- Amazon.co.jp ・本 (864ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087474398
作品紹介・あらすじ
「白夜行」は今やミステリー小説の大家、東野圭吾の長編小説です。
質屋殺しの被害者の息子と容疑者の娘の二人が数奇な運命で結びつきます。もともと連作の短編として執筆された作品が単行本では長編として再構成されており、短編小説ならではの小気味よさと長編小説ならではのダイナミズムを併せ持つ壮大な小説となっています。
感想・レビュー・書評
-
【感想】
先日、TVドラマ版の「白夜行」を視聴し終えましたので、すぐさま小説も読み直しました。
初めて読んでから10回くらい読み直していますが、さすがは名作!何度読んでも飽きない面白さがあります。
(ただ、もし願いが叶うならば、この小説の全てを完全に記憶から消し去って、再度ゼロの状態でこの作品を読んでみたいものです・・・)
先日ドラマ版のReviewを書きましたが、ドラマ版は桐原亮司・唐沢雪穂の視点で物語が進められているモノです。
対して原作であるこの小説版は、主人公2人の視点や感情に関する描写はほぼ一切排除され、出来事・事件そしてそれに絡んだ関係者たちの視点ベースで物語は進められていきます。
そこにドラマで描かれていたような主人公2人の思考や苦悩・葛藤は一切書かれていませんので、小説だけを見れば桐原亮司・唐沢雪穂はかなり無機質で冷酷な人間である風に思ってしまいます。
そう言うと、「ドラマで脚色されてそう描かれていただけで、本来この2人は無機質で冷酷な人間なのだ」という意見も聞こえてきそうなモノですが、、、
ただ、本小説の作中随所に見られた2人の表現・台詞などから、彼らは決してナチュラルボーンな悪人ではなく、家庭の環境や幼少の頃の経験が人格形成に大いに関わったことが垣間見られました。
また、事件を追う刑事の笹垣は、作中で2人の事を「鉄砲エビとハゼのような相利共生」と表現していました。
確かにこの表現は言い得て妙だと思いますが、2人の間に存在したのは、果たして「利」だけなのでしょうか?
否、2人の間には決して「利」だけではないエモーショナルな関係もあったのではないかと、個人的に思います。
そんな2人の関係性を示唆する唐沢雪穂の台詞がコチラ。
終盤、新たにOPENする店に不安を抱えるスタッフに対し、雪穂が投げかけた言葉です。
「あたしには太陽なんかなかった。でも暗くはなかった、太陽に代わるものがあったから。あたしはその光によって、夜を昼だと思って生きてくることができたの」
この台詞こそが、この作品において唯一、雪穂が打算なく本音を打ち明けたシーンじゃないかなと、読んでいて思いました。
最後に・・・
この作品を深く味わう為にも、ドラマ版のReviewでも触れましたが、小説とTVドラマの2作品を鑑賞する事をオススメします。
(決して僕はTV局のまわし者ではありません!笑)
「白夜行」という作品は、ドラマと小説の2作を見終わって初めて、完結する作品です。
白夜行ファンでお時間がある方・・・いやない方は頑張って時間を捻出してでも、視る価値がある作品です!!
【あらすじ】
愛することは「罪」なのか。それとも愛されることが「罪」なのか。
1973年、大阪の廃墟ビルで質屋を経営する男が一人殺された。
容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りしてしまう。
被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂――
暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んでいくことになるのだが、二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪の形跡。
しかし、何も「証拠」はない。
そして十九年の歳月が流れ……。
伏線が幾重にも張り巡らされた緻密なストーリー。
壮大なスケールで描かれた、ミステリー史に燦然と輝く大人気作家の記念碑的傑作。200万部突破!
【メモ】
p25
笹垣がドキリとしたのは、少年が階段を降りる音が聞こえなかったからではなかった。
少年と目が合った瞬間、その目の奥に潜む暗さに、衝撃を受けたのだ。
p75
西本文代は否認し続けた。彼女の姿勢には、全く揺るぎがなかった。
寺崎の死を知って相当なショックを受けているはずなのに、その態度からは迷いが感じられなかった。
何かを間違うてる。
俺らは何か、全く違う道に入り込んでしまってるぞ。
取調べを横で聞きながら笹垣は思った。
p204
「あの、俺」唾を飲み込んでから、友彦はいった。
「俺、何でもする。おまえのためやったら、どんなことでも」
桐原は視線を友彦に戻した。その顔にいつもの冷たい笑みが戻った。
「当然や」
そして彼は少し濁った青空を仰ぎ見た。
p262
「選ばれた人間がソシアルダンスを習うんじゃない。いざという時にダンスの一つぐらい踊れるような人間が選ばれていくんだ」
p316
「落ちてるものを拾うのと置き引きと、どう違う?金の入ったカバンを、ぼんやり置いとくほうが悪いんと違うか。この世は隙を見せたほうが負けや」
このセリフを聞くたびに、戦慄と共に、ぞくぞくするような快感も友彦は覚えるのだった。
p423
顔全体がぐにゃりと歪んだかと思うと、次にはコンクリートで作ったマスクのように固まった。その顔には暗い影が落ちていた。
目にはどんな光も宿らず、唇はこの世の全てを拒絶していた。
ところが桐原のこの変化は、ほんの一瞬のことだった。次の瞬間には、彼はなんと笑顔を見せていたのだ。
「松浦さんやないか」
「久しぶりやったなあ、元気にしてるか」
p436
大掃除をした後、友彦は桐原や弘恵とささやかな乾杯をした。
来年に向けての抱負を弘恵から訊かれ、桐原の答えは、「昼間を歩きたい」というものだった。
「俺の人生は、白夜の中を歩いてるようなもんやからな」
p539
「彼女と深く関わった人間は」篠塚は声を落として言った。「皆何らかの形で不幸な目に遭っているんです」
「僕もまた、不幸な目に遭った一人ということになります。」
p614
「テッポウエビはね、穴を掘ってその中で生活するらしいです。ところがその穴に居候しとるやつがおる。魚のハゼです。そのかわりにハゼは穴の入り口で見張りをしとって、外敵が近づいたら尾ひれを動かして中のテッポウエビに知らせるそうです。見事なコンビネーションや。相利共生ゆうらしいですな」
「ちょっと待ってください」今枝は小さく左手を出した。「唐沢雪穂さんには、そんなふうに共生している男がいるとおっしゃるんですか?」
p739
「あの時に摘み取っておくべき芽があったんや。それをほったらかしにしておいたから、芽はどんどん成長してしもた。成長して、花を咲かせてしまいよった。しかも悪い花を」
笹垣は口元を歪め、酒を流し込んだ。
「あの事件でわしらがしくじったばっかりに、結果的に、関係のない人間を何人も不幸にしたような気がするんや」
p815
「あたしもね、あなたと同じ経験があるの。ううん、もっとひどい経験」
美佳は驚いて声を出そうとした。その唇に、雪穂が人差し指を当てた。
「今の美佳さんよりも、もっと若い頃よ。まだ本当に子供。でも子供だからといって、悪魔に襲われないとも限らないのよね。しかも悪魔は一匹じゃなかった」
p826
「あたしはね」と雪穂は続けた。「太陽の下を生きたことなんかないの」
「まさか」夏美は笑った。「社長こそ、太陽がいっぱいじゃないですか」
だが雪穂は首を振った。
「あたしの上には太陽なんかなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。太陽ほど明るくはないけれど、あたしには十分だった。あたしはその光によって、夜を昼だと思って生きてくることができたの」
「あたしには最初から太陽なんてなかった。だから失う恐怖もないの」 -
東野さんの書いたミステリー小説の屈指の名作。800ページ以上あるこの本、内容も重く濃い。だが、全く飽きることなく、もっと長かったとしても読み続けられる。読み進めるにつれて、結末が気になってスラスラ進む。主人公二人の直接的な描写は全然ないのに、東野さんの素晴らしい世界観のおかげか、あっという間に読み終わった。
主人公の二人が繋がりそうで繋がらず白夜を進む。先が気になってハラハラしてワクワクするが、読み終わった時はなんとも言えない悲しい気持ちで心が痛んだ。再読したくてしたくない、複雑な気持ち。二人には幸せになって欲しかった。だが、東野さんらしい世界観でタイトルもピッタリで全く分厚さを感じさせない本だった。とても奥が深く、面白さも楽しさもあるこの本は東野さんの圧倒的な傑作だと思う。
-
H29.9.24 読了。
・東野圭吾の長編小説。まさかの結末にすっきりしない気持ちが残る。事件関係者の中の小学生の男女が30歳ぐらいになるまでを時代背景とともに描いており、小説の中に出てくる黒電話→ポケベル→携帯電話の変遷やガラスのケースに収められた洋物のタバコやブランドスーツやブランドライターなど昭和を思わせる物に懐かしさも感じた。
・小説自体は、事件につながる内容が所々にちりばめられているも真相は…。歯がゆい思いをした。 -
登場人物が多いことに戸惑うかもしれないが、読み進めていくうちに掴めてくるので心配無用。かなり分厚い文庫本だが、おもしろいのでスラスラ読める。
1つの事件の裏に隠されてる真実が見え隠れする。掴めそうで掴めない。狂った悲劇の連鎖、その結末は読み手の予想を裏切ったようで、完全に予想通りだったりもする。でも本当は何があったのか。それは一体誰の秘密だったのだろうか。19年間の物語。
以下、ネタバレ有り(備忘録)。
桐原亮司と雪穂の主観が描かれないというギミックが、物語をミステリアスにしていることは明らかだ。その為、最後まで本当のことがわからないまま終わったのが粋だな、と感じた。
幼い頃の二人に何があったのか、笹垣刑事や今枝探偵の踏み込んだ調査は、どこまで真実に近づいていたのだろうかと考えることになる。
桐原と雪穂の本当の目的って何だったんだろうか。過去との決別もあっただろうし、復讐、独占、償いにも感じた。単純にサイコパスであったとしても、二人が同じ動機で動いていたのかも定かじゃない。
とにかく、桐原が死んだことで、真実は闇の中だ。
やってくれたな~(笑)良い感じ。
読了。 -
忘れられない読書体験。じわじわと恐ろしさやショックを感じつつ、それでも2人がなんとか救われないかと、祈るようにページをめくり続けた。だからこそ最後は切ない、哀しく、やりきれない。
自分を陰だという亮司、その亮司を太陽に代わる存在だという雪穂、そしてラストのあの言葉。2人の生き方は、善悪を超えて、2人の信念で強い覚悟をもって選びとってきたように感じる。過去を隠すとかひきずるとかではなく。そう考えると、2人を怖いとか可哀想とは思えず、ただ圧倒される。
雪穂が、亮司にだけは情を持っていたのではないか。2人がお互いにだけは、弱さを見せられて、少しでも安心できていたのではないか。どうか少しでも、そうあってほしいと願う。 -
東野圭吾さんの代表作のひとつを読了。
864ページによる大作だけど長さを感じる事はなく。
さすがに数日かけてだけど夢中で読んでいました。
時代は僕が生まれる少し前。オイルショック前の昭和の時代。
そこで不幸に見舞われた少年少女の20年程の物語。
場面場面新しい登場人物が出てくるけど、そこでの成長した少年少女との繋がり。
彼らの心情は描かれる事はなく。結局は謎のまま。
読了後暗い気持ちになりますけど没頭出来る作品でした。
映像化もされてるようで。機会見つけて見てみたいと思います。-
この作品、僕もとても大好きです!
ちなみに映像化でしたら、長編ですが山田孝之&綾瀬はるか主演のTVドラマが超超超オススメです!!この作品、僕もとても大好きです!
ちなみに映像化でしたら、長編ですが山田孝之&綾瀬はるか主演のTVドラマが超超超オススメです!!2021/06/13 -
きのPさん
コメントありがとうございます!
実は映像化も興味あります。やはり良かったんですね。
僕も時間見つけて見てみようと思います!きのPさん
コメントありがとうございます!
実は映像化も興味あります。やはり良かったんですね。
僕も時間見つけて見てみようと思います!2021/06/15
-
-
何て言えば良いんだろう。
読み終わって思ったことは、
なぜ今まで読まずにこなかったのかということ。
どんどん引き込まれていった。
雪穂の最後のセリフが2人の絆を
物語っていて、私は好きな終わり方でした。 -
一時期、東野圭吾しか読んでなかった。
読んで、読んで
あまりに昔で今更レビューは書けない。
氏の作品、100冊以上はあろうか?
書店で平積みをほとんど占める、全部読んだ。
-
854ページの大作で、東野圭吾を(おそらく)読んだことがない私が読み切れるだろうか…と不安でしたが、全くの杞憂でした。
序盤で引き込まれ、年末年始であっという間に読み切ってしまいました。
物語が進むにつれ募っていく、雪穂という女性への不信感。
明らかになる亮司と雪穂の壮絶な過去。
最後までどんな展開になるか分からずに、気がつくと最後まで読んでいました。
2人の心情は描かれないので、2人の外見や性格は常に第三者から見る俯瞰的な印象に終始していますが、それにしても、その人となりを描くのが本当に上手いです。
雪穂のような女性がいたら、私も惹きつけられてしまうだろうと思います。
著者プロフィール
東野圭吾の作品






この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。






私もこの前、白夜行を読みましたがとても物語に引き込まれました。
小説の方には主人公の直接的な描写が書かれてないので、ドラマも見て...
私もこの前、白夜行を読みましたがとても物語に引き込まれました。
小説の方には主人公の直接的な描写が書かれてないので、ドラマも見てみたいです。
コメント有難うございます!
先日レビュー書きましたが、映像版ならTVドラマの白夜行がマジでオススメです!
全11話とかなり...
コメント有難うございます!
先日レビュー書きましたが、映像版ならTVドラマの白夜行がマジでオススメです!
全11話とかなり長いですが、面白さは保証します!!
是非ご鑑賞ください(^^)