シュガーレス・ラヴ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.41
  • (115)
  • (198)
  • (562)
  • (33)
  • (8)
本棚登録 : 1968
感想 : 222
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087472042

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • たまにドロドロしたものを読みたくなる時。イメー手に取ってしまう山本さんの作品。訃報ニュースを知りとてもショックでした。

  • タイトルに「ラヴ」とあるので、てっきり恋愛小説かなと思って手に取りました。
    たしかに恋愛要素のある物語もありましたが、全編に通じていたのは1990年代の男女が抱える“病み”の短編小説だということでした。

    本書が単行本として刊行されたのが1997年ということで、読んでいくと確かに90年代の空気感、価値観がある物語ばかりで懐かしくなりました。
    携帯をひとり1台もつ時代ではなかったからこそ生まれた“病み”だったり(「ねむらぬテレフォン〜睡眠障害〜」)、セクハラ通り越して性暴力だろこれはみたいな上司がいたり…(「月も見ていない〜生理痛」)
    その一方で2022年の今にも通じるような、ヒリヒリとした生き方からくる“病み”の物語もありました。(「シュガーレス・ラヴ〜味覚異常」)

    2022年からみたら、1990年代は確かに過去だけれど、そこに生きていた人が抱える“病み”を知ることで、いつの世の人間もその時を生き抜くために、ときには手段を選ばず必死に進んでいたんだなあ…と思えました。

  • ストレスという言葉で表現するのは安易ですが、我慢し続けると心や体を病んでしまう。
    体は正直です。
    自分が我慢すればいいと思っても、そこには必ず限界がくる。

    恋人からの電話を待ち続けて「睡眠障害」になってしまったり、家庭の不和から「アトピー性皮膚炎」を発症したり、不安から逃れるために「アルコール依存症」になったり、大病を患うという話じゃなくて、とても身近だからこそ明日は我が身に思えてドキッとする。
    現実はドラマのようにはいかなくて、目を背けても何も変わらない。
    疾患は受け入れるしかないし、向き合うしかない。

    個人的には「アトピー性皮膚炎」の『ご清潔な不倫』と「突発性難聴」の『いるか療法』が好きでした。

  • この世は知らないことだらけ。
    大御所ではありますが、はじめましての作家さんで読みやすそうな短編集から。

    しかしまあ、軽めの女子小説だろうなんてたかを括ってた自分が恥ずかしいくらいのクオリティで、タイトルと裏腹に味わい深い。
    お見それいたしました。。
    男もつらいけど、女もつらいのよという矢野顕子様の名曲に通ずる一品。

  • いろいろな病気に葛藤しながら現代社会に生きる女性の話。
    共感できる症状もあれば、知らなかった病気もあって、この本を読んでから周りにいる女性に対してより労りの気持ちを持とうと思いました。

  • どろどろとした後味の悪さがある本でした。
    自分は気持ちが沈んでいる時に、暗い本を読みたくなるタイプなので、明るい気持ちの今ではなかったかもしれないです。
    きっとこれが合う重苦しい気分の時があるはず。

  • 久しぶりの山本文緒作品。よかった。300ページにも満たないのに、この満足感。すごいなあ。解説の瀧さんもよかった。もう一度読もう。
    2017.11.07

  • 色々な病のある人の話。
    むしろ病がある人のほうが繊細で精神が高潔なのかもしれないとこの本を読んで思ったしまった。

    正常ってことに何の価値があるのかわからなくなる、魅力的な病のある主人公達。

    中でも自律神経失調症の話が好きでした

  • 女性は我慢していることを溜め込みがちで、自分で申告するより先に体に異変が生じる。それが病気の症状となり表れる。
    本当によーくわかる。
    この本の出版はかなり前だが、今も変わらないことに幻滅する。特にPMSという言葉が定着したのは最近だと思うが昔から女性の当たり前でありわかってもらえないもののトップなのだろう。更年期もそうだと思うが、どちらも個人差が大きく外から見えないので理解されにくい。
    少しずつでも、個人差の多い体調不良を認める社会になってほしいと思う。

  • 小説内〈秤の上の小さな子供〉で美波の人となり、そして「- 皆愛されたがってるの。」の発言に頭をガーンと殴られた。
    柊子との対比がそれをより際立たせる。

    愛されたくて、
    それが性なのか、本書の女たちは本音を飲み込んで、我慢して我慢して体を壊す。

    思い当たる節がありすぎて絶望した。
    柊子に自分を重ねて、柊子と一緒に、美波になんていうか、、、屈した。。

    解説で山本文緒先生が「生きていくことの鈍痛を描きたい」とインタビューで仰っていたことが挙げられている。

    私がここ最近ずーっと山本文緒先生をなぜか読み続けている理由がやっとわかった。
    自分が言語化できない日々の痛みをなぞらえることができるから読んじゃうんだね、、。

    まんまと策略にはまり、快感を貪っています。
    やめられまへん。

全222件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山本文緒の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×