魚神 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 938
感想 : 113
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087467864

作品紹介・あらすじ

かつて一大遊郭が栄えた、閉ざされた島。独自の文化が息づく島で、美貌の姉弟・白亜とスケキヨは互いのみを拠りどころに生きてきた。しかし年頃になったふたりは離れ離れに売られてしまう。月日が流れ、島随一の遊女となった白亜は、スケキヨの気配を感じながらも再会を果たせずにいた。強く惹きあうがゆえに拒絶を恐れて近づけない姉弟。互いを求めるふたりの運命が島の雷魚伝説と交錯し…。第21回小説すばる新人賞、第37回泉鏡花文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 好きになった作家さんのことを調べること、ってありますよね。
    どんな人なんだろうか、とか。

    たとえば宮下奈都さん。とっても好きな方なのですが、「あの1年」が彼女を大きく変えたことは間違いありません。そのときのエッセイも素晴らしかった。
    そのときに思ったのが、「読み終えるのが寂しい」。私だけかと思ったら、他の人も書いているんですよ。これはすごいエッセイだ。あの1年はなんだったんだろう?
    です。たとえばね。

    この本「魚神」の舞台設定は百数十年前くらい?でしょうか。
    お恥ずかしながら、ちょっと辞書を引かないとわからない漢字もありました。そういう時代設定のお話を描く、そんな新人賞をとる(デビュー作で)人はどんな人なのだろう?と思うのは自然なことです。

    で、ええええ???
    でした。2つの点で驚いたのですが。

    1.同郷でした。同じ空間を過ごしたことがあるのに、この違い(わたしとね)はなんだろう?と思うわけです。私は今も森に囲まれた暮らしをしています。そこから森に関するお話がかかれているのかもしれません(これは違う本「森の家」のことです)。
    まあ、ここまではたいしたことではないですが。

    2.でもさらに、驚愕の事実が。
    なぜ、このような文章が書けるのだろう、と。だから描けるのかもしれない(気になる方は是非ご自分でしらべてみてくださいな)。でもな~、違いすぎるよなあ。

    本作は、ちょっとかわいそうな生まれの白亜と特異な才能をもつスケキヨのお話です。誰も助けてくれない、自分で解決するしかない状況・環境に置かれています。その中で自分たちなりにみつけていきます。
    ここまで書いてちょっとだけ既視感が。60歳超えデビューしてベストセラーとなった「ザリガニの鳴くところ」。恵まれない、でも才能がある。そして誰も助けてくれない。自分で解決策を見つけ出すしかない、というお話なのですが。デビュー作というのも一緒だ。。。

    「運命的」とレビューされている方がいました。それも本書と共通しているかな。


    1冊の本で別の世界に入っていけます。
    この世界を創ることができるのも、彼女の生い立ちにあるのでしょうか。

    ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
    そんなあなたに「滝田明日香さん」をお勧めします!
    千早さんの生い立ちとも関連があります(ご職業とお勤め先ね。きっとそんな環境を過ごした(わけないか)?)。とにかく面白いエッセイです。

    • Kさん
      いいねとフォローいただきありがとうございます!
      辛4さんのレビューには+αで関連知識や情報がたくさん詰まっていて、読むたびに新発見というか…...
      いいねとフォローいただきありがとうございます!
      辛4さんのレビューには+αで関連知識や情報がたくさん詰まっていて、読むたびに新発見というか…未知の領域に踏み込んでいくみたいな感覚で毎度楽しませていただいております!
      これからもどうぞよろしくお願いします^^
      2023/01/18
    • 辛4さん
      Kさん
      おはようございます~♪
      こちらこそありがとうございます。大変恐縮です。
      Kさんもたくさん読まれていますよね。
      どんどんレビュ...
      Kさん
      おはようございます~♪
      こちらこそありがとうございます。大変恐縮です。
      Kさんもたくさん読まれていますよね。
      どんどんレビューしてくださいね。楽しみにしています。

      ドイツのモモを本棚でみつけました。
      時間を盗むわけですが、時間の概念が大きく変わろうとしています。
      そんなことをエンデは知っていたのかどうか。
      ばななさんは、いろいろ知って書かれているのでは???
      と読み進めていくうちに何か見えてくるのです。
      おもしろいですね。
      2023/01/19
  • 読んでる間中色んな匂いがした。
    一気に読んでしまったあと、余韻が長く残る。

    こんなに面白い本を何故読まなかったんだろう。
    白亜儚い。
    剃刀男さん男らしくて好き。
    小舟のおじさんも一生懸命で好き。
    スケキヨもかっこいいから好き。
    みんな好き。

  • 著者独特の世界観と描写の美しさで一気に引き込まれた。儚さ、もの悲しさに包まれながらも、この小世界であるからこそ成り立つ雰囲気がいい。ぜひ映像化して欲しい作品。白亜とスケキヨは誰が演じればいいかねぇ...。想像しながら余韻に浸る。

  • 千早茜さんが好きなので読んでみた。
    美しく幻想的なストーリー。
    でも泥のような質感や濁った海の匂いもする不思議な話。
    スケキヨと白亜。
    姉弟と呼ばれ共に育つが、血が繋がっているのかは不明。
    誰よりも大切に思っている。
    大人になってからは
    相手に嫌われたくなくて、お互いに近づけない。
    ずっと想いあっているのに、逢えない2人。
    夢を見ない島の人々。
    人身売買、廓、欲望、近親相姦、痣、痛み、歪み。
    ラストの展開は、スピード感がありドキドキした。
    夢の中のような浮遊感もあり、カッコよかった。

    遊郭の話なので、学校図書館は不向きだが、
    描写は美しい。

  • 千早茜さんワールド全開な作品。

    幻想的で、肌に張り付くような気だるさと
    そこに自分が引き込まれてしまう妖しい空気感。

    この手の作品が大好きなので
    千早茜さん作品に夢中です。

    ホントに感動して心に残る本って
    レビューすら書けない。
    書くのがもったいない(笑)

  • すごく図々しいんだけどこの本を読んだ時に最初に感じたのは、
    圧倒的な既視感だった。

    え、千早茜ってあたしじゃないの?とまで思った。本当に不遜にも。

    <引用>
    「ねえ、スケキヨ」
    「何」
    「私がいなくなったらどうする?」
    「探すよ」
    「探しても、探しても見つからなかったら?」
    「ねえ、白亜。僕は白亜がいなくなっても決して泣いたりなんかしないよ」
    スケキヨが立ち止まる。私をまっすぐ見つめる。
    「人間は泣いたり怒ったりしたら、その事を忘れてしまうんだ。忘れなくても泣いたりしたらその痛みは確実に薄まっていく。そのために泣くんだ、忘れるために。だから僕は絶対に泣かないよ。そして絶対に諦めたりはしないから安心して」
    「うん‥‥」
    私は自分に言い聞かせるように何回か頷いた。
    「じゃあ私もスケキヨがいなくなったら、泣かないで探し続けるね」
    「いや、白亜は僕がいなくなったらたくさん泣いて、僕のことなんか忘れてしまうといいよ」
    <引用終わり>

    読みながらその既視感の正体をあたしは、ゆるゆると紐解いた。
    そうだ、すべて、あたしの敬愛する作家の小説の、なんらかのキーワードに
    オーバーラップするのだ。
    何度も何度も読み返し、まるで自分が書いたかのように詳細までキオクしている、
    そのコワク的な小説たちに。

    例えばこうだ。

    貘のくだりは、澁澤龍彦の「高丘親王航海記」
    郭の悲哀は、隆慶一郎「吉原御免状」
    スケキヨ、という響きは横溝正史「犬神家の一族」
    二人の呼応のしかたは宇江佐真理「雷桜」
    隠れて思い続けるそれは、もしかしたら東野圭吾の「幻野」「白夜行」
    そうして全体に流れるゴシックかつペンダントリな雰囲気は、
    昭和の探偵小説のそれを思わせる。
    小栗虫太郎「黒死館殺人事件」、中井英夫「虚無への供物」
    あるいは上記と並んだ三大奇書、夢野久作「ドグラ・マグラ」

    読み終わって重たく、でも充実した感触。満足。
    最後のくだりはやや、江戸川乱歩を彷彿とさせなくもない。


    うーん、これはまさに、極上の贅沢読書。
    こういった作家さんに出会えるのも、御褒美なのかもしれない。

  • まぁまぁ面白かったです。描写が儚く美しく、汚であるものさえも美しい情景を思い描いてしまいがちになりました。
    【遊女】って何だか惹かれてしまう言葉です。
    ぜひ実写化して綺麗な物語を観てみたいものです。
    監督には是非、蜷川実花さんでお願いしたいな。

  • 現実的と御伽話の狭間にあるような、
    不思議なお話だった。

    ストーリーについてはの感想はもう一度読んでから書きたい。

    読んでいる最中は物語の展開も気になったのだけど、千早さんの頭の中が気になってしょうがなかった。

    何をきっかけにこの話を思いついたのだろう?
    これを書くために、どうやって道筋を立てて物語の種を集めたのだろう?
    どこに足を運んだのだろう?

    そんなことばかり考えていた。

  • 夢中で読んでしまった。
    千早さんの話ってなんでこんなにも夢中になるのだろう

  • 自分が応募した賞にこれがあったら筆折る

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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