アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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レビュー : 120
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087470253

作品紹介・あらすじ

睡眠薬、シャブ、アヘン、幻覚サボテン、咳止めシロップ、毒キノコ、有機溶剤、ハシシュ、大麻やLSDもあれば、アルコールもある。ドラッグのオンパレードである。著者自らが体験したリーガルなものもあるし、話に聞いただけのイリーガル・ドラッグもある。古今の作家の生活や名著などもひきながら、話は「人はなぜ快楽を求めるのだろうか」へと進む。煙の向こうにひとの本質が見え隠れするような傑作ドラッグ・エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 10代好奇心旺盛だった頃にこの本に出会ってしまい、チョウセンアサガオ(ダチュラ)の幻覚に挑戦してみました。天と地がひっくり返ったような感覚に襲われ、しばらく動けなくなりました。

    若者には読んでほしくない本。

    けれど、自分の本棚には置いておきたい本。
    理解ある大人用の本です。

  • 故中島 らも氏お得意の
    自虐的露悪的なドラッグとの付き合い録。

    当人も本文中で述べているが、
    最初は「文献」からの引用が多い。
    が、徐々に「実体験」の部分が多くなり、
    それと同時に、失礼ながら割と「情けない」
    ドラッグとの付き合い記述が多くなる。

    でも、情けなさ度がアップして行くと同時に
    読み物としての面白さが増していくのは、
    やはり「実体験」の持つ重みだろうか。

    らもさんご自身も、若い頃からシンナーやら
    咳止めシロップやら睡眠薬やらもちろん酒やら
    いろんなもんの「依存症」となってきた。

    無理がたたってアルコール性肝炎で長期入院したり、
    さらに鬱病であわや自殺の一歩手前まで行ったり、
    かなり「危なっかしい」半生記となっている。

    ちなみにらも氏は、エッセイ類では結構
    「同じ話をあちこちに書いている」傾向があり、
    この本も「実体験」の4割くらいは見覚えのある内容だ。
    でも、だからきっと真実なのだろう、と言える。

    本書に登場するドラッグ類は「ハシシュ」「コカイン」
    「マリファナ」「LSD」などの「いけないもの」から、
    キノコやサボテンなどの一応いけなくはないものまで、
    幅広く取り上げられている。

    この本を読んだ人が、
    ドラッグに手を出してみたくなるかと言うと...
    どうもそうはならない気がする。

    ドラッグとは、別に「素晴らしいもの」ではなく、
    かと言ってドラッグ自体には罪も何もなく、
    結局溺れるのは人間の弱さだ、と言うことを
    冷徹なほどの自己観察で教えてくれている。

    そして、ドラッグに「つけ入れられない」ために必要なのは
    何をおいても「情報」「正しい知識」だと説く。

    何も知らない若者や主婦にまで広がるドラッグ禍は、
    「これは禁止されたもので、摂取した結果こうなる」と
    正しく知っていれば、少なくとも「知らぬ間に依存症になる」
    というようなことはない、と。

    そして、正しい知識を持っていて手を出す奴は
    「自業自得」だ、と、自戒の念も込めつつ断じている。

    またドラッグに手を出しても、足を洗える奴もいれば、
    ずるずると抜け出せなくなって破滅する奴もいる。
    それはある種「淘汰」なのだと説く。

    この冷たさ、厳しさは、「人類皆平等」を標榜する
    「似非ヒューマニズム」みたいなものも喝破する。

    「酒を飲んでも、誰もがアルコール依存症になる訳ではない。
     俺も含めたごく少数の人間だけが依存症となるのだ。
     ドラッグだって同じはずだ」と説く氏の言葉は、
    「何でもかんでも禁止」という「お上のやり方」が、
    禁酒法時代の密造酒のように「暴力団の資金源」となり、
    無自覚のうちに中毒にされる若者を生むのだ、と続く。

    私は別にドラッグを礼賛している訳ではない。
    が、この本を読むと、確かに「何でも禁止」の現状が
    最善の方法とは思えなくなってくる。

    真剣に自国民を守る気があるのなら、
    「お上」の人たちももっと考えてもいい気がする。

    ちなみに、タイトルの「アマニタ・パンセリナ」とは
    毒キノコである「テングタケ」の学名らしい。

  • 中島らものエッセイの面白さは体験の面白さに加えて、『らもの目』の面白さが中核をなしている。視点と、そして視線の面白さだ。

    本書は、ドラッグをテーマにしたエッセイだ。自分で体験した合法ドラッグから、すぐ横を通り抜けていった非合法のドラッグ。幻覚サボテン、シャブ、大麻、咳止めシロップから毒ガマまで。様々な薬物が豊富な知識と、そして体験に基づいて登場する。

    それらの薀蓄と体験談が知識欲を刺激して、それだけで面白い。ただ、ドラッグを見る中島らもの『視点』はさらに刺激的だ。ドラッグを道具にしたり、酒のつまみにしたりして語られる言葉は自由で深く、魅力的だ。

    そして『視線』。らもの語り口はさらりと乾いている。ドラッグを嫌悪するでなく、経験を誇示するでもなく。物事にのめり込んでも、それを遠くから眺めるような視線で描けるのが彼の強みだ。生々しくなりかねないドラッグ体験談にしても妙に手触りがよく、これが読み物としての精度を高めている。

    豊富な知識により学術書になりえ、数々の体験から貴重なレポートになりえ、視点の行き着く先は哲学書となりえる。そんな本がとびっきりのエンターテイメントであることは、とても嬉しい奇跡だ。

  • 筆者が今までに経験してきた、様々なドラッグを本書で紹介している。
    うがい薬がトリップできるのは初耳で、興味深かった。
    ドラッグというと、ちょっと怖くて気が引けてしまう人もいるかもしれない。
    だが、本書では筆者の軽快な文章によって、怖さは感じない。
    怖さは感じないが、生々しさは感じることができるので、ドラッグに興味がある人は読んでみるといいかもしれない。

  • らもさんのドラッグの話。
    ドラッグの種類をらもさんの実体験を元にわかりやすく理解できます。
    随分と道を踏み外してこられた人生で驚きました。
    それでもなんとか生きているし、作品も残しているし、いろんな意味で常識を飛び出した人だなぁと思いました。

    そういえば、昔一緒に仕事をした某俳優さんはジキニン中毒とおっしゃってました。
    私はジキニンを飲んでも何も感じなかったので意味がわからなかったのですが、そういうことだったんですね。なるほど。

    私は基本的にはガチガチの真面目人間で、10代から飲酒や喫煙はしていたものの、自分を失うほどの逃避はしませんでした。

    らもさんほど道を踏み外さなくても、私ももうすこし頭をゆるくしてもいいのかもしれないです。

  • この本を読んだのは大学一年生の(何年前だ?)の夏休みだった。父親の店(居酒屋)でバイトをしていた時だ。
    文庫版をエプロンのポケットに入れて読んでいたせいか紙がふやけてしまっている。その父の店でバイトをした夏休みの匂いも込みでこの本は愛おしい。

    つるりと話してしまうと、作者が「しばらく、クスリの事を書いてみよう」と言って書いたものなので、合法違法含めいろんな薬について書かれている。

    今でこそそういう作用のある薬や毒物に対する知識がある自分だが、これを読んだ時にはタバコと酒をたしなむくらいで「あ、自分悪いことしてる。」と気分が少しばかり高揚するくらいだった。若かった。

    ”はじめに”を読み進めていくと「ガマなめ」について話されているが、要するに、そういう作用のある「カエル」を「舐めてみよう」ということである。本文をすべて読めばわかるのだが、カエルを舐めなくても、違う意味で新聞に載るような経験がしっかりと書かれている。

    しかし作者はその本文すべてに巻き散らかされた”新聞に載りそうな行為”ではなく、カエルを舐める事を「もしこんなことで死んだら新聞に載る」→「孫がグレる」とあきらめるのだ。
    四六のガマか、自来也か。と思いつつも、ぺらりと一ページめくってみると
    「中島らもガマ吸って死ぬ」
    という一文が!!”ガマ”すって死んじまった事実をいかにも新聞に載りそうな文章で書き、それをここぞとばかりによいタイミングで見せられると、これほどまでに笑いの発作をおこすことか!
    残念ながら、自分がもっているのは文庫版なので、ページをめくり偶然にこの現象が起きたのかもしれないけれど、ぺらりとめくってそのページの一文目が「ガマ吸って死ぬ」のフレーズだったは衝撃的だった。

    何度読んでも、初めて読んだ時と同じく「そんなことで死んだら新聞に載る。」→ページをめくる→「ガマ吸って死ぬ→孫がグレるのくだりで爆笑だ。
    当時も我ながらよく台所で客の酒宴の声をBGMに湧き上がってくる笑いをこらえたものだ。

    ここまで書いておきながらまだ「はじめに」の話題なのだ。本文には色々な薬物に関するエッセイが書いてある。もっともっとこの本については語りたいものだがあまりにネタバレして本文を読む楽しみを奪ってはいけない。

  • 関西ではたまにテレビ出演などもしており、しゃべり方のおかしいアル中のおっさんというイメージだったが、実は本作を読んでわかるとおり面白いエピソードを軽妙に語りながらもその奥では鋭い洞察が常に働いている。読みやすい文体でありながらなぜ人は依存するのかという深遠なテーマが時折顔をのぞかせる奥行きのあるエッセイである。

  • 私自身はドラッグはもちろん煙草やアルコールにも嫌悪感を抱いているので、著者のドラッグに対する立場や人生観にはほとんど共感できません。しかし、なぜか奇妙な愛着を感じて嫌いになれないのと、文章が面白いのとで、ぐいぐい読み進めてしまいました。(この愛着の原因は、何なのだろう?) でも、ペットの猫にふざけて睡眠薬を与えてゲラゲラ笑った上、翌朝その猫が今まで共生していた同じくペットのウサギを殺していた、というエピソードだけは本当に嫌悪感でいっぱいになりました。若気の至りとラリって判断力が無かったのだとしても、これだけは許せん。

  • せきどめにはまったきっかけ。らもさーん天国から責任とってくださいよーう。わたしには刺激つよすぎましたです、はい。

  • 一家に一冊。家庭の医学みたいなもん。

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著者プロフィール

1952年兵庫県生まれ。大阪芸術大学放送学科卒。92年『今夜、すべてのバーで』で第13回吉川英治文学新人賞、94年『ガダラの豚』で第47回日本推理作家協会賞を受賞。
主な著書に、『明るい悩み相談室』シリーズ、『人体模型の夜』『白いメリーさん』など。2006年7月に短編集『君はフィクション』を刊行。2004年7月逝去。

「2014年 『ロカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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