腰痛探検家 (集英社文庫)

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  • 集英社
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感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087466355

感想・レビュー・書評

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  • 「誰も行かないところに行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」、まさに体が資本の「辺境作家」が厄年を迎え、激しい腰痛に見舞われた。四六時中腰痛の事を考え、それこそ藁をもつかむ思いで必死に治療を続けた "辺境作家" の1年8ヶ月を描く、爆笑「腰痛世界」探検記。

    浮気性ではないけれど、なかなか劇的な治療効果が得られない著者は、目黒治療院 → 砦整骨院(近所)→カリスマ治療院(新宿)→ 整形外科クリニック(立川)→ 整形の名医(神奈川)→ PNF研究所(神田)→ ミナミ鍼灸院 → 鈴木医院 → 整形外科名医(中野)→ 診療内科(江戸川)と、所変え品を変え様々な治療を必死に試みる( "腰痛メビウス" !!)。様々な原因が指摘され、異なる診断が下され、その都度 "ダメ女子" になる著者(笑)。それぞれの施術/医療によって一時改善を見せるも症状は徐々に悪化していき…。最後は治療を放棄し、破れかぶれで水泳(「自力整体」)に取り組むのだった。

    自分も腰痛の辛さは経験済み。なので著者の腰痛の辛さ、身につまされた。身につまされながらも、自らの心理状態の描写などが可笑しくて、吹き出しながら読んだ。いやはや、面白かった。

  • あははは、おもしろーい!高野さんは何を書いても面白いなあ。自身の腰痛体験をつづった「腰砕け巨編」、まさにこれは高野さんが目指しているという「誰も書かない本」だよね。

    読み終えて思ったのは、高野さんって本当にまじめなんだなあということ。よい治療を求めて東奔西走、いくつもの整形外科や整体、整骨院、果ては心療内科まで渡り歩き、その都度そこの腰痛への考え方をとことん知ろうとし、感化され(そこがおかしい)カラダについて、ついには人生についてあれこれ考える。あとがきで高野さん自身が書いているように、腰痛に執着し、とりつかれている。

    でもそこはそれ高野さんのこと、サービス精神満点で、いつものように笑わせてくれる。残り三分の一くらいを一気に読んで満足して本を閉じていたら、同じ部屋にいた夫が「その本面白かった?」と聞く。「うん、とっても!なんで?」と尋ねたら、私は読みながらずーっとニヤニヤしていたそうだ。むう。

    とりわけ笑ったのは…

    なかなかわからなかった腰痛の原因としてついに難病を指摘された高野さん、病名がついて「少し嬉しいがほとんど絶望的という、片思いの相手が自分のことを好きだと書き残して死んでしまったような異常に複雑な気持ちにとらわれた」。そりゃ確かに嬉しくて絶望的だ。

    PNFという療法のホームトレーニングとして「四つんばいになって、手足をぷるぷるさせていると、必ずダルマ(著者の愛犬)が『お、何おもしろそうなことやってんの?』という顔で飛んでくる」。ビジュアルを想像するとかなり笑える。

    心療内科の医師に「あなたはストレスに弱くて、いつも人の顔色をうかがっている」と言われ、むかついた高野さん、「家に帰ると、妻に向かって喚いた。『じゃあ、もっとわがままに生きろってことか!?』『え、今より!?』妻は仰天した」。これがいちばんおかしかった。

    自分自身、ここ何年かしつこい肩の痛み(世に言う五十肩…)や目の不調(光視症ってヤツ)にかなり悩まされてきたので、高野さんの苦闘にはすごく共感した。本当に体の不調、とりわけ痛みは人を支配してしまう。これさえなければ…と、あるべき姿を取り戻そうと必死になる。高野さんの言うとおりそれは「幻想」だ。「まあ、今はこんなもん」と思い「前に歩き続ける。期待せず、諦めず」。本当にそうだなあとしみじみ思いました。

    • たまもひさん
      面白かったですよねえ。同感してもらえて嬉しいです。

      今度の日曜日ジュンク堂での高野さんのトークイベントに行く予定です。ナマ高野さんのお話が...
      面白かったですよねえ。同感してもらえて嬉しいです。

      今度の日曜日ジュンク堂での高野さんのトークイベントに行く予定です。ナマ高野さんのお話が聞けるなんてもうすごく楽しみ!ワクワクドキドキしています。「ソマリランド」の感想をまた書きますので、良かったら読んでやってください。
      2013/02/25
    • niwatokoさん
      わあ、いいな! トークイベントの様子なんかもちょこっと教えていただけたらうれしいです。ソマリランドの感想も楽しみにしてます!
      わあ、いいな! トークイベントの様子なんかもちょこっと教えていただけたらうれしいです。ソマリランドの感想も楽しみにしてます!
      2013/02/26
    • たまもひさん
      いやあ、そう言ってもらえるとなおさら楽しみになってきました。ご期待に添えるようしっかり見てきますね!
      いやあ、そう言ってもらえるとなおさら楽しみになってきました。ご期待に添えるようしっかり見てきますね!
      2013/02/26
  • 腰痛の探検家・高野さんの本と思って読んでみたらば、もっとすごかった。
    腰痛世界という魔窟を高野さんが探検する話なのであった!
    とても面白かった。まさに探検、様々な治療法が乱立している秘境のような世界を高野さんが彷徨うのだ。
    彷徨いながら語る言葉がおもしろくて可笑しい(^0^)
    悪い彼氏と別れられないダメ女子しかり、自分の身体を直すのを会社再建にたとえ、性転換したのみならず社長に出世してしまったり、笑った〜。
    「ラーメン屋のおやじ理論」も面白かったし、高野さんほんとに面白い。
    民間療法、西洋医学、東洋医学、整体…。読んでいて自分も治療に立ち会っているような気になってくる。どれも理論をきくとなるほどと思ってしまう。
    痛みの原因、治療の解釈、ほんとにいろいろな視点があって感心する。
    いろいろ真剣に取り組むけれど、どれも良くなるのには至らず腰痛メビウスにはまり込む。同情いたします。
    腰痛世界はほんとうに奥深いですね。高野さんが数々の治療を試した末にたどり着いた境地にしみじみ感じ入りました。

  • 腰痛持ちなら、読めばまるで自分自身のことではないかと思うのではないだろうか。マッサージは効くようなそうでもないような感じ。
    医者もどこに行ったら結局正解なのか悩みと混迷が深まるばかりの日々。
    ちょっと良くなったらすぐに活動をしすぎて悪化。
    結末がどうなるのか、この本を読み終えても気になってしまう。
    どうぞお大事に。

  • 腰痛になり、
    とにかくアッチコッチの整形外科、イイと評判の整体、果ては心療内科に通いまくった記録。

    高野さんが、新宿歌舞伎町にある怪しげな、カリスマ先生のところへ行けば、
    おぉ、そんなところにカリスマが居たか! と自分も通いたくなり、

    高野さんが、愛犬を通わせている動物病院の院長先生が、針で動物を次々治し、
    そこで診てもらうことになったとあれば、
    おぉ、体の声をよくよく聞いて治してくれる医者の中の医者が居たか!と、
    やはり自分も通いたくなった。

    いやーもー高野さんが、”通い始める”と、ことごとく胸が高鳴った。
    そして、次を探すくだりになると、高野さんと共に心が沈んだ。

    整形外科や整体の先生をカレシに例え、自分をダメ女子と比喩するあたり、
    かなり笑えた。腰痛方面に問題ない人も面白い読み物としておおいに楽しめるでしょう。

    • ようちんさん
      おもしろそう~~
      いや、人様の不幸で本がおもしろく読めるのは
      些かきがひけるけど、でも、読んでみたい~
      いま、非常に肩がこりこりで、痛...
      おもしろそう~~
      いや、人様の不幸で本がおもしろく読めるのは
      些かきがひけるけど、でも、読んでみたい~
      いま、非常に肩がこりこりで、痛くてたまりませんが
      何か役立つ情報はあるでしょうか??


      2012/02/24
    • くんたろうさん
      >ようちんさん

      うーん、役立つ情報は無かった、いやそうでもないか。高野さんはいろんな治療院へ通ったけど結局らちが明かず、捨て身になり通った...
      >ようちんさん

      うーん、役立つ情報は無かった、いやそうでもないか。高野さんはいろんな治療院へ通ったけど結局らちが明かず、捨て身になり通ったプールで腰痛から立ち直ったのだそうです。
      だから…運動をするのが一番ってのが一番の情報かもしれません。
      2012/02/28
  • 腰痛持ちの方からしたら笑いごとではないのだろうが、藁にも縋る思いで頼った主治医たちに翻弄されている高野さんの様子はやはり笑いを誘う。彼の苦悩っぷりを見ていると、腰痛の悩みを吐露する人には優しく接しようと思わずにはいられない。診る人の専門領域や流派によって診断結果や治療方針が異なるとなれば、主治医選びの難易度も上がる。そして高野さんが辿り着いた結論は、実にシンプルで納得のゆくものであった。

  • めちゃめちゃ最高におもしろかったーーーー。いちいちすっごく笑える。そして共感。腰痛治療をはじめて、効き目がないなと思いつつ、その治療院をやめられないのを、悪い男と別れられないダメ女子、になぞらえたり。「次に行く(男or治療院)が決まっていないからひとりになるのがこわい」。個人的にこれはすごくよくわかる!(治療院のほうです)。心因性を疑って心療内科にいって体調が悪くなっていくあたりでは、なんだかかわいそうで、その不安や怒りが人ごととは思えず、泣きそうになったほど。そしてそこから復活したときは感動すら。人間の体ってこういうものかもしれないなあとか。いやあ、わたしに慢性疾患と治療への個人的な思い入れがあるせいかもしれないけど、本当によかった。でも、単に、笑える本が読みたい人にもおすすめです。

  • 単なるおっさんの腰痛治療の話がなんでこんなに面白いのか。

    ご本人も後書きで書かれてますが、腰痛治療に取り組む姿勢がなかなかに狂気じみてて、納豆や未確認生物捜索の勢いと変わらない没頭ぶりに、手ぶらでは帰ってこない探検家魂を感じた。

  • 腰痛に苦しんで色んな治療を試す話。

    腰痛世界を彷徨って、色んなことを調査してうまくいかなくて…を繰り返すいつもの辺境の話のノリで、腰痛体験が語られている。
    腰痛怖いな

  • しつこい腰痛と悪戦苦闘の約1年半。読んでいると自分も腰が痛むような気がしてくる。
    整形外科、整骨院、整体、謎の治療院、鍼灸院、理学療法、東洋医学、心療内科までフルで受けているのにこれといった結果が出なかったのは不思議だった。治療法を探して途方に暮れる気持ちがよく分かる。
    高野さんの場合は荒療治っぽい感じで水泳に通い続けて次第に良くなっていったということだが、筋力がついたと同時に時が経ったことも多少影響してるだろうなと予想。
    何度も声を出して笑ったはずなのに具体的に何で笑ったのか覚えてない。腰痛についてしか書いてないのに面白かったなぁ。

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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