どこかで誰かが見ていてくれる 日本一の斬られ役・福本清三 (集英社文庫)
- 集英社 (2003年12月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087476514
感想・レビュー・書評
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会ったことすらないけど、心の恩人だと思っている。年の瀬も近い今、ようやく手に取る心づもりが出来た。
初主演を務められた映画『太秦ライムライト』(2014)は、まさに福本さんご自身のストーリーで鑑賞後もずっと心に残っていた。目立たないどころか斬られたらそのまま画面から消える役なのに、それを笑い飛ばさず体を張って全うする。
そして本書のタイトルにもなっている「どこかで誰かが見ていてくれる」を一言劇中で呟かれた。その一言で当時の自分は(頑張りきれていなかっただろうけど)何とか踏ん張ることが出来たし、実際本当に見てくれている人はいた。その後も「どこかで…」は事あるごとに自分を生かしてくれて、福本さんには感謝しても仕切れずにいた。
そして今年の正月、訃報をニュースで知る。
映画では寡黙な老剣士だったけど本書では何とも気さくな人で、愚痴や自虐がポロリと出ちゃったりと結構お茶目。ツッコミにもキレがあって、途中何度も吹き出した。
「笑いごとやおまへんで」
斬られ役に留まらず、ドラマのエキストラや死体役まで。ようやく本音を聞けた気がして何だか嬉しくなった。
先輩と苗字が被っていて、その場で無理やり変えさせられたのが芸名の由来みたいだけど、それも笑いごとやおまへんのやろか…本当に何でもありの時代だったんだな。
思えば、最近自伝を読む数が増えている…
でも過去に読んだ人達はゼロからのスタートでも何だかんだで皆んな器用にこなしていたり、はたまた運が良かったりで羨ましくなることもしばしば。
一方で福本さんは先輩やスタッフに怒鳴られ、肉体的にも痛い目を見たりとまるで正反対。
同じ自伝でも、経歴は堂々と語らずに「しょうもない話」と繰り返す姿勢でそれが読者になじみやすい。何よりインタビュー形式だからナチュラルな京言葉(かな?)が何とも温かい。
殺陣の型や出演作の撮影秘話もなかなか興味深かったけど、深作欣二監督の話は思わず唸った。「目立たない」「主演を引き立てる」技術を職人みたいに極めた大部屋俳優らにも一人ひとり役者として指導してくれる。タイトルにも通じるところがあって印象深いエピソード。
思い入れが強すぎてここまで長くなってしまった…
もっとご活躍を見ていたかった。「どこかで…」が必要な時期が映画より前に何度もあった。あのラストシーンと福本さんが呟いていた「これでええんや」が重なる。初鑑賞時と変わらず、視界が滲んでいた。 -
インタビュー形式で自伝を語っている。ただのインタビューなのにユーモアのセンスもあって面白かった。徹子の部屋にも出演したとか。今度、映画見てみようかな。
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読書録「どこかで誰かが見ていてくれる」4
著者 福本清三、小田豊二
出版 集英社
p222より引用
“それからですわ。私がとにかく一生懸
命、与えられた役をやってさえいれば、誰か
がきっと、どこかで見ていてくれると思うよ
うになったんは。”
目次から抜粋引用
“城崎の少年
斬られ千人
仁義なき戦い
ふーん、できちゃった城物語
どこかで誰かが見ていてくれる”
長年大部屋俳優として活躍した俳優にイン
タビューし、それを聞き書きした一冊。
俳優になったいきさつからその努力が報わ
れ始めるまで、時代劇映画全盛期の頃の写真
などを交えて書かれています。
上記の引用は、映画「仁義なき戦い」で、
深作欣二監督から演技について話されたこと
についての一節。
実際にはどうかはわかりませんが、どこかで
誰かが見ていてくるていると思うことで、目
の前の苦境を踏破出来るのであれば、これほ
ど頼りになる思いもないでしょうね。
今大物と呼ばれている俳優さんたちの名前
が出てきます。その人達の親も、大物俳優を
しておられたようです。芸能の世界というの
は、世襲もかなりあるのかもしれませんね。
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子供の頃、時代劇のラストでこの方の派手な斬られ方を見るのが楽しみだった。この本を読み、俳優さんというか、職人さんのような心意気を感じた記憶がある。本日この方の訃報に接し、また少し、古き良き時代が遠のいた気がする。
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日本一の斬られ役の福本清三さんの生涯を書いた本。とてもいい本で、福本さんの人間性がよく伝わってきました。
彼の故郷へ帰郷し、その頃の話を伺っている部分では何故か懐かしい気持ちになりました。
時代劇や東映のことは全く詳しくなかったので、活躍されていた俳優さんや監督さんはあまり知らなかったけど、それでもとても面白いと感じることのできる一冊でした。 -
面白かった、インタビューをテープ起こしした形で書かれた本。
思ってたよりもずっと軽妙な方でびっくりした。
肋骨が浮き出たポニテの時代劇で仰け反って切られる人。
で、わかる人はわかるはずの人。
台詞のない端役のプロで、覚えてしまうといつも出てるってことに気付いた。
そして名前を知らないままだったことにも気付いた。 -
どこかで誰かが見ていてくれる
191227読了。
今年118冊目今月17冊目。
#読了
#どこかで誰かが見ていてくれる
#福本清三
聞き書き形式。職場の上司から。
決して日向を生きてきたわけではないけど、積み重ねた一つ一つをちゃんと評価に変えている人。
知ったかぶりをしない
才能も人脈もなければ、媚も追従もしない。でも与えられたことは全力でやる。
まさにプロだな。 -
時代劇の斬られ役、福本清三さんのインタビューを中心とした本です。福本さんのしゃべりがおもしろいおもしろい!舞台の裏側のお話も分かりますし、とても面白い一冊です。
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ラスト・サムライのボブ(サイレント・サムライ)役がおそらく一番有名な、福本さんの聞き語り?本です。
非常にさらっと読める割に、仕事に対する姿勢や考え方等についても、ちょっとだけ考えるきっかけになったりします。
難点は全て福本さん語り調なところ。
動作等も全て話し言葉での解説なのが、読んでいて違和感があり、辛かったです。
続巻「おちおち死んでられまへん―斬られ役ハリウッドへ行く」も読みました。
こちらでは「ラスト・サムライ」の撮影時のお話も読むことができます。
落ち武者の入国手続きは不覚にも笑ってしまいました…。
こちらの難点も全て語り調なところです。
コメント有難うございます♪
ナイトスクープでも紹介されていたんですね…!デビューされた頃には既に隠れファンの方がいらっ...
コメント有難うございます♪
ナイトスクープでも紹介されていたんですね…!デビューされた頃には既に隠れファンの方がいらっしゃったという位なので、とても存在感のある役者さんだったことと思います!多くを語らない姿勢がより記憶に残りました。
『ラストサムライ』のエピソードは次作『おちおち死んでられまへん』に詳しく掲載されているのでそちらも是非お手に取ってみてください^ ^