ニュートンの林檎 上 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.17
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本棚登録 : 476
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087470574

作品紹介・あらすじ

1978年春、大学のキャンパス。僕は、意志的で抗いがたい魅力を湛えた、佐伯元子と出会った。そして、平穏な人生から引き剥がされてしまった。僕の心を深く突き刺し、おそろしい冒険に巻き込み、姿を消した元子。10年後、社会的には成功した僕にとって、元子との再会の予感が、生きる原動力となっていた…。人生の全てを決めたひとりの異性との出会いを、圧倒的なスピード感とパワーで描く、渾身の長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 人生は夢か幻か?と思いながらも生きていく。生きている実感はどうしたら得られるのか?を考えさせる話。

  • 1979年、主人公と元子の知り合う学生時代から彼女の旦那との共同生活までは、登場人物の誰とも感情移入できず、彼らの考え方や哲学なども異議を持ちつつ、少し困った小説だなと思いながら読んだ。
    良かったところは、描写や表現がとても上手で、頭に情景がすんなり浮かんでくるところと、早い展開、イベントが多いので常に続きが気になり飽きさせないところ。

  • この作品は、単行本化にあたって加筆訂正されてはいるが、もともとは月刊誌に連載されていたこともあって、物語はスピード感もあり、また起伏に富んでもいる。1980~1990年代の『われらの時代』+斎木犀吉(『日常生活の冒険』)といった趣だ。ただし、第2部に入ると、残念ながら通俗性が増してくるようだが。下巻での新たな巻き返しを期待したい。なお、この小説の(作者の?)文体上の癖か、頻度の低い四文字熟語がいくつか出てくる。

  • 2011/7/21

  • 前半は青春小説のようなもの
    それ以降はサスペンス物?

    次巻への引きはよい

    ただ、主人公たちに共感は出来ないなぁ

  • この本は、まだ高校生だったころに買ったものだった。あの頃はそんなに興味を引くものではなかった。むしろ触れてはならないような、そんな感じさえあった。しかし、この本からは、―非常に一面的なもののとらえ方かもしれないが―愛とはなにか、ということを考える踏石(ステップ)が得られそうな気がするのだ。僕の心の中からは、どうやら[※1]が離れないのだから。
    試験前ではあるのに。



    [※1]
    衆目にさらすことのできないことが書いてあったので、自主規制

  • 表現の生々しさに眉をひそませながらも、読むのをやめることはできなかった。それはひとえに文章の品のよさのおかげだろう。大きく混乱させられながらも、途中途中できちんとつじつまが合うのでスムーズに読めてしまう。ぼくも元子もそれにまつわる人々も皆、いわゆる「ふつうではない」性質の持ち主。運命に翻弄される「ぼく」、というよりも「ぼく」がそれぞれの世界を翻弄させているようにみえて仕方がない。結局最後までほっとすることもじんわりあったかくなることもかっこよさに身もだえすることもなく。救いようのない話、とも言えるかもしれない。けれどそれでも上下巻を一気に読んでしまったのは、やっぱり文章の美しさがそうさせるんだろうなあ。

  • 1978年春、野性的な少女・佐伯元子と出会った瞬間に、僕は、約束された平穏な人生から引き剥がされた。僕の心を深く突き刺し、やがて姿を消す元子。その運命的な力に引かれて函館、そしてベネツィアへと僕は旅立つ。

  • 辻仁成の作品を始めて読了。
    繊細な文体、情景描写のバリエーション、読者を思考させようとするストーリー。彼は確実に今まで出会った素晴らしい作家と同じものを持っている。

    物語を破綻させないながらも最大限に混沌と謎の世界観を創り上げていく。読み終わった後で読者は呆然と立ち尽くし、それから読み終わった本の様々なシーンを思い浮かべ思考する。ただ思考する。
    読者をこのような状況に誘うことのできる小説こそ、後世語り継がれるべき小説だ。

    本書「ニュートンの林檎」を読み、まだ下巻が残っている段階ではあるが、久しぶりに体が震え何らかのインスピレーションを私に与えてくれた気がする。

    村上春樹の「スプートニクの恋人」に字面が近似しているという理由のみで借りたが、ストーリー自体も何だか少し似通っている印象を受けるのは私だけではないはず。ある一人の個性的で自立した女性を忘れられずに迷い苦悩しながらも生きる主人公が描かれている。隠微で冷淡な世界観。流れる時間の中で語られる平凡な価値観。それらの余りにも違いすぎる感性と感性のぶつかり合いがページを捲るスピードを早める。

    前半の単調すぎるほどの内容から樹彦が殺害される場面を境に、本書は全く異なる様相を呈するようになる。1章と2章で違う小説を読んでいるかのごとく、私の感情も大きく変化し、曲がりくねった道をただ進んでいくストーリー展開をひたすら追っていくことしかできなくなる。もはや前半で意識していた辻仁成の繊細で流動的な文体に気を留める余裕はこの時点ではなくなってしまった。

    元子とのヴェネチアでの再会、そして彼女の口から語られる復讐のシナリオ。一体この小説の方向性はどうなっているのか。時間についての小説らしい考察からスタートした本書は、どのような流れを経ていつから一人の女性の復讐劇を描くまでに変化していったのだろうか。
    この大胆すぎるストーリー展開。他の作家だったらすぐに読むのをやめて駄作であると躊躇なく判断するだろう。
    しかし、辻仁成は私を押しとどめた。むしろ続きを期待していた自分がいた。何故だろう。それはやはり小説の在るべき意味を本書に見出したからなのだ。

    平凡で誰もが認める常識やどこにでもある風景。簡単に思いつく出来事。
    その逆で、「何故?」としか言えないような価値観、心情描写、人物像の描き方。それらの絶妙すぎる交配、それを支える屋台骨である辻仁成の卓越した文章力。
    全てが程良いバランスで組み合わさることで本書「ニュートンの林檎」に小説的価値が付与されたのだ。

    だからこそ上巻を読み終わった今思う。下巻で私たちを裏切らないでほしいと。否が応でも心から期待している自分がいる。
    物語のラストは問題ではない。私が注目しているのは物語のバランスだ。どこまでストーリー展開が狂っていくのか。そこの落とし所、抑え所のみを見させてもらいたい。

    時間について何らかの確立された描写がなされるのかも見所になるだろう。
    いずれにせよ楽しみだ。

  • エロイ

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著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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