鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087471717

作品紹介・あらすじ

娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた…。映画化され大ヒットした表題作「鉄道員」はじめ「ラブ・レター」「角筈にて」「うらぼんえ」「オリヲン座からの招待状」など、珠玉の短篇8作品を収録。日本中、150万人を感涙の渦に巻き込んだ空前のベストセラー作品集にあらたな「あとがき」を加えた。第117回直木賞を受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった
    第117回直木賞受賞作品
    「あなたに起こる やさしい奇蹟」
    をモチーフとした8編からなる短編集

    「鉄道員」
    映画にもなった物語
    ぽっぽやとして職務に忠実だった高倉健じゃなくて鉄道員がその死を迎える最後の夜に出会った、死んだ娘。その娘は小学生の姿で、そして高校生の姿で現れ、話をします。
    死んだ娘と気が付いた後の会話があたたかい
    これは、好きな物語

    「ラブ・レター」
    起訴猶予で釈放されたどうしようもない男と偽装結婚していた女が死亡。その女の葬式、遺骨を引き取るに行った男は、その女からのラブレターを受け取ります。
    その文面がとてもあたたかく、やさしい。
    男の心を溶かしていきます。
    これも好きな物語

    「悪魔」
    裕福な男の子の家に派遣された家庭教師。
    その家庭教師がきてから、その家はいろいろな不幸が..
    結局は..ということなのですが、この物語は好きではありません。

    「角筈にて」
    プロジェクトの失敗の責任を取らされて、海外へ左遷される会社員。
    壮行会の夜、角筈で見かけた父親。そこから思い出される過去。自分を捨てた父親の想いを受け取ります。
    これも暖かい
    これは好きな物語

    「伽羅」
    伽羅というブティックに服を卸売りする営業員の物語。
    その女主人はとても美しい
    ブラックな展開で、割と好き

    「うらぼんえ」
    幼いころ、父母を亡くし、祖父母に育てられたちえ子は夫の祖父の初盆のため、夫の田舎へ帰郷。しかしそこでは、夫の親族たちがちえ子に離婚を迫ります。
    そこへ、死んだはずのちえ子の祖父が現れちえ子を助けようとします。
    この想いに心打たれます。

    「ろくでなしのサンタ」
    起訴猶予で釈放された三太が送ったクリスマスプレゼントの物語

    「オリヲン座からの招待状」
    関係が終わっている夫婦の物語。あまり印象に残りませんでした(笑)

    ということで、「鉄道員」「ラブ・レター」「角筈にて」「うらぼんえ」の4作はとても好きな物語でした。

    お勧め

  • 「鉄道員」浅田次郎著

    2021.01.10 BS放送。


    映画をみずに原作から物語へ。
    時はJR民営化、廃線が決まった駅長さんの物語。
    汽車、乗客、街を愛した彼が最期にみるのは、
    幼く逝きし我が娘との再会であった。

    読了後の一句。
    「さいはてに 彼が見ゆる 想い出は
     今は亡きしの 愛娘けり」


    「ラブ・レター」浅田次郎著
    40過ぎごろつき退所日当日の物語。
    名義だけの嫁が亡くなり引き取ることに。彼女からの生前の手紙。
    「嫁にしてくれてありがとう。」
    しずくが頬を濡らしました。

    「会わずして 会えずついえし
     このひとへ
     慈しむかな 恋文胸に」

    #読書好きと繋がりたい

  • ずっと読みたいと思っていた鉄道屋、やっと読めました。
    映画化されていること、泣けること、直木賞受賞作品であることは知っていましたが、てっきり長編小説なのかと思いきや、表題を含む8編の短編集だったんですね。

    どの小説も、ひと昔も、ふた昔も前、昭和が舞台です。
    タクシーや映画館で煙草が吸えた頃。
    炭鉱業や織物工業が衰退していった頃。
    直接知っているわけではないけれど、祖父母や両親から聞いたことのある時代の話。

    表題作の鉄道屋も、そんな時代ならではのお話です。
    感動的な、そして映像化してもさぞ美しいだろうと思わせる小説でした。
    感動的なはずなのに、物語に入り込めず。

    男性にとっては、苦労しつつも、古き良き時代だったのかもしれないけれど、女性にとってはどうでしょうか。
    描かれる女性が、男性から見た”こうあってほしい女性像”であるように感じられて、それは昭和の価値観そのものなんだろうけれど、そこに反発したくなる自分がいました。

    昭和は昔のことながら遠すぎない地続きの時代なため、まるで違う世界の出来事として読むこともできず、この時代に生きていたらさぞ息苦しかっただろうと感じてしまった。いえ、私も昭和生まれなんですけどね。

    それくらいリアルに昭和を映し出した小説の数々で、著者の実体験も詰め込まれているというのも納得な短編集。読む立場によって印象は大きく変わりそうですね。

  • 「あなたに起こる やさしい奇蹟」を集めた短編集。
    わたしの心には、『うらぼんえ』がいちばん奇蹟を起こした。
    涙がとまらなかった。

    心細さで、折れそうな時。
    自分はなにも悪いことはしていない。
    でもたったひとりで、理不尽な出来事に立ち向かわなくっちゃいけないとき。

    たったひとりでいい。そばにいてくれたならば。。。

    泣かない。ぜったい泣かない。泣き顔を見られたら負けだ。
    呻き声を奥歯で噛み殺す。
    ちえ子は迎え火のかたわらに蹲る。
    そんな時に、二度と会えないはずの人の声が聞こえたら。
    「ちいこ」幼い頃の自分の呼び名で名前を呼ばれたら。

    盂蘭盆会。
    わたしは、お盆の時期いつもと違う空気のやさしいゆらぎを感じる。
    亡くなった大切な人たちと、もう一度出会えても決して不思議ではない日。
    そして、それは生きていくわたしたちが、一歩踏み出せる日なのかもしれない。

  • 浅田 次郎著
    浅田次郎さんの短編集作品を今更ながら 初めて読みました
    「あなたに起こる やさしい奇跡」
    後書きのところに書かれた言葉に私自身も得心した気分になれた 8つのオカルトぽぃ話しもあったけど それぞれに その時代にいた人びとの姿や心情が浮き上がって見える作品だった。静かで良作な作品だった。「ラブレター」やオリオン座からの招待状には涙した。
    私ごとではあるが、以前はずっと好きな作家が新刊を出すの度に買って読んでいたが(もちろん 好きな作家だしワクワクしながら 新刊を読むのを待っていたいところもある)
    ただ、新刊を買いあさって読んでると本の量が半端なく増えて 読んだからといってすぐに捨てられず、溜まっていき 本にかける金額も大きい。私は最近 中古本を読み始めた!
    ブクログで参考になり、また 中古本で知らなかった本に出会える喜びを感じた。リサイクルも出来るし 苦手だと思ってた本にも愛着を感じるようになってきた。
    若い時代に読んだ本と時が経って読んだ本は かなり印象も変わっていく でも 作家から伝わる心情は変わらず そこにあることを知る。古い本でも その中には自分に影響を与える大切なものが沢山ある 今後も新刊 中古本に限らず 沢山の本を読んでいけたらいいなぁと思います。ブクログで皆さんの感想を読むだけで 世界が広がり あれも読みたい これも読みたいって気分になります 感想読んでるだけで1冊の本に出会えたような気分にさえなれる時があります。
    浅田次郎さんの時代背景の中にその時代にいない自分の気配を感じる事が出来た気がします。

  • 昼休みに近くのブックオフに行って買った本。
    ブックオフに行くなんて随分久しぶりだった

    表題作は映画化されたという感動作(ということだけど、方言がキツすぎてあんまり泣けなかった。主人公の不器用さも現代では合わないのかもしれない。オチも分かりきってるし…)

    オリオン座は大人の邦ニューシネマパラダイスみたいな話。

    不思議な話もあったものの、基本はいい話ベース

    「奇跡の一巻」という後書きでしれたんだけど、
    「ラブ・レター」は実話という…おじさんの妄想話で女性が嫌いそうだと思ったが…
    一番グッときて憂いのある話だったので、
    実話と聞いてどことなく嬉しかった。

    感動話ばかりかと思いきやバラエティに富んだ短編集でした。

  • 勉強不足で短編集と知らず読み始めました。
    鉄道員は確か高倉健が映画で出ていたというぐらいしか前知識がなかった。
    うーん、私は短編は苦手なのかもしれません。
    いくつかあった短編それぞれを、何か物足りない感じで読み終えてしまいました。

  •  読み返すの何度目だろう。定期的に読み返したくなる本。電車で読んで泣いてしまいました。

    『鉄道員(ぽっぽや)』は高倉健さんで脳内再生。
     
    『ラブ・レター』『角筈にて』は20代の頃からのお気に入りで、今回は『伽羅』『うらぼんえ』も心に残りました。妻になり、母になって感じ方も変わったのかな?歳を取れば取るほど、色々な立場から物事を見れるし、知らなかった単語もいきなり実感できたりして楽しい。例えば「肌のくすみ」「ほてり」「物忘れ」とかもね。若い時はピンとこなかったなぁ。ベテランとしてステージがあがっていってます。

     浅田次郎さんの本を読むと、頑張ってるおじさん達が愛しく思えてきます。

  • 一晩経っても余韻がすごい…

    まさか短編集と思わず
    「あの映画化したやつだ」と手に取った作品

    まず鉄道員がこんなに短い作品であることに驚き。会話文で進むので、私には少し掴みづらかったけど、読み終わった後にじわじわくる。このあと、もう一度読んでみようと思う。

    そのほかの作品も全て印象深く、何度も思い出すことになりそう。あとがきで気になって調べたら、浅田さんの経験がかなり反映されている作品たちなのだなと納得。

    私はうらぼんえと悪魔が好き、というかかなり印象に残りました。

  • 短編集
    素朴な人々の人生の話が泣ける
    読む人の年齢や人生経験によって心に沁みる作品が異なると後書きにあるが、その通りだと思う
    13歳に読んだ時と29歳に読んだ時ではどちらも泣けたが感じるポイントや読後感は違うように思う
    今後の人生でも何度も読み返したい作品

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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