春画 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087476651

感想・レビュー・書評

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  • 家族がばらばらになっていくこと、老いや病気や死、とか読んでいて気が沈むような話が多かったけれども、嫌いじゃない。気は沈むのだけれど、これも人生の側面だというか、しかたないというか、そういうところを淡々と見せてくれるような感じがして、なにか落ち着くような気も。
    まさに、日本文学の私小説っぽいかも、と。
    この作品、エッセイと思っていたけれども、ちょっとフィクションも入っているような感じがしてきて、そこがまた私小説っぽいんだけれど、どうなんだろう?(バーで知り合った派手っぽい中年女性のアパートに行った、とか、二人組に暗がりにつれてかれて殴って倒したとか、酔っぱらって植え込みだかどこかで寝ていて警官に起こされた、とか、事実なのか???)

    気が沈むといいつつ、続編の「大きな約束」も早く読みたい。

  • 椎名誠についてのイメージは…説明するまでもないですね。いい意味で私たちの椎名像を裏切ってくれる私小説です。とても読みやすいのは変わりないですが。彼は、ジーパン掲げてモンゴルの大草原を走り回っているだけじゃないんです。内省的な一面を垣間見れます。個人的には、彼の著書を読むのは6年振りで、作品の変化に驚いて、しみじみしちゃいました。

  • 「椎名誠」の私小説『春画』を読みました。

    『南洋犬座―100絵100話』、『家族のあしあと』に続き、「椎名誠」作品です。

    -----story-------------
    母が逝き、「私」宛てに古びた春画が遺された。
    旅先の小さな島で、その奇妙な絵を眺めながら、後妻であった母の人生を想う―。

    『岳物語』から十数年。
    子どもたちはそれぞれの夢を追ってアメリカへ旅立った。

    親を見送り、子供たちは巣立ち、再び始まった夫婦二人きりの生活。
    家族が共に過ごした、かけがえのない日々をふり返り、流れゆく時のうつろいをつづる静かな私小説。
    (解説「池上冬樹」)
    -----------------------

    「椎名誠」が、雑誌『すばる』に連載していた作品7篇を収録した短篇集です、、、

    『岳物語』に代表される"明るい私小説"とは、ちょっと雰囲気が異なり、死の影がちらついている"暗い私小説"でした… 当時の著者の精神状態等が表れている作品なのかもしれませんね。

     ■春画
     ■家族
     ■青空
     ■秘密
     ■海流
     ■風琴
     ■暗闇
     ■解説 池上冬樹

    『春画』は、亡き母親の遺品の中から「私」宛てに残された春画の意味を旅先の離島で思い巡らす物語。

    『家族』は、作家で多忙な「私」が妻とともにサンフランシスコ、サンタクルズ、ニューヨークを訪ね、サンフランシスコで写真の勉強をしている息子、ニューヨークで芝居や映画の端役をしている娘と再会… 5年振りの再会した家族の、それぞれの生活ぶりや、「私」の過去がスケッチされる物語。

    『青空』は、高校時代の同級生「進藤進」の葬式に参加するために友人「和田恭一」と青森に赴き、葬儀後に寂しい集落の民宿で一晩を過ごし、仕事での転機や夫婦間の問題等、同世代の変化が語られる物語。

    『秘密』は、母親の三回忌のために故郷を訪れ、少年時代に親しんだ土地を散策し、かつてあった祠等を探しながら過去を懐かしむ物語。

    『海流』は、『家族』からの1年後、アメリカで家族が1年振りに再会を果たし、海辺の町サンタクルズでの数日間の暮らしを、幼い時の子どもたちの想い出を交えて語る物語。

    『風琴』は、チベットに傾倒する妻との生活の変容、「私」を悩ます女性ストーカー「K」の存在、愛犬の衰弱等を通して、生活の変貌と創作の行き詰まりを語る物語。

    『暗闇』は、友人の漁師「秀次」の足の感覚が無くなるという病気を中心に、沖縄・伊良波島での取材の模様や『秘密』で出会った鼻ピアスをした女性を巡るトラブル等が描かれた物語。


    楽しいことよりも、寂しさや、侘しさが強めに感じられ、人生の影の部分の印象が強く残る作品でした。

  • 新たなページに入った岳物語の続編の1つであろう。
    家族の様子も変わり、まさにそれぞれの流れに乗っている様子が書かれている。
    椎名さんの私小説にしては少々しっとりとした内容であろう。しかしながらそれも年月の経過なのだと考えた。
    元気な私小説だった雰囲気とはまた一つ異なった作品だった。

  • 確かに、今までのホノボノ椎名ワールドとは一味違う雰囲気が漂う。家族が変わっていく様に椎名誠も変わっていくと言う事か?「春画」何故この絵を私に・・・・母親が生き返らない限りえいえんの謎。そこが知りたいのに永遠に解り得ない。消化不良で終わったSEXのようで悶々。

  • ずいぶんとこれまでの作風とは異なった私小説である。

  • 小説家としてのえげつなさに感動。
    椎名誠の小説はSFを除いてタブーにまみれてたけど、これと「かえっていく場所」はそれらを全部ぶっ壊す。
    10年前に読んでいたら一笑に付しただろうが、どうやら俺らも同じような感じ。

  • 岳物語の子供がアメリカに渡り写真の勉強で大学に行っていることがわかりホットする。 息子と父親はベラベラ喋らなくとも分かりあえるもの。さてさて自分はどうだろうかとフット考える。

  • 椎名誠2冊目の本。

    彼の本、けっこう好きかもしれない。

    あそこまで、自分の心情を曝け出しているところにも気に入ったのですが、
    彼のその心情を文章にする力、考え方に畏敬の念を感じた。
    普段考えて、考えて、考え続けなければ、
    或いは感性豊かに、一つ一つの細かい出来事にまで思いを寄せていなければ書けない。

    人生というのは一度きり、
    様々な経験をして、様々な感情を自分の体から掘り起こしてみたい。
    そう思わせてくれた本書でした。

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著者プロフィール

1944年生まれ。作家。1988年「犬の系譜」で吉川英治文学新人賞、1990年「アド・バード」で日本SF大賞を受賞。著書に「ごんごんと風にころがる雲をみた。」「新宿遊牧民」「屋上の黄色いテント」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズ、「そらをみてますないてます」「国境越え」など多数。また写真集に「ONCE UPON A TIME」、映画監督作品に「白い馬」などがある。

「2012年 『水の上で火が踊る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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