ネバーランド (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 12922
感想 : 1323
  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087475777

作品紹介・あらすじ

舞台は、伝統ある男子校の寮「松籟館」。冬休みを迎え多くが帰省していく中、事情を抱えた4人の少年が居残りを決めた。ひとけのない古い寮で、4人だけの自由で孤独な休暇がはじまる。そしてイブの晩の「告白」ゲームをきっかけに起きる事件。日を追うごとに深まる「謎」。やがて、それぞれが隠していた「秘密」が明らかになってゆく。驚きと感動に満ちた7日間を描く青春グラフィティ。

感想・レビュー・書評

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  • ネバーランド、この名前で思い浮かぶのは故マイケル・ジャクソンの自宅が有名だと思いますが、Wikipediaでは、『ピーター・パン物語に登場する架空の国である。親とはぐれ年を取らなくなった子どもたちが妖精とともに暮らす。』と書かれています。う〜ん、何だかこの作品にぴったりだと思いました。

    『学園生活はバランス感覚が全てだ。いったんクラスの中における互いに割り振られたキャラクターを了承しあってしまえば、あとは約束された毎日を過ごしていける。』微妙なバランスの上に成り立っている学校生活、会社と違って発令上の上下関係があるわけでもなく、閉ざされた中に多種多様な価値観がぶつかり合う世界。人によって印象は違うかもしれませんが、この世界を生き抜くことはそうたやすいことではありません。そんな学園の冬休み。みんなが去って4人だけが学園寮・松籟館に居残ります。同じ場所なのに4人になってバランス感覚が全く変わってしまったことに戸惑う彼ら。4人の世界での人間関係作りの模索の日々が展開しました。

    これはミステリーではありません。謎解きも一応あり、しかも片方は二段オチです。でも最初のオチは流石に読者からのクレーム殺到必須の無理筋。もう少し納得できるようにしたという感じで二段オチとなるのですが、それでも超おまけという感じ。でもそんなことどうでも良いのです。この作品はそこではありません。

    『誰かの秘密を聞いたことで、自分の秘密も話さなければならないような義務感が心のどこかに生まれてくる。』告白か実行か。想像の上をいく告白内容に戦慄が走ります。ここまで重苦しく重量級の内容が彼の口から話されるとは思いませんでした。自身があの場所にいたとしても、それを聞いて言葉を返すことができるのだろうか、ただただ驚愕しました。でも、そんな重い雰囲気を和らげるのが酒とタバコの印象でしょうか。高校生ってみんなこんなにも自然にグビグビ、プカプカやっているのかという呆れの感情も入って、トータルで重さが緩和される感じです。そして、こんなに語り合って、語り明かして、全てが懐かしい想い出になるんだろうなという全てが決着するエンディングが訪れます。

    甘酸っぱくてほろ苦い、でも、物凄く爽やか、物凄く青春、そしてそこから輝く未来が垣間見える終局。恩田さんの学園ものの傑作と言える作品でした。

    • goya626さん
      コメント、ありがとうございました。音楽って、生活の一部ですが、言葉では表すことのできない影響を及ぼしてきます。その言葉で表しにくいものを、言...
      コメント、ありがとうございました。音楽って、生活の一部ですが、言葉では表すことのできない影響を及ぼしてきます。その言葉で表しにくいものを、言葉で表現しようとする著述家たちには感心します。
      恩田陸は、少しづつ読んでいきたいです。なかには、変なのもあるんだよなあ。
      2020/02/12
    • さてさてさん
      はい、こちらこそいつもありがとうございます。
      音楽と文学の融合?のような「蜜蜂と遠雷」が私の読書との出会いですが、恩田さんの作品の幅の広さに...
      はい、こちらこそいつもありがとうございます。
      音楽と文学の融合?のような「蜜蜂と遠雷」が私の読書との出会いですが、恩田さんの作品の幅の広さにはつくづくすごいなぁと。
      このネバーランドは久しぶりの恩田さんの作品でしたが、いかにも青春感満載かつスッキリした読後感で恩田さんの作品完読に向けて読んでいきたいと思いました。
      2020/02/13
  • 男子校の寮を舞台にした学園もの。登場人物も限られていて設定も分かりやすく、テンポ感もよく、一気に読めた。

    それぞれが家庭に事情を抱え、寮生活のある高校を選んだ4人の「告白」を軸に話が進んでいく。冬休みで他の生徒は帰省していて、寮にいるのはこの4人だけ、という設定がとてもワクワクさせられる。皆の「告白」は大層重い内容なため、明るいばかりの話ではないけれど、合間合間のゲームや酒盛り(!)や買い出しの描写などがとても楽しそうで和む。高校生で友達と寮生活はさぞかし楽しいだろうな。

    この本で「松籟」というものの存在を初めて知った。調べたら「松濤」も同じ意味だったのか。どんな音だろう。割と身近に松が沢山ある環境にいたけど、感じたことは無かったな。今度機会があったら意識して耳を澄ませてみたい。

  •  男子校の古い寮に住み、年末帰宅せず寮に残った  3人と、通学組の1人。3人は寮を贅沢に使い、1人も夜には加わって鍋をしたり、テニスをしたり、バーベキューをしたり、ランニングしたりと楽しい日中を過ごします。一方で夜にはゲームの勢いから「告白」をすることになり、一人一晩ずつ重たい過去を話すことになり‥というお話でした。
     最初はしんどくてどうやって終わるんだろうと読み進めていましたが、後半の光がさしてくるような気持ちの変化には驚きました。もちろん許されないことや、解決していない問題は残っているものの憑き物が取れていくようで、私は読者のはずなのに4人とこの7日を過ごしたようでした。

     4人の背負っていたものはそれぞれがとても重いものでした。なのに、翌朝にはけろっとしている。たとえ平穏を演じているのだとしても、そのあっさり感がとても良かったです。寛司の両親が寮のリビングルームに訪れた時も、3人がわざと軽く言葉を使っていたり、気まずさや憤りを自室で落ち着かせてリビングへ戻って来る寛司の対応には感心しました。思春期と言われる時期に苦しいものを吐き出すことができて、しかもその場にいた友人と次の日にはあっけらかんと過ごすことができる。この7日間は4人にとってかけがえのない期間だったと思います。

     

  • 本を開いた瞬間に行間の狭さとぎっちりの文字数に圧倒されて正直読み切れるのかという不安がよぎったが、主人公含め冬休みに松籟館に残った4人のどろどろとした家庭環境と何故か本を読んでいると感じる爽やかさの相反する二つの要素が癖になり一気に読み終えてしまった。

  •  歴史ある男子校の寮「松籟館」。ほとんどの生徒が帰省する冬休みに、その寮に残った美国、寛司、光浩と、実家で一人暮らしをしているが、毎日、寮に顔を出す統の4人は、生活を共にするうちにお互いの秘密を知っていく。一見、恵まれた環境にある彼らが抱える「秘密」とは。

     ブクログでオススメしている人がいたので購入しました。難しい話もなく、物語の序盤で匂わされた「秘密」が気になって、スイスイ読めました。また、秘密を曝け出す事で、各々が段々と仲良くなっていく様が見てとれて、心に響きました。
     ただ、秘密の一つ一つが、かなり暗いので、ほのぼのとした日常パートと、秘密について語るパートとの温度差が激しかったです。日常パートも時々、ピリッと緊張感の漂う場面もあって、思春期の不安定さが表れているなと感じました。
     その様な男子高校生ならではの、子供とも大人とも言えない絶妙なバランスが、物語のスパイスになっていて、程よくハラハラ出来るので、ドキドキする様な物語を読みたい人にはオススメです。

  • 恩田さんの学園モノはやっぱり魅力的です。単純に「仲間!友情!」というわけではなく、互いに欠けた部分を補いながらバランスをとりつつ、いつのまにか必要な存在になっていた、という感じ。
    かなり前にドラマになっているようですが、今ならどの俳優さんがいいかなーと脳内キャスティングするのも楽しいです。

  • 男子寮の話、それぞれ悩みを持つ4人の年末年始の過ごし方

    作者のあとがきのとおり、菱川はいい人過ぎるので、なんとなく物足りないので、せめてプレイボーイ的なキャラが良かったきがする。
    それで予定調和になるのではと考える。

    最近は身勝手な事件が多く、分別のある大人について考えさせられ、こんな青春物語も癒される。

  • 青春、まさにネバーランド
    この時間が永遠に続いてほしいと思うけど、
    決して戻れないかけがえの瞬間

    こんな時間あった
    卒業したらまったく会わなくなったり、
    ここまで深い絆は感じなくなったけど
    日常に埋もれてしまった青春
    あの頃は自分たちが世界の中心にいて、
    なにも怖いものはなかった
    なんかの歌詞みたいだけど

    主人公の4人が最初はぎこちないけど、
    それぞれの秘密を共有しながら絆を深めていくのが
    微笑ましい
    最初は疎ましかった統が、いちばんイイ奴に
    思えてきた
    “学年モノ”ではあるけれど、男子寮なので
    他の作品とは異なるテイストが好き

  • 二階建ての木造家屋、築三十年は経過した厳めしい外観の松籟館。それはど田舎の伝統ある男子校の古い寮。その寮で冬休み事情を抱えた4人の少年が居残ることになる。松の梢に吹く風の音、松籟と名付けられたその寮は過去にどれだけたくさんの男の子たちを静かに見守り、旅立つ背中を黙って見送ってきたのだろう。このお話は、この寮だからこそ成り立つものなんじゃないかな。この世に取り残されたような静寂と孤独な雰囲気の中で、少年たちは自らの秘密を語る。そして息を潜めるように佇む松籟館に抱かれ、少年たちは淀んだ毒の塊を溶かしていく。
    秘密を告白したところで誰もがすぐにラクになることも気持ちにケリをつけることも、まして他人に解決できるようなことでもないのだけれど。あ、でもやっぱり告白した本人は少しラクになって、逆に告白を受けた3人が少し枷を負うことになるのかもしれない。だからこそ4人の中では新しい関係が築かれていく。それは、新しい自分との出会いでもある。
    やがて少年たちは大人になっていく。そして、ふとした瞬間にこの時の出来事を思い出すのだろう。その時にはきっと松籟館の空気や匂いも同時に蘇るんだろうな。あの秘密の告白は決して忘れることができない。アルバムのなかのセピア色の写真のように。そして苦く切ない思い出としてノスタルジックに浸るのだろう。

  • 有名進学高の寮で、年末年始を家に帰らずに過ごす男子生徒4人。もともとすごく親しいわけでもなかった彼らが、ふだんの寮生活とは違う近しい生活を送りながら、それぞれに抱えているものを自然に告白していく。その数日でお互いの距離がぐんと縮まり、一皮むけたように大人になっていくさまがすがすがしい。
    舞台のモデルは言わずもがなラ・サール高校ですね。
    今どきの男子高校生がどんなものかは全く想像がつかないけれど、彼らの頭の良さ、10代の男の子ならではのやんちゃな青さと悩み、頼もしくもあり、その後を知りたくもなり。やっぱり恩田陸さんの小説の登場人物は知性にあふれているなぁ。

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著者プロフィール

1964年生まれ。92年『六番目の小夜子』でデビュー。『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞と本屋大賞、『ユージニア』で日本推理作家協会賞、『中庭の出来事』で山本周五郎賞、『蜜蜂と遠雷』で直木賞と本屋大賞を受賞。その他『木漏れ日に泳ぐ魚』『消滅』『ドミノin上海』『スキマワラシ』『日曜日は青い蜥蜴』『灰の劇場』『薔薇のなかの蛇』など著書多数。

「2021年 『愚かな薔薇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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