空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (集英社文庫)
- 集英社 (2012年9月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087468823
感想・レビュー・書評
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角幡青年がツアンポー峡谷にのめり込むきっかけの一つになった、キングドン・ウォードの「ツアンポー峡谷の謎」を二日前に読了して続けて読んだ。もっとも先に「空白の5マイル」を読み始め、これは先にウォードを読んどくべきと思いしばらく置いといたものである。
そもそも題名が良い。この本を買った時点では、ツアンポー?だったが少し読み始めたら俄然引き込まれた。
20世紀後半生まれの著者は遅れてきた冒険家で、本人も言っているように重箱の隅を突くようなことしか、世界初とか新発見みたいな事はないかもしれない。
作者は2回(偵察を含めると3回)チベットに入っているようだが、最後のチベット行きが作品に深みを与えている。個人の熱量がすごい人なのだが、生死を分ける状況下心の中の葛藤動きが読者をも熱くささる。
読んだのが文庫だったので、写真等が残念である。
また、贔屓にしたい作者が増えた。 -
チベットのツアンポー峡谷にある地図にない空間に挑む若き青年のノンフィクション・ルポ。
新聞記者の経験もある著者なので、読ませるし、読みやすい。
冒険・探検物が好きなら是非オススメの本です。
ヤル・ついにはシャングリラが…。著者はたどり着けるのか⁉︎ -
探検部の元学生(と言いたいくらいなんか若い…)が、チベットの空白地帯に飛び込んでいく話。
著者の本は4冊目ですが、順番としては本著が探検家として世に出した最初の著作のようですね。経験を重ねた「アグルーカの行方」なんかと比べると本著は圧倒的に若くて粗削り。
時系列にならずにエピソードを挟んでくる書き方も本著の時点から始まっているのですね。嫌いじゃないけど、ちょっとあざといような。
内容はチベットのツアンポー渓谷を旅する話な訳ですが、渓谷自体のスペックはどうやらグランドキャニオンも比ではないレベルの凄いもののようなのに、「大変さ」が先に立ちすぎて、その場所に魅力を感じるような記述にはなっていないという印象。
とにかく自然というものの厳しさ、辛さが前面に出ています。
前に、角幡さんのことを「日常と冒険の間を取り持ってくれる表現者」と書いたのですが、本著の中で最もそことリンクしているな、と感じたのは「あとがき」でした。ひょっとするとあの質問は、著者の心の中に通奏低音のように残り続けているのかも。。 -
チベット自治区の北東部に世界最大級の峡谷があるという。そのツアンポー峡谷は、ヒマラヤを源流とする大河の激流に削られて何度も湾曲し、ついには峡谷のどこかで忽然と消えてしまうのだという。河の上流と下流の標高差を考えると、どこかに未発見の巨大な滝があるとの伝説もある。大河が山中で消えてしまうなんてことがあるのか?
21世紀の現代では航空写真や3Dマップのおかげで未踏未開の地はほとんどなさそうだが、峡谷の影になる部分は航空写真では分からず、空白の「5マイル」と呼ばれるエリアが依然として存在していた。
そういった探検の事前説明が丁寧にされているので、なぜ筆者がこのエリアを目指したのか理由の一端がわかる構成になっている。
読んでみると、想定していた環境といろいろ違う。
ヒマラヤの近くでの探検だから夏の暖かい時期の探検かと思ったら、冬なのだという。ヘビやヒルを避けるためだとか。
雪山を越えるのかと思うとヤブ越えだったりする。
正式な政府許可無しでの探検ということで、探検と同じレベルで警察や当局の障害がある。
探検の意義は何か、この本で何を訴えたかったのか、それは筆者自身にも容易に考えを整理できるものではないらしく、淡々と探検の記録が綴られていて、それがリアルに感じる。
もともとは一冊の探検本からの憧れが出発点だったということで、純粋な冒険心や好奇心から来る探検だったのだろう。
マネしたいとは思わないけど、読んでいるだけで自分も冒険しているような気持ちになれた一冊だった。
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ノンフィクションといえば良いのか、若者の成長物語とも言えそう。死ととなりあわせの冒険に赴く人々の気持ちが、最後につぶやくように記されており、ために冒険者は続き、それを我々は追体験したいのかもしれない。
文章は平易で読みやすく、感情移入も容易。
「冒険は生きることの意味をささやきかける。だがささやくだけだ。答えまでは教えてくれない。」
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チベットの奥地に、ツアンポー渓谷があり、人類未踏の「空白の5マイル」と呼ばれる場所がある。そこを目指す冒険ノンフィクション。
ノンフィクションを読んでいる。その中の一冊。
冒険心をくすぐられるが、段違いの熱量を持った著者が何度もツアンポー渓谷に挑み、時には危険な目にあっても実際に行かないと得られない経験を積む様が、スリルと少しの羨ましさを持って読む。実際にツアンポー渓谷に行ってみたいとさえ思う。 -
当時大学生の筆者が、チベット奥地にある人類未踏の「空白の五マイル」を2度にわたって探検するノンフィクション探検記。
これまでの探検家が経てきたルート、探険史と自身の探検記が交互に出てくる構成で、それぞれの探検家がツアンポー発掘に対してもつ目的やモチベーションが違っていたのが面白かった。
角幡さん自身の探検記はもちろん読み応えがあったけど、あとがきの「死ぬかもしれないと思わない冒険に意味はない。」という言葉が印象的で、断じてそんなことをする勇気はない自分にとって、こういった本の存在価値は高いなとひしひしと感じた。 -
幻の滝を求めて人跡未踏の地を行く、と聞くと、21世紀にはもはやあり得ない話だと思うだろう。そんなことを実際にやってのけてしまったというのがこの本の作者だ。色々な好運はあっただろうが、こんなエキサイティングな冒険譚が現代にもあるのかと思い、思わず引き込まれてしまった。ただ、政治情勢もあり、一旦開いた扉が今ではまた閉じられてしまっているというのは少し考えさせられた。