映画篇 (集英社文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784087465877

感想・レビュー・書評

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  • これから何度
    この小説を読み返すだろう。


    区民会館で無料上映された
    「ローマの休日」を軸として、
    5編の短編に出てくる
    登場人物たちが
    お互いを知らぬまま、
    すれ違い交錯する
    タランティーノ的構成の妙。


    選ばれた映画たちがまた
    どちらかと言えば渋めなチョイスで
    そこがまた
    映画好きの心をくすぐるのです。



    個人的に印象に残ったのは、
    友を物語の力で助けようとする様が
    どうにも切なく
    自分自身が親友を亡くした体験ともダブってくる
    「太陽がいっぱい」と、


    驚愕な結末が
    エモーショナルに胸を打つ
    「ペイルライダー」と


    映画「サマーウォーズ」は
    この物語を参考にしたんじゃないかと勝手に睨んでる(笑)
    ラストの
    「愛の泉」の三作品は
    読後かなり余韻が残りました(>_<)




    この小説が描いているもの。

    それは

    『物語は果たして
    誰かを救うことができるのか?』

    というテーマだけど、

    結論から言えば
    救うことができると
    自分は強く信じています。



    しょせん漫画や小説や映画は
    つくり話でしょって
    ピントのずれたことを言う人がいるけど、

    フィクションであろうが
    現実のことであろうが
    そんなものは関係ないのです。


    それを読んで
    (または観て)

    どれほど心が動いたかによって
    人間は作られている。


    円軌道の外という
    一人の人間を作っているのは、

    友達に聞いた沢山の物語であり、

    ドキドキをくれた小説であり、

    感動した漫画であり、

    たわいない嘘の話であり、

    胸躍らせた
    思春期に見た映画です。


    言葉や物語が持つ力。

    傷つけるためではなく、
    だれかを守り、
    だれかに伝え、
    だれかと繋がりあうための力を
    自分は信じているし、

    金城さんの作品は
    それを感じさせてくれる
    素晴らしい物語だと思います。


    読んだ人すべてに
    必ずやポジティブな科学反応が起こるのは間違いない作品だし、

    読後は
    必ず映画を観に行きたくなりますよ(^_^)v

    強く強く
    オススメしたい小説です。

    • MOTOさん
      命を得て、この世に誕生する奇跡は素晴しいけれど、
      さて、そこに言葉が無ければ、
      物語が無ければ、なんと寂しい一生なんだろう…。

      なんて事を...
      命を得て、この世に誕生する奇跡は素晴しいけれど、
      さて、そこに言葉が無ければ、
      物語が無ければ、なんと寂しい一生なんだろう…。

      なんて事を思ってしまいました。
      意志の疎通が出来る。
      思いを伝え合う。

      ただ、生きる為の情報を得るばかりではなく、
      この、扱いがたい『心』。
      …を、最もご機嫌な状態で維持して置く事が出来る方法やら秘訣やらはきっとそこにあるはずだと思っているから、
      私も映画、大好きです!(本も♪)

      金城さんの映画論もすっごく興味ありますねぇ♪
      2012/12/01
    • 円軌道の外さん

      MOTOさん、
      ありがとうございます!


      てか、めちゃくちゃ
      いい言葉
      震えましたよ(>_<)


      映画はいいです...

      MOTOさん、
      ありがとうございます!


      てか、めちゃくちゃ
      いい言葉
      震えましたよ(>_<)


      映画はいいですよね♪

      たった2時間で
      いろんなことが学べて、
      自分の世界を広げてくれるものなんて
      なかなかないし。


      自分は薄汚れた路地裏に
      ひっそりと佇んでるような
      昭和の香りがプンプンする映画館が好きなんです(笑)


      高校時代は
      授業サボって
      屋上でギター弾いてるか、
      バイク飛ばして
      海に行くか、
      映画館で3本立て観て
      クラブまでの空き時間をつぶすのが
      日課になってました(笑)(^_^;)


      今はネットの普及によって
      映画も個人で楽しむ方向に変わってきてるし、

      同じものを共有して
      会話を楽しむ術を
      知らない人が増えてきてるのは
      本当に寂しいことだと思います(>_<)

      2012/12/04
  •  映画にまつわる小説の短編集だと思って読み始めて、騙された。用意されていた落とし穴に落とされたように、まんまといい具合に騙された。5篇の短編が収録されているが、これは最後の「愛の泉」に向かって、それぞれの短編が少しずつ進行していく長編小説に他ならない。
     在日朝鮮人の友情を描いた「太陽がいっぱい」。
     自殺した夫の借りたビデオを返しに行くところから始まる、未亡人と貸ビデオ店の店員の話「ドラゴン怒りの鉄拳」。
     はみ出しものの高校生同士のロードムービー調の危うい逃亡劇「恋のためらい/フランキーとジョニーもしくはトゥルー・ロマンス」。
     両親の離婚の狭間で揺れる少年が出会った、ターミネーターばりのおばちゃんとの一日を描いた「ペイル・ライダー」。
     連れ合いをなくした祖母に映画鑑賞会を開こうと計画する家族の話「愛の泉」。
     犬やビデオ店の様子、人物の特徴などで、「ああ、あれはあの小説の」と探し出す楽しさもあり、種明かしをされたときのやられた感あり。何より、家族や友情のあたたかさが、押しつけがましくなく心にしみる。特に「愛の泉」は、それぞれのキャラが、とても愛おしく感じる。アホの子ケン坊、女神の司さん、健気なリカ、姐御肌の律子、見えない糸を引いている浜石教授。
     そしてタイトルが秀逸。とくに最後の作品は、最後まで読んでもこのタイトルの映画は出て来ない。その意味をあとで調べてようやくわかった。わかると、またにやりとほくそ笑むことができる。
     アクション映画を映画館で見て、肩で風を切って出てくるような爽快感をもって読み終えた。
     エンドロールまで、目を離すことなかれ。

  • 映画をきっかけに繋がる人々。友情、正義、ロマンス、復讐、笑いと感動ーー。五つの短編はそれぞれ独立しているが、区民館で行われた映画『ローマの休日』上映会にてまとまりをみせる。
    いやあ、金城一紀流石です!一番好きなのはコメディ色の強い『愛の泉』だけれど、他の作品も著者の映画への愛がゆるりと流れていて愛おしく思える。

  • 最後良かったー。心温まる読後感だった。愛がいっぱい詰まった感じ。家族愛に映画愛。
    最後の最後、解説かと思いきや、登場人物による、話中に出てきた配布資料が出てくるんだけど、なんかもうコレにビビビッと来ちゃってね。ああ、「ローマの休日」見たいーって感じ。おばあちゃんが見たのはホントは違うんだけどね(笑)

    さて、本の中身は映画をキーワードにした連作です。登場人物などが前後の短編に少しずつ絡んで、って、有川浩さんの「阪急電車」と同じような構成です。「対話編」の話も少し絡んでましたね。この作家さんはこういう絡みが好きなのかな。読んでいる人には、あっ?これって!、とちょっとしたお得感みたいな、読んだ人にだけわかる隠しアイテム発見みたいな感じか(笑)
    ただ、個人的には先に読んだ「対話編」の方が良かったかな。こっち「映画編」の方が話としては明るいし心温まるんだけど、良い話過ぎて、というのかな。キャラクターもいっぱいだし、いろいろ絡んでいていいけど、「対話篇」の男二人語りというのも良かったのよ、個人的には。ということで、この2作、極論なら『明』と『暗』、対になる作品だと思います。

    でも、ちょいちょい謎が残ってますよね。謎と言うほどではないけど、あんまり書ききらないのよね、この作家さん。ニブチンの私としてはもうちょっと詳らかにして欲しいという不満が(笑)

    あ、あと単行本だとポスターの絵が挿絵としてあるの??いつか確認しようっと。

    • nico314さん
      urarinchoさん、はじめまして。
      花丸ありがとうございました!!

      対話篇もよさそうですね。
      探してみようと思います。

      ...
      urarinchoさん、はじめまして。
      花丸ありがとうございました!!

      対話篇もよさそうですね。
      探してみようと思います。


      「読んだ人にだけわかる隠しアイテム発見」いいですよね。読み手と書き手の秘密の共有みたいで。
      2013/01/16
  • 「物語の力が、
     世界を変えていく。」という帯。

    今このタイミングで読めたことに感謝です。

    在日朝鮮人の友情を描く
    「太陽がいっぱい」

    未亡人とレンタル店員のやり取りを描く
    「ドラゴン怒りの鉄拳」

    クラスに馴染めない二人の逃亡劇を描く
    「恋のためらい/フランキーとジョニー」

    愛する人の正義を守るために立ち上がったライダー
    「ペイルライダー」

    おばあちゃんの大丈夫オーラを取り戻す作戦
    「愛の泉」




    「敵も味方も判然とせず、僕たちはもう現実では
     勇敢なヒーローではいられないことを悟るようになり、
     そして、アクション映画は僕たちの模範ではなく、
     救いになっていった。」

    「俺は高校と家を往復しながら、いつも、
     どっかに俺にぴったりの世界があるはずだって思ってた。
     でも、それを探しに出る勇気もなかった。」


    「そう、クソみたいな現実が押しつける結末を、
     物語の力でいともたやすく変えてやるのだ。」



    逃げられない現実に立ち向かうこと。
    少しアホなぐらいがクソみたいな現実を救うこと。

    映画も本も音楽も、
    感覚として記憶になって
    思い出に寄り添ってくれている。
    そして、いつも変わらずにそこにいてくれる。
    変わっていくのは自分なんだと思わされる。
    だけど、変われないこともあって苦しいけど
    そこを、おいコラ!と後ろから
    グーパンしてくれるような本。

    金城さんの本は本当に好き。
    みんな
    素敵で
    かっこ良くて
    愛らしくて
    たまらない!

    鳥越家なんてゾンビーズを彷彿とさせてくれて。
    なんか誰かとハイタッチしたくなるような、
    読んだ後に絶対に元気になってしまう本。


    短編ですが、
    同じ日同じ場所を共有している主人公たち。
    やっぱり同じ一瞬でも
    こんなにたくさんの事情があると思わせてくれます。
    今どこかで泣いてる人、
    誰かと愛し合ってる人、
    悲しみに暮れている人、
    大笑いして抱き合っている人、
    本当にいるんだと思わせてくれます。

    そして全ての道はローマに繋がっている、はず。笑

    好きだなー、やっぱり好き。
    だからこの本に出会えたことに感謝!

  • 『ローマの休日』がベースになった映画マニア金城一紀の本領発揮と言った作品。 これは、文句なしにいい。 金城氏の映画への造詣の深さもさることながら、独立した短編のふりしてお話が綺麗につながってるんだもん。 「太陽がいっぱい」は作家になるまでの金城氏の自伝的内容で、『GO』を彷彿とさせた。 実際この作品は『GO』映画化の時の話なんだろうけど。 金城氏は自身の経験を前面に押し出してくる作品の方が、凄く“生きていて”いいなぁと思う。2010/104

  • 3年前に一度読んで作中に登場する映画のタイトルを書き出したことは覚えていました。
    でも内容は驚くほど忘れていたので、今回読みなおすことに。

    映画を通じて人の繋がりや変化を綴った5つの短編集。
    この小説を読んだあと、映画が一段と愛おしいものに変化した気がします。

    そしてやっぱり映画館で誰かと一緒に観たいなあ、と。
    ごはんと一緒で、1人で食べるより1人で観るより
    誰かと一緒に食べた方が美味しいし、誰かと一緒に観た方が楽しい。

    3年振りに読み返して気付くことができました。
    また忘れた頃に読み返したい作品です。

  • ローマの休日の仕掛けが見事!
    電車で読んでて、思わず涙ぐんでしまったじゃんか。

    読みやすくて読後感爽やかでこっ恥ずかしくてラストが幸せになって
    感動ありで......もー、どうのこうの言わずに、読め、読んで涙しなさい、
    と激しくお勧めする。
    対話篇もよかったが、こっちも素晴らしく面白い。

    とにかく幸せになりたい人は読みなさい。

  • 金城一紀さん。はじめて読む作家さんです。『GO』や『フライダディフライ』など、映画化された作品も多いみたいですね。

    『映画篇』というタイトル通り、映画にまつわる五つの物語を収録しています。物語のテーマは、「友情」だったり「復讐」だったりと様々ではありますが、どの作品も「映画が人に与える力」や「映画への愛」を描いていて、素晴らしかったです。また、物語同士が少しずつ関わり合う仕掛けになっていたのも面白かったですね。

    物語の中に出てくる映画のいくつかは、実際に見てみたくなりました。映画好きの人もそうでない人も、十分に楽しむことができる作品になっていると思います。金城さんの作品、好きになりそうな予感。他の小説も読んでいきたいと思います。

  • 映画が見たくなる。そこに映画がある事で少しだけ人生が変わるかもしれない。
    早く続きを読みたいケド、読み終わるのが勿体なかった。

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著者プロフィール

1968年埼玉生まれ。慶應義塾大学法学部卒。1988年「レヴォリューションNo.3」で第66回小説現代」新人賞を受賞。2000年『GO』で第123回直木賞を受賞。

「2020年 『映画篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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