沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 下 (集英社文庫(日本))

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087467260

作品紹介・あらすじ

青い空と海の下に隠された<真実>。
戦時中に唯一戦場となり、米国から返還後も米軍施設の75%が集中する沖縄。天皇・米軍・県警からパワーエリート・アンダーグラウンドまで、切れば血が出る本当の沖縄の戦後史を掘り起こす労作!

感想・レビュー・書評

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  • 沖縄には、日本の戦後のすべてがある。太平洋戦争、今なお日米の狭間で翻弄される沖縄。だがそんな中、たくましく今日の沖縄を築いた人々がいる。密貿易、軍用地主のドンなど、知られざる姿に光を当てるノンフィクション。青い空と海の下に隠された<真実>。戦時中に唯一戦場となり、米国から返還後も米軍施設の75%が集中する沖縄。天皇・米軍・県警からパワーエリート・アンダーグラウンドまで、切れば血が出る本当の沖縄の戦後史を掘り起こす

  • 「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史(下)」佐野真一著、集英社文庫、2011.07.25
    495p ¥780 C0195 (2020.09.30読了)(2019.01.22購入)(2011.12.10/2刷)

    【目次】
    Ⅳ 沖縄の怪人・猛女・パワーエリート(その2)
    スーパースター・瀬長亀次郎
    ウチナー金融表裏事情
    「沖縄の帝王」軍用地主
    カプセルホテル怪死事件
    沖縄知事選コンフィデンシャル
    女たちの沖縄
    少女暴行事件の傷跡
    美ら島の陰に
    Ⅴ 踊る琉球、歌う沖縄
    島唄復活と大阪ウチナーンチュ
    沖縄ミュージックは日本に届くか
    最果て芸能プロモーター伝説
    沖縄最高のエンターテイナーは誰か
    Ⅵ 第二の“琉球処分”
    「怨」と「反ヤマト」の沖縄列島
    琉球王朝・尚家の盛衰史
    尖閣列島、波高し
    海燕ジョーの最期
    おわりに
    文庫版のためのやや長いあとがき―沖縄美少女探索紀行
    解説  岡留安則
    沖縄戦後史 略年表
    主要参考文献
    主要人名索引

    ☆関連図書(既読)
    「沖縄」比嘉春潮・霜多正次著、岩波新書、1963.01.25
    「琉球王朝記」童門冬二著、三笠書房、1992.10.31
    「琉球王国」高良倉吉著、岩波新書、1993.01.20
    「琉球の風 一」陳舜臣著、講談社、1992.09.24
    「琉球の風 二」陳舜臣著、講談社、1992.10.14
    「琉球の風 三」陳舜臣著、講談社、1992.11.05
    「沖縄ノート」大江健三郎著、岩波新書、1970.09.21
    「沖縄のこころ」大田昌秀著、岩波新書、1972.08.21
    「米軍と農民」阿波根昌鴻著、岩波新書、1973.08.20
    「命こそ宝」阿波根昌鴻著、岩波新書、1992.10.20
    「ひめゆりの塔をめぐる人々の手記」仲宗根政善著、角川文庫、1982.04.10
    「ひめゆりの沖縄戦」伊波園子著、岩波ジュニア新書、1992.06.19
    「海に沈んだ対馬丸-子どもたちの沖縄戦-」早乙女愛著、岩波ジュニア新書、2008.06.20
    「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史(上)」佐野真一著、集英社文庫、2011.07.25
    「宮本常一が見た日本」佐野眞一著、NHK人間講座、2000.01.01
    「津波と原発」佐野眞一著、講談社、2011.06.18

    (「BOOK」データベースより)amazon
    沖縄の戦後65年余を知らずに現代日本は語れない。歴史的な政権交代と鳩山民主党による普天間飛行場移設問題の裏切り、「琉球処分」後に王朝尚家を見舞った数奇な運命、尖閣諸島の秘められた歴史、沖縄の戦後そのものの人生を生きたヒットマンの悲しい最期など…東日本大震災後の沖縄の今日を視座に入れながら、大幅加筆200枚。沖縄戦後史を抉る渾身のルポルタージュ、待望の文庫化。

  • 「(軍用地)約88%が国有地で占められる本土に対し、沖縄では1/3は個人が所有する私有地で占められている」p63
    「(ニーチェ)「この世で男が熱中できるものは二つしかない。遊びと危機である」」p134
    「親族同士が助け合う沖縄ユイマール精神は、沖縄人の進取の精神を殺ぎ、ひいては沖縄の発展を阻害する要因ともなっている」p189
    「エイサーは最近では観光イベント化したものが多いんですが、私が最初に出会った勝連平敷屋のエイサーは、先祖送りのためにお盆にしか行われない伝統的なエイサーです。練習もものすごく厳しい。沖縄の芸能の一番深いところにあるのが、あのエイサーだと思います」p241
    「嘉手納基地からベトナムの戦場に米兵を送り込む米軍機が耐えなかったあの当時、コザはセックスとマリファナとロックなしには夜も日も明けない東アジア最大の歓楽街だった」p242
    「あの頃のバンドマンの稼ぎはすごくて、ひと月の給料でここいらへんの安い土地なら50坪買えたらしいですよ」p245
    「歌をうまく歌わせようとか、踊りを上手にさせようなんていうことよりも、芸能界にコネを作ることが、芸能学校の最大の仕事なのだ」p283
    「彼らはエライと思いますよ。それほどの素材でなくともCMやドラマにのべつまくなし出演させて、とにかくスターに仕立て上げるんですから」p288

  • 著名なジャーナリストである佐野眞一が沖縄を余すことなく取材した結果をまとめた本。

     下巻では、①軍用地主、②尚市などをまとめている。
     上巻に引き続き、文献的な調査もさることながら、キーパーソンに対する詳細な取材が裏付けるリアルな沖縄が垣間見えてくる。文句なしに5つ星。

  • 野底土南(ぬかどなん)の名前は竹中労の著作で知った。思えば
    竹中労も沖縄に魅了された人だったのだもね。野底は2007年に
    亡くなっているのだが、病床とは言え本書ではインタビューが
    出来ているのが凄い。

    青い空と青い海。日本国内の南国リゾートだけではない面が、
    下巻でもてんこ盛り。上巻はアウトロー色が強かったけれど、下巻は
    政治や経済、芸能の話を主に扱っている。

    日本に駐留している米軍の基地の多くを担っている沖縄。基地
    問題をメディアが取り上げる時には、当然のように基地の危険性や
    米兵による犯罪などが多くを占める。

    だが、基地問題の裏側には軍用地主の存在があることは一切報道
    されない。本書ではこの軍用地主にも切り込んでいる。

    沖縄最大の軍用地主であり、全国長者番付にもランキングされる
    竹野一郎にこそ面会は叶わなかったが、「沖縄県軍用地等地主会
    連合会」で事務局長から話を聞いている。

    反戦地主ではない軍用地主の連合会側からの証言として、これは
    貴重な話だろうな。米軍の勝手な接収から現在の制度に至る変遷
    が分かりやすい。

    そして一番興味深かったのは琉球王朝の尚家の宝物にまつわる章。
    沖縄戦で上陸したアメリカ軍の軍人が、戦利品として持ち帰った尚家
    の王冠や文物についてはミステリーを読むようだ。

    沖縄戦、米軍基地、米兵による犯罪。本土の犠牲者としての面も勿論
    あるのだが、それだけで沖縄を語ってはいけないのだろうなと改めて
    思った。

    特に琉球王朝についてはもっときちんと学校で教えるべきだと思うわ。

    尚、本書では民主党政権下(当時)でごたごたした尖閣諸島問題も取り
    上げており、謎の所有者一族への接触も試みている。この一族もなんと
    も謎が多くで面白かった。民主党政権については気持ちがいいほど、
    ボロクソに書かれているけどね。特に鳩山”ポッポ”由紀夫については
    「佐野さん、筆が滑りすぎですよ」って感じるくらいに糞味噌である。

    読み終わって思ったんだけど、やっぱり琉球独立論はある面、正しい
    のかもしれない。ただ、現在の沖縄が琉球王朝の時のように経済的
    に独立できるかには疑問もある。

    沖縄振興予算や米軍基地関連の収益がなくて、やっていけるのだろう
    かって思うんだよね。今でさえ失業率が高いのだから。

    紋切り型ではない沖縄がここにある。これも著者の沖縄への愛情で
    あるのだろうと感じた。

  • 2011年(底本2008年)刊。

     尖閣問題は底本にはなく新規とのこと。

     沖縄戦後史だが、雑誌連載の集積なのでテーマは多岐に亘る。軍用地主、芸能、金融、沖縄独立論、基地問題と米軍人による強姦事件、琉球王朝家の戦後史等。
     当然、感想も多岐に。
     沖縄闇金の跳梁跋扈に驚く一方、サラ金の金利の低さにも。また、反戦地主とは異質の軍用地主、彼らや琉球王朝家の影響。米軍に対するアンビバレントな感情と基地経済の浸透度、その一方で地位協定の不備と米軍(特に海兵隊)が治安悪化要因という点は看過し得ず。
     アングラを書かせたら読ませる著者らしい一書。

     他にも、仲井真知事の悪い意味での官僚堅気、守屋武昌元防衛省事務次官や米国国務省・国防総省担当者が沖縄反戦運動を見る目線とは真逆の彼らの言動(沖縄の所謂弱者の戦略)=クロスリファレンスの意義を感得させる面もあり、多面的に沖縄を見ることができる。
     
     個人的には模合(≒頼母子講)を含む金融史が一番興味を引いた。

  • [ 内容 ]
    <上>
    戦後日本は、沖縄を米国へ人身御供として差し出すことで、復興と繁栄を手に入れた。
    沖縄に米軍基地の大半を押しつけて経済発展を享受する構図は、東京のために福島に原発を作ることと何ら変らわない。
    天皇、米軍、沖縄県警、ヤクザ、怪人、財界人、奄美人など…戦後の沖縄を作り上げた人々の、本土では知られざる「小文字」の物語を丹念にたどり、現代日本そのものを逆照射したベストセラー。

    <下>
    沖縄の戦後65年余を知らずに現代日本は語れない。
    歴史的な政権交代と鳩山民主党による普天間飛行場移設問題の裏切り、「琉球処分」後に王朝尚家を見舞った数奇な運命、尖閣諸島の秘められた歴史、沖縄の戦後そのものの人生を生きたヒットマンの悲しい最期など…東日本大震災後の沖縄の今日を視座に入れながら、大幅加筆200枚。
    沖縄戦後史を抉る渾身のルポルタージュ、待望の文庫化。

    [ 目次 ]
    <上>
    1 天皇・米軍・沖縄県警(「お約束」の島から「物語」の島へ;歴史に翻弄された沖縄県警;スパイ蠢く島 ほか)
    2 沖縄アンダーグラウンド(花街・映画・沖縄空手;沖縄ヤクザのルーツ“戦果アギヤー”;山口組の影 ほか)
    3 沖縄の怪人・猛女・パワーエリート(その1)(弾圧・拷問・右翼テロ;第三の新聞・沖縄時報顛末記;沖縄を通り過ぎた男たち ほか)

    <下>
    4 沖縄の怪人・猛女・パワーエリート(その2)(スーパースター・瀬長亀次郎;ウチナー金融表裏事情;「沖縄の帝王」軍用地主 ほか)
    5 踊る琉球、歌う沖縄(島唄復活と大阪ウチナーンチュ;沖縄ミュージックは日本に届くか;最果て芸能プロモーター伝説 ほか)
    6 第二の“琉球処分”(「怨」と「反ヤマト」の沖縄列島;琉球王朝・尚家の盛衰史;尖閣列島、波高し ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 最終章を読みながら沖縄に行ってきました。何度か行ってる場所もこれまでとは違った目や感じ方が出来て良かったです。

  • ようやく……ようやく読み終わった!
    長かった。
    非常にボリュームもあり、中身も濃く、読みごたえのあるルポ。
    青い空・白い海の南国リゾート・沖縄なんかひとかけらも出てこない、
    沖縄の闇の部分を深く知ることができる。
    私がもつ陳腐な言葉ではこの本について何を言っても意味がない。
    機会があれば腰を据えて、沖縄の闇と現実を見ていただきたい。


    一つ突っ込みを入れると、安倍総理の漢字が一か所間違えていたのがいただけない。
    「Ⅲ沖縄の怪人・猛女・パワーエリート」の【沖縄知事選コンフィデンシャル】の冒頭部分である。
    安倍総理の書き方は珍しく、パソコンでの入力で間違えてしまうのは仕方ないといえ、数行前に正しく書いているのだから気付いてほしかった。

  •  沖縄への旅行前から旅行中にかけて読み耽りました。

     いまや人気の高いリゾート地ですが、沖縄戦線や基地問題の歴史等

     について綿密な取材の元、まとめられています。

     また、尖閣諸島にも触れており、沖縄について深く考えさせられました。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編集者、業界紙勤務を経てノンフィクション作家となる。1997年、民俗学者宮本常一と渋沢敬三の生涯を描いた『旅する巨人』(文藝春秋)で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年、『甘粕正彦乱心の曠野』(新潮社)で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。

「2014年 『津波と原発』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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