ワセダ三畳青春記 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 2000
感想 : 310
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087476323

作品紹介・あらすじ

三畳一間、家賃月1万2千円。ワセダのぼろアパート野々村荘に入居した私はケッタイ極まる住人たちと、アイドル性豊かな大家のおばちゃんに翻弄される。一方、私も探検部の仲間と幻覚植物の人体実験をしたり、三味線屋台でひと儲けを企んだり。金と欲のバブル時代も、不況と失望の九〇年代にも気づかず、能天気な日々を過ごしたバカ者たちのおかしくて、ちょっと切ない青春物語。

感想・レビュー・書評

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  • クレイジージャーニーに出演していた高野秀行氏著。主に二十代を過ごした、「野々村荘」での生活。“チョウセンアサガオ“が面白かった。

  • 高野さんは昨年の今頃、数少ない私の「お気に入り作家」に昇格した。そうなれば、出ている文庫本の少なくとも8割くらいは読まなくては気が済まないのが、私の性分。恋でも本でも、原理は同じですね。これで7冊目。まだまだ道のりは長い。この本で、第1回酒飲み書店員大賞を受賞。読めばわかるが高野さんは全ての作品が名文なのである。読み始めると、直ぐに高野節に染まってゆく。

    でも、家賃1万2千円の三畳間には別に驚かない。私は2年間、家賃1万5千円の「家」に住んでいた。学生時代ではない、社会人になってからである。1つのボロ屋を2つに仕切って、半分に住むのだ。こちらは1人、向こうは一回も顔を合わせていないが、おそらく4人以上の家族だった。私が使わなかった部屋はふた部屋もある。最後は畳がブヨブヨになったが、全くノープロブレム。途中で私の母親が亡くなったので、夜になると真っ黒い部屋の片隅をよく凝視した。一度も出てきてはくれなかった。

    話がそれたが、ともかく高野さんは、私のような孤独な下宿生活ではなく、普通の冒険旅行と同じく変人と共になんやかんや起こしながら、11年間、元気に「生活」してゆくのである。思うに傑作だろうと思う。

  • 高野秀行さんの本は『イスラム飲酒紀行』『恋するソマリア』『世界の辺境とハードボイルド室町時代』『謎のアジア納豆そして帰ってきた日本納豆』『西南シルクロードは密林に消える』とこの本で、二年ちょっとで6冊も読んだ!
    今年は呉座さんの新書『応仁の乱』が売れたけど、
    「高野さんはそのずっと前に応仁の乱の本を出しているのよっ」と私は声を大にして言いたい。

    ところでこの私がこの数年夢中になった作家は須賀敦子さん。
    高野さんと同じく私小説っぽい作品でして、
    その結果私は「ぜったいヨーロッパに行く。とくにイタリア」と思い、実現しました。

    だけど、高野さんの本を読んで「彼の行ったところに行きたい♪」とは、まったく思いません…。
    なんでしょう。
    「よくやるなー」っていうか。
    でも笑いながら読んだのは事実!
    今年私を笑わせたベスト3は豊田真由子さん、橋本健さん、高野秀行さんですから♪

    さて、この本は「第一回酒飲み書店員大賞」を受賞。
    千葉県近県の本と酒が好きな書店員と出版社営業が集まり、最も売り出したい本をコンペティションで決定する賞で、出版してから一年以上たった文庫本を掘り起こすのが目的だそうです。

    最近「文庫本ぐらい買って読もうよ」という意見を聞きましたが、すみません、やっぱり図書館で借りてしまいました。
    でも作家の皆さんには、めげないで、これからも面白い本をたくさん出してほしいです。
    お金儲からなくたって読者が楽しんでくれたら、作者冥利に尽きるんじゃない?

    高野さんのTwitterを見たら今はネパールにいるらしいです。
    命を大切にしてください。

  • 2019年年賀状のQRコードから来られた方々、明けましておめでとうございます(笑)。
    まずは、年賀状投函後の12月30日に昨年最も嬉しいことがありましたのでご報告します。
    午後10時から東京のFMラジオでキャンディーズ45周年特番があり、43年前の高校時代の私とキャンディーズのエピソードが大きく紹介されました。私とそのパーソナリティが知り合いになった縁なども紹介されています。

    この年になって、高校時代の甘酸っぱい思い出を聞くのも気恥ずかしいですが、4分弱ですので是非お聴きいただければありがたく。録音してyoutubeにアップしたので下記URLからどうぞ。
    https://www.youtube.com/watch?v=tMTj52tT2xs

    また、そのエピソードの元になっている、ランちゃんが「仙台のアイザワ〇〇クン」と私の名前を呼んだ実際の音源は下記URLから聞けます。ノイズだらけで聴きづらいですが、5分過ぎに出てきますので、是非お聴きいただければありがたく。<(_ _)>
    https://www.youtube.com/watch?v=VRekh12HkK0

    さて、koshoujiというのは、このサイトでの私のハンドルネームで、下記のような受け狙いや真面目なレビューを388本ほど書いています。ここ2年くらいはあまり書いてないのですが、フォロワーも300人弱いらっしゃいます。

    このやり方、便利だなあと思っております。来年の年賀状は通信面に写真とQRコードを載せるだけ、という風になるかもしれません(笑)。それでは、今年もよろしくお願い致します。<(_ _)>

    -レビューはここから-------------------------------------------------------
    西武新宿線高田馬場駅から一つ目の下落合駅。
    改札を出て右側。早稲田通りを渡り、少し急な坂を右斜め方向に上り5、6分。
    山手通りに突き当たるすぐ手前の左側に古い木造建築のアパートがあった。
    その名は光雅莊。
    築20年は軽く過ぎていたであろうそのアパートの二階に、私は昭和54年4月から58年3月までの4年間住んでいた。
    三畳間ではないものの、六畳一間で家賃2万5千円。
    当然、風呂なしトイレ共同である。
    当時の相場としては安からず高からず。
    下落合駅より徒歩10分なので、この作品の野々村荘よりは便が悪い。
    それでも高田馬場まで一駅、そこから大学まで一駅。
    いざとなったら大学まで歩けないこともない。徒歩40分ほどで行ける距離だ。
    アパートの同居人にも、この本同様に司法試験合格を目指す30歳前後の男が一人いた。
    私がギターを弾きながらフォークソングを口ずさんでいると、階下のこの住人から「うるさい!!」とよく怒鳴られたものである。

    大学から近いせいもあり、しばしサークル仲間のたまり場にもなった。夜中に私が一人で寝ていると、コンコンとドアを叩く音がする。誰かと思えば、高田馬場で酒盛りの後、遅くなったので自宅へ帰れず、私の部屋に泊めてもらおうとする、なんとも図々しい輩たちだった。

    彼らは寝ている私を無理矢理叩き起こし、土産とばかりに持ってきたビールとつまみをエサに酒盛りに私を誘った。私もついついエサに釣られて起き出し、酒宴を始めたものだ。

    そんな破天荒で楽しい4年間もあっという間。就職をきっかけに、私は中央線の国分寺駅にあるアパートに引っ越すことになる。

    この本の著者高野氏のアパートは、早稲田大学正門から徒歩5分。その古い木造アパートで、11年間もの長きに渡って暮らした期間における報復絶倒のエピソードの数々。

    遥か昔を思い起こし、学生時代の自分の姿に重ね合わせノスタルジーにどっぷりと浸ってしまった。
    ああ、あの旧き良き時代よ、もう一度──。
    と願っても、二度とあんな楽しい青春時代は戻って来ないのである。

    • 杜のうさこさん
      センパイ、こんばんは~♪
      先日は大慌てのメール、大変失礼いたしました<(_ _)>
      今度はちゃんとお知らせが届きました。ホッ

      業務...
      センパイ、こんばんは~♪
      先日は大慌てのメール、大変失礼いたしました<(_ _)>
      今度はちゃんとお知らせが届きました。ホッ

      業務連絡ならぬ、業務報告^^ありがとうございました!
      そのアイディア、すっごくいいと思います!
      受験生のなによりの励みになると思います!
      >W大学よりK大学志望の生徒であっても、心変わりしないかなあ…ふふふ
      私は最初からWでしたけどね♪
      (父はK大学に行ってほしかったようですが…)
      学生時代の友だちに言わせると、間違って入ってきた感ありありだったみたいですが(笑)
      しかし、毎度のことながらセンパイの人脈の広さといったら!
      たしかに同窓のつながりの強い学校だとは思いますが、
      それにしてもスゴイです!

      あ、それとチャンネル登録、無事完了いたしました~^^♪
      わたくしの場合、チャンネル登録って何?
      はい、まずそこからです(笑)
      センパイ、たった今苦笑いしましたね?(笑)

      ラジオ番組のパーソナリティーは以前教えて下さった番組の方ですよね?
      もちろん、ランちゃんがお名前を~~♪の件も、
      たしかあれでセンパイのフルネームを知ったのではなかったかと。
      そういえばついこの間、ランちゃんがインスタをされていることを知りました♪
      可愛いネコちゃんがおいででした(*^-^*)

      それと、ラグビー、残念でしたね。
      センパイ観戦されてるかな~と思ってました。
      対抗戦の勢いでいけそうな気がしてたんですが…
      「創部100周年V」取らせてあげたかったな~


      体調もなんとか落ち着いてくれて、ほっとしてます。
      ご心配をおかけしました。
      やりたいこと、やらなくてはならないことがたくさんあるのですが、気持ちばかり焦ってなかなか…
      昔から要領が悪くて、何をさせてもいちいち時間がかかるんですよ~。

      今年はラグビーワールドカップ、日本各地を駆け回るご予定とのこと、
      お聞きした瞬間、ピクッと矢の付いた黒いしっぽが(笑)
      楽しみにしてま~す(^^)/

      では、寒い日が続きますが、ご自愛くださいませ(^^)/
      2019/01/16
  • 辺境作家、高野氏の青春記。ワセダのたった三畳の部屋に住んだ11年間で起こった日々を綴った一冊である。
    高野氏の著書は普段我々が行かないような辺境の地や未開の地などのテーマに気を引かれるが、文章にしたときの面白さが尋常ではない。今回のエッセイではそれ特に際立つ。場面の切り取り方やテンポ、言葉のチョイス…高野氏の著書を支えているのはやはり文章力だ!と感じる一冊であった。

    特に最終章の、野々村荘からの旅立ちは懐かしさ、寂しさ、面白さ、なんとも言えない哀愁が美しく感じられて何度も読み直した。人を好きになる複雑な心境をこんなに上手く書ける人がいるのか、と嬉しくなった。

  • '語学の天才まで1億光年'を読んで、すっかり、この著者の作風や破天荒な内容に魅了された。
    本作は、この著者の原点とも言うべき、早稲田で過ごした11年間の驚きの生活や、そこに下宿している奇妙な人々の記録である。探検部の後輩からの紹介で、実家からこの下宿に転がり込む。
    三畳一間で鍵はない。誰でも自由に出入りする。太っ腹な下宿のおかみさん、司法試験浪人という不動の地位の住人、ドケチも超がつく非日常的な動きをする住人など、世間離れした人物が集う異空間。エピソード形式で綴られていく世界が、ウソ?と思える連続で、読むほどに味わいがでてくる。最後に下宿を出る話になるが、何だかほんのりとしてくるのも、この作者の話法の魔法かも。

  • 電車で読んでいて思わず笑いそうになった。
    どのエピソードも嘘のようだけど、これはエッセイだから多分本当の話。
    変な住人たちのシュールな姿が面白い。
    自分のルールに則った正義を守る、熱血でお節介なケンゾウさん。金だけでなく、時間もケチる守銭奴。天然だけど強い大家のおばちゃん。
    こんな人たち、隣にいたら対応に困りそうだけど(おばちゃんは面白くていいかも)、話題には困らないだろうなぁ。

  • 名著「幻獣ムベンベを追え」のノンフィクション作家の青春時代を描いた本です。
    僕はこの手の青春本が大好きで、一生青春しているような冒険おじさんの本も好きなので、大体貧乏を謳歌していたり人生さまよっていたりする人が大好きなんでしょうきっと。
    椎名誠の青春物にも通じる真面目な馬鹿馬鹿しさが詰め込まれていてとても楽しい本でした。
    所謂流行を追いかけてキャッキャウフフとなっている青年達が好きではないので、TVも見ず世間から隔絶されて自分たちの世界を生きているこの「野々村荘」の住民たちはとてもとても愛おしくて、実際にこの寮で暮らしてみたかったと思いました。
    冒険を繰り返し1年位いなくともそのまま部屋を貸していてくれる懐の深いこの寮は、著者にとって何にも替えがたい魂の置き場所で、いつ帰ってきても自分を受け止めてくれる胎内のように居心地の良い場所でした。でもいつかはそんな陽だまりのような場所から旅立たなければならない。そんな寮からの自立迄に要した時間は何と11年!22才から33才迄掛かっているんですね。もうほぼ実家に等しい存在です。

    ある事柄で、野々村荘よりも大事な物を見つけた彼は引っ越す事を決意するのですが、その瞬間迷うことなく脱皮した殻を脱ぎ捨てるがごとく旅立つのですがその姿に何とも言えず青春を感じました。

    とてもとても好きな本になりました。永久保存します。

  • 名作『謎の独立国家ソマリランド』の著者、タカノさんが、20代の大半を過ごした早稲田の三畳の下宿での生活を描いた本。正確には最後は四畳半の部屋に移っているのだが。やっていることが破天荒で面白い。

    著者が本書の舞台の野々村荘に入居したのは1989年で、家賃は1万2千円。自分もその同じころ東京に出てきたときに、四畳半風呂なしトイレ共同の永福町の下宿に住んだが、家賃は2万4千円だった。後に四畳半に移ると家賃が2万2千円に上がったらしいので、そんなものなのかもしれない。あの頃、部屋の中にネズミも出た。銭湯には営業時間があるので、3日間くらい風呂に入らないときもざらにあったが、割と平気だった。タカノさんちほど個性的ではなかったが、おばちゃんもいて、アーティスト志望の怪しげな女の子が、夜中に歌の練習をして、おばちゃんと何度も喧嘩していた。
    でも似ているのはその辺りまで。この本を読むともっと、おばちゃんや下宿の他の人といろいろと交流しておいた方がよかったかなと少し後悔。チョウセンアサガオの実を100粒ほど食べて、15時間意識を失い、一週間ほど文字が読めないほど瞳孔が開いたままになっているなんてことはしたくないけど。

    「青春記」というタイトルだが、最後は30歳を過ぎて定職につかない状況を悩み、10代の青年のような恋が原因で住み慣れた下宿を引き払うところで終わる。若いときは、勉学を究めようとするのでもなければ、相当に無茶してもきっといいものなのかもしれないなと思わせる本。

  • 海外に行ったものと比較すると、本作で舞台となる場所が、著者が学生時代に住んでいたアパートなので、スケールは劣る。しかし、インパクトというかハチャメチャぶりは当時から相変わらずでおもしろい。幻覚症状を引き起こす植物を食べ、15時間意識を失う(その間奇怪な行動をとっていることが記録されている)話が一番ハマった。「この人よく生きてるなあ(苦笑)」と思うけれど、それは高野さんが強い星のもとに生まれてきたということと、高野さんと同じぐらい「本当にいるのかこんな人!?」と思われる人たちが彼の周りにいて、見えない力か何かで彼を守っているからかなあと感じた。

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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