夏から夏へ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 357
レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087465778

作品紹介・あらすじ

速く走るだけでは世界を相手に戦えない。リレーでは、速く確実なバトンつなぎも重要だ。2007年世界陸上大阪大会でアジア新記録を樹立。08年北京五輪のメダルにすべてを賭ける日本代表チームに密着した、著者初のノンフィクション。酷暑のスタジアム、選手達の故郷、沖縄合宿へと取材は続く。大阪と北京、2つの夏の感動がよみがえる!2大会のアンカー走者・朝原宣治との文庫オリジナル対談つき。

感想・レビュー・書評

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  • 高校の陸上部を描いた『一瞬の風になれ』の著者である佐藤さんが、そのときの取材を通して陸上競技と競技者を深く知るようになり、魅力に取りつかれ、2007年に大阪で開かれた世界陸上での100m×4リレー(4継)の選手、塚原、末績、高平、朝原、小島と周囲の人たちを取材して書いたというノンフィクション。このあと2008年北京五輪で同じメンバーで銅メダル取ったんだよねぇ、ということをしみじみと思いながら読了。水泳の北島が、ピークを合わせることのむずかしさ、を言ってましたが、陸上選手も同じで、それは競技者でないと説明されないとなかなかわからないことではあるが、走るのは10秒ほどでも、そこにつながるそこまで持っていく時間が全て勝負なのだなぁ、と、改めてすごいな、と思いました。5人目のメンバー、2007年の世界陸上では万全の準備をしながらも結果として一度も走る機会のなかった小島さんの話がとても印象に残りました。とても読み応えがあり、おもしろかったです。

  •  虚構の入る余地が少ないからでしょうか、スポーツ観戦は競技を問わずに好きです。また、実際に体も動かそうと(メタボ対策もかねて)今年の夏前位から、週一目標で泳ぎにいくようにもなりました。前後するように2020年の東京五輪開催が決まり、これから7年、“スポーツ”への注目度も上がるかなとも感じています。

     そんな五輪競技の中でも人気の高い“陸上競技”を題材にしたノンフィクションが、こちらです。

     日本で陸上競技と言うと、昔から活躍する方の多いマラソンに代表される長距離をイメージされる方も多いかと思いますが、取り上げたのはトラック競技、その中でも100M×4人で走る「400Mリレー(四継、ヨンケイ)」となります。

     ただ速く走れるだけでは“ヨンケイ”は勝てない、事実、陸上王国たるアメリカも、ことリレーにおいては決勝進出すらできずに消えていくことも多いそうです。それでは勝つためには何が必要となるのでしょう、、速さはもちろんのこと“確実なバトンつなぎ”が求められる、とのこと。

     伝えていきたい、つないでいきたいとの想いがこめられているからでしょうか、行きついた果てで「幸せでした」との言葉を異口同音に紡ぎ出したメンバーの皆さんを、心の底から“羨ましい”と思いました。

     物語の始まりは2007年の世界陸上大阪大会、その舞台を駆け抜けた、塚原選手、末續選手、高平選手、朝原選手、そして小島選手のリザーブを含めての5名の選手の生い立ちや陸上への想い、ちょっとほんわかなエピソードなどを交えながら、綴られていきます。

     実際に走る時間は4人を併せても40秒足らず、しかし、その数十秒に全てをかけるひたむきさが伝わってきました。そしてその瞬間の時間を、濃やかに臨場感たっぷりと描き出されている佐藤さんの筆致に一気に引き込まれます。

     「(佐藤さんは)陸上選手の心理描写に詳しい」との朝原選手の言葉を映しとっているかのように、まるで自分もその場で一緒に走っているかのような気持ちになれるのは、ヨンケイが個人ではなく団体での戦いとの様相を見せてくれるからだと思います。

     これは同じく佐藤さんの著書で、高校の陸上部を題材にした『一瞬の風になれ』でも感じたのですが、つないでいくのはレースを走る4人のバトンだけではない、それまで連綿と引き継がれてきた日本陸上界の先達の想いも、一緒につながっていくのだなぁ、と。

     この大阪大会では「38秒03」というアジア新記録(例年なら優勝してもおかしくない記録)を残しながらも、アメリカ、ジャマイカ、イギリス、ブラジルに続く5位入賞止まり。でもこのステップがあったからこそ、翌年2008年の北京五輪で3位入賞という快挙へとつながったのかもしれません。

     “一瞬”に全てをかけるために、連綿と、陰に日向に、ただひたすらに試行錯誤を積み重ねていく、そんなことの大事さを気付かせてくれる一冊でした。

    • マサトさん
      はじめまして。
      佐藤多佳子さんの「一瞬の風になれ」を読んで、すごく感動しました。それで、同じ陸上競技をあつかった「夏から夏へ」も読んでみた...
      はじめまして。
      佐藤多佳子さんの「一瞬の風になれ」を読んで、すごく感動しました。それで、同じ陸上競技をあつかった「夏から夏へ」も読んでみたいと思っていたのですが、ohsuiさんのレビューを読んで、ますます読んでみたくなりました。ありがとうございます。

      2013/10/24
    • ohsuiさん
      しんごさん
      はじめまして、コメントありがとうございます。
      『一瞬の風になれ』、いいですよね~、大好きな小説の一つです。
      こちらをお好き...
      しんごさん
      はじめまして、コメントありがとうございます。
      『一瞬の風になれ』、いいですよね~、大好きな小説の一つです。
      こちらをお好きであれば、是非オススメです!
      2013/10/24
  • 大阪世界陸上の400メートルリレー、通称4継にスポットを当てたノンフィクション

    塚原選手、末次選手、高平選手、朝原選手、小島選手

    レースの臨場感、内面の葛藤、本人たちの胸の内

    陸上のだいご味にどっぷりつかれる1冊

    読み終えた後走りたくなる自分がそこにいます。

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  • 『一瞬の風になれ』で短距離リレーの面白さ・難しさを教えてもらい、この本でさらに深く感じ入ることができた。

    いろんな物語が書ける作者なのに、ドキュメンタリーに徹してる印象がまた新鮮だった。

  • 再読。取材を通してノンフィクションとフィクションの両方を描くのは難しそうだが、成功すれば相乗効果的に感動する。道具を使う技術を磨くことが必要なスポーツと違って、陸上は自分の身体を磨き上げていく魅力がある。佐藤さんの目を通してみると、スプリンターというのは内省的に自己の肉体と向かい合い走りを追究していくところが、修行僧か哲学者のようでクール。水泳、フィギュアスケート、卓球、体操などの日本代表にもあてはまるが、個人競技なのにチームワークがいいのって見ていて楽しい。

  • ストーリー
    速く走るだけでは世界を相手に戦えない。リレーでは、速く確実なバトンつなぎも重要だ。2007年世界陸上大阪大会でアジア新記録を樹立。08年北京五輪のメダルにすべてを賭ける日本代表チームに密着した、著者初のノンフィクション。酷暑のスタジアム、選手達の故郷、沖縄合宿へと取材は続く。大阪と北京、2つの夏の感動がよみがえる!2大会のアンカー走者・朝原宣治との文庫オリジナル対談つき。

  • アホみたいに感動してしまった。この話に出てきた長居でやってた世界陸上の時大阪に住んでいたので、読み終わった後観に行かなかったことを悔やんだ。

  • この本に出会ったのは、たまたま見ていた情報番組でした。司会者の「陸上競技のヨンケイの話」という紹介に「それじゃあ、視聴者は何の本か分からないよ」と思いながら、「さて『ヨンケイ』って何だろう?」と興味を惹かれたのがきっかけでした。
    「ヨンケイ」とは「4継=100m×4継リレー」の略称で、100mを4人がバトンを渡して走る競技のこと。
    本書は2部構成になっており、第1部は2007年大阪世界陸上・男子100m×4リレーに出場した4人の選手、第1走者の塚原直樹(岡谷市出身)、第2走の末續慎吾、第3走者の高平慎士、アンカーの朝原宣治のトラック状での姿が小説のように書かれています。
    第2部は世界陸上が終わった後の4人、彼らを支える控えの選手、指導者、恩師などのインタビューが書かれています。
    しかし、登場人物の個性的なこと!それぞれの行儀に対するスタンスはバラバラだけれど、1つのチームとしてお互いを信頼し、尊敬しあっている姿に胸が熱くなることでしょう。(図書館職員☆A・M)

  • 第4回本屋大賞「一瞬の風になれ」の作者による、400mリレー日本代表を追ったドキュメンタリー。綿密なインタビューと感情を再現する筆力は、選手らも賞賛している。世界陸上大阪大会を観戦した記憶が蘇る。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。1989年に「サマータイム」で月刊MOE童話大賞を受賞してデビュー。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で産経児童出版文化賞、日本児童文学者協会賞、路傍の石文学賞を受賞。『一瞬の風になれ』で吉川英治文学新人賞、『聖夜』で小学館児童出版文化賞、『明るい夜に出かけて』で山本周五郎賞を受賞。そのほかの作品に『しゃべれども しゃべれども』『神様のくれた指』『黄色い目の魚』『第二音楽室』などがある。

「2018年 『シロガラス5 青い目のふたご 5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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