谷崎潤一郎マゾヒズム小説集 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087466065

作品紹介・あらすじ

エスカレートする遊びの中で、少年と少女が禁じられた快楽に目覚めていく「少年」、女に馬鹿にされ、はずかしめられることに愉悦を感じる男を描く「幇間」、関東大震災時の横浜を舞台に、三人の男が一人のロシア人女に群がり、弄ばれ堕ちていく「一と房の髪」など、時代を超えてなお色鮮やかな、谷崎文学の真髄であるマゾヒズム小説の名作6篇。この世界を知ってしまったら、元の自分には戻れない。

感想・レビュー・書評

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  • 非常に抽象的なのだが、あぁ……谷崎潤一郎さま……と言う感じ。
    谷崎潤一郎自身が、美しくて悪い女にめちゃくちゃにされたいんだろうなと、ひしひしと感じた。
    ねっとりとした、様々なマゾヒズムの世界…ただ単に願望を垂れ流すとか、そういう感じではなく、それを文学へと昇華させているのだから、やっぱり文豪って凄いなぁと感じた。

    1発目から、かなりマニアックで背徳的なのだが…私のお気に入りは魔術師と一と房の髪。これよかった。

    他にも谷崎潤一郎フェティシズム小説集とやらがあるが…そちらもとてもマニアックでよかった。

  • 私、やっぱり谷崎氏が好き。タイトル見て、全然惹かれなかったのに(表紙には惹かれて買ったけど)、むしろ何回見ても笑えるすごいタイトルやなあ・・・と思ってしまうけど、やっぱりどれも谷崎潤一郎の文章だ。レトロチックで、艶めかしい。

    少年・・・子供の視点ってこんなんだったな、と懐かしく思う一方で、なんでこの子たちはこんな痛々しい遊びに嵌っちゃってるんだろう、とストーリーにちょっと不満。

    幇間・・・川と花見船の組み合わせが好き。昼の宴会とか。
    麒麟・・・中国、歴史、王、麒麟、私がとても好きな言葉、シチュエーション。最後まで退屈しなかった。

    魔術師・・・「麒麟」よりもっと好きな世界観。夜のお祭りってわくわくする。暗い照明と雑然とした場所で開放的になる人々。しかも美しい魔術師がありえない魔法を披露するなんて。結末も滑稽で、ちょっと恐ろしいけど好き。

    一房の髪・・・ディックの足が気になりつつ、哀れな男三人がどうなるのかと思ったら、災害と事件になってしまった。 地震も女も悪女に引っかかる
    男も怖い。

    日本におけるクリップン事件・・・本当にあった事だと勘違いしてたけど、フィクションか。最初は、なんか納得いかないけど犬で完結したのか~と思っていたら、夜中になんという寒気のする結末を読んでしまったんだろう。人形は無理。想像すると怖すぎて寝れない。私は夫の心境が未だに理解できない。(20120816)

  • マゾヒストに執って―或いはサディストに於いても―、相手は道具でしか無く、自分の内で描いたシナリオに愉悦、美を求めている。それが叶わないのなら、その相手は不要となる。
    "マゾヒストは精神的の要素を含まない"と云う谷崎の価値観には、大いに賛同せざるを得ない。それを履き違える者が、此の世に多過ぎる事も。
    マゾヒズムもサディズムも、表裏一体であり、何れも各々の価値観を識らなければ、其処に官能的美学は産まれない。それがSMと称されるものの本質であると、以前から私も感じていた。

    此の一冊は短編集で構成されているが、中でも「魔術師」と「少年」は私の中では途轍も無く官能美を備えている様に思う。「一と房の髪」は、「痴人の愛」の簡易ver.の様で、それならば「痴人の愛」を読み耽る方が幾らか愉しめる様に思う。
    虐待等の過去から生じるマゾヒズム(或いはサディズム)の性質は、無感動にその行為に悦びを感じ、そして僅かな切欠と共に反転する事もある。
    それがSとMが或る種同義である事を物語っている。

    谷崎の作品は、登場人物の中で格別に美しいものより、それを"利用"した者の動きが綿密に描かれている。其処が、他作品よりも秀逸な点だろう。
    一見、利用されているかの様に思わせる男女関係だが、マゾヒスト達はその"美"を「(谷崎の言葉通り)利己主義」な主人公の脚本の為に利用しているに過ぎない。
    それを如何に捉え、エロティシズムを感じ取る事が出来るかが、読者の感性に懸かっている。

  • 購入きっかけは中村佑介氏のイラスト。
    ってか中村佑介氏の表紙の本は買ってて、こちらが出ると知ったんだけど…
    普段谷崎潤一郎読まないんだよなぁ…というか、この辺の時代の人全般苦手で読まないんだよなぁ…という悩みと。
    マ、マゾですか!?手に取りづらいなオイ!という悩みと。笑
    結局やはり中村佑介氏のイラストが可愛くて買ってしまうという。
    中村佑介氏の制服は正義。

    が、しかし。
    うーーーん。やっぱりだめだ。
    これは完全に私の未熟さだろうな。文体に全然ついていけない。
    面白さが、というより思考かなぁ。理解できない範囲の本。

    マ、マゾ…!?という低俗な部類の知識しかなく。笑
    勝手にアンダーグラウンドなイメージを持っていましたが、ピンクのネオン街歩いててドアを開けたら別世界だった、って感じでした(わかりにくい例え)

    てか、随分と正統派なマゾだった。マゾに正統派とかあるのか分からんが。
    勝手に鞭でバシバシみたいなイメージでした。

    しかし苦手だ…。だが好きな人は好きというのはよく分かる…。

  • サービスのS、身勝手のM。なるほどね。今まで深く考えたことはなかったけど、そういうことか。

    幇間はわかってしまった…

  • この気持ちを理解する事がある意味子供と大人の境界線の一つなのかもしれない。

  • 初めて谷崎を読んだ。タイトル通りのマゾヒズム短編集。『少年』が一番気に入った。彼等の性的倒錯を恰も自分が享受しているかの如く官能的に愉しめた。一見すると醜い行為も谷崎の文章も相まって美しく思われる。彼の他の作品も読みたい。

  • 2作目までは読んだのだけど、文体や表現を味わう以前にマゾヒズムという嗜好?思想?に共感を持てず、、、断念。フェティシズム小説集なら読めるかな。
    一旦距離を置いて、また手を付ける日が来るでしょうか。

  • 比較的初期の短篇を6篇集めたもの。他の文庫なら、タイトルは普通に「少年・幇間」などとするところを、あえて『谷崎潤一郎マゾヒズム小説集』と銘打った。これで新たな読者を開拓しようとの目論見だろうが、『フェティシズム小説集』とともにまずは成功か。ただし、これだと例えば篇中の「少年」等をマゾヒズムの枠組みに固定してしまうことで、他の要素から遠ざけてしまうという欠点も併せ持つ。「少年」、「幇間」、「魔術師」などは耽美、幻惑、哀しみに満ちており、谷崎の筆法は冴えに冴えている。それぞれの短篇は長編に優に匹敵する密度だ。

  • 買うのためらうタイトルに偽りなし

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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