エンジェル (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087474763

作品紹介・あらすじ

投資会社のオーナー掛井純一は、何者かに殺され、幽霊となって甦った。死の直前の二年分の記憶を失っていた彼は、真相を探るため、ある新作映画への不可解な金の流れを追いはじめる。映画界の巨匠と敏腕プロデューサー、彼らを裏で操る謎の男たち。そして、一目で魅せられた女優との意外な過去。複雑に交錯する線が一本につながった時、死者の「生」を賭けた、究極の選択が待っていた-。

感想・レビュー・書評

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  • 死体目線で進む話。何故自分が殺されたのか、その訳と空白の二年間の謎。
    死んだように生きていた主人公純一が、亡き後の方が生き生きしていて良かった。

  • プロローグのただならぬ空気感から、好奇心を刺激され期待しながら読み進めたが、霊魂生活の中盤辺りで、先の展開が読めて少し冷めてしまった。
    最後のオチも自分には、あまり刺さらなかった。

  • SF要素のあるお話。
    細部まで設定がちゃんとしててよく考えるなあと感心させられました。
    でも複雑すぎて組織事情とか理解はしてない笑
    社会の闇を書いてるのがまず学びになる。
    社長の息子というちょっと憧れる、自分にはない立場の人の苦労を書いているのが平凡な自分を日頃恨み、いいところに生まれた人を羨ましむ気持ちを見直させてくれた。
    でもやっぱりそれでも平凡は平凡な生活しかできないんだなあ、なんか楽しいことないかなあとも思う。
    だからこういう自分じゃ経験し得ないお話好きです。
    あと、石田衣良さんらしい、東京の描き方がやっぱり好きです。かなり馴染みのあるところが舞台として出てきて嬉しかったです。

  • こちらも遥か前から所有していたものの感想書いてなかったのね〜再読!です。

    自分が殺され埋められるところを幽霊として目撃してしまった青年実業家、またの名をエンジェル!(何がいってんだ)
    幽霊となって自分の死の真相を解明していく。なおかつ、愛する人も守る!!!みたいな話です。

    サラッと読むのにページ数も内容も最適。
    新幹線で移動中とかいいかも。(適当)
    ちゃん展開もあって普通に読んでいて面白いです。序盤は特にどう展開するんだろうってワクワクしながら読んだもの。
    ところどころパンチが足りないものの、やっぱりこの読みやすさというかすんなりと文章が染み込む感じは、ああ、石田衣良読んでるなぁと実感。
    私の中では石田衣良も独自の雰囲気を持つ作家さんです。

    さて、気になった点…というか、心のなかでツッコみながら読んじゃった点をいくつか。笑

    主人公の青年実業家・純一くん。
    ちょっと簡単に熱くなりすぎるというか、しんどいはずの音声化視覚化すぐしちゃいがち。笑
    安易に使わないようにとか言いながら、視覚化しちゃうし電気も操っちゃう。
    前半割と無気力な人の印象だったけど、何なの!?熱いじゃん!
    ああ、これが生きてる・死にながら生きてるって実感なのか…(作中にあるやつ)

    ヤクザな宮田さん。
    最終的に事故にあい車から這い出して絶対許さん…!みたいなこと言ってるけど、その後ないんかーい!
    ここでもう一展開くらい来るかと思った。まぁ年貢の納め時ってことですよ。宮田さん。





    @手持ち本

  • 面白かった!
    こーいう感じって
    珍しいんじゃないかなぁ
    読み始めからストーリーの中に
    引き込まれてしまいました。
    どーいう展開になるのか
    気になって仕方がなかったです。

  • 幽霊になったら仕事もせずに好きなところに好きなだけ居て好きな事ばかりやれるのは良いなぁと思った。



    主人公の純一は謎の男二人組に自分の死体が埋められているのを見ていた!
    という事で主人公は幽霊という設定!因みに純一には死ぬ前の2年間の記憶が無い。

    自分が何故死んでしまったのか?この謎を解くために幽霊は幽霊なりの能力を使って真相を探っていく。

    有名映画監督の作る映画と無名の美人女優、ゲームへの投資と主人公の過去などが複雑に話に絡み合う。

  • 幽霊になった純一が過去をたどる。過去を見る。
    石田衣良作品の中で、ミステリー小説といえる作品で、犯人探しの旅に引き込まれていきました。
    本当のことろは、単純な犯人探しではなく、人は孤独ではない。愛があるのだというところだと思います。
    ジワリと伝わる思い。
    幽霊目線はリアルの世界ではないけど、どこかに現実を感ずる心情が描かれていて飽きのこないすらすらと読める作品。

  • 過去の読本。

    石田衣良の初読み。
    やっていることは、映画「ゴースト~ニューヨークの幻」の焼き直しといった内容であるが、ちゃんと新鮮に楽しむことができた。

    前半のかなりの枚数を割いての“フラッシュバック”が冗長で退屈した、と、この本を紹介してくれた友人は語っていたが、自分にはそうではなかった。

    今で言うなら“石田さんらしい”と感じられるあの独特の文体が、当時の自分にはとても新鮮で、かなり引き込まれて読んだという記憶が残っている。

    物語としての印象は、強く残っているわけではないが、大好きなシリーズ“IWGP”に出会うきっかけをくれた作品なので、思い入れは深い。

  • 自分が殺されたところから話が始まる。
    そして、フラッシュバックする主人公・掛井純一の人生。
    なのに直近二年の記憶だけが戻らない。

    死んでしまった主人公は、きっと見事復讐を果すことだろう。
    と思いながら読んでいたけれど、この主人公はまず映画や音楽を楽しむ。
    何しろただで劇場に入り込むことができるのだから、見放題聞き放題なのだ。

    そして自分に何ができるのかを学び、その特技を生かすための鍛錬を怠らない。
    純一の特性は電気を操ること。
    よし、ここから復讐劇の始まりだ。

    と思ったが、彼の興味は死なねばならなかった真相の追求と、一目惚れした彼女の見守り。

    復讐するのが一番簡単なのよ。
    ドラマチックにスリリングに手に汗握らせて、最後にスカッと終われる。

    だけど石田衣良は簡単に話を終わらせはしない。
    自分を殺したと思われる奴らに対してでさえ、命を奪い返してやろうなんて思わない。

    正直甘いな、と思わざるを得ない。
    だって友達とメールでやりとりした時に、大きなヒントがあったのにスルーだよ。
    死ぬに至った原因も、やっぱり言ってはいけない人に言ってはいけないことを言ってしまったから。
    窮鼠は猫をかむのよ。

    甘くて青くて、だけど人として誠実に生きている(いや、死んでいるのだが)主人公の生きていた頃の人生は、空しくて切ない。
    何のために生まれてきたのだろう。
    そして…ああ、ネタバレになるなあ。
    記憶はどうなるのだろう?
    まさかそのままってことはないよね。

  • 今日は幽霊が主人公の物語。


    『エンジェル』 石田衣良 (集英社文庫)


    主人公・掛井純一は、殺されて埋められる自分の姿を目撃し、自分が幽霊になったことを知る。
    しかも、彼は死ぬ直前二年分の記憶を失っていた。
    自分は誰に殺されたのか。
    なぜ殺されなければならなかったのか。
    純一は、自分の死と空白の二年間の真相を探るべく調査を開始する。

    優しすぎるなー。
    主人公が。
    でもそれが全然嫌な感じじゃない。
    幽霊になってからの純一の頑張りには心を動かされる。

    彼がこれまでの人生を再体験する「フラッシュバック」の章は圧巻だ。
    なんと母胎の記憶からそれは始まる。
    生まれてくる赤ん坊に、今の純一の意識が入り込んだ誕生の瞬間は、あまりにもリアルで怖い。

    彼は光の渦に飲み込まれながら、あまり幸せではなかった数々の場面を追体験していく。
    父親に10億で売られた大学時代。ゲーム制作会社でのアルバイト。
    その後、ベンチャー企業に資金を援助する投資会社「エンジェルファンド」を設立する。

    ……と、フラッシュバックは非情にもそこで終わる。
    二年間の記憶を積み残したまま。

    ああ、何だかやりきれないなぁと私は思った。
    とても幸せには見えない純一の短い人生をともになぞっていくうちに、やはり、“殺される”というゴールがあまりにも理不尽であるように思えてくるのだ。

    純一はパソコンのデータを調べるうちに、ある映画に自分が個人投資家としては高額すぎる投資をしていたことを知る。
    自分を埋めた二人組がその件に関わっていたことや、その時付き合っていた女性がいたことが分かってくるにつれ、謎は混迷を深めてくる。
    ミステリー、サスペンス、バイオレンス、そしてゴーストものとしてのファンタジーの色合いも濃くなり、どんどん物語から目が離せなくなる。

    生きていた時の純一から感じられたのは、諦観というのとも少し違うマイナスの諦めだったが、死後の純一は精力的に動き、感情を表に出し、とても生き生きとしているように思える。
    読んでいてこちらまで楽しくなってくる。
    瞬間移動で瞬時にどこへでも行けるし、張り込みも、刑事や探偵のように本人に見つからないようにこっそりやる必要はなく、堂々と隣に座って話を聞いていることもできるのだ。

    しかし、幽霊だからといってすべてに万能なわけではなく、例えば彼の“電気使い”の能力(ポルターガイスト?)とか、音声化や視覚化(化けて出るっていうやつですか)なんかも、血のにじむような練習のたまものである、というのが面白い。
    世の中の幽霊がみんなそんな努力をしているのかと思うと、幽霊に親しみを感じます。
    全然怖くないし(笑)

    物語の終盤、明らかになる意外な人物の事件との関わり、そして悲しい裏切り。
    もっと怒ってもいいと思うんだけどね。
    なぜか純一は、直接自分に手を下した張本人にでさえ優しい。
    よく考えるとこの小説、どうしようもない極悪人がいないんだよね。
    そういうところがちょっと甘さになって、ライトな感じになってしまっているのは否めないけど、先にも書いたようにそれが全然嫌じゃない。

    自ら二年間の記憶を消し去らなければならなかった悲しい理由と、ラストの衝撃の決断。

    ああ…
    ハッピーエンドかどうかは、正直私には分からない。
    けれども、“死者としての生”を精一杯生きた純一が私は好きだ。
    まさにエンジェル。
    その優しさは、人生をまっとうした人の崇高さだと思う。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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