- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087468892
作品紹介・あらすじ
仕事にも恋にも疲れ、都会を離れた美容師の明里。引っ越し先の、子供の頃に少しだけ過ごした思い出の商店街で奇妙なプレートを飾った店を見つける。実は時計店だったそこを営む青年と知り合い、商店街で起こるちょっぴり不思議な事件に巻き込まれるうち、彼に惹かれてゆくが、明里は、ある秘密を抱えていて…。どこか懐かしい商店街が舞台の、心を癒やす連作短編集。
感想・レビュー・書評
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何年か前、小学校の同窓会に行ったときのこと。
久しぶりに会った幼なじみの男の子(というより、もうおじさんになってたけれど)が、
思い出し笑いしながら言いました。
「母親に、『まろんちゃんち行くけど、一緒に行く?』って言われて、
なにして遊ぼうかなぁって喜んでついてくんだけど、まろんちゃん、
『いらっしゃい』って言ったっきり、いつもず~っと本読んでるんだよなあ」って。
「うわあ、ごめんね!せっかく来てくれたのに退屈だったよね」と今更ながら謝ったら
「いや、いいよいいよ。本読んでるまろんちゃんをじーっと見てるのも楽しかったから」
なんて言ってくれて。
あらまあ! 時計を巻き戻して、あの頃に戻ることができたら
読みかけの本を置いて仲よく一緒に遊んで、ほのかな初恋が育ったりしたのかしら♪
などと、こっそり都合のいい想像をしてしまった私なので
『思い出のとき修理します』というタイトルと、
「もしも『過去』を『修理』できるとしたら?」という帯のコピーに
おお!時を遡って、悲しい思い出を修復するお手伝いをしてくれる
素晴らしい時計屋さんのお話にちがいない!と、思いっきり早合点してしまいました。
そんなファンタジックな設定ではなくて (ちょっとざんねん!)
シャッターが降りたお店ばかりの寂れた商店街に起こる不思議な事件の謎を
心やさしい時計屋さんが解いていく、ほのぼのとした物語。
不思議な事件のきっかけとなるのが、猫がくわえてきたオルゴールだったり
たった一度のデートのためにチクチク縫ったワンピースだったり
季節はずれの日傘と子ブタのぬいぐるみだったりして
なんだかそれだけで、なつかしく甘酸っぱい思いがこみ上げます。
ミステリなのか、ファンタジーなのか、恋の物語なのか、ちょっと曖昧で
「う~ん、どれかにもっと思いっきり浸りたい!」という気分にはなるけれど、
理容店の孫として、商店街で暮らすことに密かに罪悪感を抱く明里を
やさしく、温かく見守る時計屋さんが素敵なので、いいことにしよう♪
人間と神様の間を行ったり来たりしている、というか
まるで妖精パックのような、神出鬼没で屈託のない太一も、とても魅力的だし。
やっぱり過去は変えられないから、あの頃に戻って初恋をやり直すこともできないけれど
思い出を時間でやわらかくくるんで、今の気持ちで色を塗り替えて
明日の私に、「はい!」と手渡してあげたくなる、やさしい物語です。 -
”思い出の時 修理します”
あることがきっかけで、こんなプレートをショーウィンドウに置いている
過ぎてしまった思い出の時を修理してくれる時計屋さん。
過ぎ去ってしまった時の出来事を変えてしまう事はできないけれど
修理することだったらできる?
その時には全く気付かなかった相手の気持ちに少し、あるいは
ずっと後になってから気づくことがある。
相手の本心が見えぬ故、誤解したりされたりしていたことも
真実を知ってみれば、それまでわだかまりにしていた思い出が
温かなものに感じられることがある...
見るものの角度や考える方向を少し変えてみれば、マイナスも
プラスに変えられるということですね。
時計屋さんにはほわっとした優しさのなかにも翳りがみえて、明里ちゃんには
ふわふわしてもやもやした霞に覆われているようで思わず目をこすりたくなる。
太一くんは妖のようにすうっと現れるのがちょっぴり怪しげだけど頼もしい。
5つの思い出のうちよかったのは
・茜色のワンピース -
日常を描いたようで、ファンタジー要素もある連作短編集。
劇的な展開や構成はありませんが、長い間胸にわだかまり続けていた後悔や哀しい記憶をそれぞれの形で昇華させて次に歩みだす登場人物たちや寂れていく商店街が、優しい視点と言葉で静かに描かれているので、とても穏やかで幸せな気持ちで読むことができます。後悔や哀しみの記憶の中にも些細な喜びが秘められているのもいいですね。 -
偶然見つけた一冊。
久しぶりに時間を忘れて一気に読めた本です( ´ ▽ ` )
自分だったら、何の思い出を修理してもらいたいと思うんだろう…-
「何の思い出を修理して」
勿論、良い思い出に変るモノです。。。←それが何かですよね。「何の思い出を修理して」
勿論、良い思い出に変るモノです。。。←それが何かですよね。2013/01/09
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すごく良かった。ジワジワと心温めてくれるお話でした。
私も祖父母を父方母方ともに亡くしているので、こんな風に会えたらいいのに、とすごく思いました。
酔っ払って、夢でもいいから、あの時あの場所に戻って、やり直したいのに…って思うこと、結構あります。もう三十路ですから。
そんな自分と重なって、主人公の明里さんと秀司さんが、すごく愛おしく思えるんです。
傷ついた心を、どうすることも出来なくて、もがいてる人は、きっといっぱいいて、そんな人に必要な物語なのかもしれませんね。
2014/04/14 -
みんなそれぞれの思い出のときを持っていて過去に囚われていたけど、最後は未来に向かって歩き出す。心が温かく優しくなれる。
『茜色のワンピース』のお話が好き。 -
子供の頃に少しだけ過ごした思い出の商店街と、思い出の場所ヘアーサロン由井。その向かいにある時計店の日常を絡めた不思議なお話。
「思い出のとき修理します」
このタイトルに沿ったかたちで進む少し切なくも温かい短編集。
その後は主人公の明里と時計店の主人秀司の、壊れたままの思い出を治していく展開に。
過去を乗り越え未来へ進む。そんな若者2人の姿が眩しい。そんな作品でした。
シリーズになっているので次作も読んでみたいと思います。
著者プロフィール
谷瑞恵の作品






ふふ♪ なんとそんなカッコイイ言葉をかけてくれた彼は
フレンチレストランの腕のいいシェフになっていて
きゃー、もし初恋が...
ふふ♪ なんとそんなカッコイイ言葉をかけてくれた彼は
フレンチレストランの腕のいいシェフになっていて
きゃー、もし初恋がすくすくと育っていたら、
おいしいフレンチがおなかいっぱい食べられたのかしら!
と、食いしん坊らしい妄想まで膨らませてしまったのはヒミツです(笑)
男の子の世界では、特に小さいうちは、
元気に外で遊ぶのが王道!みたいなところがあって、
静かに本を読んだりするやつはいけすかない!
って思われちゃうのが、気の毒というかなんというか。。。
円軌道の外さんも子ども心に苦労したんですね~。
時々シャッターを開けて営業するお店がぽつぽつあるような
商店街の雰囲気がとてもよくて、ほのぼのしたお話ですよ♪
まろんさんのレビューを読むのを我慢していました。
やっと読んで(本)、やっと読めました(レビ...
まろんさんのレビューを読むのを我慢していました。
やっと読んで(本)、やっと読めました(レビュー)!
太一の存在、軽いようでいい味だしてましたね。
いいかげんなようで、気も遣えたりして。
商店街の雰囲気、というより、時計屋さんとヘアーサロン由井の雰囲気かもしれませんが、
すごく惹かれます。
大人になってからのこんなあったかいご近所、
憧れます。(笑)
それにしてもまろんさんの同窓会でのエピソード、
その彼はよく覚えてますね。好きだったからかなあ。ふふ。
おお!macamiさんとほぼ同時期に読めたなんて、うれしいです♪
あったかくて懐かしいあの商店街を、ふらっと覗いてみた...
おお!macamiさんとほぼ同時期に読めたなんて、うれしいです♪
あったかくて懐かしいあの商店街を、ふらっと覗いてみたくなってしまいますよね~。
私はドールハウスとか、こまこましたものが好きなので
時計屋さんが、小さな部品を並べて修理している雰囲気にもうっとりしてしまいました。
同窓会の彼は、好きだったから、とかじゃなくて
遊びに行ったのに1秒も一緒に遊ばないで家に帰ったのが
あまりにもショックだったんじゃないかと思います(笑)
そしてそのことを、ぜんぜん覚えていなかった私、まったくひどい子ですよねぇ。。。