おいしいコーヒーのいれ方 (5) 緑の午後 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 163
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087475869

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ第五弾。勝利は星野りつ子にかれんとの関係をうちあける。勝利の父・正利が再婚相手・明子とともに帰京し、間も無く女児を出産する。勝利の妹、綾乃の誕生である。携帯電話を買ったり、一人暮らしの計画をたてる勝利だが、かれんとの間に進展は無し、、、まあまだ5作目だから仕方ないか。番外編で丈の恋バナあり。

  • シリーズ5作目。
    年末のスキー旅行から帰ってきて、かれんとは仲直りし、星野りつ子のフォローに追われる勝利。丈の受験。父親の帰国と妹の誕生。
    今回は後ろに丈のサイドストーリーがついていた。お気楽で何も考えてないように見える丈が、実は色々知った上で気を遣っている様子が伺えた。丈のキャラクターも好きだなー。

  • いつもさらっと読みたくて手に取るけど、ふんわりした雰囲気の中に刺さる出来事や言葉が現れる。ずっと幸せな雰囲気でいたいのに、突然現実に突き落とされる。
    人間観察と心情描写がリアルだなぁと思う。本当に男の子が考えていそうな。作者はどちらかと言うと男目線の方が得意なのかも。

    勝利くん、家事もできるし年下だからって甘えてくる訳じゃなく、これまではいいなあと思っていた。けど自分に置き換えると、年下から「お前」と呼ばれたり、まるで年上かのような物言いをされるのは嫌かもしれない。見せかけの頼りがいはいらない。かれんだから合っているんだろうけど。
    それより、かれんがいるのにりつ子のことを気にかけ過ぎているのが気になる。
    りつ子の体調を気にかけるのは勝利本人じゃなくて良いし、りつ子に望みを持たせるようなどっちつかずの態度は良くない。それは優しさじゃないし、むしろかれんが知ったら傷つけてしまう。
    かれんに釣り合うような男になりたいと思っていながら、それどころかすごく不安にさせる行動を取っている。
    まぁこんな若い男の子が5歳年上の女性を完全に安心させるなんてことは難しいだろうけど。
    かれんからしたら、ただでさえ同級生の勝利とりつ子の関係に気後れするだろうに、はっきりしない勝利にますます不信感が募りそう・・・そんな終わり方だった。

    自分が助けたい相手、優しくしたい相手、の優先順位を間違えないようにしないと、と考えさせられた。八方美人は大切な人を傷つける。
    勝利はまだこれから学んでいくんだろうし、大学生にしては真面目で大人だと思うけど。


    私は村山さんのあとがきを楽しみにしていて、むしろあとがきの方が読みたいぐらいで、今回も特に読み応えがあった。
    こんなに思考力がある人が、戦争について語っている。とても興味深い。
    お父さんがシベリアで捕虜になったそうで、記憶ではものすごく過酷で日本人が次々と亡くなったあのシベリア抑留かと思うとゾッとするし、そのお父さんが生きて日本へ戻ってこれたからこそ、そして私の先祖も生き延びてくれたからこそ、今、戦争の無い世界でこの小説を読めている訳だから、平和って本当に尊いし、当たり前ではない。

    この文庫が発売された2003年から20年近く経っても、企業も政治も〈想像力欠如おじさん〉が日本を牛耳っているし、今でも夜明けは全く見えないけれど、もっと若者が自分の未来について考えても良いし、必ずおじさんが引っ張っていく必要もない。
    とは言えお金も希望も無い今の若者が将来に期待するのも難しいかもしれないが、せめて政治に関心を持つぐらいはしないと、〈おじさん〉にお金も未来も奪われてしまうかもしれない。

    私も多数派に流されることなく自分の目を養って、物事を見たり判断したいと思っている。
    ずっと多数派を選び続けていると、中身は空っぽのままで、物事を客観視できないような人になってしまう。
    多数派の意見と、正しいことはイコールではない。勝つことと正しいことはイコールではない。
    確かに歴史を見れば明らかだ。

    20210625

  • いつもの如く話は進まないが、
    読み続けている人にとって、そんな事は
    気にもならない。
    むしろそのような時間の流れを楽しんでいる
    感じになってきている。

    簡単に言えばただの幸せな恋愛小説で、
    恋人との恋が多少の悩みや嫉妬がありつつで、
    ゆっくりと育んでいって欲しいという
    僕の願いを投影して自分がヤキモキするって様を
    愉しむものです。


  • 2人の関係はまずまず良好なのかな?ショーリの一人暮らし決断は吉と出るか凶と出るのか、いつもと変化を付けることで今まで見えてきた局面が見えてくると思うので同じ屋根の下で暮らす事の有り難さに改めて気づくのかな?
    星野りつ子はあんなに素敵な子なのに報われない感じが可哀想だけどこの手の物語にはありがちな立ち位置だな。次回作以降もいい人と巡り会えるよう応援したくなる!
    これは余談だがショーリと星野が両想いな世界線も見てみたい。

  • 勝利とかれんのメインストーリーはあまり進行がなく、冒頭の雪のシーン以外は甘々とした描写もすくなく、今回の主役は星野だったと思いますが、勝利くん、二股かけるつもりがないなら、罪作りですね。ひょっとしたら女性が無意識に男を両天秤にかけている心境を、性別を逆にして描写しているのかもと思いました。最終章の丈、切ないですね。
    ライトな本文と対称的に含蓄のあるあとがきも健在。そうなんですよね、読書感想文を書いていると、自分自身をもふりかえることになるし、自分の価値観を人目にさらけだすことになる。けだしその通りだと思います。他の人の感想も読んでると、相手の経験とか考えの深さがすぐわかります。
    でも戦争の話だけは底が浅いと思った。戦争は国際紛争ではなくって、開戦国の国内事情で始まっている。彼女の戦争反対は、人間は平等であるという前提で成り立っている。でも戦争を始める人間はそうは思っていない。相手国の人間はもちろん、前線で戦う自国の若者ですら、駒としか思っていない。守るのは自分と自分の家族と自分の周りの一部の人だけ。国を守ることすら考えてないのよ。だからあれだけ空襲されても一億総玉砕なんていって、自分達だけは逃げる準備を進めていた。だって降伏すれば死刑なんだもん。
    村山さんの平和主義理論がオジサンに伝わらなかったんじゃなくて、オジサンの戦争観が村山さんに伝わっていない。そう感じました。

  • 「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズの、第五作目。今回は、勝利の同級生で彼に片思いを続ける星野りつ子に、とうとう秘密の恋がばれてしまう。(ばらしてしまう。)叶わぬ恋に、好きなはずの彼についつっぱった意地悪な態度をとってしまう…。というのは片思い中の10代の女の子の典型だが、客観的に見るとやはり気持ちのいいものではない。などとしばしわが身を振り返ってしまった。
    かれんの弟丈の物語がおまけでついてくる。

  • 「DOES YOUR MOTHER KNOW」
    誤解を解くために会う。
    今までとは違ってしまったとしても、今後も友人として仲良くしていくには話し合いはすべきだろうな。

    「DON'T TELL ME YOU LOVE ME」
    新しい家族とは住まず。
    色々な問題はあるだろうが、それを避けて通る道を選ぶのではなくて立ち向かうべき時なのではないか。

    「BRIDGE OVER TROUBLED WATER」
    茶化した言葉ではなく。
    冗談で言ってるのだろうと思われるようにしていたのは、もしもの時の逃げ道を確保していたのだろう。

  • 星野りつ子とのやりとりが印象に残った。恋愛ってそういうものなのかもしれないけれど、やっぱりちょっとワガママというか矛盾した感じを表に出されるとイヤだなと思ってしまうし、自分がそうなりたくないと想ってしまう。
    その点、やっぱりかれんは大人だなと思った。おそらく、「歳の差」という部分を印象づけるための対比としてもあるのかもしれないけれど、なんとか自分をコントロールしようと努力している部分が大人だと思う。1巻前の「雪の降る音」で冷静になるためにショーリと距離を取る部分とか。
    最近、ドラマとかでも年上女子と年下男子の恋愛ものが多いが、年上女子だとどこか冷静でよくわからない嫉妬がないからイライラせずに見ることができるんだなと理解した。

  • 2023.8.18
    本編はいつも通り楽しく読ませて頂いた。文庫版の村山さんの戦争についてのあとがきが心を打つものがあった

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著者プロフィール

村山由佳
1964年、東京都生まれ。立教大学卒。93年『天使の卵――エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞をトリプル受賞。『風よ あらしよ』で吉川英治文学賞受賞。著書多数。近著に『雪のなまえ』『星屑』がある。Twitter公式アカウント @yukamurayama710

「2022年 『ロマンチック・ポルノグラフィー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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