逝年 (集英社文庫(日本))

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087466959

作品紹介・あらすじ

あなたの最期の人になる。『娼年』続編
娼夫の世界に入って一年、リョウはボーイズクラブを引き継いでいた。美貌のオーナー・御堂静香が刑務所から戻るが、エイズを発症していて…。忘れられない愛を描く、傑作長編。(解説/鴻巣友季子)

感想・レビュー・書評

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  • すごく良かった。
    ラスト泣きました。
    私の年齢が、作品にぴったり当てはまっていたからかもしれない。

    シリーズ物の作品というのは、映画でも小説でも、1番目は続編の「前提」であり、続編にはそれを上回るテーマが入り込んでくる。
    なので、シリーズは続編から益々面白くなってきますよね。

    冒頭は、前作のようにクラブを再建し、お客様を取って若いスタッフで運営して行く、少し「IWGP」を思い出すような軽いスタートだったのだけれども、スカウトした相手がGDI(ジェンダー・アイデンティティ・ディスオーダー)性同一性障害で、FTM(フィーメイル・トゥ・メィル)心が男性なのに、肉体が女性である状態の人であり、彼が娼夫という仕事をするという事と、親との和解、性転換、彼女との結婚など、重めの問題が扱われています。

    さらに増して、元オーナー御堂静香のエイズ発症という、この世界にはついて回る病気の問題。

    そして、最も身近でいて、捉える人によって違う響きをもたらす「死」に対する問題です。

    御堂静香の友人、ヨーコの言葉に共感しました。
    「苦しみも欲望も、簡単に乗り越えられたりはできないものよ。悟ったりなんて、誰もしないの。みんなが傷つきながら、今を生きている。こたえはどこにもなくて、ただそうやって今日を見送るだけ。それが人間にできることなの」

    そして、御堂静香の再期のセックス後の言葉、
    「生きているって、自分の身体をとおして誰かを感じて、なにかを分けあうってことだったんだね」と。

    「生きてる」って、生きてていいって思える事のひとつの心の代弁をされました。

  • 『娼年』の続編となるシリーズもの。

    なるほどこういう商売もいろいろとそれなりに大変なんだなぁということを感じる。まあ、当たり前といえば当たり前だけれど。

    働くって、(それがどんな分野であれ)しんどくないものなんてないよね。

  • 性の多様性、欲望に内包された人間の深みなど、前作を踏襲する内容であるが、それに加え「死」をテーマに構えた作品となっている。
    病と向き合い続ける静香さんやリョウの死生観は、かなり刺さるものがあった!

    • かなさん
      華麗なる義塾さん、初めまして。
      この作品もスゴかったですね!
      次は「爽年」も読まれるのでしょうね(^^)
      レビュー楽しみにしています。...
      華麗なる義塾さん、初めまして。
      この作品もスゴかったですね!
      次は「爽年」も読まれるのでしょうね(^^)
      レビュー楽しみにしています。

      この度はフォローをして頂きありがとうございます。
      こちらからもフォローさせて頂きますので
      どうぞよろしくお願いします。
      2023/04/22
    • 華麗なる義塾さん
      かなさん、初めまして!
      フォロー返し、ありがとうございます。
      「爽年」ももちろん読むつもりでいます!!
      こちらのシリーズは、悩める女性を優し...
      かなさん、初めまして!
      フォロー返し、ありがとうございます。
      「爽年」ももちろん読むつもりでいます!!
      こちらのシリーズは、悩める女性を優しく包容するリョウの器の広さに、少し憧れを持ちながら読みました。

      ちなみに、かなさんの本棚・レビューを拝見させて頂き、「新宿ナイチンゲール」を読みたいと思っています。
      こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。
      2023/04/22
  • 御堂静香が逮捕されてから一年後、売春組織「クラブ・パッション」を復活させたリョウくん。
    咲良とアズマくんはもちろん、一年前に警察に通報してクラブを潰したメグミも仲間に加わった。リョウくんは娼夫のスカウトにも精を出し、性同一障害のアユムくんも親公認(!)で働き始める。

    少しずつ活気を取り戻し始めたクラブにとうとう御堂静香が帰ってきたが、エイズを発症した彼女の余命は残り少ない。リョウくんは御堂静香と最初で最後の交わりを行い、数日後彼女は亡くなる。

    第二の母が逝ってしまっても情熱の火は消えない。リョウくんは今日も娼夫の仕事を丁寧に、スマートにこなす。かつて御堂静香から学んだように。

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    印象的だった文章を引用する。

    『欲望のための行為というより、緊張の開放とリラクゼーションのための静かな開放である。(P81)』

    外見へのコンプレックスから、電気をつけず暗闇での行為を望む女性との売春シーンの一文。とてもオシャレだ。とても性行為の描写とは思えない。ここだけ読めば、マッサージか何かの話かな、と思ってしまう。
    性欲求をいやらしいものではなく、コミュニケーションツールの一つとして表現していて、マインドコントロールされそうになった。オシャレで素敵で、なんだかアカデミックな雰囲気を感じるけど、やはり売春は犯罪だから気をつけなくてはいけない。

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    御堂静香の死を匂わせるプロローグで始まり、御堂静香との別れで終わる話だった。
    性、売春だけでなく、死ぬことまでスマートな雰囲気に包まれていて、こんなオシャレな世界に生きて死にたいよな、と思った。
    (現実の世界は綺麗でスマートなことなんて少なくて、毎日つまらないことばかりだ。オシャレとは程遠い。だからこそ簡単に死ぬわけにはいかないぞ、と思う自分もいる)

  • 娼年の続編ということで手に取りました。生きる上での性の大切さを感じる作品でした。

  • これぞ究極の愛…かな?

    リョウの友人、メグミによってクラブ・パッションは摘発されオーナーの御堂静香は拘留される。
    御堂静香の娘、咲良とリョウとアズマの3人でクラブ・パッションを再開させ追加でホストを1名、それとクラブ・パッションを追い込んだ原因のメグミが加わりだんだんと軌道に乗せていく。
    やがて御堂静香は出所するがエイズを発症し余命幾許の状態に、最後の最後にリョウと御堂静香は結ばれる。

    エイズを発症している相手とのセックス
    かなり危険な行為だけどそれを超越した2人の愛がこの本のメインの話になります。
    たしか続編があったように思うので読んでみよう。

  • 三部作の2作目

    御堂静香の逮捕から クラブ パッションを リョウ アズマ 咲良 メグミ で再開。

    LGBT の アユム をスカウトして クラブの運営は順調に進む……
    そんな中 御堂静香が出所 喜び合う メンバーだが……

    幸せは長く続かない。

    リョウ(主人公)の成長の為の大きな試練 そして別れ。

    はたしてその先にあるものは………


  • 娼年の続編があるとわかり即読んでみました。深いなぁ〜色々と‥考えさせる作品です。

  • 娼年の続編。
    静香さんとこれからクラブ・パッションを盛り上げていこうと言う矢先、帰って来た静香さんは発症していなかったHIVを発症してしていた。
    残された時間は僅か。
    リョウの想いと静香さんの想い…
    作家の石田衣良さんは成熟した女性の表現の仕方がとても繊細で、こんな捉え方があるのかと思わせてくれる。
    セックスは単純なものではない。リョウの娼年としての生き方を見て深いなと思った。

  • 久しぶりの石田衣良。

    非合法な世界に生きるものの、その恋心は清く美しい。

    ふしだらな意味ではなく、読後は愛する人とセックスをしたくなった。

    ただし、やっぱり、「死」を前提としてスタートする物語は好きくないな。そのため、読了までにえらく時間がかかってしまった。

    ★3つ、7ポイント。
    2017.07.24.図。

    ※石田衣良はやっぱり、「街もの」が好き。
    池袋、秋葉原、下北、上野、月島、六本木、までは全部読んだし、下北以外は全て大好きな作品となった。

    さて、次はドコを舞台に「街もの」を描いてくれるか、楽しみ。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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