傭兵ピエール 下 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087470161

感想・レビュー・書評

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  • 乱世である。フランス王国は戦火に苛まれていた。アングル(イングランド)王の侵略が始まって、もう百年がたとうとしている。この戦争は昨今「百年戦争」と呼ばれていた。
    (上巻本文15ページより)

    時は革命から遡ること360年前の百年戦争の最中。
    傭兵部隊「アンジューの一角獣」のシェフ(料理人ではなく頭目のこと)であるピエールは、ある夜、「自分はフランスを救うために、神に遣わされた」と主張する一人の少女と出会います。
    彼女こそ、のちのフランス救世主ラ・ピュセル(乙女)ことジャンヌ・ダルクでした。
    この運命ともいえる出会いを皮切りとして、戦乱の世を共に戦い、一度は別れ、再び劇的なめぐりあいを果たす、冒険に満ちた二人の数奇な人生が描かれています。

    傭兵は、いわば「戦争屋」ですが、戦さのない平時には当然ながら失業状態であり、生きるために略奪暴行殺人誘拐人身売買などなど、悪事の限りを尽くすならず者集団でもあったようです。
    先に述べた二人の出会いも、実はピエールの部隊が、旅路にあるジャンヌと従者一行を襲い、ピエールが彼女を今にも犯そうとしたことがきっかけ。
    これだけ書くと、「主人公に感情移入どころか、単なる極悪人やんけ」と思われそうですが、そこは「小説フランス革命」で、一癖も二癖もある数多の人物を活き活きと書ききった佐藤さん。
    読み進めるうちに、ジャンヌ同様、ピエールという男に否応なく魅きつけられていきます。
    また、史実という厳然たる枠組みの中に、大胆な大ボラを挟み込んだアッと驚くストーリー。
    一瞬唖然とするものの「えっ、それでどうなるの、どうなるの!?」と驚愕の中、先が気になって、特に下巻は途中でやめることができませんでした。
    さて、次の佐藤作品は何を読もうかな。

  • 再読。
    傭兵ピエール。恋愛、冒険、歴史、戦いこういうエンターテイメント作品好きだな。
    ピエールの中には常にいつも運命の人ジャンヌが潜んでいて、ジャンヌを救い、ジャンヌを守り、ジャンヌを励ますことが生きることの意味だった。
    好きな人を守る。
    仲間を守る。
    困っているを助ける。
    だから愛される。

    途中、ジャンヌと結ばれるまではヤキモキしながら読んでたが、ラストの「傭兵ピエール、まずは会心の笑みだった。」で納得した読み切りでした。

    ジャンヌも正義感が強く融通が利かないが純粋な魅力的な女性。
    旅籠でひとつの寝台に眠りジャンヌが「わたしは、ただのジャネットです」
    …。ピエール!何で!思わずつぶやいちゃいました。

    • 9nanokaさん
      とてもすっきりした終わりでしたよね(^^)
      でも私もあそこはなんで!でした笑。押しどきと引きどきがよくわかんないなぁと思いました^^;
      ...
      とてもすっきりした終わりでしたよね(^^)
      でも私もあそこはなんで!でした笑。押しどきと引きどきがよくわかんないなぁと思いました^^;
      ピエールは一瞬結婚しようとした女性、ベネット?のことを本当に愛してるようにも見えたんですが、それでもジャンヌとは違ったんでしょうか?
      来世はピエールに生まれ変わりますのでよろしくお願いします笑。
      2015/02/05
    • komoroさん
      来世ピエールですか。じゃあ僕はジャンヌにしますかね。でも途中辛い人生なので早く迎えに来てください。
      そして旅籠ではタイミングを逃さないでく...
      来世ピエールですか。じゃあ僕はジャンヌにしますかね。でも途中辛い人生なので早く迎えに来てください。
      そして旅籠ではタイミングを逃さないでくださいね。笑。
      でもロッシ(馬)でもいいかな。笑。
      2015/02/08
  • 普段、女性作家の本ばかり読んでいるので、野性味溢れる男性的な展開に慣れず、最初のうちは思い悩んでしまった。
    しかし下巻に入ってからは展開が気になって一気に読んだ。
    ピエールは粋で情が深い。この人についていけば大丈夫、となんとなく思わせるものがある。それで、男も女もピエールの周りに集まってくる。つい惹かれてしまうのもわかる気がする。
    ピエールは最初から最後まで一貫してジャンヌを好きではあるのだが、その途中に何人もの女性が登場し、その度に情をかけてしまう。
    でも悪気は全くないし、ジャンヌを傷つけるつもりもない。
    後ろ暗いところがないので、許すしかない。
    あんな風に生きられるなら楽しいだろうなぁと思った。
    誰もが幸せになるラストで読み終わりはとてもすっきりした。

    • komoroさん
      頑張って読むから、また、語り合いましょう。
      男からみたピエール。女性からみたピエール。
      ジャンヌダルクとどうなるのかな?
      忘れた。
      頑張って読むから、また、語り合いましょう。
      男からみたピエール。女性からみたピエール。
      ジャンヌダルクとどうなるのかな?
      忘れた。
      2014/12/14
  • ピエールのジャンヌに対する変わらぬ忠誠心がよい。焚刑を切り抜けるジャンヌ、そしてピエールを尻に敷くジャンヌ、物語の展開の面白さは抜群である。

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    フランスの百年戦争におけるジャンヌ・ダルクの物語
    主人公は架空の人物である「傭兵のピエール」
    下巻はジャンヌとピエールが別れてから約二年経過しているようだが、ここから歴史の隙間を縫うようにピエールによるジャンヌ・ダルクの救済の物語となっている。
    こんなふうに歴史を騙すことができるのかと少し感心した。
    それにしてもピエールが貴族になる展開には驚いた。仮面の騎士の正体はなんとなく察していたがイタリア人騎士の正体は予想外だった。そしてピエールの実母にも驚いた。
    ジャンヌ・ダルクの救済を望むのであれば、この本を読むのが一番かもしれないな。

  • 再読。

    一時期この作者にハマった時期があり「双頭の鷲」と前後して読んだ、初読時にあまり印象に残らなかった作品。
    「双頭の鷲」はオールタイムベスト。

    全体的に都合良すぎ、昔は悪やってたけど今は更生しました的なのも都合良すぎ、そして主人公は詰め甘すぎ。

    主人公たちが襲った街に戻り一変して英雄に祭り上げられるところでは、前回襲った時に負傷して再起不能になったり、それこそ許嫁を攫われた男とかいなかったのか?それがいないという都合よさ。
    ジルの件では、あいつはあの後も同じことを繰り返すんじゃないだろうか?いいの?という詰めの甘さ。他、気になってしょうがない。

    それでも鳥肌の立つ程の興奮するシーンも多くあり物語を楽しめた。「双頭の鷲」の雛形的な作品だなぁ。

  • ラピュセル救出からの二人旅、そして伝説へ。下巻はジャンヌダルクの物語というよりも、ラピュセルという鎧から解放された女と元傭兵現街人の男の物語だった。ジャンヌが死ななくて良かった。中世ヨーロッパの風俗に忠実に、当時の世界観を損なわず、それでいて男女の物語であるところが面白い。そもそも処女崇拝という無茶苦茶な宗教思想はどこから生まれたのだろう。戦乱の世の中で女が生きていくために、それほど足枷になるものもなかろう。

  • 地獄に身を落とさないと幸せを実感できない、矛盾しているにもかかわらず、なぜだか理解できる。どうしようもないけどそれが人間なんだろうと思うと、涙が出る。

  • 「双頭の鷲」から続けて読んだ。

    上巻はいい感じに引っ張って終わって、下巻は「え、こんな感じになっちゃうの?」と一回残念な感じになりつつも、盛り返してきて、でもやっぱりなんか終わりの方は期待感に欠けたというか…。

    おもしろいけど、僕は最後の方がちょっと残念だった。

  • ジャンヌ・ダルクは、生きていた!
    ピエールとの恋、そして、……

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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