- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087476118
感想・レビュー・書評
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「瞽女」という存在を知ったのは
斎藤真一さんの「画集」が初めてだった
次に出逢ったのは小沢昭一さんの著作の中だった。
それ以来、ずっと「気になる存在」として
その「瞽女」という言葉を耳にするたびに
もっと知りたいと思っている。
そんな中での一冊である。
著者の下重暁子さん の祖母の実家が瞽女宿を
していらっしゃったとあるが、
ただそれだけの縁でははかり得ない
ひとりの瞽女さん、小林ハルさんの
すさまじい生きざまを
五年という年月をかけて
丁寧に丁寧に聞き取り、
現地への取材も重ねて
一人の盲目の旅芸人の生涯を
綴った一冊である。
読んでいて
(その当時の)理不尽さの数々に
ついつい感情移入をして、腹立たしく思い
それでも ハルさんが毅然と生き抜いてきた
その姿勢に感動を覚えてしまう
文庫本のあとがき(2003年夏)に
小林ハルさん 103歳とある
その一文が目に入ったとき
思わず 涙腺がゆるんでしまった -
瞽女・まず「ごぜ」という言葉、そして存在そのものを初めて知った。生まれながらの闇に生き、五感を研ぎ澄ませて他人の手を借りずに生活し、しかも生きていく手段としての三味線と唄。幼い時から実家を離れての修行。寒行に凄まじさがある。
旅を続けていくことで、人はより強く、神と民との間に立つような人間になって行くのだと思う。
消滅してしまった瞽女を書きとどめた事にも意義が大きい。 -
盲目の旅芸人、瞽女。小林ハルさんの半生を通じて語られるのは女性、障害、様々な理由で差別をするかつての日本の姿。
同時に苦しい生活の中でも瞽女たちをあたたかく迎える社会の姿でも有る。困難な時代と社会の中でどんな修行僧よりもストイックに、誠実に生き続けたハルさんの姿が眩しい。 -
数年前に秋田県立美術館で、越後の瞽女をテーマに描く画家『斉藤真一展』を見学しましたが、この時の印象が強烈で、それ以来ずっと瞽女のことが頭から離れませんでした。
この本を読んでから人間国宝・小林ハルさんの瞽女唄を聴いてみたくて、youtubeを検索しています。 -
ハルさんの強さ、自ら苦労を背負い込むような生き方には胸が詰まった。
うた、聴きたい。
世間さわぐにゃ豆腐で渡れ、まめで四角でやわらかく
いい人と歩けば祭り、悪い人と一緒は修行 -
女性の自立とか、障がいを持つ人の生き方とか、失われた文化の保存とか、なんか色んなテーマがあるんだと思う。でもそんな細々としたことはどうでも良くて、ひとりの女性のまっすぐな生き様に触れて、胸が熱くなった。
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良い人と歩けば祭、悪い人と歩けば修行
小林ハルさんという女性の一生。
瞽女(盲目の唄う女性たち)という仕事を幼い頃から死ぬまで、全うした方。
過酷さも自ら課したもの、課されたものでも避けるものではない。そう思うこの人の強さがすごい。本を読んでわかった気になってはいけないが、どれだけの人がこの人のように生きることができるのか。
人にすすめられて読んだ本。 -
明治33(1900)年新潟生まれの瞽女、小林ハルのライフヒストリー。「いい人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行」
明治生まれの自伝は、大体どういう人のものでも、現代の目から見ると驚くところがある。この方の場合はさらに盲目で旅して歩く芸人だったのだから凄まじい。
雪深い山道を歩く苦労を想像すると、目の見えない人にそんな危ないことをさせるなんて…と思うが、親方制度等のしくみを知ると、とてつもなく過酷で理不尽も多いながら、自活のための制度として社会的に成立していたのだなと思う。
もっとも本書自体はどちらかというと軽めの読み物で、瞽女の制度や在り方について深く知るには元ネタになった文献を読むほうがよさそう。80年代以降に色々とオーラルヒストリーや研究書が出ているようだ。当事者が文字で記録を残すということが無い世界だから、近世以前の文献で知るのは難しいかもしれない。
読了後に調べてみたら、2005年に亡くなっていたそうだ。 -
過酷な体験をただ運命として受け入れていく。運命に逆らい夢や希望を追い求めるのでもなく、運命に肯定的な意味を与えることもなく、淡々と生きていった瞽女の生涯を描いた作品。最後の瞽女とともに、その生きざまも歴史の中に消えていったように思う。