幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)

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  • 集英社
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本棚登録 : 695
レビュー : 120
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087475388

感想・レビュー・書評

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  • 高野さんの探検記を初めて手に取った。
    コンゴの奥地テレ湖に現れるという幻獣(未確認生物)ムベンベ。
    コンゴ政府の厳しい入国制限と監視、原住民の抵抗と物資の横領、大量のハエや蚊に、ワニやゴリラの野生動物、そしてマラリア。
    たくさんの障害を乗り越えて、早稲田探検部の隊員11人がムベンベ発見に挑む。

    えーと、この人たちは、どこまで本気だったの?
    と思いながら読み出したけど、少なくとも高野さんは大真面目、他の隊員も程度の差こそあれ、行楽気分、お遊び気分では断じてなく、ムベンベ発見に期待を抱いていたようだ。
    企業から提供を受けたという本格的な撮影機材一式もすごい。
    これが男のロマンってやつですか。お母ちゃんたちはみんな心配だったことだろう。

    旅は順調には進まないが、問題をひとつひとつ解決したり、応急処置をしたりしながら、36日間、24時間交代制で湖を監視し続けた彼ら。
    若さや勢いもあるだろうけれど、並大抵の気持ちじゃできない。
    帰ってから、友人知人から「それで怪獣見つかったの?」と小馬鹿にされるような口調で聞かれることが多かったという。
    私が近くにいたら同じように聞いていただろうけど、おバカでも無意味でも、こういう探検をしたこと、胸はっていいと思う。

    早稲田の学生だった彼らのその後の人生も、会社員になる者、その道のプロになる者など色々で、なかなか考えさせられるものがある。
    特にほぼ全部の期間、病気で寝ていただけの田村さんは印象的。
    彼は、コンゴの奥地のそのまた奥地、多少の薬以外は医療機関も医者も何もないところで、到着直後からマラリアに罹患し、猛暑の中、テントで一人闘病を続ける。
    周りの隊員から優しい言葉はほとんどなく、病は気からだと言われ…。
    この本からも、まだ田村の奴寝込んでんのか、といった雰囲気が漂う。
    孤独でただひたすら辛く長かった探検を終え、他人は当てにならない、守ってくれるのは両親なのだという思いを抱く。
    この壮絶な体験は、他の人以上に彼の人生観を変えたようだ。
    しかしそんな田村さん、探検から足を洗うのでなく、似たようなことを続けているというから不思議だ。

    角幡さんとはまた一風変わった探検記で、面白かった。

    • taaaさん
      こんな、「川口浩探検隊」を地でやってる人がいるなんて!驚きでした( ̄□||||!!
      私も読んでみたくなりました。
      こんな、「川口浩探検隊」を地でやってる人がいるなんて!驚きでした( ̄□||||!!
      私も読んでみたくなりました。
      2013/03/13
    • マリモさん
      takanatsuさんこんにちは♪

      コメントありがとうございます。
      私も知らなかったのですが、「ムベンベ」は、ネス湖のネッシーみたいな未知...
      takanatsuさんこんにちは♪

      コメントありがとうございます。
      私も知らなかったのですが、「ムベンベ」は、ネス湖のネッシーみたいな未知の存在で、地元の原住民族や、いくつかの探検隊に目撃例があるらしいです。
      もっとおばかな珍道中かと思って読んだら、考えていたよりずっと真面目で過酷な探検だったようで…(笑)
      でも何だかそのギャップが面白いです。
      角幡さんのは超シリアスな本格派ですが、こちらは「男って夢見がちなんだなぁ…」と思いながら寝転がって読みました。
      文章も読みやすく、気軽に入れるので休憩時間にもいいと思いますよ♪
      2013/03/13
    • マリモさん
      taaaさん♪

      コメントありがとうございます。
      あれっ、川口浩探検隊ってなんだか懐かしい、古い番組ですよね。
      私も高野さんの探検記は初めて...
      taaaさん♪

      コメントありがとうございます。
      あれっ、川口浩探検隊ってなんだか懐かしい、古い番組ですよね。
      私も高野さんの探検記は初めてだったのですが、他にも色々と珍探検をされているようです。
      こういうのって、全力投球でやるから面白いんでしょうね。機会あれば是非読んでみてください♪
      2013/03/13
  • トークショーと「ソマリランド」本そのものの両方があまりに面白く、当分私的高野フィーヴァーが収まりそうにない。これがデビュー作だったよね、とパラパラめくっていたらあっという間に夢中になって終わりまで読んでしまった。他のも片っ端から読み返したくなる。

    文才っていうのはやっぱり、ある人にはあるものなんだなあ。「学校の作文以外文章を書いたことがない」大学生がいきなりこんな読ませる文章が書けるんだもの。ジャングルでのキャンプの日々が臨場感たっぷりに描かれていて、もうワクワクハラハラする。無謀で未熟で、でも「頑張れ!」と応援せずにはいられない若さに満ち満ちている。

    あらためて思うのは、「楽天的」っていうのは本当に大事な資質だなあということ。ジャングルでの厳しいキャンプ生活で、体力とか知恵とか生活技術とか、必要なものは色々あるだろうが、必要以上に深刻にならず不安や不機嫌を引きずらないこともとっても大切で、実際にはなかなかできないことじゃないだろうか。高野さんは、語学力や交渉力の凄さは他のメンバーも認めるところのようだが、この点でも優れていたのだろうと思う。

    巻末の写真の若いこと!ちょっと不敵な感じの表情がいかにも若者らしくて好ましい。現在の風貌と思い合わせるとなんだかしみじみとした感慨がある。ムベンベってずいぶん前のことになったんだなあ。

    感慨と言えば、私は今回解説の宮部みゆきさんの文章を読んでちょっと泣いてしまった。
    「今の世の中には、絶対に、こういう本が必要なんです。みんながみんな、探検部のメンバーみたいに生きることはできないからこそ。」
    天下の宮部みゆきにこんなに熱のこもった真心のある解説を書かせた人って他にいるんだろうか。

    初めてこれを読んだとき、わが息子はまだ幼かった。この子が大きくなって大学生になり「探検部(もしくは山岳部)に入る!」って言ったらどうしよう?と思ったのを昨日のことのように思い出す。反対はできない(したくない)けど、死ぬほど心配するだろうな、と。月日は流れ大学生となった息子は、テニスやスノボが好きなフツーの人で、母の心配はまったく杞憂であった。めでたしめでたしなんだけど、ほんのちょっとだけつまんないような気がしないでもない。

  • 早稲田大学探検部のUMA探索紀行なのだが、みんさん何学部だったのか気になる。

  • 私は子供の頃から、未確認生物に目がなかった。
    ネッシーはもちろん、屈斜路湖のクッシー、ヒバゴン……
    川口浩探検隊シリーズは夢中になって見たし。

    それを本気でやってしまう強者たちの物語が本書だ。
    アフリカのコンゴの奥地にあるテレ湖に住むという謎の怪獣「ムベンベ」。子供の頃には夢中になったものの、大人になるにつれて、本当にいるのか??と、昔の熱い情熱は半ば諦めムードに支配されてゆく。しかし、早大探検部の彼らの熱意はハンパない。読んでいて気持ちがいいくらいだ。

    本書の途中で著者が、ある矛盾に気づいてしまうところが、残念だけれどゾクゾクする場面でもあった。
    テレ湖を熟知する村人たちに、ムベンベのことを聞けば聴くほど、適当なサービス心で怪獣のことを描写する彼らは、実はムベンベのことをよく知らないことに。最も詳しい者たちが知らないとはどういうことなのか?と疑念を抱く、この中盤が、私には本書の中で最も感銘を受けたシーンだ。

    この旅の中では、ムベンベは見つからなかったが、夢はいつまでも続いたほうが楽しいに決まっている。

  • 愚直だがエネルギーに溢れる作品で、高野氏の行動力の原点を垣間見た気がした。昭和の人達は本当に逞しい。私達の世代はやや省エネでスマートに事を運ぼうとする傾向があるが、結局何かを成し遂げるのはこのような人達のように思う。

  • 高野秀行さんの実質デビュー作である。実質というのは、1989年の単行本初出時には「幻の怪獣、ムベンベを追え」(早稲田大学探検部)として他の著者名が付いて刊行されたからである。大学時のサークル活動として、ここまで国際的な本格チームそして個性的なチームを作られた事に先ず驚く。早稲田探検部とは何か?を書き出すとまた長くなりそうなので、「凄いなあ」ということだけ呟いておく。

    デビュー作には、その作家の全てが隠されているという。探検報告書としてはかなり面白いのだけど、まだ後年見るような面白過ぎる!的な所まではいっていないし、後年高野さんならばもっと深めるだろう、という所が深まっていない。1番深まっていないのは、目的の幻獣ではなくて、これを聖獣のように思っている現地のボア族の生活だろう。本来の高野さんならば、サル料理の香辛料の正体や、信仰、音楽、狩猟の実態などしっかり取材しただろうと思う。

    一方、後年(と言っても、高野さんの本を読んだのはこれが3冊目なのだが^^;)の文章スタイルは既に確立していると思った。少なくともコンゴに入ってからは、高野さんはずっと日記を書いているはずだ。書籍化する時には、その日記に様々なデータを使って肉付けして書いていると思う。そのスタイルは、他2冊でも全く同じだった。それは基本的には私が旅レポートを書く時と全く同じだ。

    また、文庫本のあとがきがとても充実していて哀愁も帯びていて良かった。

    2018年7月読了

  •  早稲田大学探検部の著者のデビュー作である。

     デビュー作ということもあって、文章表現などは洗練されていないが、アフリカ現地の情景を現せていないわけではない。逆に、荒削りな表現が荒々しいアフリカとマッチしていたりもするか。

     秘境探検の小説が数少ないなかで、著者の作品はエネルギーに満ち溢れてはいるが、動物など生き物に対し、少し残念な表現(もう少しストレートに言うと、愛が全く感じられない、動物などの生き物の命を頂いて人間は生かされているという有難さの観念がない表現)が多く見受けられ、そんな言い方するかー、という場面にしばし出会う。ここらが、もう少し後の作品になれば、人間味も増し、よりよいものになるかなと期待したい。(日本でノウノウと生きているよりもっと過酷な世界を探検したら、そんな動物愛のことなど言ってられない、と言われるかもしれないが、逆に、過酷な世界を経験したからこそ、食への考えなどは洗練されてくるのだと思うが、どうだろうか。)

     ムベンベを追え、という題名であるが、内容はムベンベを探すより、アフリカ人とのすったもんだ道中記みたいなものだ。

     次はアヘン王国を読もう。

  • とにかく文章がうまい、読ませるなというのが第一印象。
    早稲田大学の探検部に所属時していた時の出版だが、
    平均的大学生の文章力を余裕で超えている。

    氏は、後に数多くの冒険モノを出版しているが、
    処女作には、作家の全てが宿るというか、この作品には、全てが詰まっている。
    明らかに、著者は、変わりモノだが、その変わりモノを突き通し、
    今では、辺境作家として、一つの地位を築いている。

    今の大学生で、これだけ、無茶苦茶なことをやる人はいないと思う。
    また、そういうことも、今は必要とされていない。

    当時は、世界一周したら、いくらか価値があったのだ。
    今は、その価値はあるかと聞かれたら、多くの人は、そんな余裕なんて、
    ないと答えるだろう。

    くらだないことができるほど、当時の日本が余裕があった。
    協賛企業にソニーが並んで、冒険機材だけで、数百マンが出る時代である。

    ただ、今でも価値があるのは、著者の目の付け所かなと思う。
    抜群に、それがうまい。
    どんなくだらないことでも、価値があるように見えてしまうのは、
    著者の並々ならぬ知性によるものだろう。
    そして、やはり、変幻自在の問題意識によるものだろう。

    今の日常も、見方を変えれば、大きな冒険になる。
    そういう視点を、この本は与えてくれるかもしれない。

  • 赤道直下のコンゴ共和国のテレ湖に巨大怪獣ムベンベが生息しているらしい。ネス湖のネッシー、ヒマラヤの雪男は聞いたことがあるが、ムベンベなんて知ってる日本人なんてほとんどいないだろう。

    著者の属する早稲田大学探検部はこの幻獣を発見しようとコンゴへ向かう。なんともバカバカしい若気の至り的な発想だが、プロジェクトの準備は本格的だ。早稲田OBのコネを頼り、カメラや食料、薬などの寄付を募り、現地語を学習し、調査隊の出発前には情報収集を目的とした少数チームをコンゴへ向かわせる。意外と準備周到。

    コンゴへ入国しても、政府や原住民のコロコロと変わる対応に振り回され、隊員の中ではマラリアが流行するという、冗談ではすまされない命がけのアドベンチャー。そんな中で40日間、24時間体制でテレ湖を監視し続けたムベンベ捜索隊の根気と組織力は想像を絶する。彼らを突き動かすエネルギーは若さ以外にない。が、本書を読んでいても、その凄さや悲壮感、深刻さが伝わらないのは、著者のテキトーで軽い文体と川口浩探検隊のイメージとダブるからだろう。こうした若者の無謀な冒険に対して、まずヤラセと疑わせてしまう「川口浩探検隊」の存在はなんとも罪深い。が、著者はそんな世間の見方に便乗し、トンデモ冒険ルポという新ジャンルの作家としてデビューしたのだから、川口浩サマサマか。

    結論としては、最初からわかっていたけど、幻獣ムベンベは見つからず。本書の一番の読みどころはこうしたドタバタ冒険を経験した若者の数10年後を描いたあとがきだ。

  • 探検部の実録本。

    アホです。でも、本気です。すがすがしいです。
    エネルギーあります。

    年配の方に
    「『まじめ』に生きるんじゃなくて、『本気』で生きろ」と
    諭されたことがあります。
    この本は、それを実践したと思われる若者の記録です。

    何かを成すのは確かにすばらしい。
    でも、生きて全力で感じること以上にすばらしく
    また、学び甲斐のあることがあるだろうか?

    なんだか生きるのがめんどうになった…
    一体、生きるだけの生活に何の意味があるの?
    生きることになんの意味が…

    そんなネガティブ思考スパイラルにはまって、元気がうばわれ、
    一歩も動けない、と膝をかかえている
    モラトリアムな大人子供に告ぐ。

    意味なんかない。
    目的があるから生まれてきたとか、難しいこと考えるな。
    本書を読め。
    ばかばかしくなる、でも、いっか、それで。いいんだ、これで。

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著者プロフィール

棋士(日本将棋連盟六段)。
1972年横浜市生まれ。日本将棋連盟六段。1984年に中原誠十六世名人に入門し、1998年にプロ棋士となる。棋風は居飛車本格派。現在、明治大学、國學院大学で講座を持つほか、将棋教室で子どもたちに指導をしている。
著書に、『こどもをぐんぐん伸ばす「将棋思考」』(ワニ・プラス)、『将棋「初段になれるかな」会議 』(扶桑社) など。

「2019年 『将棋の駒はなぜ歩が金になるの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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