サンタクロースのせいにしよう (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087471250

感想・レビュー・書評

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  •  日常ミステリーというか、ご町内ミステリー?
    若竹七海さんは初読で、タイトルが今の時期に合ってるなと、軽い気持ちで手にしました。若竹さんの初期(1995)作品で、7編の連作短編集です。

     主人公の柊子は、家事を引き受ければ家賃はタダという美味しい話に飛びつき、著名人の娘で天然系の銀子と同居することに‥。
     ちょっと変わった近隣住人たちがいろいろと巻き起こす騒動の数々。柊子は人一倍好奇心が強く、小さな謎が彼女に引き寄せられるように近づいてきます。まあ、日常の謎というよりは、プチドタバタ込みの人間模様という印象でしょうか。

     ほのぼの系の全体像を予想していましたが、柊子の心情・言葉や周りの人物描写から、キャラクターの濃さやちょっとした皮肉、毒も感じます。
     それでも、会話の妙・テンポのよさに優れ、スラスラ読み進められました。

     表紙イラストのほんわか感、でもそれだけじゃないよ(内容)というギャップも、あえて狙いなのでしょうか?
     すっとぼけお嬢様の銀子が、ほとんど脇役扱いなのは少し残念で、もっと前面に出たら楽しさ倍増だったかなと思いました。

  • 若竹さんの連作短編集。葉村晶シリーズ以前のものだがこの頃から若竹さんらしいテンポよい会話と笑いとで展開していい感じ。大掛かりなトリックとかないけど、暇な時に懐かしいドラマの再放送を観てるみたいな気軽さで読めてよかった。

  • 気がついてみれば、昨年は若竹七海の葉村晶シリーズと御子柴くんシリーズを一挙に9冊読破していた。もしかしたら、あと少し頑張れば若竹七海をマイファンリスト(著作物の8割以上を読む)に入れることができるんじゃないか?という目論見で比較的初期の本作を紐解いた。結果、リスト入りを目指すことになりました。

    葉村晶みたいな個性的な探偵が出てくるわけでも、御子柴くんみたいな情け無い刑事が出てくるわけでもない、主には銀子お嬢さんの家に居候を始めた柊子さんの、ご近所で起こる日常の謎を解くコージーミステリ。探偵役は柊子さんの場合もあれば、友人の夏見さん、銀子さんの腹違いの兄・竜郎さんの場合もある。読んで社会情勢に詳しくなるわけでも、人生の教訓を得るわけでも、涙を絞る癒しの場面があるわけでもないが、やはり相性が良いのか、ともかく楽しく次々と読んでいられる。姪っ子のお喋りに付き合っている、というような感じ。読んでいると、時代を感じる日常品が次々と出てくるのも良し(ハンディカメラとか)。

    あと2年ぐらいしたら、「最近はちょっと若竹七海に凝っててね」というようなことも言えるかもしれない。

    初出誌「小説すばる」
    あなただけを見つめる 92年8月号
    サンタクロースのせいにしよう 93年1月号
    死を言うなかれ 93年4月号
    犬の足跡 93年7月号
    虚構通信 93年10月号
    空飛ぶマコト 94年1月号
    子どものケンカ 94年4月号
    主な登場人物 岡村柊子 彦坂夏見 松江銀子 曽我竜郎 

  • 前に読んだ「平台がおまちかね」の中で描かれたコンテストに推薦された10冊の内の一冊。未読だった7冊から、お馴染みのこの作者の本を買ってみた。

    京王線沿線の一戸建てを変わり者のお嬢様・銀子とシェアして暮らすことになった柊子。
    引っ越し早々、幽霊は出るわ、ゴミ捨て場の死体騒動に巻き込まれるわ…、日常の不思議と個性的な隣人たちが描かれる。
    語り口は、おかしみ、ほろ苦さ、そして多少の毒を感じさせ、ご町内トークは「葉崎市シリーズ」、好奇心からハマらなくてもよい沼にハマっていくところは「葉村晶シリーズ」につながるものを感じる。
    ビターな語り口で人の悪意を描きその背後にある孤独を考えさせる「虚構通信」が好み。

  • プレゼントよりも前の作品なのですね。面白く読みました。そして、葉村晶にこんな若い頃があってもよいのではないかな、と思いました。実際には葉村晶の若い頃はもっと不幸に巻き込まれていたに違いないと思っていますが。
    ところどころで差し込まれる自己紹介がなんだか後の葉村晶を思わせて、その後に続く巻き込まれ方がフムフムと頷くのです。
    スッキリさせないもやもや感を少しずつ潜ませる感じが、とても塩梅よくて、若竹七海感が味わえるのが嬉しいです。
    すいすい読み進めたのは、文章がうまいからでしょう。
    一編一編につけられた題名がしゃれています。読み終えて題名を確かめると、ほろりとしたりにやりとしたり、題名をしみじみと味わいたいと思います。
    若竹七海のいろいろな味わいが詰まっているように思います。
    面白かったなあ。
    フレーズに登録したい部分も多々あるのですが、そこだけ抜き出してもどういうことかわからないだろうなあ、と思うフレーズがたくさんありました。魅力的なフレーズだけど、よそに移植できないフレーズですね。

  • 初期作品だが、ユーモアと苦さ、日常と非日常、シリアスと温かさというバランスの上手さは変わらない。
    超個性的な同居人との暮らしの中で主人公が様々な事件に遭遇する。
    表題作が一番良かったが、幽霊の謎解きの「犬の足跡」飛行機内の奇妙な騒動「空飛ぶマコト」も良かった。
    探偵役が次々変わるのは珍しい。

  • 三年間付き合ってた彼と別れプライドがずたずただった岡村柊子。
    失恋を癒すには、引越しという手もある、とコマーシャルで聞いて引越しをしようと思った。
    ある日彦坂夏見から電話があり、友一戸建てを二人でシェア、料理さえ作ってくれればタダ。
    電話で即答した柊子は、引っ越す事に・・・。
    引越し先には、夏見の友達の松江銀子さんが迎えてくれた。
    気はいいけど変わり者のお嬢さん。
    この家の世帯主だった。
    引越し早々から、幽霊は出る・ごみ捨て場に死体が出たり・・なぜかトラブルが次々と・・・。
    郊外の平凡の住宅を舞台にちょっと変った隣人たちが起こす事件の連作短編小説です。

    ほんのり暖かいミステリーをぜひどうぞ♪

  • クリスマスになると必ず読みたくなるに違いない。男に振られ、家を出ることになった柊子。世間からズレまくっている銀子さんとの共同生活をするようになり、巻き起こる日常の謎を周りの人々も解いていく。ウィットに富んだ会話、転がる謎。若竹七海さんって初期からこんなにも完成度高いのかと驚く。葉村シリーズも大好きだがこれも控えめに言っても最高だ。

  • わたしこと岡村柊子は、友人・夏見の紹介で一軒家に住む松江銀子と同居することになる。その同居生活の間に起きた七つの出来事の連作短編だが、まず面白いと思ったのが探偵役が固定されていないこと。柊子だったり夏見だったり他の人物の時もある。連作で伏線を後に回収しながらラストへ向かうのも楽しいが、もちろん一つ一つが綺麗なミステリで若竹作品らしい苦さや痛みを伴ってくるところも最高。好みは全く気付かなかった伏線に唖然とし結末ににやりとした表題作。そして最後の柊子の言葉に大きく頷いた「空飛ぶマコト」。

  • 良かったです☆初読みの作家さんですが前々から興味がある作家さんでした。短編集ですが、なんというか…後味はあんまり良くはないなと個人的には思いました。はっきりとした解決がない章もあったいうか…読者の想像を掻き立てるというか。 でもキャラはちょっと好きです。銀子さんなんか、実際いたらものすごいイライラするだろうけど(笑)これ続編とかあったら読んでみたいなー。ちなみに銀子さんの父は船越英一郎さんで脳内再生されました。

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著者プロフィール

東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒。1991年、『ぼくのミステリな日常』でデビュー。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。その他の著書に『心のなかの冷たい何か』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない』などがある。コージーミステリーの第一人者として、その作品は高く評価されている。上質な作品を創出する作家だけに、いままで作品は少ないが、受賞以降、もっと執筆を増やすと宣言。若竹作品の魅力にはまった読者の期待に応えられる実力派作家。今後ブレイクを期待出来るミステリ作家のひとり。

「2014年 『製造迷夢 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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