 浩
有川 浩
有川 浩
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×