- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087468175
感想・レビュー・書評
-
学校という、それはそれは狭い世界の中でもがきながら息をする生徒たち。
きっと誰もが経験してきた10代ならではの繊細な心情が、綺麗な言葉たちで見事に書き上げられていました。
自分を表現することや、何かに対して全力で取り組むことがダサい みたいな空気、なんだか懐かしい、、、
好きなことは好きと叫んでいいのに。役に立つかわからなくても、全力でやることだって意味はあるのにね。
高校生のときに読みたかったなあとも思いますが、今だからこそ感じ取れるものもあり、どの世代にも刺さる本なのではないかと思いました詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
青春ってキラキラばかりじゃないということを体感している今にぴったりの小説だった。自分の好きなものを誇れないのも、自分の好きなものを誇れる人を羨ましく思うのも、自分はからっぽだと感じるのも、全てが繊細に表現されていてほんとうにこの感情を説明し難いけど出会えて良かったと思う小説。
-
同じ高校生活でのやりとりを
三者三様な目線から
こんなふうに物語展開できる朝井リョウさんは
なんとすごい方なんだろうと感嘆しながら
夢中で一気読みでした。
青春時代の甘酸っぱさを感じながら。
あの時しか感じられない
たくさんぶつかって傷ついて 恋に部活に学校生活に夢中になったキラキラの毎日。
高校生絶賛満喫中の娘の姿も照らし合わせながら。
あの時代を 存分に楽しんでほしいなあと
母目線も交えながら。
出会えてよかったな。
-
桐島が部活を辞めたことで、少なからず影響を受ける各章の主人公たちの物語。性別も場面もバラバラでテーマも異なりますが、全ての主人公の心情が、自分がどこかで経験した感情と通じるものであり、一冊の本を通して物語が成り立っている綺麗な作品でした。
-
2010年代の高校生の見た目のかっこいい、かわいいの感覚と今の高校生の見た目の価値観はちがっているけれど、(自分自身高校生だからその違いに少しだけ慣れなかった!)服装とかじゃなくてクラスメイトの人間性であったり、校内でのグループの雰囲気だったりについては今と全然変わらなくてどきどきしながら読んだ。
クラスメイトもみんななんも考えてないように見えてちゃんと考えてて、けれどそれは学校っていうスケールの中でのことで、それは今の自分にとっての世界であって全てで、
やっぱり学校の外でもなんでも自分の夢中になれるものを10代のうちに見つけて熱中出来てる人ってかっこいいし羨ましい。絶対それを口には出さないけどね。
自分にはなんもないなぁとかって思っちゃうけど、それでも体当たりで突き進んで行きたいなって思った。 -
朝井リョウの本はほとんど全部読んでいるのに、
なぜか手を付けていなかったデビュー作…
なんかもったいなくて読めてなかった。
結果、通勤電車で一気に読んでしまうくらい、
めちゃくちゃ好きだった。
桐島本人が登場しないっていうのは噂で聞いたことがあったけど
周りの人間から桐島がどういう人間なのか
じわじわ分かってくる感じが本当におもしろかった。
きっと同じ高校に通って、近くにいたら、けっこう魅力的なんだろうな。
スクールカーストがリアルでもう。
高校時代を思い返して、共感してヒリヒリした。
自分もこういうしょうもないことにこだわってたな。
なんでこんなことがデビュー作で書けてしまうのだろう…
やっぱり朝井リョウは天才だ。 -
田舎の県立高校で、バレー部を退部したキャプテン・桐島。
・どんな気持ちで決断したんだろう
・桐島はキャプテンだったのに、なぜ?
・「上」の人たちで、いつも輝いているようなのに
静かな池に小さな石が投げ込まれたように、霧島のバレー部退部の決断が周囲の生徒に少しずつ波紋を広げて行く。
面白いのは、肝心の桐島の心理が全く描かれていないこと。
見えないからこそ、周囲の生徒と同じ気持ちになれることを狙ったのだろうと推察。
それにしても、学生の頃の日常を、逡巡や苛立ちを、ここまで瑞々しく描けるものだろうか。
繊細な思春期の心の動きを見逃さない視点と、類稀な表現力。
そして、「上」か「下」に残酷にも分類されてしまう学校という場。
輝いているのは「上」の少年や少女だけじゃない。誰もが輝いているはずなのに、「上」の輝きにばかり視線を奪われてしまう。そんな誰もが少なからず持つ学生時代の切なさを想起した。 -
桐島がバレー部のキャプテンを辞めた。
高校生活の中で通り過ぎていくひとつの出来事。
部活で流す汗、暗黙のスクールカースト、何が望みかも分からない恋愛、遠く感じる親子関係、いつまでも話し足りない夢。
学生時代はどこか息苦しさを感じ、それでも前向きに進むように見えなきゃいけない。通り過ぎてしまえば、そんな葛藤も瑞々しく見えることを、この小説が思い出させてくれた気がする。 -
タイトルにもなっている桐島君は、本編には出てこない。一風変わった構成の連作短編小説である。
桐島君の通う高校を舞台に、章ごとに異なる高校生の視点で同じ一週間の出来事が描かれる。
共通の事実にもかかわらず、彼ら彼女らの主観の中では全く別の意味付けが行われる。その意味付けは、彼らのスクールカーストを背景に行われる。
自分が高校生だった時にもカースト的なものは存在したし、異なる階層の同級生の内面は理解できなかった。本書では、別の価値観とアイデンティティを持った高校生たちが、お互いを評価しあいながら学校というコロニーの中で暮らす風景が描かれるのだ。
この物語を特定の登場人物の単視点で描いても、面白い作品にはならなかっただろう。それくらい何も起きないのだ。その何も起きない日常を複数の視点で捉えることで非凡な作品となっている。
ほとんどの章が平凡な高校生の退屈な日常の話だが、宮部美果の章だけがいわゆる文学的な苦悩が描かれていて逆に異質な印象を受けた。他の章は独立した物語としては魅力に乏しいが、宮部美果の話は短編として成立しそうである。 -
学生の時に本屋さんで出会っていたけど買わなかった本。タイトルが妙に印象強くてずっと読んでみたいなと思っていたので念願叶って本当に嬉しい。スクールカースト、今学生時代を思い返してみるとそんなものが確かにあった気がする。桐島は最後まで出てこなかったけど、バレー部復帰してくれたら嬉しいな。