寡黙なる巨人 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
4.02
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本棚登録 : 183
レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087465921

作品紹介・あらすじ

国際的な免疫学者であり、能の創作や美術への造詣の深さでも知られた著者。01年に脳梗塞で倒れ、右半身麻痺や言語障害が残った。だが、強靭な精神で、深い絶望の淵から這い上がる。リハビリを続け、真剣に意識的に生きるうち、昔の自分の回復ではなく、内なる「新しい人」の目覚めを実感。充実した人生の輝きを放つ見事な再生を、全身全霊で綴った壮絶な闘病記と日々の思索。第7回小林秀雄賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 凄いものに 触れてしまった!

    お前は ちゃんと 生きているのか
    お前は それで いいのか
    お前は そんなこと 言えるのか

    むろん 多田富雄さんは
    そんなことは 一言もおっしゃらない
    読んでいる方が
    自ずと 自分の「これまで」と「いま」を
    勝手に思い、勝手に考えさせられてしまう
    だけである

    折に触れて
    手に取ってしまう一冊が
    またできました

  • 身体が麻痺するとはどういうことか。
    血を吐くかの如くの身体感覚の記述に言葉をなくし、自分が、今は動くこの身体を得ている事の奇跡を思い知る。

  • 多田富雄は脳梗塞で右麻痺となり言葉を失った。嚥下(えんげ)障害の苦しさを「自分の唾に溺れる」と記している。感情の混乱についても赤裸々に書いており、妻への感謝を表現できずイライラばかりが募る様子に身体障碍(しょうがい)の現実が窺える。それでも多田は表現することをやめなかった。本書は左手のみのタイピングで著した手記である(柳澤桂子)。
    https://sessendo.blogspot.com/2020/07/blog-post_30.html

  • 再読。知の巨人が、脳梗塞による半身不随を得て新たなる巨人として生を得るまでの魂の記録。
    倒れて、動くことも話すこともできなくなった中で、再び生きることへの希求を見いだすまでの記録、後半はそんな新たな巨人の視点で過去を振り返り、国を動かし、「生きる」姿を描き出す。

    初めて読んだ10年前は、前半の闘病記の印象が強く、後半はさらっと読んだが、年を重ね後半の方が心に残った。

  • 105円購入2013-10-05

  • 文句なしの名著。
    半身不随、しゃべれないし、
    ヨダレを垂らしながらも頭脳明晰な大学者が
    豊かな言葉で、臨死体験や介護される側からの
    視点で日々を語る。

    再読したい。

  • 916

  • 死よりも過酷な運命があるとすれば、まさにこのことだろう。
    著者は65歳にして脳梗塞を患い、球麻痺に見舞われた。身体の自由を奪われ、声を上げることもできず、食事や飲水でさえ自力で飲み込むことはできない。
    もしも同じことが自分の身に起きたら、果たして生きてゆくことができるだろうか?だが、彼は生きた。むしろ病を得たことで、真に生きていると感じるようになる。
    リハビリの過程で、麻痺した右足の親指がピクリと動いたとき、著者の目から涙がこぼれる。自分の中で新しい何かが生まれた。彼はその感動を、物言わぬ鈍重な巨人が目覚めたと表現する。
    9年に渡る闘病生活で、著者はそれまで触ったことすらないパソコンと格闘しながら、いくつもの本を書き、新作の能を発表した。なんという生命力だろう。そのような強靭さは、いったいどこに宿るのか。
    「ちゃんと生きんでちゃんと死ねるか」という山頭火の句を思い出す。

  • これは凄い。開始10ページで、もうガツンとやられる。脳梗塞による麻痺。痰を除去する看護婦の上手い下手。このもどかしさや不安に触れる事自体、入院患者のリアルな関心事を反映しており、臨場感がある。臨場感があって、絶望感があって、無力感があって。それで、もう開始早々にガツンと来てしまう。嗚咽。感情失禁。まるで海藻に囲われた海の底のような孤独。心や思考はそこに存在するのに、自分の身体が動かない。麻痺。自らが栄光を勝ち得た巨人。

    病気になってはじめて、生きる感覚を味わうような。その事は感覚的にわかる。生きる感覚。考えさせられる一冊である。

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著者プロフィール

多田富雄(ただ・とみお、1934-2010) 
1934年、茨城県結城市生まれ。東京大学名誉教授。専攻・免疫学。元・国際免疫学会連合会長。1959年千葉大学医学部卒業。同大学医学部教授、東京大学医学部教授を歴任。71年、免疫応答を調整するサプレッサー(抑制)T細胞を発見、野口英世記念医学賞、エミール・フォン・ベーリング賞、朝日賞など多数受賞。84年文化功労者。
2001年5月2日、出張先の金沢で脳梗塞に倒れ、右半身麻痺と仮性球麻痺の後遺症で構音障害、嚥下障害となる。2010年4月21日死去。
著書に『免疫の意味論』(大佛次郎賞)『生命へのまなざし』『落葉隻語 ことばのかたみ』(以上、青土社)『生命の意味論』『脳の中の能舞台』『残夢整理』(以上、新潮社)『独酌余滴』(日本エッセイストクラブ賞)『懐かしい日々の想い』(以上、朝日新聞出版)『全詩集 歌占』『能の見える風景』『花供養』『詩集 寛容』『多田富雄 新作能全集』(以上、藤原書店)『寡黙なる巨人』(小林秀雄賞)『春楡の木陰で』(以上、集英社)など多数。


「2016年 『多田富雄のコスモロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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