魚神 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.60
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本棚登録 : 516
レビュー : 83
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087467864

作品紹介・あらすじ

かつて一大遊郭が栄えた、閉ざされた島。独自の文化が息づく島で、美貌の姉弟・白亜とスケキヨは互いのみを拠りどころに生きてきた。しかし年頃になったふたりは離れ離れに売られてしまう。月日が流れ、島随一の遊女となった白亜は、スケキヨの気配を感じながらも再会を果たせずにいた。強く惹きあうがゆえに拒絶を恐れて近づけない姉弟。互いを求めるふたりの運命が島の雷魚伝説と交錯し…。第21回小説すばる新人賞、第37回泉鏡花文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 千早茜さんワールド全開な作品。

    幻想的で、肌に張り付くような気だるさと
    そこに自分が引き込まれてしまう妖しい空気感。

    この手の作品が大好きなので
    千早茜さん作品に夢中です。

    ホントに感動して心に残る本って
    レビューすら書けない。
    書くのがもったいない(笑)

  • すごく図々しいんだけどこの本を読んだ時に最初に感じたのは、
    圧倒的な既視感だった。

    え、千早茜ってあたしじゃないの?とまで思った。本当に不遜にも。

    <引用>
    「ねえ、スケキヨ」
    「何」
    「私がいなくなったらどうする?」
    「探すよ」
    「探しても、探しても見つからなかったら?」
    「ねえ、白亜。僕は白亜がいなくなっても決して泣いたりなんかしないよ」
    スケキヨが立ち止まる。私をまっすぐ見つめる。
    「人間は泣いたり怒ったりしたら、その事を忘れてしまうんだ。忘れなくても泣いたりしたらその痛みは確実に薄まっていく。そのために泣くんだ、忘れるために。だから僕は絶対に泣かないよ。そして絶対に諦めたりはしないから安心して」
    「うん‥‥」
    私は自分に言い聞かせるように何回か頷いた。
    「じゃあ私もスケキヨがいなくなったら、泣かないで探し続けるね」
    「いや、白亜は僕がいなくなったらたくさん泣いて、僕のことなんか忘れてしまうといいよ」
    <引用終わり>

    読みながらその既視感の正体をあたしは、ゆるゆると紐解いた。
    そうだ、すべて、あたしの敬愛する作家の小説の、なんらかのキーワードに
    オーバーラップするのだ。
    何度も何度も読み返し、まるで自分が書いたかのように詳細までキオクしている、
    そのコワク的な小説たちに。

    例えばこうだ。

    貘のくだりは、澁澤龍彦の「高丘親王航海記」
    郭の悲哀は、隆慶一郎「吉原御免状」
    スケキヨ、という響きは横溝正史「犬神家の一族」
    二人の呼応のしかたは宇江佐真理「雷桜」
    隠れて思い続けるそれは、もしかしたら東野圭吾の「幻野」「白夜行」
    そうして全体に流れるゴシックかつペンダントリな雰囲気は、
    昭和の探偵小説のそれを思わせる。
    小栗虫太郎「黒死館殺人事件」、中井英夫「虚無への供物」
    あるいは上記と並んだ三大奇書、夢野久作「ドグラ・マグラ」

    読み終わって重たく、でも充実した感触。満足。
    最後のくだりはやや、江戸川乱歩を彷彿とさせなくもない。


    うーん、これはまさに、極上の贅沢読書。
    こういった作家さんに出会えるのも、御褒美なのかもしれない。

  • うろ覚えだけど、

    泣いたら、つらかったことを忘れてしまう。
    だから、自分がいなくなったら泣いてほしい、

    と言ったスケキヨみたいな少年に心底弱い。

    あと、蓮沼の存在が光っていたと思います。

    白亜以外の視点から、この話を読んでみたかったです。

  • まぁまぁ面白かったです。描写が儚く美しく、汚であるものさえも美しい情景を思い描いてしまいがちになりました。
    【遊女】って何だか惹かれてしまう言葉です。
    ぜひ実写化して綺麗な物語を観てみたいものです。
    監督には是非、蜷川実花さんでお願いしたいな。

  • すごい好き。

  • やられた。久々に一気読みしてしまった。何と言っても背景描写の書き方がうまい。読んでても頭の中に綺麗な映像が浮かんでくる。話もグイグイ引き込まれて、悲しみや切なさなんかが目まぐるしく襲ってきた。途中で読むことをやめさせてくれなかった。これは面白かった!他の作品も読んでみたい。

  • 描写がとてもきれいで頭のなかに絵が浮かんでくる。
    剃刀男とハナがよかった。新笠が切なかった

  • 描写がとても美しい
    風景だけでなく、人物の心情や感覚までもが鋭く描写されていて、目も肌も耳も鼻も全身で物語を感じた。

  • 泉鏡花賞受賞作。
    読み終えてようやく息をしたような感覚に陥るくらい、一気に駆け抜けた。

    辺境の島、遊廓の街に生まれた美しい姉弟、白亜とスケキヨ。
    互いに互いしか認めず、他を許さない二人が生きてゆく道とは……。

    気高く、孤独で、淫靡な美しさを備える白亜。彼女の名と同じ主人公が出てくる昔話にも、ぐっと惹きこまれた。

    姉弟を含め、居場所のない島の住人達の「居場所」。記憶であったり、情であったり、土地そのものであったり。
    そんな行き場のない者同士の心の繋がりが、この小説の端々からは見えてくる。

    『からまる』と言い、千早茜さんの今後の作品に注目したい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      宇野亜喜良の表紙イラストに惹かれて、文庫化を待っていた作品。
      やっと購入したのですが未だ積読中。
      表紙のバックが黒からブルーに変って、ちょっ...
      宇野亜喜良の表紙イラストに惹かれて、文庫化を待っていた作品。
      やっと購入したのですが未だ積読中。
      表紙のバックが黒からブルーに変って、ちょっと印象が、、、バックも単行本と同じ黒の方が良かったなぁ(瑣末なコトですが)。
      2012/07/25
    • mitsukiさん
      > nyancomaruさん
      わかります。ハードカバー版の方が良かったなーって思うことありますよね。
      このご時世、文庫化を待つことも多いでし...
      > nyancomaruさん
      わかります。ハードカバー版の方が良かったなーって思うことありますよね。
      このご時世、文庫化を待つことも多いでしょうが、丁寧な装丁の本を見ると、ハードカバーの良さを改めて感じたりもします。
      2012/07/31
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「丁寧な装丁の本を見ると」
      祖父江慎やミルキィ・イソベとかの、装丁本は欲しくなりますねぇ~
      お気に入りのイラストレーターさんが、表紙絵を描か...
      「丁寧な装丁の本を見ると」
      祖父江慎やミルキィ・イソベとかの、装丁本は欲しくなりますねぇ~
      お気に入りのイラストレーターさんが、表紙絵を描かれている時も(文庫になって変ったらショック)。
      文庫を出さない出版社の本で欲しい場合は、必然的に単行本になりますけど。。。
      2012/07/31
  • 「泉鏡花賞受賞」の冠通り、泉鏡花が好きな方には間違いない本。
    あまりに気に入って、一度返却してから、また図書館で予約して借りて読みました。

    これは・・・買って手元に置いて、たまに読んでみたいような・・・所有欲を満たしたくなうような(苦笑)作品です。
    独特の世界、全編流れる物哀しさ、たまりません!
    次の予約が入っているようなので一度図書館に返却しますが、また借りて読もうと思います。
    この方の、他の作品もぜひ読んでみたいです。

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2019年 『夜に啼く鳥は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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