がんばらない (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 562
レビュー : 75
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087475890

作品紹介・あらすじ

リンパ肉腫の青年が言った。「自分の入る墓を見てきた。八ケ岳の見える景色のいい所だったよ」青年にぼくはささやいた。「よくがんばってきたね」最後まで青年は誠実に生きて、死んだ。そこには忘れさられた「魂への心くばり」があった。テレビドラマ化されるなど、マスコミの話題をさらった感動の書をあなたに。

感想・レビュー・書評

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  • 諏訪中央病院名誉院長である著者のエッセイ集である。著者は同病院医師、院長として、閉鎖寸前の赤字病院を地域に密着した先進的な医療拠点として甦らせた。それを支えたのは、患者は十分な情報を得た上で治療について自ら選択する権利をもつという固い信念だ。「十分な情報」という以上は、そこには当然患者本人に対する余命宣告も含まれる。それは場合によっては残酷で厳しい対応かも知れないが、患者が残された人生を自らデザインし自分らしい時間を過ごすためには不可欠なのだ。その結果、治療としては抑制的になる場面もあれば、逆に積極的に高度医療や手厚い訪問看護を必要とする場面もある。諏訪中央病院では、いずれの場面にも対応できる設備や体制が整っている。著者は言う。「ぼくら医療スタッフががんばりますから、あなたはありのままでいてください」と。「がんばらない」とは何もしないことではなく、これまで既にがんばって治療を受け生きてきた患者さんに、本来の「ありのまま」の姿で過ごしてほしいという著者の切実な願いなのである。

  • 諏訪中央病院の院長であった筆者の医療とは?
    という考えを様々な医療従事の経験から語った作品。
    筆者の人柄がにじみ出るような文体は非常に優しく、
    タイトル通り頑張らずに読めます。

    終末医療に関するシーンが多く、ガン患者がどうすれば
    安らかに人生を終えられるのか?
    患者は頑張らずに、周りが希望に合わせて支えてあげればよい
    という環境(ホスピス)を諏訪中央病院で作り出した話が終始展開されます。

    しかしながら諏訪中央病院は筆者の意向を組み、
    大変素晴らしい環境なのかもしれませんが、
    実際に従事するスタッフは非常に大変なのだろうと思うのですが、
    どうなんでしょう。やはり使命感で頑張るしかないのでしょうか。。。

    筆者が作り出したような環境が理想でしょうが、
    日本中で同じことをやるのは大変難しいと思いました。

    高齢化社会になってどのような医療が適切なのかというのを
    問いかける作品になっていると思います。

  • 「がんばらない」。この言葉を見ると、あぁ、この本は努力しないで適当に生きることを書いた本なんだろうと思われる方もいるのではないと思います。でも僕は自分でも障害をもって生きてきたので、とりおりかけられる「頑張れ」という言葉ほど残酷なものはないと思っていました。「頑張って」みんなと同じことであることが本当にいいことなのだろうか? なぜ、自分らしくしてはいけないんだろうか、、と。むろん、努力して生きることは素晴らしいし、称賛もされてしかるべきでしょう。でも、逆に自分らしく生きられない社会はなんなのさと、偏屈な僕はそう思ってしまうのです。<br /><br />この本は、「がんばらない」という言葉には深い意味があることが分かる作品です。諏訪中央病院で院長として、長年緩和ケアや地域医療に携わってきた著者が医療現場での死の出会いを通してつながれる命の輪の物語が書かれています。死ほど、個人的なことはにないでしょう。命の一大イベントであるからこそ、本当に自分らしくあるべきであること、「がんばらない」で毎日を過ごすことの必要があるのです。しかし、日本の医療は技術こそ高度化するものの、高齢化で被医療人口が増せば増すほど、効率性の名の元にはかけ離れた医療というのが行われるのではないかという危惧ぬぐえません。死や老後というのが怖いといわれても仕方がないでしょう。実際に医療現場の生の声も書かれている本著を読むと、真に大事なことはなんなのかを痛切に考えさせられます。<br /><br />それぞれの物語は泣けるし、この不合理になる日本の医療や社会に対して何かをしていきたいと強く感じました。医者でも、医療関係者でなくてもできることはきっとあるはずです。それを自分なりにも強く考えたいと決意した一冊でした。

  • 「今日生きねば明日生きられぬ」という言葉想いて 激しきジグザグにいる」(道浦母都子)
    現代は,医療が本来持っていた「技術」と「奉仕」と「祈り」の三位一体を忘れ去ったというが,それはすっぽり教育にもあてはまる。自分も子どもやその保護者,地域との接点がどんどん小さくなっていた。でも,この本を読んでいたら,大きな元気をもらった。「いのち」の重みを感じ,自分の悩みのちっぽけさを恥ずかしく思う。

  • 解説:荻野アンナ

  • インフォームド・コンセントや自己決定という考えが医療の常識となってどれくらい経つのだろうか(常識といってもそれが実践されているかとなるとそれはまた別の話だろうけれど)。実はこういった考え方を前にすると正直戸惑うことが多い。もちろんパターナリズムとも言われる医者の権威主義は反省されるべきだと思うけれども、たとえば「生も死も自分でデザインを」なんて言われると、二の足を踏んでしまう。生も思うままにデザインできない自分が、果たして死をデザインすることが可能なのかと。
    「死」から遠く離れた生活の中で、「生」と切り離せない「死」とどう向き合っていくか。その大切なテーマが失われつつあるのが現代ではないのか。そんなことを考えさせられる本でした。

  • 【状態】
    展示中

    【内容紹介】
    医者と患者の心のかよい、患者と家族のあたたかい絆、看護婦さんたちの献身…。諏訪中央病院院長である著者が「ぼくの先生たち」である患者やその家族との交流を描くエッセイ。

    【キーワード】
    文庫・エッセイ・家族・医学・医者・ドラマ化

    【映像化情報】
    2001年ドラマ化
    出演:西田敏行 他



    ++1

  • 医療管関係者だけでなく、病気になる可能性があり、必ず死を迎える、皆さんに読んで頂きたい。
    今まで、向き合って来た数々の患者さんやその家族のストーリが書かれています。
    中には、読んでいるこちらまでその温もりが届きます。


     ・予防からリハビリまでの一貫した医療
     ・地域に密着した手作りの医療
     ・救急医療から高度医療
    長野県、諏訪中央病院はこの3つのスローガンを掲げている。

    その横にはもう1つのメッセージがある。
    患者さんの権利だ。
     ・人格を尊重される権利
     ・平等な医療を受ける権利
     ・最前の医療を受ける権利
     ・知る権利
     ・プライバシーの権利
     ・自己決定の権利

    そして4つの理念
     ・その人らしく生きることを支援する
     ・対象者と家族を尊重する
     ・自立 自律への援助をおこなう
     ・最後まで共に歩む


    諏訪中央病院の院長、鎌田 實さんが考える医療体制だ。
    21世紀、日本の医療は想像以上に進歩をとげた。
    しかし、21世紀の医学は何かを置き忘れてきてしまったのではないか。
    死は永遠には回避できない。
    病気の部分だけを治すのではなく、魂に寄り添った医療、を大切にしている。

  • 鎌田先生の文章に、まるで語りかけられているような感覚を持った。診療を受ける側から書かれた、心に染みる一冊だ。

  • 終末医療について大変勉強になった。こういう人が医療界、介護現場を変えていってくれているのだなと思った。
    今の時代に足りないもの、忘れてしまっている大切なものをしっかりと見据え患者さんと正面から向き合う。
    著者は医療する側の人間なのにネイティブ・アメリカンの死生観も持っている。人間として生き、人間らしく死なせてくれる。こういう感性を根底に持つ人が増えるといいなと思う。

    引用メモ
    ・人はつながりの中で生きている。人と人のつながりの中で生活を営み、人と自然のつながりの中で命は生かされ、体と心のつながりのなかで、生命をはぐくんでいる。

    ・否認、怒り、取引(善行により治癒するなど)、抑鬱、受容

    ・ペインコントロールについて
    その国の医療用麻薬の使用量と、その国の文化度は相関しているともいわれている。日本では耐えられないような痛みに対して「がんばれ、がんばれ」と歯をくいしばらせることが多い

    ・大人たちが誠実に一人ひとり希望を持ってきちんと生きていることを、子どもたちに見せてあげることが大切だ。これが命のリレーだ

    ・人間の疾病を部品の故障と考えたデカルト

    ・自ら地域に出て地域で学ぶところから始まった→信頼関係

    ・西洋文化が入ってこなかったかつての日本では、自然と人間は対立するものではなく、自然と人間は一体であった。人間と病気の関係も対立するものではなく、共存する関係であった時代がある。

    ・祭→治癒

    ・西洋流の、個の自立の大切さを信じてきたが、個の自立を獲得しようとする自分の中に、無用の競争や差別意識を生んできた

    ・死ぬことはそんなに怖いことではないということを次の世代へ伝える

    ・死んだ人にムチ打ってはいけないという日本的寛容さ

    ・人間は原子力を使うまでにその人間性を深めただろうか

    ・障害のある人たちは上手に書こうといった邪心がないから、いい作品をつくることができる

    ・ひとついいことがあると、人間はいいほうへいいほうへと解釈してくれる

    ・医療=技術、奉仕、祈り

    ・医療は機械化、近代化するなかで、ホスピタリティを忘れかけている
    葬式宗教になってしまった仏教も、生きている人に対するあたたかなおもてなしの心を忘れかけている

    ・たまご

    ・今日は死ぬのにとてもよい日だ

    ・臓器移植
    臓器に価値が生まれ、値がつき、貧しいものから富めるものへ一方的に譲渡されないことを切に願う。せめて生き死にのところはお金のあるなしや、権力や身分に左右されることなく、公平性が保たれていてほしい
    ホモサピエンスの上品さが問われている
    「巧みに生きる」のではなく、よく考え、よく生き、よく死ぬとき、不器用だが手ごたえのある生が見えてくる

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院医師として、患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。1988年に同病院院長に、2005年から名誉院長に就任。また1991年からチェルノブイリ事故被災者の救援活動を開始し、2004年からはイラクへの医療支援も開始。4つの小児病院へ毎月400万円分の薬を送り続けている。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』ほか多数。

「2018年 『だまされない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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