思い出のとき修理します (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 5605
感想 : 586
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468892

作品紹介・あらすじ

仕事にも恋にも疲れ、都会を離れた美容師の明里。引っ越し先の、子供の頃に少しだけ過ごした思い出の商店街で奇妙なプレートを飾った店を見つける。実は時計店だったそこを営む青年と知り合い、商店街で起こるちょっぴり不思議な事件に巻き込まれるうち、彼に惹かれてゆくが、明里は、ある秘密を抱えていて…。どこか懐かしい商店街が舞台の、心を癒やす連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 何年か前、小学校の同窓会に行ったときのこと。
    久しぶりに会った幼なじみの男の子(というより、もうおじさんになってたけれど)が、
    思い出し笑いしながら言いました。

    「母親に、『まろんちゃんち行くけど、一緒に行く?』って言われて、
    なにして遊ぼうかなぁって喜んでついてくんだけど、まろんちゃん、
    『いらっしゃい』って言ったっきり、いつもず~っと本読んでるんだよなあ」って。

    「うわあ、ごめんね!せっかく来てくれたのに退屈だったよね」と今更ながら謝ったら
    「いや、いいよいいよ。本読んでるまろんちゃんをじーっと見てるのも楽しかったから」
    なんて言ってくれて。

    あらまあ! 時計を巻き戻して、あの頃に戻ることができたら
    読みかけの本を置いて仲よく一緒に遊んで、ほのかな初恋が育ったりしたのかしら♪
    などと、こっそり都合のいい想像をしてしまった私なので

    『思い出のとき修理します』というタイトルと、
    「もしも『過去』を『修理』できるとしたら?」という帯のコピーに
    おお!時を遡って、悲しい思い出を修復するお手伝いをしてくれる
    素晴らしい時計屋さんのお話にちがいない!と、思いっきり早合点してしまいました。

    そんなファンタジックな設定ではなくて (ちょっとざんねん!)
    シャッターが降りたお店ばかりの寂れた商店街に起こる不思議な事件の謎を
    心やさしい時計屋さんが解いていく、ほのぼのとした物語。

    不思議な事件のきっかけとなるのが、猫がくわえてきたオルゴールだったり
    たった一度のデートのためにチクチク縫ったワンピースだったり
    季節はずれの日傘と子ブタのぬいぐるみだったりして
    なんだかそれだけで、なつかしく甘酸っぱい思いがこみ上げます。

    ミステリなのか、ファンタジーなのか、恋の物語なのか、ちょっと曖昧で
    「う~ん、どれかにもっと思いっきり浸りたい!」という気分にはなるけれど、
    理容店の孫として、商店街で暮らすことに密かに罪悪感を抱く明里を
    やさしく、温かく見守る時計屋さんが素敵なので、いいことにしよう♪
    人間と神様の間を行ったり来たりしている、というか
    まるで妖精パックのような、神出鬼没で屈託のない太一も、とても魅力的だし。

    やっぱり過去は変えられないから、あの頃に戻って初恋をやり直すこともできないけれど
    思い出を時間でやわらかくくるんで、今の気持ちで色を塗り替えて
    明日の私に、「はい!」と手渡してあげたくなる、やさしい物語です。

    • まろんさん
      円軌道の外さん☆

      ふふ♪ なんとそんなカッコイイ言葉をかけてくれた彼は
      フレンチレストランの腕のいいシェフになっていて
      きゃー、もし初恋が...
      円軌道の外さん☆

      ふふ♪ なんとそんなカッコイイ言葉をかけてくれた彼は
      フレンチレストランの腕のいいシェフになっていて
      きゃー、もし初恋がすくすくと育っていたら、
      おいしいフレンチがおなかいっぱい食べられたのかしら!
      と、食いしん坊らしい妄想まで膨らませてしまったのはヒミツです(笑)

      男の子の世界では、特に小さいうちは、
      元気に外で遊ぶのが王道!みたいなところがあって、
      静かに本を読んだりするやつはいけすかない!
      って思われちゃうのが、気の毒というかなんというか。。。
      円軌道の外さんも子ども心に苦労したんですね~。

      時々シャッターを開けて営業するお店がぽつぽつあるような
      商店街の雰囲気がとてもよくて、ほのぼのしたお話ですよ♪
      2013/02/18
    • macamiさん
      この本、手元にあったので(読む予定だったので)
      まろんさんのレビューを読むのを我慢していました。
      やっと読んで(本)、やっと読めました(レビ...
      この本、手元にあったので(読む予定だったので)
      まろんさんのレビューを読むのを我慢していました。
      やっと読んで(本)、やっと読めました(レビュー)!
      太一の存在、軽いようでいい味だしてましたね。
      いいかげんなようで、気も遣えたりして。
      商店街の雰囲気、というより、時計屋さんとヘアーサロン由井の雰囲気かもしれませんが、
      すごく惹かれます。
      大人になってからのこんなあったかいご近所、
      憧れます。(笑)

      それにしてもまろんさんの同窓会でのエピソード、
      その彼はよく覚えてますね。好きだったからかなあ。ふふ。
      2013/02/21
    • まろんさん
      macamiさん☆

      おお!macamiさんとほぼ同時期に読めたなんて、うれしいです♪
      あったかくて懐かしいあの商店街を、ふらっと覗いてみた...
      macamiさん☆

      おお!macamiさんとほぼ同時期に読めたなんて、うれしいです♪
      あったかくて懐かしいあの商店街を、ふらっと覗いてみたくなってしまいますよね~。
      私はドールハウスとか、こまこましたものが好きなので
      時計屋さんが、小さな部品を並べて修理している雰囲気にもうっとりしてしまいました。

      同窓会の彼は、好きだったから、とかじゃなくて
      遊びに行ったのに1秒も一緒に遊ばないで家に帰ったのが
      あまりにもショックだったんじゃないかと思います(笑)
      そしてそのことを、ぜんぜん覚えていなかった私、まったくひどい子ですよねぇ。。。
      2013/02/22
  • ”思い出の時 修理します”

    あることがきっかけで、こんなプレートをショーウィンドウに置いている
    過ぎてしまった思い出の時を修理してくれる時計屋さん。

    過ぎ去ってしまった時の出来事を変えてしまう事はできないけれど
    修理することだったらできる?

    その時には全く気付かなかった相手の気持ちに少し、あるいは
    ずっと後になってから気づくことがある。
    相手の本心が見えぬ故、誤解したりされたりしていたことも
    真実を知ってみれば、それまでわだかまりにしていた思い出が
    温かなものに感じられることがある...

    見るものの角度や考える方向を少し変えてみれば、マイナスも
    プラスに変えられるということですね。

    時計屋さんにはほわっとした優しさのなかにも翳りがみえて、明里ちゃんには
    ふわふわしてもやもやした霞に覆われているようで思わず目をこすりたくなる。
    太一くんは妖のようにすうっと現れるのがちょっぴり怪しげだけど頼もしい。

    5つの思い出のうちよかったのは
    ・茜色のワンピース

  • 失恋し仕事への意欲も失った明里は、幼い頃にひと夏を過ごした、今では少しさびれた商店街の理髪店に引っ越してきた。
    その店の向かいには、『思い出の時 修理します』というプレートをかかげた時計の修理店があった。

    明里自身も含めて、悲しかったり苦かったりする思い出を持つ人々が、その出来事に新しい意味を見出し、癒されてゆく、連作短編集。


    『めぐり逢いサンドイッチ』を読んで、他の作品も…と思い、代表作らしいこのシリーズを手に取った。
    …うーん。

    ファンタジーでもなく、ミステリというほどのこともなく、時計を修理する事が鍵になるでもなく…
    特に、時計屋さんと亡き兄との関係が明かされる重要な物語で登場した女性との会話が不自然で、手が止まってしまった。
    別れた恋人を呼び捨てにして、死んだ恋人のことを会話の中で「お兄さん」と呼ぶか?
    なーんて、エラソウに言えるほどの文章を書いてないんだけど。
    とにかく、かすかに違和感がありつつ、全体にぼんやり。

    もし、この作品が谷瑞穂さんの初読だったら、これきりだったかも。

  • 日常を描いたようで、ファンタジー要素もある連作短編集。
    劇的な展開や構成はありませんが、長い間胸にわだかまり続けていた後悔や哀しい記憶をそれぞれの形で昇華させて次に歩みだす登場人物たちや寂れていく商店街が、優しい視点と言葉で静かに描かれているので、とても穏やかで幸せな気持ちで読むことができます。後悔や哀しみの記憶の中にも些細な喜びが秘められているのもいいですね。

  • 偶然見つけた一冊。
    久しぶりに時間を忘れて一気に読めた本です( ´ ▽ ` )

    自分だったら、何の思い出を修理してもらいたいと思うんだろう…

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「何の思い出を修理して」
      勿論、良い思い出に変るモノです。。。←それが何かですよね。
      「何の思い出を修理して」
      勿論、良い思い出に変るモノです。。。←それが何かですよね。
      2013/01/09
  • すごく良かった。ジワジワと心温めてくれるお話でした。
    私も祖父母を父方母方ともに亡くしているので、こんな風に会えたらいいのに、とすごく思いました。
    酔っ払って、夢でもいいから、あの時あの場所に戻って、やり直したいのに…って思うこと、結構あります。もう三十路ですから。
    そんな自分と重なって、主人公の明里さんと秀司さんが、すごく愛おしく思えるんです。
    傷ついた心を、どうすることも出来なくて、もがいてる人は、きっといっぱいいて、そんな人に必要な物語なのかもしれませんね。
    2014/04/14

  • 雑誌でこの本の広告を見付けて、作者の名前を見た瞬間、"これは買わねば!"と、発売翌日には本屋さんに駆け込んで手にした一冊
    を、ようやく読めた

    皆少なからず変えたい過去があって、でも過去は変えられなくてーー
    そんな過去の思い出の形を、商店街でふとしたきっかけで出会った人のを変えていった明里と時計屋さん(と太一も?)
    皆いいキャラしてたなぁ

    谷さんの作品で伯妖以外で読むのは初めてだったけど、素敵な一冊だったなぁ
    どの話もほんわか、ほっこりする話だった
    おとぎ話っぽい感じがしたり、猫又やら生き霊やら言ってるかと思えば、ちょっと切ないところとかもあったし、最後にどんでん返しとまではいかなくても、ちょっとビックリな展開が待ってたりしたし、
    太一に笑わさせられたり、ハルコさんの思い出や時計屋さんのお兄さんの最後の思いにウルウルしたり、最後の展開に軽く混乱しながらもドキドキしたり、で読んでて気持ちも大忙しで、文庫一冊なのに、中身ぎっしりだったな
    明里と時計屋さんの距離が変わってく様子も好きで、谷さんが描く人物が好きなのかもしれないってちょっと思った
    (にしても時計屋さん、優しくて素敵な人だったな)


    時計屋さんも言ってたけど、未来と過去、変えられないって決めつけないで考えたら、変えられるのかな
    事実は変えられなくても、少なくとも登場人物達のように、その思い出の形は変わるよね
    そうすれば未来も変わってくるのかも・・・?

  • 本屋でオススメの本と紹介されて居た本。最後の一冊だった。
    どっかで見たことある作者だなと思ったら妖精と伯爵の人で、読んだことのある作家ならハズレは少ないだろうと半ば衝動的に購入。
    学校の課題そっちのけで読んでたら、一日で読み終わってしまった。

    寂れた商店街の時計屋さんと美容室の孫の話。
    タイトルだけみるとタイムスリップするとかそういう非現実的な印象を受けるが、実際にはそんなことは無くて、読み終わると心がほっこりとする。
    壊れた時計は修繕すれば、動き出す。
    こんな風にどんなに辛い過去でも、逃げずに素直に向き合えば、修繕出来る。未来もまた動き出すのかもしれない。

  • 子供の頃に少しだけ過ごした思い出の商店街と、思い出の場所ヘアーサロン由井。その向かいにある時計店の日常を絡めた不思議なお話。
    「思い出のとき修理します」
    このタイトルに沿ったかたちで進む少し切なくも温かい短編集。
    その後は主人公の明里と時計店の主人秀司の、壊れたままの思い出を治していく展開に。
    過去を乗り越え未来へ進む。そんな若者2人の姿が眩しい。そんな作品でした。
    シリーズになっているので次作も読んでみたいと思います。

  • 不思議な雰囲気を醸し出すシリーズの初巻.ほんのり暖かい気分で読める.

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著者プロフィール

三重県生まれ。三重大学卒業。『パラダイス ルネッサンス‐楽園再生‐』で1997年、集英社ロマン大賞佳作に入選しデビュー。著書に『めぐり逢いサンドイッチ』、「思い出のとき修理します」シリーズ、「異人館画廊」シリーズ、「伯爵と妖精」シリーズ、『拝啓 彼方からあなたへ』『がらくた屋と月の夜話』『木もれ日を縫う』『額を紡ぐひと』『まよなかの青空』など多数。

「2022年 『めぐり逢いサンドイッチ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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