- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087465525
作品紹介・あらすじ
家庭内の「明るい隙間」を描く傑作短編集
ネットオークションにはまる専業主婦、会社が倒産し主夫となった夫、ロハスに凝る妻に辟易する小説家の夫……など。あたたかい視点で描く新しい家族の肖像。第20回柴田錬三郎賞受賞作。(鑑賞/益田ミリ)
感想・レビュー・書評
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奧田英朗月間と言っていいほどの作品連読。
1ヶ月ほど前から、禁酒生活1周年を迎えた暁には奧田英朗を読むと、積読通読計画を立てていたのだ。
本作品は、日常の家庭が舞台の、ほのぼのとした6編からなる短編集。
どの作品も、現代の家庭の事情が描かれているようで共感する話も多数あった。
特に、夫の会社が倒産して主夫になる「ここが青山」が良かった。嫁の逞しさ、夫のポジティブさにホッコリ。
さて皆さん。以下は漢詩なのだが、なんと読むかお分かりだろうか。
【人間至る処青山在り】
ちなみに私は、この小説で初めて知り、ことごとく読み方を間違えた内の1人だ。
初耳の方は是非とも、その意味合いも含めてGoogle先生にでもお尋ねいただきたい。
余談だが、私は中学3年生まで【小豆島】を【こまめとう】と読んでいたことを、この場を借りて告白しておく。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
奥田英朗さんは初読みの作家さん。
『家日和』
いろんな家族の肖像が心にじんわりと温かく響いてくる短編集
どの話も全く異なるシチュエーションなのに、身近に感じられる家族の情景がしっかりと描かれていて、穏やかな余韻を感じさせる終わり方が秀悦だった。
巻末の益田ミリさんによる「解説」ならぬ「鑑賞」も意表を突いていて味わい深かった。
収録は以下の6編
簡単な内容と感想
「サニーデイ」
専業主婦紀子がネットオークションに嵌っていく様子が微笑ましい一方、危なっかしい。
でも素敵なご主人と子供達が傍にいる事に気付けてホッとした。皆さん、くれぐれも所有者の許可なく物品を売り捌くことのないように気をつけましょう!笑
「ここが青山」
作中何度もでてくる台詞
「パパの会社トウサンしたんだよ」
「人間(ジンカン)至る処青山(セイザン)在り」
根強いジェンダー意識の世間体に屈することなく専業主夫になる夫と復職する妻のお話。まさにここが青山!息子とのブロッコリーに纏わる奮闘劇もホッコリした。価値観なんて夫婦で分かり合えれば万事うまく行くのかもしれない。
「家においでよ」
金のない独身時代には実現しなかった「男の王国」を妻と別居してから着々と築いていく主人公の正春
多くの既婚男性の本音が垣間見れて微笑ましい。
マイホームは「女の城」とばかりに拘りを見せる妻たちも、たまには亭主の居心地の良さも考えた方がいいという作者のメッセージを感じた。
「グレープフルーツ・モンスター」
専業主婦で家に籠った主婦が、筋肉質で柑橘系の香水つけた若い男性相手にこんな妄想を抱いているなんて・・・
自由自在に夢を操れる力も凄い。
むしろ彼女が妄想モンスターだと思った。
訪問先にこんな主婦がいたらちょっと怖いな。
「夫とカーテン」
根っからの営業マンの栄一の猪突猛進が止まらない。
型破りで奔放で人懐っこい栄一に魅せられながらも、自分の夫にはご遠慮願いたい笑
妻の春代は四の五の言っても、栄一のことを心底大切にしてるんだろう。お互い相手に尊敬出来る部分があるってやっぱり素敵だ。
「妻と玄米御飯」
ロハスに嵌る妻と、その様子をユーモア小説で描きたい小説家の夫のお話
おもろいなぁ〜。描いて世に出せば妻との関係悪化は免れない。果たして夫が選んだ答えとは・・・
そういえば、ロハスってどこ行った?笑
特に印象的だったのは、
「ここが青山」「家においでよ」
「妻と玄米御飯」の3話
でもどれもいいお話だった♪
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夫婦や家族をテーマに書いた短編集。
《サニーデイ》
二人の子供を持つ、42才の専業主婦・紀子は、ある日、不要になったピクニック用の、折りたたみテーブルを、ネットオークションに出品した。
初めて、落札されたことに快感を覚え、それが、生きがいとなり、エスカレートしそうになる。
《ここが青山》
36才の湯村裕輔は、会社が倒産して、失業者となった。妻の厚子が、職場復帰し、裕輔は、主夫となり、
徐々に、家事に目覚める。
《家においでよ》
田辺正春、仁美夫婦が、別居することになり、仁美は、家具も持ち出し、家を出て行った。
家具が無い、がらんとした家で、正春は、自分の好みの家具を揃えはじめる。
《グレープフルーツ・モンスター》
宛名入力の内職をしている、39才の佐藤弘子は、新しく担当になった、若者のずうずしさに戸惑いながらも、おかしな夢を見てしまう。
《夫とカーテン》
イラストレーターの大山春代の夫・栄一は、転職癖がある。
ある日、会社を辞めて、カーテン屋を始めると言い出した。
《妻と玄米御飯》
42才の小説家の大塚康夫が、名のある文学賞を獲った。
同時に、妻の里美が、ロハスに嵌り、食卓に、玄米御飯が出てくるようになった。
《おまけ》
益田ミリ氏の漫画『鑑賞』
ほのぼのとした小説が読みたかったので、これを選んで正解だった。 -
短編は相変わらずあんまり得意ではないが、会社の方からお借りしたので読んでみた。
この作家さんの作風、好きだなぁ(*^^*)
読んでると凄くドキドキするのに、落ちが全部痛くなくて、ホッコリ温かくなるような、優しい小説。
落ち込んでいる時はこの作家さんの本がいいな。じんわりと胸にしみて、幸せになるような、そんな感じ(*^^*) -
6作品収録の短編集
いろいろな家族の物語でした
そのいずれもが楽しめました
もしかしたらどこかにいるかもと思わないでもない
ような家族の日常を描いているんだろうけど
それがまたよくてなんかたまににやにやしてました -
家庭発信、6つのドラマ
それぞれの家庭には、それぞれ夫婦や家族の有り様がある
まるでちょっとよそのお宅を覗き見しているようなワクワク感があった
阿部寛や唐沢寿明や筧利夫などが夫役でドラマになりそうな・・・
実際、阿部寛と篠原涼子で似たようなドラマを見たことがある
わたしのお気に入りは、「ここが青山」「家においでよ」「妻と玄米御飯」
「妻と玄米御飯」は、作家の夫がN木賞を獲り、生活が一変した家族の物語。これってもしかして奥田英朗さんの私小説?!と読者に思わせ、ニヤニヤさせるのが狙いなんだろうなと分かりつつ、奥田さんの狙い通り、はまってしまった
違う環境で育った男女が夫婦となり、家族を作り、家庭を築いていくのだから、お互いが少しずつ我慢をし、折り合っていがなければならないというのが、6編共通のテーマかな?
昼寝のお供に寝そべって気楽に読めるコメディタッチの小説だ
奥田英朗さん、好きだなあ -
タイトルのとおり、"家"の中の出来事に焦点を当てた6つの短編が入っています。
どの短編も、軽いタッチで描かれているので気楽に読むことができますし、それぞれの登場人物に対する皮肉やツッコミが面白くて、フフッと笑わされる場面もあります。
自宅で過ごす時間が長ければ長いほど、毎日の生活に大きな変化がなくなってくるというか、ちょっとした刺激を求めてしまう気持ちもでてくるかもしれません。
けれど、私はやっぱりお家で過ごす時間が好きだし、(笑)
変わらない毎日の中でも、何気ない幸せを見つけながら暮らしていけるのが一番だなと、本作を読みながら感じました。 -
著者は『空中ブランコ』などの伊良部シリーズを書かれており、この作品も面白い物語が展開されるのかと思い、手に取りました。
作品は短編集で、日々の暮らしの中のちょっとした瞬間に少しだけ心を揺るがす事があった人達の物語となっていました。作中の人物の心の動きや描かれている家庭環境が、現実のどこにでもありそうな場景であり、物語にすっと入り込みやすい内容となっていました。描かれ方も嫌な感じは覚えず、人物が抱く心境を理解できる表現でした。
作中でも『ここが青山』が特に気に入った作品でした。内容としては会社が倒産し、主夫となったサラリーマンの物語です。職を失った場合、不安を抱き次の仕事を探すため四苦八苦するものだと考えていました。しかし主人公は家事を自分の仕事として受け入れており、子供にとある野菜を食べさせるための弁当作りのアイデアを考えており『今自分がおかれている状況』で『自分がやりたい事・するべき事』を見出すまで適応していました。
職を失うことで周囲は同情や哀れみを抱いて接していましたが、主人公はマイナスに考えている様子も見られません。これは主人公が悲観的に捉えず、自分が何をするべきかと客観的に捉える視点が持てていたからなのかな…と推測しました。
自分はマイナスな物事が生じた際、どうしてこの状況になってしまったのか…と悲観的な思考に偏る事があります。作中の主人公のように、今置かれている状況を歪めずに捉え、何をすべきか・この状況の中で自分の居場所はここにあると思えるよう、心の広さを持てたら人生も生きやすくなるのかな…と思いました。
著者プロフィール
奥田英朗の作品





