- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087466164
作品紹介・あらすじ
女郎蜘蛛の入れ墨を背に彫り込まれた娘が、自らの裡にひそませる欲望を解き放ち、あざやかな変貌をとげる「刺青」、恐怖に取り憑かれた男の禁断の快楽を描いた「悪魔」、女の足を崇拝する初老の男と青年が、恍惚の遊戯に耽り、溺れていく「富美子の足」など、情痴の世界を物語へと昇華させた、谷崎文学に通底するフェティシズムが匂い立つ名作6篇。
感想・レビュー・書評
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谷崎潤一郎の小説を読んでいると、最近の「私、○○フェチなんだー」というのがとても軽々しく感じます。
フェティシズムとは元来こういう物だったのだとおもいしるというか。
しっとりとした女性の色気、質感、姿形をパーツひとつひとつに着目しつつしつこい程に語っていますが、描かれる欲望と反して描写はなんとも上品で美しい。
谷崎潤一郎の話はどれも好きですが、この本の中なら『富美子の足』が特に好きです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
谷崎潤一郎が好き。
マゾヒズムとフット フェティシズム。
短編集。
刺青、富美子の足
耽美なこと。 -
病的です。フェティシズムの対象を崇拝し、変態として酔い痴れ、堪能し尽くす…文体の美しさが近頃のフェチものとは別格。
「悪魔」にいたってはかんだ後の鼻水ですよ?きちゃない。幸い、この境地には達しておりません。
「刺青」「悪魔」「憎念」「富美子の足」「青い花」「蘿洞先生」収録。
「刺青」と「富美子の足」が同時収録されているのがいいですね。 -
私は線が好き。
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何ページにもわたって脚についての魅力を語っていたり
ちょっと一般人のわたしからしたらひいてしまうような性的嗜好を持つ主人公ばかりの短編集なのですが、文章が美しいので最後まで読めました フェチという言葉は現代ではかなり一般化していますが、これには真のフェティシズムの深淵を垣間見せられた・・・! -
5年以上前に買った本を再読したので、この度感想を書くことにしました。
これだけ「〇〇フェチ」という言葉が浸透した現代の日本ですが、谷崎潤一郎がいなければこうじゃなかったのかもしれないと思いました。(というか、きっとそうですよね。)
まさにフェチ界のレジェンド。
『富美子の足』では、足の描写に5ページ余りも使っています。そして、その描写のなんと艶かしいこと…。
とても面白く、楽しい読書体験になりました。 -
富美子つきあいよすぎて笑った
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「谷崎先生の、自己フェティシズムフェチ。」
至宝の女体に施した刺青が女の性分までを一変させた表題作「刺青」、自分を秘密の楽園に誘ったモノとは…「悪魔」、その一部に憎しみを抱いたが最後どこまでも憎み続けずにはいられない「憎念」、隠居と僕を虜にした足「富美子の足」、女が身にまとう洋服への妄想と執着を描く「青い花」、もはや自虐的な「蘿洞先生」6編収録。
まずはおさらいしときましょう。
性的フェティシズムとは
「異性の肉体の一定部分や、女性が身につけている衣服の断片あるいはそれと密接な関係にある物体などに性的な興味が集中し、それらに異常な強度をもって性欲を刺戟される倒錯性」(解説より)
谷崎先生、噂通りの変態ですな。
とくに足に対してのこだわりは大変なものだったらしい。
「神」ともあがめる足の持ち主である若いお妾さんの、その足に
額を踏みつけられながら大往生、なんてもはや想像を超えている。
ここには、とりあえずそうしたフェティシズムを持ち合わせない人にとっては
「あなたの知らない世界」が繰り広げられています。
一つ一つにはまあ目が点になったりするのですが
この短編集全体を俯瞰してみてみると
谷崎先生は自身のフェティシズムに相当な興味があったのでは?
なんていうことが感じられてきたりするわけです。
女体に施す刺青であったり
鼻水まみれのハンカチであったり
顔の上の足であったり
女の皮膚の一部と思える洋服であったり
書斎の机の上でのお尻ぺんぺん、これはもう漫画ですが
大好きなおもちゃを上げてみたり下げてみたりいろんな角度からそれを眺めて飽きない
谷崎先生の子供のような無邪気さがそこには見えてくるのだわ。
もう自身のフェティシズムこそがフェチの対象になってます。
でもその自己観察の鋭さやこだわりを突き詰めて見せたところに
近代文学の名匠としての谷崎潤一郎があったんだろうなあ。
本短編集、作品のセレクトそのものはもちろんですが装丁もいいです。
表紙の尺八と三味線を持った妖しげな制服姿のおねえさん、
背徳の香りを漂わせつつもモダンでからりとしたその表情は
谷崎先生の無邪気なフェティシズムをヨシヨシするかのよう。
編集の妙にも拍手。