よもつひらさか (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087474909

感想・レビュー・書評

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  • 今邑さんの最高傑作と名高い一冊。10篇からなる短編集。「家に着くまで」は世にも奇妙な物語「推理タクシー」の原作。「穴二つ」も「ネカマな男」の原作。
    どれも基本を踏まえつつじっとり怖い。

    ・見知らぬあなた
    主人公の女性は、かつて謎の人物と手紙のやりとりをしていた。その人物は何故か自分のことを細かく知っている様子。最初は良かったものの、何となくしつこい感じを覚え、手紙のやりとりを止めたりするが、謎の文通相手は何故か自分を探し当ててまた手紙を出してくる。
    手紙を読んでいくと、謎の差出人が主人公にかなり執着していることが窺えて不気味。
    そんな中、主人公の前の夫(嫌な奴)が殺される事件が起こる。主人公は、あの手紙の主が殺したのではないかと疑う。
    手紙の主の正体は、自分の中にいるもう一人の自分というオチ。過去、母の再婚相手に乱暴されて、主人公の人格は二つに分かれてしまっていた。

    ・ささやく鏡
    祖母が使っていた鏡。祖母はある日鏡の中に何かを見て、その後鏡を主人公に譲り、亡くなる。
    主人公が時折鏡を見ると、別の自分が映っている。どうやら未来の自分のようだ。
    主人公はたびたび鏡を覗いて、例えば未来の自分がしていたネックレスを「手に入れなければ」と思うようになる。
    未来の自分にこだわるあまり、道を踏み外していく主人公。
    最後に鏡の中に見たのは、自分娘の姿。自分が映らない=自分が死ぬことを悟り、同時に娘までが鏡の虜になってしまうことにショックを受ける。

    ・茉莉花
    単身赴任している父から、娘の茉莉花に手紙が届くが、そこでは茉莉花と父が一緒に過ごしたと書かれていた。茉莉花は父の単身赴任先に一人で行ったことはない。すわ怪奇現象か。
    実は父親は二重生活をしていて、別に妻子がいる。そっちの娘も茉莉花という同じ名前だった。
    切ないのは、主人公の方の茉莉花の方が二番目というか、正妻側ではなかったこと。

    ・時を重ねて
    友人の小泉から妻・美砂子の浮気調査を依頼された探偵。美砂子は二人で旅行に行こうとしているらしい。
    旅行当日、探偵は美砂子のあとをつける。軽井沢に着いた美砂子は、一人であちこちを回り始めた。途中、席を変わって貰ったりするなど、奇妙な点はあったが、誰かと一緒の様子はない。
    途中、探偵は美砂子に声を掛けられ「写真を撮ってくれ」と頼まれる。美砂子は、ホテルでは「宮脇」と名乗っているようだ。
    帰ってきてから依頼主の小泉にそのことを話すと、小泉は「宮脇という男に心当たりがある」という。
    宮脇は小泉の部下だった。ただし、もう死んでいるらしい。
    真相は、宮脇が死ぬ前に約束していた軽井沢旅行を、美砂子が一人で決行したというもの。
    ただし、本当に美砂子と宮脇は一緒にいた。
    探偵が取った写真に、その姿が残っていた。

    ・ハーフ・アンド・ハーフ
    同性愛者の女性と、契約結婚のようなことをしている主人公の男性。生活は完全折半で、男性は何の負担もなく、嫌になったら離婚していいと言う。男性は既婚者である地位と広い家を得てまあ満足していた。
    しかし妻の同性愛の「相手」である女性と深い仲になってしまう。
    何もかも折半を貫いていた妻が取った方法は……女性もきっちり「半分」に分けることだった。

    ・双頭の影
    寺が自宅の青年。妹がいる。
    その自宅の天井に、おかしな染みが浮かび上がる。どうやら二人分の人型らしい。
    調べていくと、その二人はかつて心中した男女。しかも血のつながった兄妹だったらしい。
    そんな話を、宿で老夫婦から聞いた語り手。
    ふと気づくと、その老夫婦の容姿はとても似通っていた。

    ・家に着くまで
    世にも奇妙な物語「推理タクシー」の原作。
    タクシーに乗った芸人の男。運転手が話し掛けてきて、先日起こった美人キャスター殺人事件の話題になる。運転手は、キャスターがタクシー内に落とした手帳を拾った奴が犯人なのではないかなどと推理。しかしその手帳なら、運転手だって拾えるじゃないか……。
    運転手はキャスター殺害を否定する。ここで話が終わるかと思いきや、こんどは客の男が身の上話を始める。曰く、お笑いの相方と仲違いしてきたと。
    運転手は「あなたの顔つきが尋常じゃないので、何かがあったことには気づいていました」と言う。
    客の男は「もう少し先へ行ってくれ」と運転手に指示する。車は人通りのない方へ進んでいく。
    客の男はロープを握っていた。相方を殺して結婚が染み込んだロープを。

    ・夢の中へ……
    辛い日々に耐えられず、「夢の中へ行くんだ」と自殺を試みた少年。
    しかし気が付くと病院にいて、周りの人から安堵される。学校に戻ってみると、みんな思ったより優しく自分を受け入れてくれて、悩んでいたことが嘘のように穏やかな日々を送れた。
    あの時死んでなくてよかった……。
    しかし自殺未遂後のことが夢でした、というオチ。
    実際の少年は自殺未遂のあと、20年も眠り続けて夢を見ていた。

    ・穴二つ
    世にも奇妙な物語「ネカマな男」の原作。
    借金を負った夫。気分転換に、妻の名を使ってメル友を募集したところ、男性とメル友になる。
    しかしそのメル友男性は、本気でメールの向こうの妻(実は夫)のことを愛してしまったようで、だんだんとしつこくなる。
    実際に妻の職場に行こうとしてみたりして危険と判断した夫は、何度もやめるように言うが、効き目はない。
    そうこうしているうちに夫が借金取りに捕まる。借金取りは「妻に死んでもらって遺産で返せばいい」という。仕方なく、妻の殺しを依頼する夫。
    殺し結構の日、夫は妻の部屋でメッセージを見つける。
    じつは夫(妻のふりをしていた)のメル友は、本当の妻だった。夫に振り向いてほしい、心配させたいと思ってしていたこと。
    さらに妻から夫への素直な気持ちが残されており、夫はそれを見つめるのだった。

    ・遠い窓
    もと画家と家族が住んでいた家に引っ越してきた少女・まり子。部屋に掛かっていた絵が少しずつ変わっているのに気が付く。
    大好きだった母は死んでしまった。父は別の女性と再婚しようとしているようで、まり子は気に食わない。
    その気持ちはやがてエスカレートして、まり子はドライブに出ようとしている父とその恋人に、睡眠薬入りのコーヒーを渡す。
    という話だけど、実はまり子の実母は父が再婚しようとしている女性(不妊で子供を譲り受けた)。死んだ母は気性が荒く、まり子を道付れに心中しようとして一人で死んだ。
    そのことを知らないまり子は父と恋人の女性に、一人で恨みをつのらせてしまう。
    絵が変わっていたのは最初から複数枚あったのを父が架け替えていたから。
    これが少女の目線で、何とも幻想的な光景として描かれている。

    ・生まれ変わり
    大好きな叔母をなくした主人公の男性。20年後、その叔母にそっくりな女性を見つける。
    調べると、誕生日などからますます彼女を叔母の生まれ変わりだと思うようになった。男性は彼女に付きまとうようになる。
    生前、叔母とは結婚の約束をしていた。しかしうまれかわりである彼女には婚約者がいると言う。
    男性はその婚約者を刺し殺し、彼女にプロポーズする。
    彼女は戸惑って断り、挙句の果てに車に撥ねられて死んでしまう。
    瀕死の彼女を見ながら、男はあることを考える。
    場面変わって。
    腎移植で健康を取り戻した20歳の女性。彼女の隣の部屋に住んでいた女性が何者かに襲われ、空き家になってしまった。そこに10歳年上の男性が越してきて、二人は恋仲になる。
    「私のどこが好き」と尋ねると、男は微笑むだけ。
    叔母の生まれ変わりの女性にストーカーし、彼女が死ぬと、その臓器が移植された人を追い回すという話。
    思い込みが怖すぎて、そもそも叔母とは結婚できないんじゃ……とかいうツッコミはどうでもよくなる。

    ・よもつひらさか
    よもつひらさか、よもつへぐいの話。
    長い坂を登っている途中に、通行人から話し掛けられた男性。
    通行人は坂を一緒に登りながら、坂にまつわる話をする。
    この坂には死者が出る。その死者から貰った食べ物を口にすると、自分も死者の世界に行ってしまう。
    通行人は男性に水を飲ませてくれた。
    果たしてそれは坂が始まる前だったか、途中だったか……。
    オーソドックスな展開が実にいい。

  • 嫌いじゃない。
    短編の読みやすさ、短さに、オチが透けて見えたものもありましたが、うまくホラーがまとまってる。

    作者の思いあって掲載順序は変えているらしい。読者としてはその思い知りたかったな。
    タイトルにもなってるよもつひらさかが好きです。
    他のも読んでみようっと。

  • 全12編の短編集。1話20~30Pほどなのでサクッと読めます。

    今邑さんの「ルームメイト」途中まで読んでいて止まってますが、こちらが図書館本のため先に読み終えてしまいました(¯―¯٥)

    「見知らぬあなた」「ささやく鏡」「茉莉花」「時を重ねて」
    「ハーフ・アンド・ハーフ」「双頭の影」「家につくまで」
    「夢の中へ…」「穴二つ」「遠い窓」「生まれ変わり」「よもつひらさか」

    今邑さん自身があとがきでも仰っているように、ホラー・ミステリー・ロマンティックファンタジー(!?)と盛り沢山な内容。
    途中からじわりじわりとオチが予想されるけど、「くるかくるか…?キター!(ぞわ~)」
    みたいな、ある意味爽快感があって気持ちいい。

    回りくどくない癖のない文章がスッと物語に入り込みやすかった。
    どの作品も普段本を読まない人でも純粋に面白かったと思えそう。
    癖のない書き方の作家さんっていそうでなかなかいない気がします。
    (この方の作品自体あまり読んでいないので偏った意見です。違ったらごめんなさい)

    単行本を借りてきたのですが、帯が宮部みゆきさんだったのですね。
    古い作品なので物語の設定も古いけど、それがまたよかった。
    ドラマ「世にも奇妙な物語」をよく見ていた世代なので。
    でもやっぱり当時に読んでいたらもっと衝撃的だっただろうなぁ。

    好きな作品は「ささやく鏡」「家に着くまで」「穴二つ」「よもつひらさか」

  • お若くしてのご逝去のニュースを聞いておどろいてしまった。

    さらりと読める恋愛がらみのホラー短編集とおもってよんでいくと、
    表題作だけ、全身凍るほど怖かったので印象的。「書き方」の巧さを味わえた。

  • ホラーの短編集。
    さくさく読めておもしろい。
    最後の「よもつひらさか」が一番怖かった。
    というより、そんなにすごく怖い話は残念ながらなくて、だいたいオチが読める。
    でもそのオチに気づいたときのゾっとする感じを楽しめた。
    子供でも読めるホラーだと思う。
    単純でおもしろい。
    幽霊っぽい話から、ミステリーの要素が強い話などいろいろ。
    最後の「よもつひらさか」は、オチを読んだとき毛穴がひらくくらいゾゾゾっとした。真夏に読んだのに寒かった。
    全部これくらい怖かったら最高。

  • 「よもつひらさか」は暑い夏には絶好の読み物だった。知らず知らずに
    こちらも黄泉の国にエスコートされている様な気分になって、読み終わった後、周囲を静かに見渡した。女房と目が合ってゾッとした。他は幼稚な設定で首もかしげたくなる作品もあった。作家も日々生長しているのですね。

  • 色んなジャンルの話が入り混じっているのが
    短篇集の魅力ですが
    この本はどれも劣らず、良かったです。
    必ずしも全部良い感じでは終わりませんでしたが
    あぁ!って残念な感じで終わるのもいくつかあって
    こんな気持ちになるなんて煮え切らないっていうよりも
    なんかこれも悪くないなって思えました。

  • 恐怖系短編集。
    残念ながら… 先が読めすぎ。
    12話あって10話は完全に先読みできた。2話は少し外したけれど先読みできた。
    あまりにも先が読めすぎるので、むしろそれを楽しみにするしかなくなった…。

  • 面白かったー!

    世にも奇妙なものがたりのような内容の短編で、背中がゾーっとしたり、ヒーーーってなったりするラスト一行の返しが辛辣です。

    くるぞくるぞくるぞくるぞ、、、キターーーーーー

    みたいな、それが裏切られないところがこの著者のとってもすごいとこだなーと思う。久々にこの人の本読んだけど、ホラーってなんか決まった流れで決まったオチのようなイメージがあってあんまり読んでないけど、実は結構好き。

    ヒーーーーってたまになりたくなる。

    させてくれてありがとう。

    久々ヒーーーーに感激しました。

  • 短編集。ホラーな話が多く、ぞっとするけど後引く怖さではない。
    印象に残ったのは「穴二つ」。
    そんなに簡単に殺意を抱くものなのかと、そこを気にしても仕方ないと思いつつ腑に落ちないのだけど、先が見えているようで見えていない部分もあり面白かった。

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