- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087465587
感想・レビュー・書評
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この小説は僕にとって危険すぎる
悪い意味で個人的にインパクトを受けたということで、評価5
出版社に務めていて年収は1000万を超えるにもかかわらず、不自由な結婚生活を強いられている小早川という男の話
お嬢様として育てられた妻は、日本語が話せるけど独自の論理思考を持つため一般的とは異なったコミュニケーション能力が必要
そしてそのリクエスト内容も優先順位が決まっていると思われるが、夫の小早川は釈然としないものを感じる
度重なる引っ越しによる住宅家のローンと過大な教育費、そして意味不明な妻のリクエストの解読
散歩に行こうとするものなら、そんな事よりも家の中のあれをして欲しいこれをして欲しいと自由な時間は一切ない
やべぇ、自分の夫婦生活を追体験したようで読んでいて手が震えた
ちゃんとした医者に行ったらPTSDって言われるレベルじゃなかろうか?
そのくらい私にとっては恐ろしい話だった
この小説をフィクションと思わず、世の中には頭のおかしい女がいるという事を世間は知っておいたほうがいいと思う
小説独自の気持ち悪いところは、犬に関するエピソード
登場人物の一人と同じく吐き気をおぼえた
雪穂はペットを飼う資格のない人だよな
そして、一見円満に見える親子関係もそれを踏まえるととても恐ろしい風景に見えてくる
個人的にはホラー小説だよこれは
京極夏彦の「厭な小説」の一遍「厭な彼女」に通じる怖さ
会話が成り立っているようでまったくのコミュニケーションができていない
人間と同じ姿形をした違うナニカみたいだな詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2007年3月に「ああ正妻」として出版された作品の文庫化。文庫化に際し、全面改稿されました。
文庫の後書きに著者が記した意図が、本書を理解する上で大きく役立つと思いますので、是非お読みすることをお勧めします。
僕が文庫化で大きく変わったと感じたのは、ラストで雪穂の側に立って夫との関係を考察している点です。
物語の皿回し的役目を担う、川松教授の質問に答える形で、小早川くんが「妻が求めるものは何なのか」を述べます。
内弁慶なモンスターとして家庭に君臨する雪穂は変わらないのですが、それでは、雪穂自身はこの現状をどう考えているのか。
川松教授の考察は、幸福論(又は不幸論)として秀逸だと感じる一方、では、僕はどう考えるのか。と、一緒になって考えるきっかけになりました。
そして、小早川の回答には、僕も愕然としました。
「ああ正妻」では、単に「小早川くんの結婚は悲惨だな。」と言う感想がメインでしたが、
本書では、多かれ少なかれ、自分が雪穂的な側面を持っていることを前提に、
では、自分が雪穂のようにならないためにはどのような注意をすればよいのだろう。
と、読者も考える事が出来るように工夫されていると感じました。
僕は(本書に異を唱えるわけではありませんが)雪穂が、小早川の言うことを、遮ったり、否定したり、間違っていると指摘することなく、是認しながら「聞き上手」になることで、この夫婦は改善すると思いました。
つまり、僕は川松教授の「妻に何を求めますか」の答えには、「話を聞く人になってほしい。」と答えるのが正解だと思いました。
また、僕が雪穂的夫にならないためには、妻の言葉を是認しながら聞くことが大切だと思いました。
前提として、
男性が「多かれ少なかれ、我が妻も雪穂的な側面を持っている。」と思うのと同様に、
女性も「夫だって、雪穂的な理不尽さを持っているよな。」と感じるだろう、
と、考えました。
物語の家庭は、度を超しているため、「雪穂は異常な人」と他人事として、自分を顧みることを回避できる工夫もされているのですが。 -
何て悲しい小早川くん。
良き人なり悪しき人なり。
とても共感できる。