谷崎潤一郎マゾヒズム小説集 (集英社文庫)

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  • 集英社
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レビュー : 134
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087466065

作品紹介・あらすじ

エスカレートする遊びの中で、少年と少女が禁じられた快楽に目覚めていく「少年」、女に馬鹿にされ、はずかしめられることに愉悦を感じる男を描く「幇間」、関東大震災時の横浜を舞台に、三人の男が一人のロシア人女に群がり、弄ばれ堕ちていく「一と房の髪」など、時代を超えてなお色鮮やかな、谷崎文学の真髄であるマゾヒズム小説の名作6篇。この世界を知ってしまったら、元の自分には戻れない。

感想・レビュー・書評

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  • マゾヒストに執って―或いはサディストに於いても―、相手は道具でしか無く、自分の内で描いたシナリオに愉悦、美を求めている。それが叶わないのなら、その相手は不要となる。
    "マゾヒストは精神的の要素を含まない"と云う谷崎の価値観には、大いに賛同せざるを得ない。それを履き違える者が、此の世に多過ぎる事も。
    マゾヒズムもサディズムも、表裏一体であり、何れも各々の価値観を識らなければ、其処に官能的美学は産まれない。それがSMと称されるものの本質であると、以前から私も感じていた。

    此の一冊は短編集で構成されているが、中でも「魔術師」と「少年」は私の中では途轍も無く官能美を備えている様に思う。「一と房の髪」は、「痴人の愛」の簡易ver.の様で、それならば「痴人の愛」を読み耽る方が幾らか愉しめる様に思う。
    虐待等の過去から生じるマゾヒズム(或いはサディズム)の性質は、無感動にその行為に悦びを感じ、そして僅かな切欠と共に反転する事もある。
    それがSとMが或る種同義である事を物語っている。

    谷崎の作品は、登場人物の中で格別に美しいものより、それを"利用"した者の動きが綿密に描かれている。其処が、他作品よりも秀逸な点だろう。
    一見、利用されているかの様に思わせる男女関係だが、マゾヒスト達はその"美"を「(谷崎の言葉通り)利己主義」な主人公の脚本の為に利用しているに過ぎない。
    それを如何に捉え、エロティシズムを感じ取る事が出来るかが、読者の感性に懸かっている。

  • 初めて谷崎を読んだ。タイトル通りのマゾヒズム短編集。『少年』が一番気に入った。彼等の性的倒錯を恰も自分が享受しているかの如く官能的に愉しめた。一見すると醜い行為も谷崎の文章も相まって美しく思われる。彼の他の作品も読みたい。

  • 比較的初期の短篇を6篇集めたもの。他の文庫なら、タイトルは普通に「少年・幇間」などとするところを、あえて『谷崎潤一郎マゾヒズム小説集』と銘打った。これで新たな読者を開拓しようとの目論見だろうが、『フェティシズム小説集』とともにまずは成功か。ただし、これだと例えば篇中の「少年」等をマゾヒズムの枠組みに固定してしまうことで、他の要素から遠ざけてしまうという欠点も併せ持つ。「少年」、「幇間」、「魔術師」などは耽美、幻惑、哀しみに満ちており、谷崎の筆法は冴えに冴えている。それぞれの短篇は長編に優に匹敵する密度だ。

  • 買うのためらうタイトルに偽りなし

  • タイトルは マゾヒズム小説集 よりも マゾヒズムの幻想によって描かれた小説集 というところをもう少しきちんと示しておいたほうがいいと思う

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「もう少しきちんと示して」
      手厳しいですね、
      まどろっこしいタイトルになるから、包摂?しちゃったのでしょう。。。「谷崎潤一郎●●●●小説集」...
      「もう少しきちんと示して」
      手厳しいですね、
      まどろっこしいタイトルになるから、包摂?しちゃったのでしょう。。。「谷崎潤一郎●●●●小説集」と言うシリーズになってますから、大目に見てやってください←余計なお世話ですが、、、
      2013/03/18
    • mqsuyさん
      nyancomaruさん
      ≫谷崎は大好きな作家の一人で彼の思想がとても好きだったので少し期待しすぎてしまったのかもしれませんね。いかんせんタ...
      nyancomaruさん
      ≫谷崎は大好きな作家の一人で彼の思想がとても好きだったので少し期待しすぎてしまったのかもしれませんね。いかんせんタイトルと表紙で釣っているような気持ちになりました…。
      2013/03/24
  • タイトルだけ見るとちょっと本屋でレジに持っていき難い感じですが(笑)、イラストが中村祐介でかなりポップなので、ある意味表紙買い。中身は、谷崎作品の中でも比較的初期の短編集。『魔術師』は別の文庫でも持ってるくらい好きな作品なので別として、『少年』がいちばん面白かったです。大人の自覚的な性癖じゃなくて、子供の頃の未分化な欲望の萌芽みたいなのが、大人より逆に残酷で生々しい。

    「少年」「幇間」「麒麟」「魔術師」「一と房の髪」「日本に於けるクリップン事件」

  • 私、やっぱり谷崎氏が好き。タイトル見て、全然惹かれなかったのに(表紙には惹かれて買ったけど)、むしろ何回見ても笑えるすごいタイトルやなあ・・・と思ってしまうけど、やっぱりどれも谷崎潤一郎の文章だ。レトロチックで、艶めかしい。

    少年・・・子供の視点ってこんなんだったな、と懐かしく思う一方で、なんでこの子たちはこんな痛々しい遊びに嵌っちゃってるんだろう、とストーリーにちょっと不満。

    幇間・・・川と花見船の組み合わせが好き。昼の宴会とか。
    麒麟・・・中国、歴史、王、麒麟、私がとても好きな言葉、シチュエーション。最後まで退屈しなかった。

    魔術師・・・「麒麟」よりもっと好きな世界観。夜のお祭りってわくわくする。暗い照明と雑然とした場所で開放的になる人々。しかも美しい魔術師がありえない魔法を披露するなんて。結末も滑稽で、ちょっと恐ろしいけど好き。

    一房の髪・・・ディックの足が気になりつつ、哀れな男三人がどうなるのかと思ったら、災害と事件になってしまった。 地震も女も悪女に引っかかる
    男も怖い。

    日本におけるクリップン事件・・・本当にあった事だと勘違いしてたけど、フィクションか。最初は、なんか納得いかないけど犬で完結したのか~と思っていたら、夜中になんという寒気のする結末を読んでしまったんだろう。人形は無理。想像すると怖すぎて寝れない。私は夫の心境が未だに理解できない。(20120816)

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「人形は無理」
      でしょ、、、
      「人形は無理」
      でしょ、、、
      2014/03/25
  • 全ての作品が、本当のことのように感じました。
    フィクションであるとは、感じません。
    その原因は、行動・心理の、近さ、と言いますか、そこで起こること起こること、考えること考えることに違和感を感じないのです。
    あの『一と房の髪』での露西亜人に対する描写のなんと麗らかなことでしょう。私にはその露西亜人の体の全てが、手に取るようにわかります。
    三人の男の心理も同様に、私には理解ができます。
    それと、『一の房の髪』の◯◯の部分はなんですか!超気になります。読めないんですかね。

    『魔術師』について、ちょっと思うところを書いておこうと思います。

    あの魔術師は、手品師であると同時に催眠術師である。つまり、手品師+催眠術師=魔術師になりうるのです。
    どういうことかと申しますと、ご存知の通り、催眠術師は、人を自由に操り、猿だの、象だの、何か動物などに変えて、その人を操ることができてしまいます。
    しかし、それを外から見ている人間は、催眠術にかかっていませんから、当然、その人が、滑稽な真似事をさせられているように感じます。
    ここで、観衆全てに催眠術をかけられたらどうでしょうか。
    催眠術を、「メインに」かけられる人、と「サブで」かけられる観衆。この構図では、術師以外のすべての人間が、催眠術にかかってしまいます。
    メインにかけられる人は、「◯◯になりなさい」と、暗示をかけられ、サブにかけられる(実際の催眠の深度としては、とても深く、催眠深度としては、メインをも超越しなければならないと思います。ここで言う、「サブ」とは役割のことです)観衆は、「あの暗示をかけられている人間は、◯◯だ」という暗示をかけられるのです。

    ここまでの深い催眠を、あの情景のような、大きな場所で、大人数に対して一斉にかけるというのは、いささか不可能のように感ぜられるでしょう。
    しかしながら、それを、可能にするための、まさしく「ギミック」が、「手品」なのです。
    手品では、催眠状態なしで、不思議な事が、現実に起こります。
    それを信じてしまう観衆は、もはや催眠導入にはもってこいの状態になるのです。
    更に、言えば、術師の美貌や、劇場の場所(木々が怪物に見えるなど、すでに軽い催眠状態であります)も重要で、それを、術師は完全に計算し尽くしていたと思えます。

    谷崎はどういうつもりで、これを書いたのでしょう。とても催眠・催眠状態のことを知らない人間が書いたとは思えないのですが……。

  • 2012.5.12.sat

    【経路】
    紀伊国屋のオススメの棚からジャケット買い。谷崎潤一郎の耽美小説は一度読んでみたかったので。

    【感想】
    SとかMなんて「ごっこあそび」だから楽しいのであって精神的な支配じゃないよねーって考えてたので、耽美の大御所の谷崎潤一郎も同じこと考えてたんだ!と変に感動した(笑)
    みうらじゅんさんの鑑賞に共感。
    SMのSは「サービス」のSで、Mは「身勝手」のM。逆に思われがちだけど、MがSを教育するんだな、と。(笑)
    「愛が深まれば深まるほど、常識から激しく逸脱していくわけだから、つまり究極の愛というのは究極と変態なのだ、と僕は思う。おそらく、こういう本当の愛を知っている人は十万人に一人もいないだろう。本当の愛は変態でないと味わえないものだから」
    ごもっとも。

    【内容メモ】
    ■少年
    無邪気でその異常性に無自覚なままに、次第にエスカレートさせてゆく子供たちの遊びの空間。未知の世界に引き込まれる快感。マゾの萌芽。

    ■幇間(ほうかん)
    男芸者の、詰られることの快感。
    「女にバカにされたいという欲望」をもった男のプロフェッショナルな笑い。

    ■麒麟
    聖人孔子の「徳」をもってしても南子夫人の肉体的な魅力には敵わない。

    ■魔術師
    大人の御伽噺。
    妖しい魅力の虜となって開ける新しい快感。

    ■一と房の髪
    同族の近しさと魅力のある大胆な女に振り回される男三人。
    震災で火事となったときに女の本性があらわれて、愛ゆさと憎しみに男がとった行動は‥

    ■日本におけるクリップソン事件
    マゾヒストは支配されてみえるのを悦ぶのであって、ほんとうに精神を支配されたままでは関係に行き詰まってしまうという極端な衝動の事件。
    •女優と気弱な夫の話。
    •愛故に折檻する女性を犬が悪魔と捉えて攻撃した話。
    •手作りの慰めに使われた人形が捨てられていた話。

  • 読みながら自分は…マゾヒズムかどうか気になりました(笑)

    『少年』は昔の自分達と近い部分もあって、誰しも無意識の中にマゾヒズム&サディズムがあると思いました。

    2冊目。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「気になりました(笑)」
      どうかな?と考え悩むコトが、気付いていないご自身の性格?を知る切っ掛けになったりして。。。
      「気になりました(笑)」
      どうかな?と考え悩むコトが、気付いていないご自身の性格?を知る切っ掛けになったりして。。。
      2012/11/30
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著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2018年 『父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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