- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087466652
作品紹介・あらすじ
大学生のゆきなの前に、長く会っていなかった兄がいきなり現れた。女性と料理と本を愛し、奔放に振舞う兄に惑わされつつ、ゆきなは日常として受け入れていく。いつまでもいつまでも幸せな日々が続くと思えたが…。ゆきなはやがて、兄が長く不在だった理由を思い出す。人生は痛みと喪失に満ちていた。生きるとは、なんと愚かで、なんと尊いのか。そのことを丁寧に描いた、やさしく強い物語。
感想・レビュー・書評
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兄・禎文と妹のゆきなは、お互いがお互いの人生に、苦しみと痛みの喪失を
与えてしまったことを深く悔いている。もしもあの時、こうしていたなら...いえ、
こうしていなかったなら....と。そうしていれば、苦しませることもなかったし
死なせることもなかっただろうに...。できるものならそんな苦しみから
解き放してやりたい。できるものならその痛みを償いたい。そんな二人の
気持ちの尊さを、どこかで神様は見ていてくれたのかもしれません。
この二人の兄妹は奇跡的な再会が叶うのです。
おにいちゃんの作る美味しい料理がゆきなの空腹を満たします。
いつものおにいちゃんの味..。懐かしい味。大好きな味...。もう二度と
味わうことなど叶わないと思っていたトマトスパゲティ。最後の一口を
食べ終えてしまうのが惜しくてつい箸は止まってしまうのだけれど
なんでだろう...おいしい食べ物、それも大好きな人の作ってくれた懐かしい
温かな一皿というものは、空腹を満たしてくれるだけじゃないんですね。
痛みと苦しみに喪失してしまった心でさえも優しくそっと温めてくれる
不思議な力があるのだなぁと思います。
九つの章で語られるこのお話には、九つの古典文学が絡められています。
大学生ゆきなが、見失ってしまった自分の心を少しずつ修正しながら
取り戻して成長していくその過程に寄り添うようにして、短い古典小説の中の
一説が、優しく語りかけてくれているかのようでした。そして
"食べてみなければどんな味になるのかわからない、人生のようなスパゲティ。"
レシピを見ないで作るからこその味。
信じてみよう。楽しもう..。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ひとりっ子で、「素敵なおにいちゃんがほしかった。。。」と
ため息をつく少女時代を過ごした人
生きていくのに、たくさんの本と、おいしい料理と
たったひとりでいいから、自分を見守る温かいまなざしを持つ人が
どうしても必要な人
私によく似たそんな人には、きっと胸に響く物語です。
第一話の泉鏡花に始まり、太宰治、内田百閒、樋口一葉など
一話ごとにひと昔前の名作がタイトルとなって並び、
最後の第九話は、お手本になったであろうサリンジャーの
『ナイン・ストーリーズ』の中の1篇で閉じられるという、本好きにはたまらない構成。
しかも、その一話一話に、洋風炒飯をつめたローストチキン、
皮から手作りした小龍包、ひと瓶700円のサフランを使ったパエリアなど
哀しい記憶を封じ込め、薄氷を踏むようにして日々を過ごしている
自分の危うさに気付かないゆきなをなんとか「生き続けさせる」ために
兄の禎文がせっせと作る心尽くしの料理が登場して、
食事が喉を通らなくなったゆきなに、禎文がひと匙ずつ
雛鳥に餌付けするように、パエリアを食べさせるシーンには
思わず涙が零れました。
容姿端麗で、誰とでもすぐ仲良くなれて、もちろん女の子にもモテて
ちゃらちゃらしているのに、実は古書をこよなく愛する読書家で
情の深い禎文が、まるで少女時代の憧れをまるごと詰め込んだかのよう♪
最後の最後には、彼のように
「世界に溶け込んでしまうような」召され方をしたいなぁ。
そして、物語の終わりに添えられた禎文式トマトスパゲティのレシピの
「決して計量してはいけない。目分量で。」とか
「いろんなスパイスを使いましょう。いつも違う味にしましょう。」とか
茶目っ気溢れる注意書きにまで
どこまでも禎文がやさしく宿っていて、素敵です。 -
解説の最後にある通り、「食べること、恋をすること、本を読むこと――生きることへの愛情がたっぷり詰まった」作品でした。
人は間違いを犯すし、嘘もつく。誰かを傷付けたり、傷つけられたりする。愛されて幸せを感じるし、美味しいのも幸せだ。そんな人間の素の部分に心を揺さぶられる。 -
どこかほっこりして、あたたかいお話。
このお兄ちゃんいいな~
ちゃらちゃらして、女の子にモテモテなんだけど、本が好きで料理好き。
妹を励ますときに せっせと美味しい料理を作る。
お兄ちゃんの作った トマトスパゲッティ、皮からつくるし小籠包・・食べてみたい。
美味しい料理が出てくる本は それだけで心が満たされてくるようで好きだな~-
このお兄ちゃん、「素敵なおにいちゃんがほしかったな」とつぶやく女の子たちの
「素敵」をぜんぶ詰め込んだような素敵ぶりですよね!
私もこんなお...このお兄ちゃん、「素敵なおにいちゃんがほしかったな」とつぶやく女の子たちの
「素敵」をぜんぶ詰め込んだような素敵ぶりですよね!
私もこんなお兄ちゃんに、おいしいごはんを作ってもらって
好きな本について語り合うという、夢のような体験を
一度でもいいからしてみたかったなぁ。。。2012/09/20
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文豪達の作品を絡めながら、幽霊になった兄と大学生の妹ゆきなの日常が描かれています。
ほんわかとした雰囲気で作品が進み、お兄ちゃんが作る美味しそうなご飯に、思わず真似してみたいという気持ちになりました。
ドラマのように、ゆっくりと少しずつ話が展開していきますが、最後は今までとは対照的で少し意外に思う展開でした。
この本をきっかけに知った作品や料理のレシピもあり、物語の展開はもちろん、色々な知識を得られるという点でもすごく楽しめました。
兄弟の優しい日常を見守るだけではなく、色々と考察してみても楽しめそうだなと思います。 -
野暮ったい感想もあるかもだが、おっちゃんにはスッと入り込んできた作品。
いいじゃないの、仲良し兄妹。
ツラは不細工でも、ハートはイケメンで有りたい、おっちゃんも精進します。
橋本 紡さんの、他の作品も探して見たくなりました。良かったら、推しの二人目になるかも? -
まあ、内容はどうでも良い感じ。でも、本を読むこと、食べること、音楽を聴くこと、知らない街を歩くこと、身体を動かして心地よい疲労感に包まれること、何もしないでぼーっとしてること、あとは暇つぶしってなんだろう?
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小説なのか短編小説なのかどっちなんだろう
綺麗な文章で面白かったです -
はじめて、橋本紡さんの作品を読みました。
前々からこの作品が気になっていたので
すごく、楽しみにしていました。
どんな話なんだろう、とページを捲ってみると
そこからはもう本から目が離せなくて
第八話の最後では涙が流れちゃいましたね。
もうすっかり橋本紡さんのふぁんです 笑 -
心温まる日常な話し。
ただ、非日常が日常に混ざり込んでる話し。
大きな後悔を抱えてる人が、これから後悔しそうな人に、かなり過保護でお節介をやく優しい話しだった。
もう少し大きくなったら娘に読ませたい一冊。