王妃の離婚 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087474435

作品紹介・あらすじ

1498年フランス。国王が王妃に対して離婚裁判を起こした。田舎弁護士フランソワは、その不正な裁判に義憤にかられ、孤立無援の王妃の弁護を引き受ける……。第121回直木賞受賞作。 (解説/池上冬樹)

感想・レビュー・書評

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  • これは面白かった!!

    佐藤賢一氏の小説は初読み。歴史書である新書『テンプル騎士団』が面白かったので読んでみました。

    ヨーロッパの歴史を舞台にしたエンタメ小説。
    ちょっと下ネタ満載なのでR15指定してもいいくらいですね。
    でも面白い。

    この時代ってキリスト教がすべてにおいて優先されるので裁判も教会が仕切っていたのですね。勉強になる。

    いわゆる離婚裁判なのですが、この当時のキリスト教では離婚は禁じられています。
    ではどのように離婚を?となりますが、そこは抜け道があります。

    その結婚は最初から無効だったのだ!

    と唱えるわけです!

    ・・・ってそりゃ詭弁だろ!

    いろいろとツッコミどころ満載の当時の制度ですが、いやはや、昔の人と言えど、やはり同じ人間。同じ悩みがあるのですなぁ。

    まあ、すごく面白かったので、ヨーロッパの歴史に興味がある人はぜひ一読を。

  • 主人公フランソワのかつての恋人、美しく勝ち気なベリンダ。
    「醜女」と嘲笑われ、国王から離婚訴訟を起こされるジャンヌ。
    アンボワーズの逞しいおかみさんたち。
    物語に登場する女たちは凛としていて、とてもエネルギッシュ。内面から溢れ出るのは美しさ。
    女たちがとても魅力的に描かれている物語だった。

    主人公は、若かりし頃に挫折を味わった男、弁護士のフランソワ。
    ある因縁の相手でありながらも、被告である王妃ジャンヌの勝ち目のない弁護を引き受ける。
    やさぐれていた男が、もう一度立ち上がり困難にぶつかっていく姿。過去の自分を正面から見据えると同時に、王妃に対しての感情も変化していく姿。王道的なストーリー展開なのかもしれないけれど、それが心地よいほど面白かった。
    萎れた花のようだったフランソワが、時には暗殺未遂にあいながらも、国王という巨大な敵に戦いを挑み、不利な状況を打破していくうちに、いきいきと自信の満ち溢れた花を咲かせていく。そんな姿に格好いいと思いながら、現状に満足している自分に、それでいいのかとお尻を叩きたくなる。

    実のところ、第一印象とかなり印象が変わった男が私には一人いた。
    暴君ルイ十一世の近衛隊長、オーエン。
    彼は最後まで「ルイ王の犬」としての道を貫き通す。その姿に、最初はただの暴力男だと思っていた。けれど、どれだけ自分の仕えた王が悪者とされようとも、一度忠誠を誓ったのなら最後まで貫き通す姿に、いつの間にかオーエンの登場を心待ちにしている自分がいた。
    王を守って死ねずに生きた近衛兵が、その娘を守ることで、やっと本懐を遂げられた。でも、私はフランソワやジャンヌとともに、とても、とても悲しかった。

  • 落ちぶれた天才が、圧倒的に不利な状況を、法廷での華々しい論争、国際政治と世論を用いた盤外戦術で、ひっくり返すところが非常に面白かった。ただ、最後の結末は、物語の最初の方でわかるので、星4つ。

  • スカッとする読み心地で爽快でした。
    西洋史について詳しくないので、ルイ12世とかシャルル8世とか言われても、歴史で習ったかも?…くらいの認識でしたが、全然問題なく読めました。むしろ丁寧に時代背景も説明してくれて興味深かったです。

    本書は王と王妃の離婚裁判についてですが、そもそも、キリスト教では離婚っていうのは許されていないんですよね。でも、どうしても結婚したけどうまくいかない…別れたい…ということはある。そこで登場するのが「結婚の無効取消」。つまり、はじめからなかったことにする、というもの。随分突飛な話だと最初は少し笑えましたが、離婚が許されない以上やむを得ないんでしょうね。

    さて、王妃には伝説の弁護士がついて裁判を戦うわけですが、こんな話をリーガル・スリラーというようですね。私は弁が立たないので、言葉を巧みに操る人に憧れます。さすがは弁護士。ただ、言い負かせば勝ちというわけではないし、裁判に勝つことがすなわち依頼人の幸せに直結するかというと、必ずしもそうではないのが深いところですよね。

    特に男と女の関係について、別れるにあたって「二人だけでは感情的になってしまう数々の問題を整理する」なんていう場合に裁判は有効かもしれないけど、第三者が別れないようにもっていく、なんてことが裁判でできたとしても、残念ながら上手くいく見込みは低いですよね。それでも、諦めきれない女性の気持ちがわかるから、それが切ない。

    そして何より切ないのが、べリンダの話。強がりで奔放なべリンダ、すごく好きでした。「結婚」についても様々な形があって、結婚とは・・・というものについて考えさせられました。結婚を通して家族になるのも素敵だし、結婚をしないでずっと男と女の関係でいるのも潔い。どちらがいいというものではないけれど、大切な人とずっと一緒にいられたらそれはすごく幸せなことなんだろうなぁとしみじみ思いました。

    どこまでがノンフィクションかわかりませんが、読み応えのある満足な1冊でした。

  • 男性の観点から描かれる、ちょっとデフォルメされた女性像が若干引っかかるところがなくも無いけど面白かった。
    あとがき読んで佐藤賢一さん作品読破したるでえええって気持ちがわいた。笑

  • 王妃の離婚裁判に関わらざるをえなくなった弁護士。彼は弁護をしながら自らの過去と向き合うことになっていく。相手を徹底的ににやり込めた時に王は弁護士に何をするのか。若き日の悲恋が最後に報われる。カノン法がよくわからなくても、面白く最後まで読める。直木賞受賞作。

  • この手があったか、中世の法廷世界でも圧倒的力量で読ませてしまうのはさすが。

  • どうしようもないフランス王、ルイ十二世から離婚裁判をおこされた“醜女”ジャンヌ王妃の実話をベースにした物語。絶対不利な状況で弁護人に雇われたのは、舌鋒鋭いながら過去にトラウマを持つフランソワ。細かな心情を執拗に描き出す佐藤賢一氏らしい作品は、ハマらないと読むのが辛くなるが、この作品はどんどこ読みたくなる展開に、執拗な描写が見事にハマって、調子良く読み進めることができた。ラストの仕掛けもわざとらしくなくドラマチックで、ハリウッドで映画化したら面白そうと思ってしまった。

  • フランス歴史法廷物は直木賞でなければ読まなかったかも‥‥素直に面白くて逆にびっくりした。

  • 裁判モノとしての面白さもあるが、男女の一言ではあらわせない心や在り方について考える一冊でもある。
    結婚とは何だろう、そこに何を求めるんだろう。何せ一生をかけてまで共にあろうというのだから。
    まあ今となっては、そこまで深刻に考えることでもないのかもしれないけどね。

    いかにも男性の書いた作品だという感がした。
    女性の肉感的にして瑞々しい魅力がふんだんに描かれている。女性が女を書くとこうはならない。もっとヒステリックで、不快で、神経質になる。
    異性からみた女性の魅力はこうなんだな~と思った。というか、理想の女性像なんだろうか。

    当の裁判はやったかやらないか、という下世話な議題を延々と繰り返しているのだが、そうでもないと離婚できないご時世だったのね。
    王妃が簡単に離婚できてもそれはそれで問題かもしれないけどね。
    痛快な部分もあればスリリングな部分もあり、最後には男女についての一つの答えのようなものもあり、色んな楽しみ方のできる一冊。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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