追想五断章 (集英社文庫)

著者 : 米澤穂信
  • 集英社 (2012年4月20日発売)
3.71
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468182

作品紹介・あらすじ

5つのリドルストーリーに秘められた物語
古書店アルバイトの芳光は、依頼を受け5つのリドルストーリーを探し始める。実はその著者は生前「アントワープの銃声」事件の被疑者だったことが明らかになり……。

追想五断章 (集英社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 米澤穂信というミステリ作家は本当に面白いことを考える人だなぁ、と思う。そして果敢にチャレンジし、きちんと形に出来るすごい人だとも思う。

    伯父の古本屋に居候する青年、菅生芳光(すごうよしみつ)のもとに、死んだ父親が書いた五篇の小説を探してほしいとの依頼が舞い込む。存在するかもわからない小説の行方を調査するうちに...

    リドルストーリーとは『結末をあえて書かず読者に委ねるかたちで謎を提示する物語』という解釈で良いのだろうか。
    物語の中で探す目的となる小説の五篇全てが、その『リドルストーリー』となっているが、その『小説内小説』の出来がすばらしく、一つの読み物として楽しめる。また、結末のない物語という趣向が『追想五断章』という小説自体の仕掛けにもつながっていて、謎が解明されていく後半は唸らされた。

    ミステリの仕掛けの糸と物語の糸が有機的に絡み合い、また解きほぐされていく様はいつもながらに見事。
    全編を通しての胸の中を風が吹き抜けるような寂しさ、哀しさ、苦さは好みの分かれるところだろうが、僕は好きだ。

  • なんだろう?今思い返せば、「特にここが!」ってポイントは全くないのに、読んでる時はすげー怖かった。
    幽霊も殺人鬼も出てこないのに、真実を知るのって怖いのね。
    あれか。暗闇を懐中電灯一つで進んでいく感じか。先に何が潜んでるかわからない恐怖。

    そもそも話が全体的に暗い。というか、薄暗い。
    登場人物も口数が少ない上に何か影を抱えてるし、舞台は薄暗い古書店だし、話の本筋以外も全部どんより暗い。
    プラス、5つの短編を探し解読するに連れて、どんどん真相の、しかも良くないニュースのほうが集まってくる。

    リドル・ストーリーの最後の一行を入れ替えると、話の意味が変わってくるというオチは容易に予想ができるけど、まさか今まで以上に暗い結末に持っていくとは、予想の上を行かれた感じ。
    これ、米澤穂信の作風を知らない人が読んだら、さぞやがっかりする内容だと思う。救いがなさすぎて。

    と、否定的な感想を書いたけど、自分は好きでした。ホラー好きだし。
    「こんな恐怖もあったんだ!」という感動がありました。

  • 面白かった。
    あんまり期待せずに読んだのだけど、期待以上に面白かった。

    主人公は経済的な事情で大学を休学し、
    古書店を経営する叔父のところに居候しており、
    古書店を訪れた女性に依頼され、小説5篇を探していく
    というストーリー。

    殺人事件の容疑者が残した小説を探していく過程が
    うまくて引き込まれてしまう。

    人が次々と殺されていくミステリーのような
    切迫感・緊迫感が望めないはずの、
    小説5篇を探していくというだけのストーリーで
    ここまで読者を物語に引きずりこませるのはすごい。

    5篇の作中作も秀逸で、不思議な味わいがある。

    時代設定はバブル崩壊後の90年代初頭。
    日本が失われた10年という暗い時代に突入していく雰囲気と
    大学生でもない身分不定の居候アルバイトという
    何者でもない主人公の暗さが全編通して感じられる。

    「アントワープの銃声」という殺人事件も、
    海外で行われた妻殺しの疑惑ということで
    三浦和義の「ロス疑惑」を彷彿とさせるもので、
    暗い雰囲気が読後も心に残る作品だった。

  • 伯父が営む菅生書店に身を寄せる菅生芳光は、北里可南子という客から依頼を受け、父親の遺した五本の短編小説を探すことになる。
    五本の短編には共通点がある。それらはどれも、結末を読者に委ねるリドルストーリーであるということ。そして芳光は、それとは別の共通点と、作者北里参吾に関係する過去の事件を知ることになる。

    リドルストーリーにはやはり結末がないほうがいい(というか、結末を読んだらしっくりしてしまうような話は良質のリドルストーリーではない気がする)。
    伯父さんが本当はどう感じているのかや芳光がこのあとどういう人生を歩むのか、結局それもうまく見えてこない終わり方が、さりげなく気が利いている。すきです。

  • 面白かった!リドル・ストーリーと真実を繋ぐからくりが解けるにつれ、興奮で鼓動が早くなっていった。途中から、もしかしたらと思っていた事が当たっていて「やっぱり!」と思う感動と、まさかの種明かし。つまり、結論は予想できるものであっても、それに至る仮定が自分には思いもつかない流れで…。
    米澤作品はそういう面白さがあり、自分の波長に合っていて好きです。

    • kwosaさん
      おっしゃる通りですね。
      結果だけでなくプロセスは大切ですよね。
      米澤作品は仕掛けの面白さと物語の面白さを兼ね備えた希有な存在で、僕も大好きです。
      花丸ありがとうございます。
      2012/05/26
  • 本書に登場する五つのリドル・ストーリー。

    本来は読者に結末が委ねられる物語に,
    たった一行の隠された真実が込められていた。

    古書店に居候している休学中の大学生・芳光は,ある女性から依頼を受けた。

    死んだ父の書いた小説を探してほしい――。

    手元にあるのは五つ存在するという物語のたった一行の結末のみ。
    わずかな手掛かりをもとに,芳光は調査を開始する。

    徐々に明らかになる父親の過去とベルギーで起こった事件「アントワープの銃声」。

    これらが一つの物語として姿を現したとき,
    彼女の父親が守ろうとしたものが見えてくる。

    「すべてはあの雪の中に眠っていて, 真実は永遠に凍りついている」

    謎が解かれ,凍りついた真実が溶け出したとしても,
    そこに温かさが残るとは限らない。

  • 古本屋で居候している主人公に、5つの小説を探して欲しいと依頼がある。

    初めはどんな話かわからないが、先が気になる為どんどん読める。構成力に圧巻!

  • 何とまあ鮮やかな展開か。筋立てが絶妙。良く思い付くものだ。

  • 地味で淡々としているのだけど、あっと驚くミステリーとは違った良さがあった。

    父親の娘に対する心情を想像できる余韻もよかった。

    夫婦間の感情は藪の中ってところも意外と好き。

  • 米澤穂信の『追想五断章』を読了。

    伯父の古書店に居候している主人公のもとに、ある女性から死んだ父親が書いた5篇のリドル・ストーリーを探してほしいとの依頼が入る。それを集める過程で、依頼主の父親はある事件の容疑者だったことが判明。

    リドル・ストーリーとは、結末を読者に委ねた物語のこと。作中に5篇出てくるが、なかなか凝った作りだと思った。

    さて、本来は結末のないリドル・ストーリーだが、作中に登場する5篇には結末がそれぞれ用意されている。しかし何れもたった1行のみ。この結末に作者(依頼主の父親)のある気持ちが込められている。

    リドル・ストーリーを集める過程や事件の真相、そして何よりプロットが個人的に新鮮だった。

    先に読んだ『儚い羊たちの祝宴』もそうだが、本作もまた米澤穂信の新境地であったことは間違いないだろう。

    数々のランキング上位に輝いたことで記憶に新しい『満願』も然り、これからも注目の作家である。

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