追想五断章 (集英社文庫)

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レビュー : 350
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468182

感想・レビュー・書評

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  • 5つのリドルストーリー各々が面白く、最後に1つの大きなリドルストーリーが浮かび上がる構図は圧巻。さらにその5つ(正確に言うと4つ)のリドルストーリーについて、各々の結末が少しずつずれても解釈可能というのがとても面白く、それにより真相が大きく変容する演出は凄まじかった。芳光のちょっとスレたキャラクターが良い味を出していた。

  • 作中作が当然話の鍵になっているけど、それらがとにかく読みにくくて引き込まれない。
    また、主人公を始め、誰1人として登場人物に興味や好感が持てず読んでいて楽しくなかった。中途半端に暗い雰囲気も合わず。
    この作者で一番の駄作だと思います。他の作品は面白いのが多いです。

  • 叶黒白の掌編、いずれも面白くて引き込まれるのだけれど、最後の一文が蛇足だししっくりこないので、とてもいらいらしてしまっていた。
    それだけに、結末を読んだ時の「やっぱり、それでか!」感が爽快だった。
    まあ、結局、蛇足感はなくならないのだけれど、この掌編の成り立ちを思えば、それも当然というものなんだろう。

    日常に属する人間が、焦がれていた非日常にようやく足を踏み入れる。
    そうして自分も「非日常」の一部だと思い込もうとするけれど、結局交じり切ることができず、日常に戻っていく。
    「やっぱり、日常がいいよね」というわけではないのだけれど、「非日常は、思っているほどいいものではない」ということを教えられるストーリーだった気がする。

  • リドル・ストーリーが好きだ。結末を読者に委ねるというこのジャンルに魅力を感じ始めたのはいつ頃だったか。子供の頃は「はっきりしない結末」が大嫌いだった記憶もあるのに、今となっては芥川で一番好きな作品を問われると「藪の中」を挙げるくらいになってしまった。
    この作品は「リドル・ストーリーを巡るミステリ」と聞いて手に取った。古書店のアルバイトである主人公が、父が遺したリドルストーリーを探したい、という女性の依頼を受けて調査するうちに、思いがけない真実に辿り着いてしまう、という話。実際に五篇のリドルストーリーを作中作として読むことが出来る。本好きとしてはやはり「本を巡る謎」という設定に心が躍り、あっと言う間に読み終えてしまった。
    この作家の作品に触れるのは「ボトルネック」以来二作目だが、今回もなかなか容赦ないなと思った。私がたまたま手に取ったのがそういう作品ばかりなのか、もしくはそういう作風なのか。話自体は面白いので、また機会があったら別作品を手に取ろう。

  • 〇 概要
     菅生芳光は,バブルが崩壊し,父が事故死したため,学費が払えなくなり,大学を休学する。そして,東京で伯父の古書店に居候している最中に,死んだ父親叶黒白という筆名で書いた五つの「リドルストーリー」の小説を見つけてほしいという依頼を受ける。依頼人は,一つ見つけるたびに,謝礼として10万円を支払ってくれるという。全て見つけることができれば,大学に復学できるかもしれない。そう,期待して,5つの「リドルストーリー」を探す。「リドルストーリー」を探していくと,依頼者の父親が,「アントワープの銃声」という事件の容疑者であったことが分かる。依頼者の父親が5つのリドルストーリーに秘めた思いとは…?

    〇 総合評価 ★★★★☆
     5つのリドルストーリーがあり,そのうち4つに2つの結末を用意し,結末を誤認させることで,誤ったメッセージを読み取らせるというプロットは,かなり面白い。5つのリドルストーリーも「奇妙な味」の話としてそれなりに読める。この「仕掛け」を楽しめるだけでも名作といえる。ずっと読み継げるようにしてほしい(創元推理文庫とかに入ってほしい。)。
     ただし,欠点がないわけではない。最大の欠点はキャラクターが希薄なところ。作品全体がビターな仕上がりだけに,もう少しキャラクター性があれば,最高レベルの名作になっていたと思う。惜しい。
     その分,余計な思い入れをせずに,作品の仕掛けを堪能できるともいえる。非常に玄人受けしそうな作品

    〇 サプライズ ★★★☆☆
     リドルストーリーを見つける話に併行し,主人公の菅生芳光が大学を辞めることになった状況,バブルがはじけ,店を売り損ねた古本屋店主の状況,そして5つのリドルストーリーの作者である北里参吾の生涯などが描かれる。アントワープの銃声事件の真犯人が,当時4歳だった北里可南子だったという点は,見せ方によっては大きなサプライズになったと思うが,サプライズを狙った見せ方になっていない。読者の多くは途中でこの真相に気付くだろう。「インシテミル」や,「折れた竜骨」でも同様の印象を持った。サプライズより論理を重視するタイプの作者なので仕方ないところか。★3。 

    〇 熱中度 ★★★★☆
     物語の作り方は,さすが米澤穂信と思うデキ。5つのリドルストーリーを探す展開はスピーディーで飽きさせない。5つのリドルストーリーのデキはそこそこ。飽きさせない展開ではあるのだが,やや盛り上がりには欠ける。久瀬笙子も,特に盛り上がりなく物語から退場する。無意味な盛り上がりは不要だが,もう少し起伏があってもよかったかも。

    〇 インパクト ★★★☆☆
     5つのリドルストーリーが存在し,それらに用意された複数の結末に,トリックが仕掛けられているというプロットは見事というほかない。作品のプロットそのもののインパクトはある。しかし,登場人物の魅力が欠けており,物語全体の起伏に乏しいので,作品の印象はそれほど強くない。★3程度

    〇 読後感 ★★☆☆☆
     菅生芳光は復学を諦め,実家に帰ることになる。北里可南子は,自分が殺人者であるということを確定的に知る。作品全体に,人間味があまりないので,そこまで読後感の悪さを感じないが,よくよく考えると,相当に読後感の悪い作品である。

    〇 キャラクター ★☆☆☆☆
     かろうじて印象に残るのは北里参吾だけ。菅生芳光,北里可南子を始め,登場人物のほとんどにキャラクター性がない。話そのものに集中させるために,あえて人間を描いてないのかもしれないが…。

    〇 希少価値 ☆☆☆☆☆
     人気作家の人気作品。希少価値はない。

    〇 メモ(5つのリドルストーリー)
    〇 奇蹟の娘
     ルーマニアに「奇蹟の娘」がいるという。その娘は,ずっと眠り続けており,この世の災いを,何一つ知らずにいるという。その「奇蹟の娘」がいる家が火事になる。ある男は,「奇蹟の娘」は,ずっと眠ってなどいない。眠ったふりをして,見ていないような顔をしているという。火事になった家のドアから,「奇蹟の娘」は出てくるのか。それとも,「奇蹟の娘」は本当に眠っているのか。「私」は,その家のドアを見つめ続けていた。
    (ラスト)
    〇 明け方に見つかった焼死体。それが、哀れな女の末路であった。
    〇 決まりの悪い作り笑顔で,暗がりから女の子が現れた。

    〇 転生の地
     インドに,死んでも転生することを信じている地方があった。その地で裁判が行われるということを知り,男が通訳人とともに,その地を訪れた。
     その地では,殺人より,死体を傷つけることの方が罪が重く,殺人であれば犯罪者だけが死刑となり,死体を傷つけたということになれば,その家族まで死刑になるという。
     ある男が,殺人をしたか,死体を傷つけたかが争われた裁判があった。最後の決め手となる証人が証言をするが,通訳人が通訳を忘れ聞き入っているので,男はその証言の意味することが分からない。犯罪者の家族は,犯罪者だけが死ぬことを願っているのか。それとの転生が約束された地,独特の考えとして,ともに死刑となり,転生することを望んでいるのか…。
    (ラスト)
    〇 そして幼な子までが命を奪われる。私はただ,瞑目するしかなかった。
    〇 どうやら一刀の下に,男の首は落とされたものらしかった。

    〇 小碑伝来
     中国の南宋の時代の話。芙城を任された勇猛な男がいた。その男のもとに,政府に対し,反乱を起こした蘭白順
    という男から降伏の勧告がされたが,男は降伏しなかった。蘭白順は軍を率いて芙城を攻めた。男は,部下に命じ,夜襲を掛けたが退けられた。民を犠牲にしないように,100名の精鋭を連れ,男は逃走を図ったが,ほどなくとらえられた。
     蘭白順は,男に自刎するか,妻がいる家に火を放つか(妻を殺せば,男の命は取らない)選ぶように言った。
    (ラスト)
    〇 どうやら一刀の下に,男の首は落とされたものらしかった。
    〇 明け方に見つかった焼死体。それが、哀れな女の末路であった。

    〇 暗い隧道
     南米のボリビアの話。山を越えた集落から妻と娘が金を持ってくるはずだが,来ない。返済期限を過ぎると,財産全てが差し押さえられてしまう。男は,妻と娘に峠を越えるのではなく,隧道を通ってくるように言ったという。隧道には,革命軍が占領したときに,政府がたっぷり罠を仕掛けたという噂があった。男は革命軍に内通していたスパイであり,男は,隧道に罠があるかどうかを知っている。男はスパイだったので,妻と娘を犠牲にして,逃亡を図ろうと思っているのかもしれない。また,本当に罠がないと知っているのかもしれない。男の妻と娘は隧道を抜けることができるのか。
    (ラスト)
    〇 決まりの悪い作り笑顔で,暗がりから女の子が現れた。
    〇 そして幼な子までが命を奪われる。私はただ,瞑目するしかなかった。

    〇 雪の花
     スウェーデンの話。紳士的で金持ちな夫と貞淑で高潔な妻がいた。夫は浮気をしていたが,妻は沈黙と無関心を男に与えていた。ある日,浮気をしている夫と妻が偶然会った。その場で,夫は,妻に翌日が自分の誕生日であることを伝えた。妻は夫への誕生日プレゼントとして,雪の花を摘みに山に入り,亀裂に落ちて死亡した。妻は,和解のために雪の花を摘みに山に入ったのか。それとも,夫に自殺させるために,自害したのか。
    (ラスト)
    〇 すべてはあの雪の中に眠っていて,真実は永遠に凍りついている。

    〇 全体のプロット
     5つのリドルストーリーのうち,4つには,二つの結末が用意されている。その2つの結末は,「アントワープの銃声」についてのマスコミからの疑問に対する答えになっている。
     娘に向けて,父である北里参吾が用意した答えは以下のとおり
    〇 事件当時,娘は眠っていたか,目覚めていたか。
     「奇蹟の娘」→眠っていた。
    〇 銃は飛び降りる前に撃たれたか,後で撃たれたか。
     「転生の地」→後だった。
    〇 母に父は駈け寄れたか。
     「暗い隧道」→駈け寄れた。
    〇 事件は他殺か,自殺か。
     「小碑伝来」→自殺だった。

     そして,もう一つの結末…すなわち真実は以下のとおりだった。
    〇 事件当時,娘は眠っていたか,目覚めていたか。
     「奇蹟の娘」→目覚めていた。
    〇 銃は飛び降りる前に撃たれたか,後で撃たれたか。
     「転生の地」→前だった。。
    〇 母に父は駈け寄れたか。
     「暗い隧道」→駈け寄れなかった。
    〇 事件は他殺か,自殺か。
     「小碑伝来」→他殺だった。

     妻殺しの真犯人は,娘の可南子だった。北里参吾は自分に対し,世間の疑惑の目が向けられたときに,自分の娘を指さし,こいつが犯人だと言いたかったのではないか。そのために,5つのリドルストーリーを作った。しかし,発表することはできず,自分の死後,娘が真相に気付かないように,偽りのラストを用意したのだった。

  • 犬はどこだっぽかった。5つの小説は奇妙やし昔風の言い回しがあんまり好きではなかったけど、最後のつながりは面白かった。

  • 綺麗な謎解きと辻褄合わせ。まさに筆者の面目躍如といった作品。
    ただ、鮮やかではあるが、その反面、特に強く印象に残った場面はない、かな。
    読み返すことはしないと思う。

  • ブックオフで。古本屋の店員がひょんなことからある女性より父親が書いた物語を探して欲しいとの依頼を受けるところから話がはじまります。1話、2話…と見つけて行くうちにその父親絡みの過去の事件を知ることになって…という展開。非常に構成が面白いし、内容もよく良い小説でした

  • なんだろう、伝言ゲーム的な感じ。ドラマ化しやすそうな作品だったなぁ。作中作の意味合いを考えるという点において、ミステリー感があるというか、いろいろ考えさせられる。ちょっと混乱するけど。

  • 大学に復学するために金が必要だった芳光は、報酬目当てに小説探しを伯父に内緒で引き受ける。
    調べていくうちに、小説を書いた依頼人の父親が未解決事件の容疑者だったことを知る。
    事件の真相は何だったのか?
    不景気をまともに受けた芳光の父は、金策に疲れ果てて事故死した。
    ひとりきりになった母は、学業が途中の芳光を案じながらも家に戻ってくるように懇願する。
    そして、大学生活を謳歌していた芳光は、突然の環境変化についていけずに大学へ戻ることを諦めていない。
    五編の小説を探していく中で芳光がたどり着いた真実は、愛ゆえの哀しみにあふれたものだった。
    いい物語だったとは思う。
    でも、残念なことに登場人物の誰にも共感できなかった。
    どうすることが一番いいのか、自分はどうするべきなのか。
    芳光が迷っている間も時間は過ぎていく。
    なぜ依頼を受けてしまったのか。
    その答えに気づいたとき、初めて芳光は現実を受け入れ明日を考えるようになったのだと思う。
    ミステリーではあるけれど、青春の真っ只中にいる挫折を知った人間を描いている物語でもある。
    派手さはなく、どちらかといえば重い空気が漂っている。
    結末には「なるほど」と思えるものがあったけれど、ミステリーとしての面白さはあまりなかったように思えた。

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著者プロフィール

米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年、岐阜県生まれの小説家、推理作家。金沢大学文学部卒業。
大学在学中から、ネット小説サイト「汎夢殿(はんむでん)」を運営し、作品を発表。大学卒業後に岐阜県高山市で書店員として勤めながら、2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し、デビューに到る。同作は「古典部」シリーズとして大人気に。2011年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、2014年『満願』で第27回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。『満願』は2018年にドラマ化された。直木賞候補にも度々名が挙がる。
その他代表作として週刊文春ミステリーベスト10・このミステリーがすごい!・ミステリが読みたい!各1位となった『王とサーカス』がある。2018年12月14日、集英社から新刊『本と鍵の季節』を刊行。

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