つるかめ助産院 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 575
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468465

作品紹介・あらすじ

夫が姿を消して傷心のまりあは、一人訪れた南の島で助産院長の鶴田亀子と出会い、予想外の妊娠を告げられる。家族の愛を知らずに育った彼女は新しい命を身ごもったことに戸惑うが、助産院で働くベトナム人のパクチー嬢や産婆のエミリー、旅人のサミーや妊婦の艶子さんなど、島の個性豊かな仲間と美しい海に囲まれ、少しずつ孤独だった過去と向き合うようになり-。命の誕生と再生の物語。

感想・レビュー・書評

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  • ハートフルな物語。
    この手の直球物には涙腺弱いです。
    主人公まりあの成長の物語です。

    夫の小野寺君が失踪し、一人、南の島を訪れたまりあ。
    そこで出会った、助産師鶴田亀子から妊娠を告げられます。
    そして、助産院で働きながら、子供を産むことに。

    そこで出会った人々に影響を受けながら自分自身と向き合って、成長していく物語。
    辛い過去を持っているのは自分だけではない。
    みんな、それぞれがそれぞれ悩みや過去を持っている。

    島の人々、助産院の人々、亀子の優しさが伝わってくる物語でした。

    そして、まりあの出産へ。

    正直、そのあとのストーリは白けてしまった。
    そこが残念。

    しかし、それを差し引いても何とも心温まる。「生」への物語でした。

    お勧め。

  • ミトン、ライオンのおやつ で、すっかりハマってしまった小川 糸さん。
    で、今回は「つるかめ助産院」。

    捨て子で、里親に育てられ、家から逃げるように初めて好きになった男性と結婚。
    しかし夫は突然の失踪。
    傷心状態で思い出の離島に夫を探しに行くけれど、そこに夫がいるわけもなく。
    そんな中、助産師の鶴田亀子さんと出会う。
    自分が妊娠していることも助産師さんにはすぐにわかる。

    主人公のまりあさんが、妊娠・出産を通して、島の人たち、自然に恵まれながら人として成長していく物語。
    一番最後はメルヘンの要素も。

    巻末には宮沢りえさんとの対談が掲載。
    宮沢りえさん談。
    「まりあが南の島の人たちと出会って、人間不信という皮のようなものが一枚ずつはがれていって、気がついたら、人からのエネルギーや自然の息吹を吸収できるスポンジのように素直な人間になっていて、、、、
    日常の中の小さな積み重ねが素敵で、夢中で読みました。そしてあの海に行きたくなりました。」

    一気にサクサク読めました。
    読後感もすごくよく、次も糸さんの本を読みたいと思います。

  • 小川糸の作品は自分にとっては
    評価が分かれる。

    これはふーん。の方だ。
    生い立ち、死産、出産。
    みんなが身ごもるわけではないし
    みんなが親になれるわけではない
    身ごもることが偉いとか
    親になれないのが悪いわけでもない
    人生はいろいろだ。
    その事をすんなり受け入れている。
    しかし、妊娠、流産、死産と、悲しいことも多い。

    人間は忘れるから生きていける
    あれほど痛い出産もすぐ忘れる
    そして二人目を出産できる。

    小野寺まりあは
    急にいなくなった夫、小野寺くんを探しに来る
    あては上空から見たらハート型の島
    この辺はなんか小川糸らしい。
    悲惨な話かと思いきや〜
    小川糸の世界、満載。不思議!
    そこのつるかめ助産院をしている鶴田亀子に出会う
    鶴田亀子によってまりあは妊娠している事を告げられる。
    えーめちゃくちゃ悲惨じゃない?

    本文よりー
    「艶子さん、私ね捨て子なの、
    だから生まれてからずーっと自分の人生はなんて不幸だろうと思ってた」
    自分だけが苦しんでると思ってた。
    みんな苦しんで、苦しんでもがきながら生きている
    人生の傷は誰かにかわってもらえるものではないのだから。



    本文よりー
    ある意味、人は生まれ落ちた瞬間から誰もが捨て子なのかもしれない。
    どこまでも孤独で、だからこそ人と触れ合ったり助け合ったりすることに喜びを見出すのだー

    しかし最後はびっくり???
    なんだこりゃ。
    苦手かも。


  • とってもとっても心温まる物語!!!

    読後感も部屋中いっぱいにたおやかな空気が、ずーっと漂っている感じ!!!

    家族の愛情を知らずに育ったまりあだけれど、その分、たっぷりの愛情を島の人からもらっている。

    社会全体がこんな島だったらいいのにと、つくづく感じさせられる。

  • 命の重さがわかる本。島の雰囲気も好み。
    突然の事故などにも落ち込まず、すぐに立ち直る主人公がかっこいい(?)。

  • この作品は、2010年に刊行されたので、著者の生年から計ると、著者が37歳位の時に書かれたものと思われます。

    南の島に来たまりあは、助産院長・鶴田亀子から妊娠を知らされて、から始まる物語。

    268頁に、ハイビスカスの天ぷらが出てくる。そういう料理を知らなかったが、調べてみると、沖縄では良く食べられているようだ。

    128頁に、主人公の生い立ちが書かれている。主人公は教会の入り口に捨てられていたのだが、こういう場合、児童相談所→乳児院→児童養護施設という順に移っている。

    その理由は、児童養護施設が原則として1歳以上の児童を養育するのに対し、1歳未満の乳児を主に養育する、と規定されているのが理由らしい。

    乳児院は、2014年頃には、全国で132の乳児院があり、3,105人が入所していたようだ。

    児童養護施設の入所対象者は、原則として、1歳以上18歳未満。
    2016年度の総施設数は615となっており、うち公立は37に対し、私立は578となっている、とのこと。

  • 「ライオンのおやつ」を読んで以来の小川糸さん。
    読みやすさや、文章の柔らかさは変わらずあったので、特に出産に関わった人や興味のある人には手にとりやすい作品。

    ただ、感情移入しすぎて主人公の言動に度々モヤっとしてしまい、何度か本を閉じたりしたけど最後まで読了できた。
    続きが気になる…という内容ではなく、わりと淡々と過ぎていく日々や、島の大自然や美味しそうなお料理の描写が多くて、そこは読んでいて癒された部分。

    つるかめ先生が、診察せずに主人公がなんで妊娠してるって分かったのかな?とか、最後、??となった部分も多々あったけど、他の方のレビューを読ませていただいて、小川糸さんが伝えたいのはそこじゃない!ってことに気付き、自分自身も納得できた。一人で読んでいたら気付かないことがたくさんあるので、読了後にレビューを読めることに改めて感謝でした。

    小川糸さんの作品は、また少しずつ読んでいって深みを知っていけたらいいなと感じた。

  • 夫の小野寺くんが急に姿を消し、傷心の中、昔一緒に旅行した島を訪れたまりあは、そこでつるかめ助産院の人たちと出会う。
    助産院の先生、パクチー嬢、エミリーや島の人たちと過ごすうちに、明るく優しい人たちも何かしら辛い過去を持っていて、辛い人生を送っているのは自分だけではないということに気づく。そして、自分も人を喜ばせるためにマッサージをしてあげるようになる。

    シングルマザーとして、島でやっていくのかとおもいきや、最後の、しかも出産シーンで、いきなり小野寺くんが現れてビックリ。そして、子供も含め、3人で島を去るという展開はハッピーエンドなのかもしれないが、個人的にはちょっと解せない。

    とはいえ、全体としては、人の優しさに癒されるストーリー。そして、妊娠、出産が一種の神秘的なこととして描かれていて、子どもを自分の体内で育むという体験をしてみたい気にもなった。

  • 先日読んだキラキラ共和国は会社の同僚からお借りした本だが、こちらも別の会社の方から頂いた一冊。

    偶然にも同じ時期に同じ作家さん。

    夫が蒸発し、意気消沈していたまりあ。
    夫との思い出の場所の南の島へ一人で向かう。
    その島で助産婦の鶴田亀子と出会う。
    悪天候で帰路の船が出港せず足止めされるまりあ。
    そんな時、亀子に想定外の妊娠を告げられる。

    まりあには重い過去があり、出産することに戸惑いを感じるが、島の仲間の温かさを受けて、少しずつ変わっていく。


    南の島でのゆっくりと時間が流れる感じの温かみのあるストーリー。

    人見知りの主人公。
    人付き合いも上手くないのに、亀子に出会うことで少しずつ前向きになっていく姿が清々しかった。

    またこの作家さんは、本当にお料理の描写が丁寧で、涎が出そうなくらいのご馳走を想像してしまう(*^▽^*)

    とても良書。
    自分のお産を思い出しながら、とてもいい気分で読了。

  • 出産経験なく、これからも無いのだけれど妊娠◦出産に凄く憧れを持ってしまいました。
    小川糸さん出産前に書かれたのもびっくりです。参考文書に出産関連のものも多く、またインタビューも多くされたみたいで、この本を書き上げるのに魂を込めているように感じました。
    付録の宮沢りえとの対談では、宮沢りえの言葉選びのセンスが良くて感性豊かなんだなぁと思いました。

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著者プロフィール

作家。デビュー作『食堂かたつむり』が、大ベストセラーとなる。その他に、『喋々喃々』『にじいろガーデン』『サーカスの夜に』『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』『ミ・ト・ン』『ライオンのおやつ』『とわの庭』など著書多数。

「2023年 『昨日のパスタ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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